蒼の男は死神である   作:勝石

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どうも勝石です。

本日のアークさんのチャンネルを見たらBBTAGで新キャラが追加していた。こりゃあ新しいぶるらじも来るな。

ただ私は聞きたい。何故テルミより先にスサノオなんだ…いやどっちも好きだし、同一人物だけど。

さて今回はキャンプの回。色々とアニキっぽいラグナだが、偶にはこんなことがあっても良いよね?それではどうぞ


Rebel68.星空の下で

夕方になった頃にラグナたちは少し進んだ先の林の川辺で野宿することに決めた。ここならば水も確保できるし、木々がバーテックスから自分たちを守ってくれる。野営をするなら絶好の場所だ。

 

「今こそ!タマのアウトドアグッズの出番だな!」

 

球子が持ってきた様々なアウトドアグッズのおかげで勇者たちは着々と野営の準備に取り掛かる。テントの設置、火起こし、食事の用意、水場の確認。それぞれが終わって漸く一息つくことが出来た。

 

「まさか球子のアウトドア趣味がここで役に立つとはな」

「おかげであっという間に準備が出来たね!!」

「へへ~ん! そうだろ、そうだろぉ~!」

 

球子は得意げにしていると杏が感心しながら小さく呟いた。

 

「タマっち先輩、本当に先輩みたい…」

「あ~ん~ずぅ~。ちょ~っと話したいことがあるんだけどさ~」

「ふえ~~~!!」

 

悪い笑顔をしながら杏の頭をグリグリする球子。やれやれと思いながらも微笑むラグナは球子に声を掛ける。

 

「おいタマコ。そろそろその辺までにしろ」

「はーい」

「あはは。なんだか今の、本当に兄妹みたいだったね」

「実際ラグナさんはお兄さんらしいですからね」

「アイツらはここまで大人しくはねえけどな」

「何はともかく、夕食の時間だ。それでは皆、いただきます」

『いただきます』

 

手を合わせて作ったうどんを食べ始める一行。それが終わると若葉は四国にいる歌野と通信を交わして今日見たものについて話していた。

 

「しかし聞いていたとはいえ、やはりバーテックスによる被害は深刻だったな…」

「そんなにしんみりし過ぎちゃあダメですよ、若葉ちゃん。あそこではもうラグナさんが何度も通っていますからきっと皆さんはもう助けられた後だったんですよ」

『そうよ、若葉。人間は生きていれば何度逆境立たされても立ち上がれる強さがあるんだもの。私たちがバーテックスたちを倒せばきっと街にも人にも活気が戻ってくるわ』

「…そうだな。ありがとう、二人とも」

 

そうだ。まだ全てが失われたと決まったのではない。若葉が前向きにそう考えていると友奈が突然提案を出してきた。

 

「皆ー! 近くに川もあることだし、気持ちをサッパリするためにも水浴びなんてどうかな?」

「おお! 良いことを言うじゃないか友奈!」

 

球子はその案に大賛成のようだったが、杏は少し踏ん切りがつかない様子だった。

 

「ね、ねえタマっち先輩。本当にするの?」

「なんだよ、あんず? 何か問題でもあるのか?」

「だって女の子だけでなら良いけど…ラグナさんもいるから…その…」

 

どうやら杏は男が近くにいるのに水浴びをするのは流石に抵抗があったようだ。

 

まだ思春期真っ只中の中学生からすれば異性が近くにいる場所で自身の裸体を晒すのは幾ら親しい仲でも嫌だろう。だが友奈は笑いながらそれを否定した。

 

「大丈夫だよ。ラグナはそういうことする人じゃないもん。ね?」

 

そんなことを言いながら真っ直ぐ自分に向かって微笑みかけるのだから否定なんて出来るわけがない。最もそんなことは言われるまでもなくやるつもりは無いが。

 

「当たり前だろ。俺だってそこまで恥知らずじゃねえよ。俺は休んでいるからお前らは先に入ってこい」

 

彼の言葉に甘えて少女たちは川辺へ向かう。楽しそうにしている彼女たちの背中を見届けた後、ラグナは木の下で仮眠を取った。

 

水浴びをしに行った少女たちは楽しそうに戯れる。球子、友奈は水を掛け合っており、残りの者たちはゆっくり水に浸かっていた。見張りには千景が努めていた。

 

初めは球子と友奈だけで遊んでいたが、二人が若葉たちにも水を掛けたことで急遽参戦することになった。皆が楽しく水の掛け合いをする中、千景は一人ぼーっとしながら空を眺めてたままだ。

 

「ぐんちゃん。そろそろ見張り番交代だね」

「ええ…そうね」

「だったら私と交代してくれるかしら、千景。そろそろ上がるわ」

「分かったわ…」

 

そう言って千景がレイチェルと入れ替わる形で水に浸かった。どこか落ち込んだ様子の彼女の隣へ友奈が寄ってきた。

 

「ぐんちゃん。ここって涼しくて良いね」

「高嶋さん……ぁ」

 

気づけば千景の手を水の中で高嶋が優しく握りしめてくれていた。

 

「…大丈夫だよ。私たちなら……きっと取り戻せる。たくさんの人が生きてきたこの世界を。そしていつかこの綺麗な空を怖がる必要のない世界にするんだ」

「…もしそうなったら、きっと……素敵なことね……ごめんなさい。私、ちょっと落ち込みすぎていたかもしれないわ…高嶋さんに心配を掛けてしまうなんて…」

「そんなこと気にしなくて良いよ。ぐんちゃんが笑ってくれているなら私も楽しいから」

 

心の拠り所である少女が傍にいてくれたことで千景は少しだけ笑った。

 

 

「………グナ……ラ…ナ……ラグナ!」

「う……うん…うおわっ!?」

 

目を覚ましたラグナは隣を見ると、そこには神世紀にいるはずの芹佳がいた。よく見れば彼がいたのは小さい頃からよく昼寝していた神社近くの林で、肉体も蒼の魔道書を手に入れる少し前のものだ。芹佳は何故か少し怒っているようだった。

 

「って何だよ、巫女か。驚かすなって」

「もう。何だではないでしょう。今日は畑仕事の手伝いをしてくれるって言ったじゃない。それなのにラグナったら全然来ないから心配になって探しに来たのに…呑気に昼寝なんかしちゃって」

「あ、ヤベっ。そういや今日は修行ねえから畑仕事の手伝いするっつてな」

 

神社の側には畑があり、そこで芹佳は野菜を育てている。今、丸亀城にある歌野のものに比べたら小さいものの、そこそこの労働にはなるのだ。

 

「貴方は普段しっかりしてるんだけど、時々そういうところは抜けてるわよね。約束をすっぽかすなんて、女の子に嫌われちゃうわよ」

「悪かったって。その、うっかりな」

「言い訳は後で手伝ってもらいながらゆっくり聞きます。反省しているなら家にある井戸から水を汲みに行ってもらえないかしら?」

「分かったよ。水ぐらい何杯でも取ってやるからそっちこそ無理して腰を痛めんなよ、ばあさん」

「もう。ばあさんだなんて、私はまだそこまで老いたつもりはないわ。でもそうね…あんまり無理をする前に帰ってきてね、ラグナ」

「へーへー。すぐ戻ってくるから待ってろ」

 

気怠そうにしながらラグナは立ち上がる。そんな彼大きくの顔を芹佳はまじまじと見て、何かに気付いたようだ。

 

「ラグナ、最近髪が伸びてきたわね。偶には私が切ってあげようか?」

「い、良いよ。別に。自分で適当に切っておくって」

「昔は切らせてくれたのにね~」

「今はもう良いんだよ。もう中学生だぜ?」

「またそうやって…ラグナったら。最近はそうやって恥ずかしがって、ちっと私に構わせてくれないし、すっかり生意気なことまで言うようになって…でも…」

 

そう言って芹佳は懐かしそうにしながらラグナの顔を見る。

 

「本当に大きくなったわ。神社に来た頃はまだ背が小さくて声も何だか安芸ちゃんの小さい頃みたいで高かったのに。今は私と背丈はそこまで変わらないし、声もすっかり大人の男の人に近いものになって」

「そりゃあ中学生はある程度大人だろ?」

「そんなことありません。近いだけで中学生はまだ大人が見ていないと危険です。特に貴方の場合、それで自分一人で何とかしようと頑張り過ぎちゃうから猶更危なっかしいわ」

「うぐっ……」

「だからね、ラグナ」

 

少しバツの悪い顔をするラグナに芹佳は言った。

 

「貴方は決して一人ではないから、苦しい時はいつでも私に頼ってね。刃でも、沙耶でも、この前知り合うようになった勇者の娘たちでも良いから。一人で無理して、倒れたりしないでね」

「分かってるって……取り敢えず水汲みだよな。ちょっと行ってくるよ」

「ええ。行ってらっしゃい」

 

 

「………うん…ああ、夢か」

 

ラグナが目を覚ますと自分の周りには水浴びから戻ってきた者たちがいる。どうやら今の光景は夢だったようだ。自分の後頭部からなんだか柔らかいものを感じた。

 

「ん? なんだこれ…てわぁっ!!?」

「まあまあ。ラグナさんでもそんな声を出すことがあるんですね」

「な、なんでテメェの膝に俺の頭が乗ってんだ!!?」

 

さっきまでラグナは木に寄り掛かって寝ていた筈なのだが、気づけばひなたに膝枕されていた。動揺して起き上がる彼に対してひなたは悪戯っぽく笑った。周りも何だかニヤニヤしているようにも見える。

 

「こっちに来たら地面でぐっすり寝てるラグナを見つけちゃって。可哀想だからヒナちゃんに膝枕してもらおうってことになったの!」

「そしたらあまりにも気持ちよさそうにしていたからな。暫く見守ろうということになった」

「貴方でもあんなにも安らかな顔をするのは驚きだったわ」

「うるせえよ! テメェら、あんま年上を揶揄ってんじゃねえ!」

「今のラグナさんはあまり年上には感じませんけどね~」

「寧ろひなたの方がよっぽど年上っぽかったよな~」

「うぐぐ………」

「まんまと言い返されてしまったわね」

 

面白おかしそうに自分を見るレイチェルにとどめの一言を言われてしまい、若干決まりが悪そうにするラグナ。

 

「そういえば寝ていた時に巫女と言っているように聞こえたが、夢の中でひなたか水都にでも会っていたのか? あまりこちらでは呼んでいるところは聞かないが」

 

若葉の発言にラグナはぎょっとする。まさか夢での発言が口から出ていたとは。しかも聞かれているなんて思ってもいなかった。

 

「その反応を見ている限り、違うみたいね」

「でも巫女って殆ど大社で生活してるんだよね? ラグナの知り合いに他の巫女がいたってこと?」

「そ、そうだ! 他の巫女の知り合いだ!」

「ただの知り合いではないようね」

「おいウサギ!! そこで追究してくんじゃねえよ!!」

「ほほ~。それは気に「気になります!!!!」あんず!!?」

 

挙動不審のラグナを見て、杏が興奮し出す。日頃から恋愛小説を読んでいる彼女は今のラグナの態度を見て何かが昂ってきた。

 

「それでラグナさん!! その方とはどのような関係ですか!!? 何処で出会ったんですか!! 普段はどんな風に過ごしていたんですか!! デートとかは!!? 教えてください!!!」

「何でそんなに食いついてくんだ、アンズ!? 別にそんなことはねえから!!」

「流石ラグナさん…ちょっと口悪く否定しながらも隠し切れない思いがツンデレという形でにじみ出て…はああ~~~~♪!!!」

「何でそうなるんだぁ、このスイーツ野郎がーーー!!!」

 

ヒャッハー張りにキャーキャー騒ぐ杏に怒鳴った後、ほとほと困り果ててたラグナは観念して正直に話すことにした。このままあらぬ誤解をされても困る。

 

「……巫女ってのは俺たち兄妹を引き取ってくれた人のことだ! 小っせえ神社で働いているから巫女! それだけだ!」

「へ~。ラグナって神社の近くで暮らしてたんだ」

「まあな。だからあくまで家族だ、しかも母親だ! アンズが邪推してるようなことはねえ!」

「あ~…そうだったんですねぇ」

「あれ? でもその人はお母さんって呼ばないの?」

「……時々呼んでいる」

「あらあら。当時のラグナさんがどんな息子さんだったのかが想像できますね~」

「ああ。あまり素直ではなかっただろうな」

 

ドンピシャなことを言われた以上、もう何も言い返せない。顔を赤くしながらもラグナは立ち上がってひなたたちから離れる。

 

「あー、くそ!!! ちょっと水浴びしてさっぱりしてくる!! 明日早えから寝る奴はもう寝る準備しとけよ!!」

『行ってらっしゃ~~~い♪』

「だからニヤニヤすんじゃねえ!!」

 

少女たちに優しい視線を送られながら、ラグナは先ほど彼女たちがいた水場へ向かった。

 

 

「はあ…何かどっと疲れた…」

 

水浴びを終えたラグナが野営地に戻ると、火を囲んでいる友奈と若葉を見つけた。今の見張りは彼女たちのようだ。

 

「あ、帰ってきたんだね。結構気持ちよかったでしょ?」

「まあな。そういや他の連中はもう寝たのか?」

「ああ。皆あの後も騒いで、そのまま疲れて寝た者も多いぞ」

「ったく…アイツらは…」

 

年頃の少女たちだからそういうことには興味があるのは分かるが、注目されるこっちの身になれ。やれやれと溜息を吐きながらも自身も友奈たちの傍に腰を掛ける。

 

「そうだ、お前ら。チカゲの奴は大丈夫そうか?」

「千景か? 今は寝ているがどうかしたのか?」

「いや。ここに来る途中でユーナやウサギの奴が気に掛けてたみてえだし。さっきはまだ良くなったけど準備してる時もなんか一人だけ元気がなさそうだったしさ」

「うん…やっぱり旅の途中で見たバーテックスの被害を見たことが原因かも…」

 

友奈は心配そうにテントの方へ視線を移しながら言う。今は大分落ち着いてきたが、まだテントの中で時折モゾモゾと物音が聞こえる。千景が中々寝られないのだろう。

 

「……そうだ。ユーナ、ちょっとアイツをこっちに呼んできてくれねえか。出来るなら寝袋と一緒によ。テントの中だと人がいて却って寝られねえかもしれねえ。だったらいっそ外で寝るのも良いだろ」

「それ良いね! だったらちょっと呼んできてみるよ! 私も一緒にここで寝ようと思うんだ!」

「それだったらアイツも喜ぶな」

 

友奈はそう言ってテントの中へ向かった。それに対して若葉はラグナが手に持っているものについて質問した。

 

「ところでラグナ。それは何だ?」

「ああ、こいつか。こいつは傷薬用の水草だ。一応、念のためにな」

「お前はそれから薬を作ることが出来るのか?」

「師匠と時々山籠もりで修行していた頃は街へ買い物とか出来なくてな。だからこうやって野草とか木の実から自分で薬とか作る必要があったんだ」

「それは初めて聞いたな。今から作るのか?」

「ま、見張りの時間何もしねえってのも味気ねえしな」

「ならば見ていても良いか? 私も少し興味がある」

 

若葉の頼みをラグナが承諾すると、そのまま準備にかかった。時々若葉に手伝って貰いながら片腕で葉を磨り潰してペースト状にしていく。

 

作業の途中で友奈が千景を連れてきた。ラグナと若葉に気づいた二人は彼らに声を掛けてきた。

 

「ぐんちゃんを連れてきたよ~」

「……高嶋さんが言うから来ただけよ」

 

真反対の反応を示す千景と友奈の様子にラグナは苦笑する。

 

「見張りの番、まだ来てないはずなんだけど…」

「いや、そうじゃなくてな。偶には外で寝るのもアリじゃねと思ってよ」

「バーテックスの現れる可能性がある場所に寝ろというの…」

「それに関しては問題ねえ。近くに敵が居たら分かる…それに、その様子じゃあやっぱりテントの中は寝られてねえみてえだしな」

 

指摘が的中していたこともあって、千景が顔を背ける。友奈は二人の近くに座り、千景はその隣に腰を掛けた。

 

「あ、これって薬作ってるの?」

「ああ。良く分かったな。その通りだ」

「貴方、こんなことも出来たのね……」

「……やってみるか?」

「…いいの?」

「ああ」

 

ラグナに勧められて千景が作業を始めた。やがて完成したそれをラグナが持ち合わせた瓶に保管した。

 

「良く出来てるじゃないか、千景」

「……そんなことないわ」

「謙遜しすぎだろ。せっかくだし、そいつはテメェにやるよ」

「良かったね、ぐんちゃん!」

 

作業が終わって、全員座り込む。千景の顔に小さな笑顔が広がる。ここへ最初に来たときと比べたらかなり顔色も良くなってきた。少しだけ瞼が落ち始めてきた。

 

「ぐんちゃん、眠そうだね。そろそろ寝る?」

「そうかしら?」

「無理しちゃダメだよ。今日は疲れているみたいだから。大丈夫、眠れるまで私が傍にいるから」

「…ありがとう、高嶋さん」

 

寝袋に入った千景の隣に友奈が座り込む。でもまだ少し緊張しているようだ。見かねたラグナは使わなかった水葉を少し変形させ、それに息を吹き入れた。

 

そこから小さく優しい音色が出てきた。その音に千景は安らぎ、眠気がより一層助長させられた。

 

(あ……なんだか…安心する…)

「わあ~……すっごく綺麗な音」

「それは…草笛か?」

「ああ。昔、巫女に教えられてな」

 

実際はシスターが最初だが、同じように巫女にも教えられている。千景の近くで聞かせてあげたいから貸して欲しいと友奈にせがまれたのでラグナは笛を手渡した。しかし、友奈が吹いても空しい空気音だけが出てきた。

 

「ユーナ、力みすぎだ。もっと優しく吹いてみろ」

「優しく…分かった!じゃあ…こうかな?」

 

力加減を変えると、今度こそ先ほどのラグナと同様、美しい音色が千景の鼓膜に響き渡る。気のせいか、千景の顔が少しだらしなくなり始めた。

 

「はあ……幸せ……………スゥ…スゥ…」

「お休み、ぐんちゃん」

「良い夢を見られるといいな」

 

安心した表情で眠りにつく千景を見て笑う一同。ラグナは千景を見ながら思う。確かに千景はあまり積極的なタイプではないが、別のことを感じた。

 

(なんかこうしてみるとチカゲの奴、今まで見たことねえくらい幸せそうだよな……ユーナが傍にいてくれるのが嬉しいのは分かるけど、そこまでなのか?)

 

ならば何故普段の千景はあんなにも険しい表情を浮かべることが多いのだろう。そんなことを考えていると時間が経っていき、友奈が欠伸をする。

 

「ふぁ~……今日は神戸に大阪を回って、明日は三重かぁ~」

「そうだな。そしてそこに…バーテックスの謎があるかもしれない…」

「その後は北海道か…何が待ってんだろうな…」

「大丈夫だよ、きっと!明日も頑張ろう!」

 

それぞれこれより先の旅路に想いを馳せながら、若葉が前から少し気になっていることを聞いてきた。

 

「そういえば、二人とも。どうして勇者として戦っているんだ?」

 

若葉の質問に二人は悩んだが、先に答えたのは友奈だった。

 

「そうだね~…頑張ってバーテックスと戦ってたら人を助けることが出来るよね?」

『ああ』

「だからもっと頑張って人をたくさん助け続けてたら…少しずつ元の世界を取り戻していけるって思うから、かな」

 

そう話す友奈に二人は感心する。高嶋友奈という人物は心の底から人間が持つ可能性()、そして未来の希望を信じている。だからどんな状況でも強く、前向きでいられるのだろう。

 

「ユーナは強えな。そう思える人間はそんなにはいねえぞ」

「あはは。でもこう思えたのはラグナのおかげでもあるんだよ?」

「俺の?」

 

意外な言葉にラグナは驚く。自分はいつ影響を与えるようなことをしたのだろうか?

 

「まだ四国に来る前のこと、覚えてる?」

「ああ。俺が斑鳩に行ってた頃だよな? あの時は四国まで一緒に行っただけだよな?」

「ラグナはそんなつもりはしかなかったかもしれないけど、まだ小学生だった私からすれば大社と一緒に奈良から四国へ着くまで一緒に戦ってくれたの、すっごく頼もしかったんだよ」

「…目の前で困ってんのに放っておくってのも目覚めが悪ぃだろ…」

「やはりその頃から何だかんだ人を助けていたのだな」

「何だかんだ言うな」

 

恥ずかしそうにするラグナを見て笑顔を浮かべていると、友奈は続けた。

 

「その後もたくさんの人が四国の外から入ってきたんだけど、その人たちが赤コートの人に助けられたって聞いて私、嬉しかったんだ。無事なのもそうだけど、助けられた人が笑っていて…あんな風に誰かを助けようとする人は良いなぁ~って思ったんだ」

「ははは。友奈から見ればラグナは勇者の見本なんだな」

「あはは。そうなっちゃうね」

「そこまでじゃねえだろ…でもそう言われると悪い気しねえや」

 

勇者二人が笑い合うと、次はラグナが語り始めた。

 

「でも俺の戦う理由…か…そうだな…俺は失わないために戦ってる、かな」

「失わないため?」

「…昔の話だが、俺は兄妹を攫われたことがあってよ。あの時のような思いを…もうしたくねえんだ」

「……そうだったんだ」

 

かつての世界のことを思い返しながらラグナは空を見上げ、そこに向かって手を伸ばした。

 

「だから俺は力を手にして、使うと選択し(決め)たんだ。また失わないために…そして守るために…最初の頃は道を間違えてたけどな」

「道を誤った?」

「…以前のテメェと同じように、俺も復讐に走っていたことがあったんだよ。それで色んな奴に迷惑を掛けちまってな」

「だから若葉ちゃんのことに気を掛けていたんだね」

「…まあ、そっちの道に行って欲しくなかったのはあるな」

「…お前でもそんな時期があったんだな」

「俺の場合は実害が出ちまったからな。テメェは手遅れになる前に気付けて良かった」

 

そう言った彼の手を友奈が優しく握って包んだ。

 

「ユーナ?」

「やっぱり…ラグナは優しいね」

「………そうか」

「ねえ、二人とも。私が思う勇者ってどんな人だと思う?」

「そうだな…やっぱ人助けする奴か?」

「やはり皆を守ることの出来る人か?

「そうだね…どっちも当てはまるけど…私の思う勇者っていうのは…『どんなに苦しくても、辛くても、逆境に立ち向かえる…そんな、本当の力を持った人』なんだ…」

「…そんなことを言う奴が他にもいたなんてな」

 

その台詞を聞いてあの世界のシスターやその少女期であるセリカを思い出す。思えば彼女と出会えたから自分が戦うべき本当の理由を見つけることが出来たのだ。

 

「まあヒーロー漫画とかそういうの読んでいると、そういう人ってカッコイイ! と思うのもあるかな。だからこれからも明るく、頑張っていこうよ! 勇者らしく!」

「確かにそうだな。これからも頑張っていこう!」

「取り敢えず、北海道に着くことが第一目標だな」

「うん!」

 

三人が強く意気込む。翌日の朝になってもバーテックスが現れることはなく、彼女たちは伊勢に向かった。




ぐんちゃんは幸せになった方が良い。いやホント。

次回は伊勢に着いた勇者たち!ある意味原作の駅回に当たりますが、こちらではどうなるのか?お楽しみに。それではまた。
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