蒼の男は死神である   作:勝石

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どうもお久しぶりです。勝石です。

まず、この度評価が10になったことについてここで御礼を申し上げます。何日か前に見たらピョコっと伸びていたのを見つけたときは驚きました。ありがとうございます。

ここ最近滅茶苦茶忙しかったり、中々展開が思いつかなかったり、やりたいことがありすぎて投稿が滞ってたけどようやく出来ました。

そしてゆゆゆいの方ではついに念願の中学生園子様をゲットだぜ!!(誕生日ガチャと文化祭ガチャ)特に前半の方は思わずヒャッハーと叫びそうになりました。

さて今回は勇者部っぽいことをやるラグナたち!それではどうぞ


Rebel64.背負うべきは

「上里ちゃん、藤森ちゃん。あの娘たちは元気してる?」

 

大社本部で巫女の一人である『安芸(あき)真鈴(ますず)』は気の合うひなたと水都に二人の勇者の様子を聞いてきた。三人は先ほど滝に打たれて身を清めており、今は休憩していたのだ。

 

「ええ。元気にしてますよ。球子さんなんて普段から元気があり余り過ぎてブレーキ役の杏さんが苦労しているくらいです。杏さんはそれも含めて楽しそうですけどね」

「だったら良いわ。あの娘たちも勇者なわけだし、しっかりしてもらわないと」

「そうは言いつつ心配なんですね、二人のことが」

「別に心配じゃないわよ。ただ一応アタシもあの娘たちをここまで導いた責任があるじゃん?だから変なことに巻き込まれたり、周りに迷惑とか掛けたりしてないかなって。いや、本当に少しだけだけど」

 

真鈴は二人と同じ愛媛出身で大社に保護されるまで行動を共にした間柄で、その後は大社で生活をしている身の上だ。こうはいっているが彼女が球子と杏の様子が気がかりなのは明白だった。

 

ひなたがスマホの端末から二人が写っている写真を見せると真鈴はほっとした様子を見せた。

 

「なーんだ。これだけ楽しそうにしてるなら安心だね。それにしても上里ちゃんたちは平気そうだけど、大丈夫? 乃木ちゃんや白鳥ちゃんと離れちゃって」

「うたのんを置いていったのはちょっと悲しいけど…私もうたのんたちの力になりたいから」

「そうですね…若葉ちゃんたちが心配じゃないといったら嘘にはなりますが、私たちも自分たちの御役目を果たさなければなりません。それに、あそこには彼もいますから恐らく大丈夫でしょう」

 

ひなたの口から意外な単語が出現したことに真鈴は驚く。大社本部ではあまり話題に出てこないそれに強い興味を示しながらひなたの方へズイっと近づく。

 

「上里ちゃん、彼って? 丸亀城に今男がいんの?」

「ラグナさんのことです。安芸さんも大社内で聞いたことがあると思いますよ。勇者とは異なる、不思議な力を持った青年のことを」

「そういやちょっと前からこっちでも騒いでたね…その人ってそんなにスゴイ人なの?」

「諏訪のみんながここまで来れたのも、ラグナさんのおかげなんです。その前も結構色んなところを旅していたらしくて」

「へ~…前から時々避難民が本州から来ることがあったけどあれってそのラグナって人のおかげなんだ」

「はい」

 

二人の言葉を聞いて真鈴が少しニヤニヤし始めた。

 

「ねえ、上里ちゃん。あの娘たちの写真があるなら多分彼のも撮っているでしょ? どんな人なの?」

「えーと…はい、この方ですよ。時々一緒に映っているのはレイチェルちゃんです」

「この人がねえ…ほうほう…で、上里ちゃん」

「はい、なんでしょう?」

 

ひなたが真鈴の言葉に反応すると、彼女は益々とニヤケながら小指を立てて聞いてきた。

 

「もしかして、この人が上里ちゃんの「違います」

「即答ですね、ひなたさん…」

「いやいや、恥ずかしがらなくても良いんだよ。お姉さんは分かってるから。口ではそう言っているけど本当はってやつでしょ? でも意外だな~、上里ちゃんは乃木ちゃんみたいな真面目な人が好きだと思ったけどこういう不良みたいなタイプが好みなんだ~」

「安芸さんが楽しく妄想しているところ申し訳ありませんが、はっきり言います。私は彼のことは信頼はしていますし、少し危なっかしく思うので心配なところもありますが、そういう感情はありません」

 

ひなたはきっぱりとそう言ったが、真鈴はなんだか納得できない様子だった。

 

「えー、嘘だ~。乃木ちゃんの写真がダントツに多いのは分かってたけど、彼もそこそこ撮ってるみたいじゃん」

「若葉ちゃんの写真が多いのは当然ですよ。私のライフワークですから。それにその理屈なら皆さんの写真もたくさんありますよ?」

「でも確かにラグナさんだけの写真もちらほらありますね。あの人、写真とか好きじゃなさそうなのに」

「そこはちゃんと許可は取りましたよ。頼み込んだらなんだかんだ良いと言ってくれました」

 

それでも正面写真はまだ撮れていませんが。少し残念そうに、しかし微笑ましげにそう言うひなた。しかし、求めていた返事と違っていたからか、真鈴は口を細めながら文句を言う。

 

「ちえ~、折角気の許せる知り合いだけで集まったんだから恋バナの一つでもしたかったんだけどな~」

「なんでそんなことを…」

「そんなの狼狽えながら照れる上里ちゃんが見たいからに決まってんでしょ!! 藤森ちゃんはそう思わない!?」

「の、ノーコメントです!!」

「安芸さーん。滝行の追加が欲しいみたいですねー。神官の皆さんに知らせた方がよろしいでしょうか?」

「いや、やめて。あれ本当にキツイから。あれが平気なの上里ちゃんくらいだから」

 

事実、ひなたは大社に所属する巫女の中でも適性が最も高い。今回の戦いで負傷者が出た以上、これから重大な神託が来るだろうと踏んだ大社は能力の高い彼女を呼び寄せたのだ。

 

「そういえばひなたさんはあんまり寒そうにしてなかったんですけど、やっぱり特別な加護があるのでしょうか?」

「それは私でも分かりませんね。ですが、それを言うなら水都さんもそうではありませんか」

 

水都もこれまで巫女の訓練をしていなかったにも関わらず、高い能力を持っている。これまで歌野が一人で戦ってこれたのも間違いなく水都のおかげだろう。

 

「そんなこと…神官さんにも心が乱れてるって何度も言われましたし…」

「大丈夫ですよ。私もそうでしたし、実際に歌野さんをこれまで長い間支えてきたのは水都さんです。私も負けられませんね!」

「あ、ありがとうございます…」

 

勇者のお付きである二人が談話している横で真鈴はぼやいていた。

 

「くぅ…あと一押しで上里ちゃんの可愛いところが見れると思ったのに!!」

「全く…球子さんみたいなことを言わないでください。仮にも私たちの中でも安芸さんの方が年上なんですよ?」

「それ上里ちゃんが言う?実年齢が知らない人からすればアタシの方が年下って言われても何も言い返せないって…因みに藤森ちゃんはそのラグナって人のことは?」

「私もラグナさんのことは人として好きですけど、そういう対象としては見てませんし…」

「それ年頃の女の子としてどうかと思うんだけど、アタシ…」

 

二人の話を真鈴は大人しく引き下がると、三人は神官に呼び出されて部屋から出た。

 

 

「それでは勇者の皆様方。今日はよろしくお願いします」

『よろしくお願いします』

 

同日の朝。勇者たちはラグナたちと一緒に公園で集まっていた。事の発端は一限目前のホームルームである。その日は若葉も歌野も屍のように元気がなくなっていた。お互いのパートナーが旅立ったことに早くもダメージを受けていた。特に若葉は先日の夜でのやり取りもあって、余計にダメージが大きかった。

 

(答えとはなんだろうか…どうしてひなたはああ言ったのだろうか…)

 

今朝ひなたの部屋を見に行ってもそこには生太刀しかなく、肝心のひなたは既にいなかった。いつもなら自分が去る時間を教えてくれるのに今回はそうはしなかった。

 

(信じているとは言われたが…一体どうすれば良いのだ…)

 

悩みに悩んだが、やはり答えは出てこない。次第には自身の失態から自分に磔だの笞打ちだのをブツブツ言い始めた。そこへラグナが教室に駆け込むと大きな声で皆を呼び寄せた。

 

「お前ら!! 今すぐ公園の方へ行くぞ!! ゴミ拾いの時間だ!!!」

『は?』

 

連れていかれた先は市内でもかなり広い公園だった。そこには市役所の役員も何人か待っていた。

 

初めは急に来たラグナたちに対して若干警戒していた大人たちだったが、勇者たちを見たときに仰天した。まさかこんなことに国を守る者たちが関わってくるなんて夢にも思わなかっただろう。

 

それは勇者たちの方もそのようだったが、そこで初めてラグナは説明した。

 

「今日は皆で城下町の清掃をやるぞ。午前の時間はこれ一つで使うつもりだ。変な奴にはついて行くんじゃねえぞ」

「…こんなことをするくらいなら訓練に時間を使った方がずっと有意義よ」

「良いじゃないか千景。タマはラグナの案に乗ったぞ!」

「しかし…」

「若葉。そんなダークな顔をしながらずっと考え事をしても良いことはないわ。今日は外で身体を動かしましょう!」

「あ、ああ…」

「そうですね。あ、それではラグナさん。少し相談があるんですが」

「おう」

 

千景や若葉は戸惑っていたが、最終的に全員が参加することになった。住宅街の東側は若葉、杏、球子、歌野。西側はラグナ、千景、レイチェルと、2班に分かれた。

 

まだ若干気持ちが落ち込んでいる若葉を連れながら杏たちはゴミ拾いに勤しんでいた。メディアへの露出が多く、基本的には生活も丸亀城内で完結するため、街へあまり出ない若葉にとってこの住宅街での掃除は見新しいものだった。

 

「杏…どうしたんだ? 歌野たちとははぐれてしまったが…」

 

次第に杏と若葉は他の二人とも別れていった。しばらく歩きながらゴミ拾いをしている内に自分に気付く者たちに会うようになっていく。

 

やがて二人が一軒の家の前までにやってくると、杏が語り始めた。

 

「この家に住んでいるお姉さんは三年前までは本州の方の大学に通っていたのですが、今は天恐を患っているようです。ですが、テレビで勇者の活躍を聞いてからは症状が改善してきたそうです」

 

その話は若葉にとって初耳だった。少し進んでいくとまた別の家の前までに来た。

 

「この家に住んでいるご家族は昔からこの丸亀市に住んでいるそうで、今もこうして平和に暮らせるのは勇者のおかげだって聞いています」

「…そうだったのか」

 

ゴミ拾いを進めていくうちに街の雰囲気が他の場所と違うものへと変わっていった。あまり見慣れない感覚を覚えた若葉に杏は教えた。

 

「この辺りは本州から四国へ避難してきた人々が暮らしています。皆大切な人を亡くし、大事な物を失っていて生きる気力すら失いかけていた者もいたそうです」

「…そうだな」

「ですが、勇者たちの活躍のおかげで皆前へ進もうとしているみたいですよ」

「前へ…進む…」

 

バーテックスが襲来してから三年。この四国に生きる者たちはそれぞれの形で心身に傷を負った。しかし勇者たちが戦ってきたおかげで今も生き続けている。

 

「本州から移ったということは…」

「はい。街の人に聞いても赤コートの人…ラグナさんのおかげで助かったとも聞いています。力強い背中を見たら自分たちもそうなりたいって人も何人かいました」

「これが…ラグナが守ったもの、というわけか」

「違いますよ、若葉さん。ラグナさんだけではありません。今も、私たちが守っているものです」

「今も…守っているもの…」

 

街を見回りながら作業をしていると、向こう側からベビーカーを連れてきた女性が歩いてきた。彼女が若葉に気付くと、どうしてか嬉しそうにしていた。

 

「あの…もしかして、乃木若葉様ですか?」

「えっと…失礼ですが貴女は?」

 

見覚えのない女性に挨拶されて若葉も少し疑問に思っていると、女性は彼女に頭を下げながら礼を述べた。

 

「私は三年前に島根で若葉様たちに命を救っていただいた者です」

「そうだったんですか…」

「はい。あの時は夫と一緒で、私たちは若葉様のおかげで無事に四国に着くことが出来ました。その後に生まれたのが、この子なんです」

 

ベビーカーから赤ん坊を抱きあげると、女性は言葉を続けた。

 

「この子には『若葉』と名付けました。勇者様のように誰かを守れる子になれますようにと願って」

「そうだったんですか……あの、もしよければですが、抱かせてもらっても良いですか?」

「ええ、光栄です」

 

若葉が赤ん坊を抱いた。純粋な眼差しでこちらを見つめる瞳は光に満ちていて、身体の温もりは若葉の心に伝わっていく。

 

(これが…私たちが守っている命の温かさなのか…)

 

あの日から起きた多くの惨劇で色んなものが失われたが、同時にあの時に守れたものから新しいものも生まれた。

 

「あの時助けていただいて…本当にありがとうございました…やっとこうして…直接御礼が言えました」

 

涙を流しながらそう言った後に女性は子どもを連れて行った。二人の勇者が笑顔で手を振りながら若葉はこれまでのラグナの言動を思い出していく。

 

自分はこれまでバーテックスと戦うことに捕らわれていた。炎で赤く染まった空。人々の悲鳴。道中での変貌した街並み。そこに転がっていた屍。それが若葉の心に傷を負わせた。

 

タケミカヅチが諏訪を攻撃したと聞いた時もラグナや歌野たちが死んだという恐怖に襲われた。失うことに対する恐怖が傷を更に広げていったのだ。

 

奴らが人々から大事なものを奪おうとするなら、自分から奴らを先に倒せば良い。故に若葉の魂は死者の復讐を求めた。彼女は戦うことであの日に囚われた幼い魂の不安を消していき、傷を癒した。

 

(そうか……だから…ラグナは私を『敵と戦うこと』から遠ざけようとしたのか…)

 

だがそれによって彼女は敵しか見ることが出来なくなっていた。目の前に敵がいれば嫌でもあの時の記憶が蘇る。武器()があれば戦おうとする。少なくとも完全に無謀ではない。

 

そして武器()を手放してからは考えることが多くなった。ある程度思考をまとめる時間が作れた。だから今は分かる。

 

自分が戦わなければならないのは死者の復讐のためではなく、今生きる者たちを守るためだ。自分が今背負っているのは死者たちではなく、生きている者たちの『願望(未来)』だ。

 

(見誤るなにもっと近くを…か。ああ…あの時も言っていたが…また気づかされたよ…私は…守るべきものを見ていなかったのだな…)

 

大切な人々を守るには、その者たちに眼を向けなければならない。今を生きる者たちを、その眼で『観測()』なければならない。

 

(ひなた…ラグナ…私は見つけたよ。戦う理由を。守るべきものを。お前たちのおかげだ…本当にありがとう…)

 

ひなたは若葉が自分で答えを出せると信じたがために、あえて自分を突き放した。ラグナは直接言葉で言わず、色んな機会を作ってそれを気付かせる助けをしてくれた。

 

「…杏。さっきラグナと相談したのは、ここに来れるようにするためだったのか?」

「はい。若葉さんを何とか出来ないかと奔走しているラグナさんや心配しているひなたさんを見ていたら何とかしないとと思って…余計なお世話だったでしょうか?」

「いや。そんなことはない。寧ろここに連れてきてくれてありがとう。おかげで、大切なものを見つけることが出来たよ」

「いえ。少し頼りないかもしれませんが、私も勇者の仲間ですから」

「そんなことはないぞ。杏の援護には何度も助けられてきた。これからも頼りにしているぞ」

「あはは。ありがとうございます」

 

二人が仲良く話し合っていると球子と歌野たちがやってきた。どうやら彼女たちは杏から事前にこの計画を聞いていたようだ。

 

「お、その様子だと心配はいらなかったようだな」

「その割にはさっきまでソワソワしてたじゃない?」

「べ、別にそんなことしてないって!」

「ありがとう球子、歌野。二人にも心配をかけてしまったな」

「だからしてないってば~!!」

「あはは! もう、若葉もそんなダークな表情はノンノン! これからもよろしくね!! にしてもこのボランティア楽しかったわね! なんだか諏訪にいた頃に皆で畑仕事してた頃を思い出すわ!」

「ラグナさんに感謝しないとですね」

 

四人が作業を終わらせた後に元の場所へ戻っていく。帰り道に談笑していると若葉が頭を下げてきた。

 

「皆、今まで迷惑をかけて済まなかった」

『若葉?』

「若葉さん?」

「私は今まで過去に囚われていて……復讐の怒りに駆られて我を忘れたまま一人で戦っていた…でもこれからはそうはしない。今を生きる者たちのため、私は戦う。お前たちと…皆と一緒なら、私は心の弱さに負けることなく、道を外すこともない。だからこれからも…一緒に戦ってはくれないか?」

 

力強く宣言する若葉に対して三人は互いの顔を見合わせると、彼女に笑顔を返した。

 

「当たり前だろ!! これからもタマに任せタマえ!!」

「はい。こちらこそよろしくお願いしますね、若葉さん」

「オフコース!! じゃんじゃん頼ってね、リーダー!!」

「……ありがとう、皆!!」

 

仲間たちとの結束を改めて感じると、若葉たちは元の公園の方へと進んでいった。

 

 

それよりも数分前の街の西側。こちらではラグナたちが作業を進めていた。

 

「この辺りも大分綺麗になったわね」

「まずまずというところかしら」

「つーかテメェはドライブを使ってる分、なんかずりぃ気がするんだけど…」

「こっちの方が余分な体力を使わなくて済むでしょ?」

「…それも言えているわね」

 

先ほどで三人は西側の殆どの作業を終わらせていた。レイチェルのシルフィードで街中のゴミを適当な場所に向かってくるように集め、それをラグナと千景で回収する。これをやり続けている内にあっという間に終わったのであった。

 

「よし、これで作業は全部終わったな。そろそろ時間だろうし、帰ろうぜ」

「ええ。あの娘たちも待っているだろうし」

「……そうね」

 

千景はこの前のことでまだ若葉を信頼できずにいる。理屈ではこれ以上いがみ合っても仕方がないことは理解しているが、心ではどうしても不安があった。

 

作業が終わり、若葉たちよりも早く公園に着くとラグナは大人たちに応対していた。その間千景とレイチェルは二人で雑談していた。

 

「はあ…普段はあまり外に出ないから今日は一段と疲れたわ。高嶋さんと一緒だったら良かったのに…」

「そうかしら?私はそこそこ退屈を紛らわせることが出来たからそれなりに楽しめたわよ」

「それなりって…貴女。よく上から目線だって言われないのかしら?」

「まあ。ありがとう」

「褒めてないわよ…」

「ふふ。知っているわ」

 

千景の皮肉に対してクスクスと笑うレイチェル。彼女からすればその台詞も子どもの戯言なのだろう。

 

「…その内嫌われるわよ、貴女」

「別に構わなくてよ」

「…どうして?」

「万民に好かれる努力なんて、そんなの疲れるだけじゃない」

 

別になんでも無さそうに彼女は言うが、千景からすればその答えは信じられないものだった。

 

「それで貴女が嫌われたら…好きでなくなったら…どうするの?」

「仕方がない、と割り切るわ。お生憎様。私は自分が気に入った人間にかける時間はあっても、貶してくる虫にかける時間と労力は持ってないの。それで自分自身の心を殺してしまったら、『私』は『私』を好くことは出来ないわ」

「……そう」

 

如何にもこの高飛車なお嬢様らしい答えである。考え込む千景に今度はレイチェルが聞いてきた。

 

「貴女は嫌われることが怖いかしら、千景?」

「そ…そんなこと…」

「良いのよ。それはどんな人間にもある恐怖だから」

 

バツの悪そうな顔をする千景にレイチェルが語る。

 

「千景。もし人に好かれたいなら好かれるように行動するのではなく、自分から誰かを好きになる努力をなさい」

「好かれるではなく…好きになる?」

「そう。好きになる側になれば貴女は人の評価に左右されにくくなるでしょう。それでも貴女を貶したり、更に求めようとしてくるならバッサリやめれば良い。それ以上は出来ないと思ったらね」

「それってただの自己満足じゃない…」

「何かを与えることはある意味、自己満足よ。応えてくれるかなんてその人次第だもの」

「それじゃあ…」

「でも自己満足だからやらなければならないというわけではないの。自分からやることに意味があるのよ。貴女だって友奈が自分から貴女に気を掛けてくれたこと、そして『貴女自身』を観測()てくれたことを嬉しく思ったからこそ、彼女のことが好きになったのでしょう?」

 

そう指摘されて千景は言い返すことが出来なかった。

 

「そんな風に自分から誰かを助け、信じてやれば…その人はきっと貴女の思いに応え、郡千景(貴女自身)観測()ていてくれるわ」

「…そうね…ありがとう」

「待たせたな、今話が終わったぞ…ん? どうしたチカゲ? なんか嬉しそうだが、ウサギに何か言われたのか?」

「…ちょっと、ね」

 

その後若葉たちも自分たちと合流し、その日の活動は終わった。どの勇者も満足そうで、晴れ晴れとした様子だった。

 

学校に着いた後、若葉は千景にもこれまでの行動について謝罪した。目の前にいるリーダーはこの前とは何かが変わっていた。千景にはそう感じた。

 

正直まだちょっと不安はある。また彼女が暴走するのではと思うと怖い。それで友奈が傷つくのが怖い。だが、今の彼女の眼からは強い決意が観測()えた。しばしの沈黙が過ぎた後、千景は若葉に自身の答えを示した。

 

「…言葉でなら…何とでも言えるわ」

「う……」

「だから…行動で示しなさい。これからも傍で観測()ていてあげるから……私も仲間だし」

「ありがとう、千景!!」

 

勇者たちの絆が更に強まった数日後、巫女組と友奈はほぼ同じ日に丸亀へ帰還した。これまでにない大侵攻が起こるという知らせと共に。




石紡ぎの章の友奈ズと相方組の絡みが可愛い…かわいい…それときらめきの章って安芸さんは出ますかね?

次回はまあオリジナルカオス回。丸亀城の戦いの前なのに大丈夫かとかあるかもしれないけど思い出そう。あの出来事は恐らく二月下旬くらいだろう。そして二月といえば…ね?

理由はそろそろギャグが書きたいのと若葉ちゃんのみんなとの交流がまんま原作通りになるから書いてもね、てなるから。

それではまた
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