この度、通算2万UAになりました。読者の皆様、本当にありがとうございます!
石紡ぎの章のひなたさん、やべえよ…愛がニューとか東郷さんと違うベクトルに重いよ…
さて、今回はあの温泉回!後書きの方も今回は豪華特別仕様です!本編を読み終えても、まだ終わりじゃねえぞ!!それではどうぞ
高嶋友奈は嬉しそうにひなたと旅行についての話をしていた。少ししてからラグナとレイチェルが教室に入って来た。
「よう、お前ら。随分と楽しそうじゃねえか」
「おはようございます、ラグナさん、レイチェルちゃん」
「ご機嫌よう、ひなた、友奈」
「聞いて二人とも! 明日から初めての旅行だよ! しかも温泉まであるんだよー!」
「それで先ほどから嬉しそうにしていたんですね」
「うん! この学校って遠足はあっても泊まり込みは今度で初めてなんだ! もう待ちきれなくて!」
年が明けた後、巫女の神託によるとしばらくバーテックスの襲撃がないと分かった大社は勇者たちのために温泉旅館を貸し切りにして旅行を手配してくれたのだ。
それが楽しみで友奈はワクワクしているが、教室の外れで喧嘩の声が聞こえて来た。
「いーや、絶対に山か海かに行くんだ!」
「菊池寛記念館に行くの!」
「ん? アイツらどうしたんだ?」
「珍しいですね、あの二人が喧嘩するなんて…」
「どうしたのかしら、二人とも?」
「あー、レイチェルたちか! 聞いてくれよ、明日の自由行動の時間、何しようかって話になってさ」
「私はせっかく高松に行くんでしたら菊池寛記念館に行きたいんです。日本文学に大きく貢献した彼の歴史に触れることでタマっち先輩が読書の素晴らしさを知れればなと思って」
「タマは高松の山に行きたいんだ。去年は丸亀の讃岐富士を踏破したから今度は高松の山に挑戦だ!それに山を登ればあんずも少しはアウトドアの良さを理解してくれるだろうしな!」
お互いの相手に自分の好きなものを少しでももっと理解してほしい、そしてそれを通じて色んな話をしたいが故に衝突しているのだろう。
友奈が端末で何かを調べ終えると二人に意見を出した。
「だったらアウトドアも記念館もどっちも行けば良いんじゃないかな? さっきスマホで調べてみたらアンちゃんの話した記念館の近くに峰山公園という場所があったけど、そこにも山があるみたいだよ」
「なるほどな。確かにそれなら自由行動の時間内に回れそうだぜ。お前らもそれで良いか?」
「そうですね。ありがとうございます、友奈さん」
「ううん!仲直り出来て何よりだよ!」
その後に他の勇者たちも部屋へ入っていき、その日の放課後には各々で予定を立てた。
球子と杏は友奈が勧めた場所を回り、若葉とひなたは栗林公園へ行った。友奈は千景と共に玉藻公園に向かい、歌野と水都はスカイファーム、ラグナとレイチェルは屋島を訪れた。各々が満足するとバスに乗って宿へ向かった。
「あんず、バスの中で本を読んでも酔わないのか?」
「平気平気。これでも読書道の鍛錬は積んでいるから!」
「見てください若葉ちゃん! 瀬戸大橋が見えますよ!」
「ひなた! あんまり外へ顔を出すとと危ないぞ!」
「だってこんなに綺麗なんですもの!」
「あの農園で見たの…今度参考にしましょうか、みーちゃん!」
「それ良いね、うたのん!」
「今日はそれなりに楽しめたわね」
「よく言うぜ、景色に見惚れてたのによ」
楽しそうに話し合う者たちもいれば、一人で過ごしている者もいる。そんな一人である千景は黙々とゲームをプレイしていた。
「ぐーんちゃん! 何をしてるの?」
「高嶋さん…今新作のゲームをしていたの」
「そうだったんだね!おー、モンスターが一杯倒されていく!」
「ふふふ…今ならハイスコアを狙えそうね」
「つまりぐんちゃんはハイスコアガールってことだね!」
「ゲームは…得意だから…」
郡千景という少女は基本的に他人とは自分から接しようとはしない。そのため、一人で過ごすことが多い。
そんな中で唯一心を開くのが友奈である。彼女の明るく、優しい人柄が千景にとって心地良いものだったのだ。
「私もぐんちゃんと一緒にゲームしたいなー」
「だったらこのボードゲームをやりましょう」
「あれ? さっきのゲームは良いの? ハイスコアだって…」
「良いのよ…あんなのよりも、高嶋さんと過ごす時間の方が大事だから…それにこれなら最大10人くらいなら遊べるわ」
「本当? だったら皆も誘おうよ! おーい皆! ぐんちゃんが持ってきたゲームで遊ぼー!」
友奈の呼び掛けに応じて他の勇者たちも集まってくる。青年少女たちがゲームに没頭しているうちに時間はあっという間に過ぎて行き、遂に旅館に着いた。
「良し。これで荷物は全部運んだな。部屋に入れた後は…鍛錬するか」
「おいおい! 旅館に着いてから開口一番それかよ!?」
「しかし、鍛錬を一日怠ると遅れを取り戻すのに3日は掛かると言うぞ?」
「今回の旅行は慰安旅行だろー? 戦士には休息が必要だ!」
「しかし、少し走り込みをするくらいなら」
なんだか若葉と球子の間の雲行きが怪しくなり始めた。心配になった友奈は口を開こうとしたが、その前にラグナが話に混ざってきた。
「仕方ねえな。ならワカバ、俺の訓練に付き合ってくれ。他の皆は休んでて良いぞ」
「しかしラグナ。今年の暮れにはタケミカヅチと言うバーテックスが来るんだろう? そのためにも皆訓練した方が」
「タケミカヅチを倒すには単純に戦闘能力を上げるより、バーテックスの弱点を調べた方が良いと思うが、そいつはここじゃあ出来ねえ。それにタマコも言ったが、今回は慰安旅行ってやつだろ? つまり一日中自由行動だ。だったら休みてえ時は休むことに限るんだよ」
「だがお前は訓練するのだろう?」
「俺は左腕での戦闘に少しでも慣れておくためだよ。今は樹海でなら右腕も動くが、いつこっちと同じ状況になるか分かんねえからな。だからその分、やっておきてえんだ」
「そうか…なら協力しよう。外で待っている」
「ありがとな」
二人は自分の部屋に荷物を置いた後、旅館の外へ出て行った。球子は残る側を選ぶと旅館内を探索し、杏はそれを追いかける。
他の者たちは部屋の中でゆっくりしていた。少ししてからラグナと若葉の剣が打ち合う音が聞こえてくる。両者は一歩も譲らぬ攻防を繰り広げていた。
「うおらっ!」
「ハァッ!」
因みにどちらも本来の得物を使っている。ラグナ達しの希望だ。しばらく拮抗した後に二人は互いから距離を離した。
「やるな、ワカバ! あの時よりも腕を上げてきたんじゃねえのか?」
「これでも三年間、鍛錬を続けてきたからな! それに、奴らに負けるわけには行かない!」
どうしてかそう言う若葉の姿を見て、ラグナは一度剣を下げた。どうしたのかが分からない若葉は少し戸惑う。
「ん? 疲れたのか?」
「いや、そうじゃなくてな…なんだかそう言うお前から一瞬ジンに近い物を感じただけだよ」
「じん?」
「ああ。前にも話したな? 俺の弟の名前だよ。アイツも刀を使うし、お前と同じようにストイックな奴でな。よくこうして訓練していたんだ」
「そうだったのか。まさか弟ともこうして剣を交えたのか?」
「ほぼ毎日な。しかもアイツ、一切容赦しねえから毎回大変だったぜ…」
「お前の家は一体どうなっているんだ…」
流石にその毎回が最近真剣勝負の殺し合いになったなんてとても言えないので、少し言い方を変えた。
「今はその弟さんはどうしているんだ?」
「…ここ最近は会ってねえが、まあアイツのことだし。元気にしてると思うぜ」
「そうか…」
ラグナがそう言ってから若葉は何か考え込んでいるようだった。
「ラグナ……お前は外で旅をしてきたなら、見ていただろう。バーテックスが世界を蹂躙する様を」
「…腐る程、な」
「あの後、お前のおかげで私たちは無事に四国まで逃げることが出来た。だが、その道中で私たちはバーテックスが人を殺戮していき、世界を、日常を奪っていくことを見てきた」
若葉はそう言いながら悔しそうに刀の持ち手を握りしめる。
「だから…私は人間が生きてきた世界を取り戻したい。そしてバーテックスに殺された人々の痛みと悲しみに報いたいんだ…」
「…そうかい。それがお前の戦う理由なら俺も止めはしねえよ。気持ちも分からねえ訳じゃねえしな」
「ありがとう…」
「だが、一つだけ忠告はするぜ…そいつはいつかテメェの周りを、そしてテメェ自身を滅ぼす可能性のある道だぞ。最期に関しては、どうなろうと文句が言えねえ。それでも進むなら、そいつは肝に銘じておけ」
「……ああ」
刃と似た雰囲気を持っていると思ったが、実際は少し違った。ラグナはその時に彼女から寧ろかつての自分に似た物を感じたのだ。
テルミに全てを奪われ、統制機構を潰すために十兵衛と共に修行に明け暮れ、そしてカグツチの窯でニューと戦った頃の自分がそこにいた。
あの時はノエルがいなければ、最期に自分は黒き獣となっていただろう。
(俺としては、そっちの道には行って欲しくはねえな…)
確かにここで彼女の目的を否定することは出来る。しかしそれでは意味がないことが誰よりも自分は知っている。
(この問題ばかりは…ワカバ自身が向き合わねえといけねえ)
そう考えているとひなたがこちらに来て二人に夕食の準備が出来たことを伝えた。
食事が終わると今度は風呂の時間。最初は女子風呂の時間なので勇者と巫女たちが入っていた。
しばらく身体の発達具合や調子について意見を交換し合うと、次にラグナのことが話題に上がった。
「そういや若葉、さっきまでラグナと訓練してたけどどんな感じだったんだ?」
「走り込みをせずにずっと実戦訓練をしていたぞ」
「それはまた予想よりもハードですね…」
「でも若葉ちゃんが楽しそうで良かったよ!」
友奈が楽しそうにそう話す。ラグナが合流してから三か月間ともに過ごしてきたが、そこそこ楽しい日常を過ごすことが出来た。
「それで若葉。お前は今回、アイツに勝ったのか?」
「いや、今回は引き分けだ。例え左腕一本でも勝つことまでは出来ないさ」
「マジでか!? タマは何度ラグナに勝負を挑んでも負けてばっかりなんだぞ!!」
「そういえばタマっち先輩はラグナさんに良くちょっかい出してくるよね」
杏の言う通り、球子はラグナに良く勝負だと称し模擬戦の相手を頼んでくる。ラグナも少し面倒そうな顔はするが、一度も断っていないところから満更でもないのだろう。
「はは…もしかしたらラグナは弟さんのおかげで球子とのやり取りに慣れているのだろうな」
「弟とも訓練していたんですね…通りで手慣れてるわけだ」
「私も何度か一緒に訓練をしましたが、頼めば何だかんだ付き合ってくれますよね」
「そう考えるとすごいなぁ、歌野にあんず。ラグナには何度か勝ったことあるんだよな?」
「今のラグナは右眼が見えないし。私たちの場合、どうしてもリーチの差とスピードがあるから彼と相性が良いのよ。パーフェクトな状態だったら流石に経験の差であっちの方が上だわ」
「千景さんもラグナさんとは時々訓練していましたね?」
「そうね…私も鎌の扱い方をレクチャーしてもらってるわ」
「あの頃はぐんちゃん、ちょっと警戒していたけど訓練をしているうちに少しだけ素直になったよね!」
「彼の戦い方は参考になるところもあるから」
実際千景はラグナが来て以来、良く彼の模擬戦を見学するようになった。もちろん彼の戦闘技術を見ながらその技を自分のものに出来るためだ。
時には本人に頼んで何度か相手にしてもらっているが、その時はラグナも鎌で相手している。
(私は強くなって…もっとバーテックスを殺して、活躍する…乃木さんよりも…そしてあの人よりも…)
そうすればきっと…。そんなことを考えていると、次は巫女組に話が振られた。
「みーちゃんやひなたさんはどう思っているの?」
「私も良い人だなと思うよ。なんだかんだ頼りになるお兄さんって感じ」
「そこはなんとなく私も同意見ね。なんというか色々言うけど最後は手伝ってくれるっていうか」
「そうですね。彼は周りに良く目を配らせているので私も安心です。そういえば力仕事ではありますが、時々私と家事の手伝いをしてくれますよ」
「そんなことをしていたのか?」
「なんでも何かをしていないと落ち着かないとのことです。それに手慣れているようでとても助かっています」
ひなたがそう言うと最後にレイチェルへ話を振った。
「そういえばレイチェルちゃんはラグナさんと一緒にここへ来たのですが、彼のことはどう思っていますか?」
「………特になんとも思っていないわ。あっちが一方的に付けてきた因縁よ」
「でもラグナはレイチェルちゃんのことをかなり信頼しているみたいだよ?」
「そんなことをされる覚えはないのだけれど」
そう言いつつもレイチェルはそこまで悪い気はしなかった。そして勇者たちのラグナに対する最終的な評価は
『なんだかんだ助けてくれるお兄さん』
となった。風呂から上がり、浴衣に着替えた彼女たちが部屋に戻るとラグナがいないことに気づいた。どうやらまだ訓練をしているようだ。
彼を探しに行った友奈は外へ出る。少し先の広場に着くと、そこには左腕で剣を振るうラグナがいた。
「そろそろこの辺で終えにしとくか…あ?」
後ろにいる友奈に気づくと、ラグナは剣を腰に差した。
「どうしたユーナ? もう風呂から出たのか?」
「うん! もうみんな出たところなんだ!ラグナは訓練していたの?」
「ああ。ワカバにも手伝ってもらっていたが、少し自分で個人訓練をな」
「そうだったんだ。若葉ちゃんも良い訓練が出来たって嬉しそうだったよ」
「おい、大丈夫かお前? 羽織を着ちゃあいるが、寒くねえのか?」
「大丈夫だよ! お風呂に入った後だから今暖かいんだ!」
確かに火照った友奈の顔から風呂上がりであることが分かる。しかし今は年明けの過ぎた一月初旬だ。外の寒さで息も白い。
今の彼女の状態を放って置けなかったラグナは赤コートを脱ぐとそれを友奈に掛けた。
「これって…?」
「たく…風呂上がりでいきなりこんな寒ぃところに来ちまったら湯冷めで風邪引くぞ。今はそいつを着とけ、少しは寒さを凌げるはずだ」
「でも、これってラグナの大切なものじゃ」
「今必要なのはテメェだ。それに俺はさっきまで訓練してたから身体の中があったまってる。平気だ」
「う、うん。ごめんね、気を遣わせちゃって」
「…気を遣いすぎなのはお前の方だぞ。昨日も今日も周りが喧嘩になりそうになったら気をかけて助けに行ったんだろ?」
「あはは…私はただ、皆が嫌な思いをしたり、喧嘩したりするのが嫌だなって思っただけだよ」
「そうか…取り敢えず戻るぞ。後で返してもらうからな」
そう言ってラグナと友奈は旅館内へと戻った。彼女を勇者たちの部屋の前に送るとラグナは風呂に入る準備をするのにそのまま自分の部屋に向かっていった。
それが終わると彼はコートを取りに勇者たちの部屋に入った。丁度その時はみんなでスピードをしていた。
「邪魔するぜ」
「あら、ラグナじゃない! 友奈さんからコートを取りに来たのかしら?」
「まあな」
「ありがとうラグナ!とっても暖かったよ!」
「大丈夫そうで良かったよ。ただ、一つ気になることがあんだが…」
「どうかしたんですか?」
「なんでタマコとアンズは隅っこの方でうずくまっていて、ワカバは蕩けた顔で倒れてんだ?」
ラグナの質問にレイチェルが答えた。風呂に入っている間、勇者たちはゲーム大会をしようという話が出て、そこから何個かのゲームをやっている。
しかしその試合結果は文字通り千景無双で、どのゲームをやらせても彼女が勝ってみせた。最後のスピード勝負では若葉と互角になっていたが、ひなたが彼女の耳に噛り付いてきたので若葉は気が散って敗北した。
「…それだけでこんな海岸に打ち上げられたオットセイみてえになるのか?」
「若葉ちゃんの弱点は耳なんですよ。ここを触れられるとたちまち力が抜けちゃうんです」
「それ、バーテックスには絶対知られねえようにな…」
耳を甘噛みされて力が無くなったところを攻撃、なんてされたら悔やんでも悔やみきれない。
「ラグナさんには弱点はないのですか?」
「あっても教えるか!!」
「そうね。あまり思いつかないわ。せいぜい猪突猛進で頭に血が上りやすいところかしら?」
「それ弱点じゃねえ!!」
「人間性での弱点じゃない?」
「そういうことを聞いてんじゃねえよ!!」
そんなラグナの声に反応したのか、若葉が気を取り戻して起き上がった。
「ひなた! またお前そうやって!!」
「まあまあ、良いではありませんか?それにそんな怖い顔をしながらゲームをするものでもありませんよ?」
「まあ、勝ち負けに拘んのは分かるけどな。どうせやるなら勝ちてえ」
「でも貴方、カードゲームにそれほど強かったかしら? そんな印象はないのだけれど」
「言ってくれるじゃねえか、ウサギ…だったら勝負だ!! 三回勝った方が相手の命令を何でも聞くってのはどうだ?」
「面白そうじゃない。受けて立つわ」
「ハッ! 後で後悔すんじゃねえぞ!!」
「えーと…ラグナ、やめた方が良いよ? レイチェルさん、スピードはともかく、トランプは結構強かったから」
「だからこそ勝ちがいがあるってやつだ! 行くぞウサギ!」
「せいぜい道路に放り出されたミミズのように抗ってみなさい、ラグナ」
こうしてレイチェルとラグナはババ抜き、ポーカー、神経衰弱で勝負したが、結果はレイチェルの3タテで終わり、負けたラグナには罰ゲームとしてゴスロリ衣装での女装が言い渡された。
「ちくしょう…」
「本当に貴方はこの手のゲームに弱いわね。その恰好も思ったほど似合ってないわ」
「テメェで着せといて何言ってんだ…」
因みにシルフィードでラグナにはバレない程度のイカサマをしていたのは内緒の話である。
「レイチェルちゃん、恐ろしい娘…」
「うん? どうかしたのか、あんず?」
「タマっち先輩…世の中には知らない方が良いこともあるんだよ…」
「少し可哀想でしたね、ラグナさん」
「…アレが見破れそうなのは私や伊予島さん、あとひなたさんくらいね…」
つまりそれ以外だったらバレないということである。その後、少女たちは勇者ゲームと称した枕投げを行うことになった。
この勇者ゲームではルール無用で枕を扱いながら相手の陣にある旗を取れば勝利となる。右のチームはラグナ・水都・若葉・千景・球子、左はレイチェル・ひなた・杏・友奈・歌野に分かれた。
この時はラグナもそこそこ活躍することができた。何せ一度枕を受け止めるとそれを振り回し、自分に迫ってくる枕を次々と叩き落としながらガンガン進んで来たからである。
それを見たせいか、若葉まで真似しだしたのだから尚更危険度は高くなった。普通ならこれでほぼ勝ち確だ。
そうならならなかった最大の原因がレイチェルだった。ひなたと連携して二人の修羅の動きを封じ込めたのだ。
ひなたが的確に枕を上に投げるとレイチェルの発生した突風で枕は砲弾のように飛んでいき、迫り来る二人に雨あられのように向かっていった。
そこへ更に友奈と歌野の援護射撃が加わったことで上がってきた球子と千景まで行動不能に追い込まれてしまった。最後は枕の波に翻弄されているところを杏が旗を取るだけだ。
そうして夜になり、ラグナが自分の部屋に戻って皆が床に着いていく中、若葉だけは壁のある方角を眺めていた。
彼女の様子に気づいたひなたは起き上がり、若葉の側に寄り添った。
「ひなたか。済まない、起こしてしまったのか?」
「いえ、私も眠れませんでしたから」
「そうか」
「今日は楽しかったですね。またこんな形で皆さんと一緒に旅行をしに行きたいです」
「ああ。きっとまた行けるさ」
若葉は彼女の話を肯定するが、どうしても壁の方から目を離すことが出来なかった。
「…海を見ていたんですか?」
「ああ。どうもこの習慣はやめられなくてな」
「そうですか…」
三年前のあの光景とその時に見た世界の変わっていく様。それを忘れないために若葉は遠くを見据えていた。
「…ラグナはどんな思いで四国の外を旅してきたのだろうな」
「彼は長い間、四国の外で生きていましたからね」
「だから、あそこがどうなっているのかも知っている。私たちよりも多くの悲しみも…」
「…若葉ちゃんは…」
「どうした?」
「若葉ちゃんは遠くばかりじゃなくて、もっと近くを…周りの人を見てあげた方がいいのかもです」
「…さっきもラグナに同じようなことを言われたな」
「あら? そうだったんですか?」
「ああ。死んでいった者たちに報いたいと言ったら、その道は周りも自分も傷つくから気をつけろ、と」
ラグナから聞いた話を若葉が伝えると、ひなたは何かを察したようだった。
「もしかしたら、ラグナさんは若葉ちゃんに近いものを持っていたのかも知れませんね…」
「ひなた?」
「いえ、なんでもありません。それでは早めに寝ないといけませんよ。夜更かしは身体に毒ですから」
若葉がひなたの言葉の意味を理解できないまま月日は過ぎていった。そして半月後、バーテックスの襲撃が再び始まった。かつてとは比べ物にならない規模で。
ー九重博士の部屋ー
「ようこそ、迷える子羊と親愛なる読者諸君。みんな大好き、神世紀一の天才科学者、ドクター九重のラボへようこそ。今回の後書きは私が担当することになったからそこら辺はよろしく頼む」
「ここに書かれている内容は本編とも番外編とも全く関係のない御都合主義の塊、いわば謎空間だ。だからこんなものに付き合う時間がないというやつはそっとブラウザバックしてもらっても構わないぞ」
「さて、今日は試したい装置があってな。『
「…おや? ここはどこだ?」
「成る程…初代勇者のリーダー様か。アイツの先祖ってことだな」
「貴方は誰だ? どうして私はここにいる?」
「今回はマス
「いや、気にするぞ!!?」
「騒がしい奴だな…本当にアイツの先祖なのか?」
「先祖…ということは、ここはラグナのいる時代か?」
「あの馬鹿を知っているのか…だったら話が早い。その通り、ここはあのラグナのいる時代だ。そしてお前の子孫もいる」
「そうか…私の子孫ならば、きっと凛々しい大和撫子だろうな。是非会ってみたいものだ」
「なんなら呼べるぞ。来い園子」
「乃木園子でーっす! よろしくね〜!」
「………」
「どうした? 感動の余りに言葉を失ったか?」
「この緩いのが……私の子孫…」
「一応頼りになる奴だぞ。緩いのは同感だが」
「え〜。酷いよ、ココちゃん〜」
「それで…やはりラグナとも知り合いなのか?」
「そうだよ〜! ラッくんにサッちゃん、あとジンジンとも仲が良いんだ〜」
「ラッくん? サッちゃん? ジンジン?」
「順にラグナ、その妹の沙耶、そして弟で乃木家直属の衛士の刃だ」
「そういえば彼のことはラグナからも聞いているぞ。アイツの弟ならば、きっと頼もしい奴だろう。彼もいるのか?」
「…後悔しても知らないぞ」
「ジンジン〜、来て〜」
「…どうして僕がここに来なければならないんだ」
「おお、これは確かに勤勉そうで厳かな雰囲気だぞ! ラグナの言う通りだ!」
「貴様…何故兄さんを知っている…兄さんとはどういう関係だ…!」
「え?」
「あーあ。ご先祖様、地雷踏んじゃったね〜」
「落ち着け、刃」
「黙れ!! 来い、ユキアネサ!!」
「うわ、冷たっ!!? いきなりなんなんだ!!?」
「兄さんに近づく不審な女は皆殺すだけだ!!」
「物騒すぎるだろ!!? 少し話し合えば分か」
「貴様の戯言など聞いていない!! 氷の中へと眠れ!! 受けてみろ、煉獄氷夜を越えた秘奥義、『エターナル・フォース・ブリざ』」
「このまま部屋で暴れられても困る…仕方ない! 出でよ、対如月刃用コアユニット…『ブラザー・ラグナ』!!」
「…うん? どこだ、ここ?」
「兄さん!!」
「ラグナ!?」
「ワカバ……とジンじゃねえか!! めんどくせえ!!」
「兄さぁん!! 色々大きいけど兄さんだぁ!! ハァッ!!」
「おい! なんか刃の様子がおかしくなったぞ!!?」
「ジンジンはラッくんのことが大好きなんよ〜」
「私の知る大好きとは全く違うのだが!?」
「どこを見ているの、兄さぁん!! そんな邪魔な女なんか放っておいて、僕と殺し合おうよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「いい加減しろぉぉぉ!!!このクソガキがぁぁぁ!!!」
「全くアイツらは…おい、どうした若葉」
「……子孫が緩くて…その使いがヤンデレブラコンって…乃木家に一体何があったというんだぁ……」
「これは相当参っているな…まあ良い。次回、星屑たちの大群がラグナたちに迫る! よろしく頼むぞ」
「またね〜!」
「兄さぁぉぁぁん!!!」
「そこまでにしろぉぉぉぉ!!!」
人物紹介ページは?
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いる
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いらない