最近ぶるらじをまた見るようになりました。毎回面白いラジオを提供できるパーソナリティとスタッフの皆さんに感服します。
今回で洛奈君がとうとうあの子に会います。やはり彼がいるなら当然この人も出さないといけないでしょ?
それではどうぞ
Can't escape from crossing fate!
綾月洛奈は眠れずにいた。
「明日は『野郎』が言ってた日だよな…」
彼の不安の原因はほかでもない。数日前に神樹から直々に「警告」を受けたからなのだ。その話によると自分は明日命の危機に瀕するとのことらしい。正直洛奈は神樹の話だけならそこまで本気にしなかったが、
「…しかも沙耶までわざわざ注意してくるっつーことは『野郎』の話もガセじゃねーってことか」
そう。沙耶がさっき自分に電話で連絡してきたのだ。
『兄さま。明日は兄さまの身に危険が迫る可能性が非常に高くなるので明日は絶対に外を出歩かないでください。いいですか、絶対ですよ』
『いや、俺明日テストなんだけど』
『それでもダメです。
外へ出るなと釘を刺したあと沙耶は洛奈の返事を待たずに電話を切っていった。「かつての死に際」と「自分のすべて」。心当たりがないわけではなかった。「かつての死に際」とはおそらく「あの夢」に出てきた数々の修羅場のことだろう。あんな目に実際に会うのかと思っていると洛奈はどうしても眠れなかった。
「…クソっ!とりあえず寝るぞ!明日のことは明日考えりゃいい!」
洛奈は一抹の不安を抱えながら毛布を頭に被せて無理やり眠りに入った。
「ラグナ。今日は学校へ行かなくてもいいわ」
「あいよ」
翌日。芹佳から学校を休むことが伝えられた。
「珍しいじゃねーか。巫女が不登校を許すなんてよ」
「たまにはいいでしょ、そんな日も。テストは先生に頼んで後日にしてもらったから」
「そうかよ」
「もう…この子は。今昼ごはんを作るからくつろいでていいわ」
そう言って芹佳はキッチンの方へと向かった。
「…はあ」
「大丈夫よラグナ。今日は何も起きない。きっと神樹様は貴方を守ってくれるわ」
「別にそんなことを気にしているわけじゃねーよ」
「あら?それなら何を心配していたの?」
「いや…これでテストの日が先送りになったと思うと憂鬱な気分だぜ」
「それは普段貴方が勉強しないからでしょ。もしかしてラグナ、昨日また詰め込みをしていたんじゃ」
「し、してねーよ!!何いってんだよ!」
「フフ、じゃあそういうことにしておくわ。でもラグナ。十兵衛さんとの修行に力を入れていることはとても良いことだけど、ちゃんと勉強もしないとダメよ」
「分かってるよ」
芹佳の小言に対してぶっきらぼうに返事する洛奈だが、内心では彼女が「警告」の話題を持ち出さないことに感謝していた。
芹佳はすでに何人もの家族との別れを経験している。今でも刃や沙耶とは会っているが両者の都合もあってそう頻繁には会いに行けないのだ。
しかも刃は園子達の御役目についてきているため、危険な立場にいる。十兵衛やその娘である九重にもたまには会うが、それでも基本的には数時間程度だ。そんな中で洛奈は芹佳に唯一傍に残った家族なのだ。
「あと今日は私も仕事がないから家にいるわ。午後には『お客さん』も来るから準備をしないと」
「『客』だぁ?どんなやつだよ?」
「仕事で仲良くなった人よ。なんでも大事な話があるって」
「おい、それってまさか…」
「大赦の人ではないから安心して。それに貴方もいるって話したらそれでも構わないそうよ。ラグナはそれでも大丈夫?」
「問題ねえよ。好きにしな」
洛奈は基本的に大赦は好きではない。「あの日」の大赦に会ってから洛奈にとって大赦とは御役目にかこつけて自分たちから家族を引き離した存在なのだ。
その日から洛奈は他者に甘えたり、弱みを見せないようになっていった。十兵衛のように親しく接することのできるものはいるが、どこか少し張りつめていた。そんな中兄妹以外で洛奈が一緒いて安心することのできる人物は芹佳だけだった。
「…いつもありがとな…巫女」
「?何か言った、ラグナ?」
「なんでもねえよ」
洛奈は思う。自分が死んだら…芹佳は、刃は、沙耶はどうなるのだろう。きっと泣くだろう。怒りもするだろう。悔やみもするだろう。場合によっては復讐に走るかもしれない。特に刃と沙耶は。そんなことはできれば避けたい。
「おまたせ。天玉うどんだよ!」
「おおっ、ありがてえ!」
その後特に何も起こることなく夕方になっていった。芹佳は客人がなかなか来ないことを気にしていたからか、どこか落ち着かない様子だ。
「どうしたのかしら…あの人」
「そろそろ来んじゃね<ピンポーン>ほらな」
「あ、本当だ。じゃあ私行ってくるね」
芹佳は客人を迎えに玄関へと向かった。玄関でなにやら話をしていた後、芹佳が一人の「少女」を連れて居間に戻ってきた。
ほとんどの人間が東洋人である今の四国から考えると少女の見た目は明らかに「異質」だった。
少女は体のほとんどを隠す黒いゴスロリ衣装を着ており、袖から出ている手や顔は雪のように白い。こちらをいかにも気の強そうな真紅の瞳で一瞥する。腰まで届きそうな長い金髪を二本のリボンで結わせたツインテールと小さな体のせいか、その姿は「ウサギ」のようにみえた。
(なんだこいつ?どこかであったような気がするが…)
見た目だけでも相当異質な少女だったが彼女が連れている『ペット』もどこかおかしかった。
一匹は背中に小さな翼が付いた少しぽっちゃりぎみの赤いコウモリのように見えた。もう一匹は太り気味の巨大な黒い猫だった。洛奈はそんな「少女」の姿をみて何かを思い出しそうになるがまだどこで会ったのかが思い出せずにいた。
「今日は話を聞いてもらってありがとう、芹佳」
「久しぶりだね、『レイチェル』さん。今お茶を持ってきます」
「ありがとう」
「『姫様』、どうぞ」
なんと猫が喋ったあとに体を椅子に変化させ、レイチェルと呼ばれた少女はそれに腰を掛けた。
「な、なんだそりゃ!?」
「あら見慣れない子ね。芹佳、この子が?」
「うん。洛奈。私の大切な息子だよ。いつもはラグナと呼んでいるの」
「それはどうして?」
「本人の希望よ。なんでもこっちで呼ばれる方がしっくりくるらしくて」
「そう…『この子』が…」
「おいアンタ!いまのはどういうことなんだよ!」
「随分と大声を上げて叫ぶ子ね。喧しくて敵わないわ。貴方、番犬にでも生まれなおして首輪に繋がれた方が思う存分吠えることができて良いのではなくて?」
「あぁ!?てめえもそんなチンチクリンのくせに、何様だこら!?」
「あんまり唾を飛ばしながら怒鳴らないで頂戴。服が汚れるわ」
「んだとお…このやろー…!」
洛奈が少女に噛み付いてきたら大砲並みのエグイ罵倒が返ってきた。芹佳がお茶を持ってきたときに急いで仲裁したこともあって何とか怒りを抑えたがまだ洛奈は彼女を睨んでいる。
対するレイチェルは余程洛奈の反応が面白かったからか、愉悦に満ちた眼でこっちを見ながら小さく笑っている。
「てめえ…後で覚えてろよ…」
「ええ、楽しみに待ってるわ」
「んだと!?この『ウサギ』!」
「…『ここ』でも貴方は
「?どうしたんだよ」
「なんでもないわ。ただ、貴方の顔が他の同年代の男子に比べて随分と老けていると思っていただけよ」
「誰が老け顔だこらぁ!?」
「こらラグナ。そんな喧嘩腰な物言いをしちゃだめよ。レイチェルさんも揶揄わないで上げて」
「ごめんなさい芹佳。私としたことが彼の反応があまりにも素直なものだからつい興に乗ってしまったわ」
そんなことをしていると芹佳のお茶を堪能した後、レイチェルは本題へと移った。
「単刀直入に言うわ。この家の神社に祀られている『アレ』が不安定になってきているのよ」
「『アレ』…ですか」
「そうよ。だからできれば私の『城』へ連れて行って一刻も早く浄化をしてあげたいの。『アレ』が置かれている地下へ行くには貴方の力が必要だもの」
「分かりました。少し準備をしてから行きましょう」
「ええ…分かっているわ」
芹佳は自分の部屋へ向かっていき、洛奈とレイチェルが再び目を合わせた。
「…どういうことだアンタ。巫女がいねえといけねえって」
「これから行く場所はあの子の家系の『血筋』を持つ者じゃないと入れない場所なのよ」
「そういうことか…そういう意味でも俺は行けねえな」
「あら、さっき息子だと聞いたのだけれど」
「俺と巫女には血の繋がりはねえんだよ」
「まあ確かにあの子の周りでそういう話は聞いたことがないわね…でもその割にはとても心配しているようだわ」
「なっ!?」
「いいのよそれで。あの娘を大事に思ってくれているものが傍にいるならそこに血の繋がりは関係ないもの」
「…まあな」
「さっきと打って変わって随分と素直じゃない。貴方、もしかしてマザコンというものかしら?」
「てめえは一々人をおちょくらねーと気が済まねえのか!?」
「貴方に関してはそうよ」
「クソがっ…!」
どうやらこのレイチェルという娘は自分を気に入ったらしい。これからどれだけいじられるのかを想像してしまうと洛奈は思わず舌打ちをした。
「お待たせしました~」
「そう、では行きましょう。また会えることを願っているわ、『ラグナ』」
「できれば二度とてめえに会わねえことを願うぜ」
「あら冷たい」
そのあとレイチェルと芹佳は玄関に着き、外に出ようとした瞬間、五時を知らせる定時チャイムが鳴った。
「少し時間を過ごしすぎたわね。芹佳、急ぎましょう」
「はい。じゃあ行ってくるねラグナ…ラグナ?」
洛奈に出かけることを知らせた芹佳だが、いくら呼んでも洛奈から返事は返ってこない。様子がおかしいと感じた芹佳は急いで家の中へ戻り、彼を探し出す。そんな彼女を見てレイチェルは眉を顰めながら自身のペットに命令した。
「…『ギィ』、『ナゴ』。今から転移魔法で『城』へ飛ばすから『ヴァルケンハイン』に大至急浄化の準備を進めるようにしてちょうだい」
「え、姫様はどうするんすか?」
「気づきなさいよアンタ。この中で『アレ』を持ち運びすることができるのは姫様だけよ」
「そういうこと。さあ行くわよ」
「ちょっと姫様まt」
ギィの訴えを聞き終える前にレイチェルは二匹を飛ばした。ちょうどそのころに芹佳が今にも泣きそうな顔で帰ってくるのが見えた。
「レイチェルさん…レイチェルさん!!」
「どうしたの芹佳?何があったの?」
「ラグナが…どこにもいないんです!さっきまで家にいたのに!」
「なんですって!?」
ラグナの不在を聞いてレイチェルは思考を巡らせる。洛奈は人間だ。そんなすぐにどこかへ行けるはずがない。そもそももし外に出ていたなら自分が気づくはずだ。そんなことを考えていると『大橋に設置されている鈴の音』がレイチェルの耳に入ってきた。
(この音は…でもそんな…まさか!!)
最悪の可能性を確信したことで、レイチェルは芹佳に迫る。
「芹佳。いまからすぐに地下に向かうわ。『アレ』が必要になるかもしれない」
「そんな…でもラグナは!」
「…彼は今…ここにはいないわ」
「どこなんですか!?ラグナは…一体どこにいるんですか!?」
レイチェルは辛そうな表情を浮かべながらゆっくりと口を開いた。
「彼は…ラグナが今いるのは…」
ー 『樹海』よ -
「ここは…どこだ…?」
洛奈は驚愕していた。定時チャイムの音が急に消えたと思ったら芹佳やレイチェルが突然石像になったかのようにぴたりと動きを止め、大橋の方から強い光が迫ってきたあとに気付いたら世界が一変したからだ。
現在彼は様々な色の木の根に溢れた暗い空間でただ一人佇んでいる。静寂に包まれた世界には彼以外の生物は見当たらず、とても不気味に感じた。
「取り敢えず探索するか…」
ここに留まっても仕方がない。とにかく移動しながら手掛かりを探そう。しばらく歩いていると大橋の方で爆発音が聞こえた。そこでは煙が立っており、見たことのない巨大な生物がいた。
(なんだよありゃ…まさか以前ジンたちが言ってた『敵』ってやつか?)
まさかあそこにジンたちが。そう思うといてもたってもいられずにそこへ洛奈はその方角へ駆け出した。
いかがだったでしょうか。
それでは今回出てきたのは姫様ことレイチェル=アルカードです。個人的に彼女とラグナの掛け合いはとても好きなのですがこっちでも違和感なくかけたのだろうか?
自分は心配です。
さあとうとう洛奈君が樹海に足を踏み入れてしまいましたがはたして無事に帰ってこれるのでしょうか?次回でまた会いましょう。
それでは