蒼の男は死神である   作:勝石

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どうも勝石です。

気付いたらURの風先輩が登場しましたね。でももう一回十連しちまって引けねえ…

今回、ラグナたちが伊勢に到着!果たしてここに何があるのか…それではどうぞ。

The wheel of fate is turning…


Rebel69.人類の罪

「着いたな。ここが伊勢だ」

 

ラグナたちは今、三重県の伊勢市入る少し手前まで来ていた。その光景に勇者たちは息を飲んでいた。

 

「な、なんなのよ…これ…」

「……名古屋もそうだったが…この辺りもやっぱ多いな…」

 

街の周囲を星屑や進化体たちが見回っており、ビルには卵のような白い球形が何個も張り付いている。その殻は半透明な分、中身も簡単に視認することが出来た。中にいたのは、これまで嫌というほど見てきた星屑たちだ。

 

人によって作られたものを悍ましい『白』で塗りつぶすように消していき、我が物顔に街を闊歩している様は土地を占領した侵略者のそれだった。最早この地は人の踏み入れることの出来ない魔境と化している。

 

勇者たちからすれば相当なショックだったのだろう。明らかに嫌悪感を示している。これを見て平然としているものはおらず、比較的冷静なのはラグナやレイチェルくらいだろう。

 

「…これが…バーテックスによって奪われた土地の末路だというのか…!!?」

「…そうとも言えねえな。東京は破壊し尽くされていたが、卵まで埋め込まれていることはなかった…もしかしたら何かがあるのかもしれねえ…」

「アイツら…!!」

「待て、タマコ」

「でもさ!!」

「…気持ちは分かるが、今はやめろ」

 

何でと聞き返そうとした球子だったが、自分の肩に置かれているラグナの手が震えていることに気付く。

 

悔しくはあるが、今回の目的はこいつらを倒すことではない。中に侵入して、生還者とこの地にある怪しい場所を探すことが先だ。

 

「……分かった」

「……まず街の中に入るところからだな…何とか潜り込まねえとそもそも何も始まらねえ」

「でもいくら私たちでもこの大群と戦いながら探し回るなんて芸当は難しいと思うわよ」

「だな。でもこのまま入ってもバレるだけだろうし…ん?あれは…」

 

悩んでいるとラグナの視界に何かが映りこんできた。急いでその方へ駆けていく彼を見て少女たちが不審に思うと、それを何枚か抱えながら帰ってきた。

 

彼が持ってきたものはクラフト色の板だった。よく見たら板には折れ目があり、横には切れ目がない。つまり横一周につながっているということだ。

 

それを見て能面のような顔になった少女たちを放っておいて、ラグナはそれを組み立てて箱にする。横の四つの面にそれぞれ覗き穴を開けるとそれは完成した。漸く口を開けたレイチェルが呆れたように彼へ質問した。

 

「…………ラグナ。それは何かしら?」

「決まってんだろ? ダンボール箱だ」

「またかよ!?」

 

もう何度目なのかが分からないダンボールの登場に球子が突っ込んだ。しかしいつもと違って、今回のラグナはムキにはならない。

 

「落ち着けよ。俺は別にふざけてこいつを持ってきたわけじゃねえ」

「いや…真顔でそれを持ってこられても困りますけど…まさかですけどそれで中に入るんですか?」

「悪ぃがその通りだ。以前の名古屋でもこいつを被ったらどうにか入れたからな。こいつを被った状態なら連中も気づかねえみてえだ」

「バーテックスって目が節穴なのか!? 絶対バレるに決まってるだろ!」

「それにその姿で攻撃されたら逃げることも出来ませんよ! そうなったらどうするつもりですか!?」

「そんときゃあまた正面からぶっ飛ばすだけだ。まあでも心配すんなって。最初は俺だけで行くし、そう簡単にゃあバレねえ。それに戦わなくて済むならそれに越したことはねえよ。だから今は俺を信じてくれ」

 

戸惑いつつも強い意志を示す彼に他の勇者は改めて言った。

 

「…分かった。でも様子がおかしくなったらすぐに戦闘に入るよ。私たちも行くから」

「…だったらそうならねえように立ち回らねえとな。なーに。勇者部五箇条一つ、成せば大抵何とかなる。どうにかなるさ」

「勇者部五箇条?」

「後で話すさ。じゃ、いってくらぁ」

 

息込みながらラグナがダンボールを被ると、街の方へ向かった。勇者たちはハラハラしながらその様子を見る。上手く星屑たちの視線を躱しながら彼は少しずつ奥へ進んでいく。

 

「本当に大丈夫そうですね…」

「なんか納得出来ないぞ…」

「あ! でもあれ!」

 

友奈が指さした方向には星屑がいて、ラグナからは見えない場所にいた。これで見つかってしまったら流石に誤魔化せないだろう。

 

すると星屑に遭遇する直前にラグナが動きを止める。現れた星屑はダンボールに対して反応した。

 

「どうしよう!! あれ絶対見つかっちゃってるよ!!」

「待つんだ、友奈! 今行ったら確実にお前まで攻撃されるぞ!」

「取り敢えず、様子を見てみましょう」

 

彼女たちがダンボールを心配そうに見守っていると、バーテックスは数秒見た後、ダンボールから興味が失せたのか、去って行った。再び視線が外れると、再びラグナは街の中へ向かっていった。

 

「本当に大丈夫だったわね…」

「すげー…ダンボール先輩、すげー…」

「はあ~…本当に良かった~…」

「…動いているところを直接見つからなければ問題ないようだな…私は行くが、皆はどうする?」

「私も行くよ!」

「私も…」

「タマも行くぞ!」

「よし…取り敢えず、転移が出来るレイチェルはここでひなたと杏と待機だ。二人を頼むぞ」

「ええ。気を付けなさい」

「声が使えない以上、連絡は端末を使ってください。そうすれば私たちからも何か助けられるかもしれません」

「皆さん、ご武運を」

 

ラグナに続く形で若葉、友奈、千景、球子までもがダンボールを被って街に侵入した。驚くことにバーテックスが間近に来ているところまで来ることがあっても、バレる様子がなかった。

 

細心の注意を払いながら街を探索していく。狭い場所に入るときは周りを一度見た後にダンボールを畳んでから入って行き、出るときはまた組み立ててから素早く入った。

 

そんなこんなして順当にダンボールと親和していく勇者たちだったが、残念ながら生存者を見つけることが出来なかった。やがて、ラグナの方から連絡が来た。とびっきり怪しい場所を見つけたから街にいる奴は安全な場所で一度隠れろとのことだ。

 

 

屋内に入って安全な場所を見つけたラグナはレイチェルに連絡すると、彼女たちは転移でそこへ飛んできた。若葉たちもレイチェルに迎えてもらったことで無事に全員が集合した。

 

「ふう……しかし、あのダンボールを被ったまま行動するのは普段の戦闘とは違う意味で大変だったな」

「意外と温かったけどね」

「まさかダンボールがこれだけ有能なものだったなんて…」

「しかし伊勢にもこんな場所があったなんて知りませんでした」

「……それはそうだろ。何せここは地上じゃねえからな」

「え!?こんな地下空間、何処にあったんですか!?」

「……『神社の跡地』の後ろの山林だ」

 

バーテックスは基本的に人造物に攻撃する習慣があり、それ故にビルや車は攻撃の対象に入る。とにかく人間が作ったものであれば容赦なく攻撃されるのだ。

 

「でも何でダンボールは攻撃されなかったのかな?」

「ゴミだと思われたんでしょうね…潰れてないものも結構転がってたから」

「バーテックスにまで侮られていたわね」

「良いんだよ。おかげで忍び込めたわけだしよ」

 

しかしラグナが見たその神社は殆ど破壊されていたにも関わらず、その周辺と後ろにある林では星屑が大量に周回していた。何とか探索している内にへし折られた木々の下から入口らしい扉を見つけ、そこから下ると地下空間が広がっていた。

 

「しかし珍しいですね…神社だけならまだしも…自然物である林まで攻撃されているなんて」

「こいつが原因だろうな。にしても…こいつも中々酷えな…滅茶苦茶じゃねえか…」

「ここにもバーテックスがいるのかな…」

「かもな…取り敢えず奥に進もうぜ」

 

懐中電灯をつけて空間を探索してみる。中は破壊し尽くされ、物もそこら中に散乱していた。コンピュータのディスプレイや割れた細長いカプセル、壊れた装置が多くある。

 

「どこかの研究所だったのでしょうか…?」

「そのようだな…しかし、こんな山奥で一体何の研究を…」

 

若葉と同じ疑問を抱えたまま、勇者たちは地下の奥深くへ進んでいく。どの機材を見ても何の用途で使われていたのかは想像もつかない。やがてかなり地下の奥深くまで一行が歩を進めていくと、ある変化に気付いた。

 

「あれ…ここ、弱いけど…明かりが付いてるみたいだよ?」

「なんだと!?」

 

本州では発電所が破壊されているため、当然ながら電気が来るはずがない。もしかしたら予備電源があったのかもしれないが、バーテックスが侵入してきたならその電源も壊されているはずだ。

 

その階層へ少し進みだすと、ラグナの腕が唐突に疼きだした。

 

「ぐっ!!」

「ラグナさん! どうされましたか!?」

「心配すんな…それよりテメェら、聞け」

 

何時にも増して真剣な表情を浮かべるラグナに勇者たちも気を引き締める。

 

「どうやら…ここが『当たり』だったみてえだ…テメェらはここで一回待ってろ」

「何か危険なことがあるの?」

「…危険なんじゃねえ。ただ、見ていて気分の良いモンじゃねえぞ」

 

妙に凄みる彼の声に少女たちは少し考え込むが

 

「……それでも行くよ。ここまで来たんだったら何があったのか、知っておきたいから」

「私も同意見だ。他の皆は?」

 

他の者たちもリーダーの言葉に同意すると、それを承諾したラグナは奥へ進み、やがて一つの扉を開けた。

 

その先に会ったのはそれまでの空間よりも長い廊下のような空間だった。様々なボタンや発光するランプが壁についている。通路の横の窓からも眩い光が漏れており、そこへ勇者たちも急ぐ。

 

そこにあったのは黄金色を放つ穴と、それに向かって突き刺さろうとしている剣のようなモニュメントだった。穴の周りには何枚もの翼のようなものがあり、どうやらこれで閉まるように出来ているらしい。

 

周囲にも歯車のような足場があり、窓のある部屋があるのを見えるので、あそこが管制室かもしれない。

 

これまでバーテックスという未知の存在と戦ってきた勇者たちだったが、これは流石に予想外だった。設備の作りからにしてこれらは全て人工物だ。それなのに目の前の穴からは得体のしれないものを感じる。

 

「なんですか…これは…」

 

思わず声を漏らすひなたに対してラグナは静かに答えた。

 

「…………『(かま)』だ。しかもまだ生きてる奴がこんな場所にあるなんてな…」

「窯?」

「ああ…『境界(きょうかい)』へと通じる穴。『シェオルの門』とも呼ばれてるっけ…」

「おい! 意味が分かんないぞ! 何だよ、そのきょーかいとかシェオルのもんってのは!?」

「…全ての人々の記憶が還る場所。神々の座。そして…あらゆるものと繋がる根源よ」

 

レイチェルが苦々し気にそう告げた。彼女とラグナの顔が徐々に険しくなっていく。

 

「ここも散策するぞ。多分何かあるとしたら…一番確実なのはここだ」

「分かったわ。とにかく探してみましょう、高嶋さん……高嶋さん?」

 

千景が友奈の方を見ると、窯のある方をじっと見つめている友奈がそこにいた。

 

「高嶋さん!」

「え? あ! ごめん、ぐんちゃん! どうしたの?」

「ううん。一緒に見て回ろうって誘っても高嶋さんがあの穴をずっと見てたから…その…」

 

怖くなった、なんてとても言えない。だが、あの時の友奈は穴に吸い込まれそうに千景は見えたのだ。

 

「そうだったんだね…でも大丈夫だよ! あの光、綺麗だなぁって思ってたらぼーっとしちゃった」

「そ、そう? だったら良いんだけど…」

 

友奈が窯から離れると二人は他の者たちと同様、周辺の散策を始めた。人間の影はどこにも見当たらず、物もやはり散乱している。だが、光がある分確かめることが出来る。そんな中で若葉が床に落ちてある書類の束を拾い上げた。

 

「これを読んでみよう。何かが分かるかもしれない」

「どれだ、どれだ? タマにも見せタマえよ。えーっと…」

 

そこに記されたのは何かの研究資料とグラフだったが、内容が英語で書かれており、球子が読むには些か難しすぎたようだ。

 

「…あんず、パス」

「あはは。じゃあ見てみるね………」

 

球子に資料を手渡された杏が目を通していく。

 

「杏でも厳しそうか?」

「…いえ。少しだけ分かりました。どうやらこの窯と呼ばれる穴に物を入れて何かを探そうとしていたみたいなんです」

「何かって何だよ、あんず」

「ちょっと待って……これかな? 接触に…素体って書いてあるけど、見ている限り色んなものをあの穴に入れてたみたい…え!?」

 

杏は資料を読み進めていく途中で小さな悲鳴をあげた。何事か他の勇者たちも集まってきた。

 

「どうしたの、アンちゃん!?」

「…大丈夫です。ちょっと動揺はしましたが」

「何が書かれていたんですか、杏さん」

「……ここの人たちは色んな実験を繰り返していく中で、最も反応しやすいものを見つけたんです…それが…」

「人の形をしたもの…なんだな」

 

ラグナの言葉に杏は頷き、それに勇者たちは寒気を感じる。ここに来る途中の設備の数々を勇者たちは思い出していく。恐らくどれも素体を作り出すためのものだったのだろう。その事実に友奈も動揺した。

 

「そんな…人体実験だなんて…どうしてそんなこと…」

「それはこれに記されているかもしれないわ」

 

声の方向へ少女たちが振り向くとそこには薄汚れた日記帳を手に取ったレイチェルがいた。全員がそこへ向かい、日記の中身を確認した。こちらの中身は日本語だったみたいだ。

 

『201▲年〇月☓日。第■回接触実験。結果:失敗。様々な物を使用しているがどれもマスターユニットとの接触に適わない。せめてスサノオユニットがあればまだ糸口があったのかもしれないが、奇妙な老人に引き取られてしまった以上、自力で試行錯誤するしかあるまい』

「マスターユニットに…スサノオユニット?」

「どれも日本の三貴神と同じ名前のようですね」

「続きを読もうよ」

『201♠年♦月♥日。第♧回接触実験。結果:失敗。最近では世界各地で大型の地震や台風が頻繁に起こるようになったようだ。だがそれも問題ない。マスターユニットの力、神の力を手にすれば、人類は絶対の安寧が約束された完全世界を手に入れることが出来るのだから」

 

神の力を手に入れる。まるで道具か何かを指しているような書き方に勇者たちは戦慄する。不便を感じることはあるものの、今では神樹のおかげで日常生活を送ることが出来ている彼女たちからすればこの文言はかなりショッキングな物だ。

 

「神の力を…手に入れる?彼らは…本気でそんなことを…?」

「…そういうことよ」

 

この内容は特に先日神託を授かるため、実際に神樹と相対したひなたにとって衝撃だった。神樹の前に出た時、彼女は平伏せずにはいられなかった。何者であっても神前で赦し無く頭を上げることは赦されない。そう感じたのだからこそこの者たちの言うことを理解できなかった。いやしたくなかったのだ。

 

何せ彼らの言っていることは言うなれば自分たちが人々を守ってくれている神樹を一方的に使役しているように感じたのだから。

 

『2015年7月30日。第#回接触実験。結果:失敗。素体は失われたが、ついにマスターユニットが僅かな反応を示すようになった。カギは人の形。しかし人間が境界に入れば、即座に肉体は崩壊するだろう。だが機械の躰に反応しない以上、生体での素体を使わねばならない。それらの障害さえ乗り越えれば我々はマスターユニットと接触することが出来る。そうすれば人類は間違いなく新たな世界へと踏み出すための一歩を進められるだろう。あと少しだ』

 

日記はそれで終了していた。読み終えた後の勇者たちの表情は暗いものばかりだった。日にちでここがすぐに攻撃されたことを察したのだろう。そして確信した。バーテックスが攻撃してきた原因は他でもなく、人間自身のせいであると。

 

「…こいつを見ている限り、人型の素体を使った接触実験を行う前に攻撃されて…そのまま壊滅したって感じだな」

「…かつての自分を見ている気分だな。大義は立派でも…それで踏み越えてはならない一線を越えてしまったら救うべきものたちまで傷つけてしまうのに…」

「こんなの…生贄を作ろうとしてるようなものだよ…」

 

若葉と杏の悲痛な言葉に友奈と球子が同意するように頷く。

 

「こんなもの…表沙汰になれば世界中が大騒ぎになるはずよ。それなのに公表しなかったのは…」

「神の力を自分たちの手でいち早く手に入れるため…でしょうね」

 

嫌な静寂が空気を支配する。それを最初に破ったのは友奈だった。

 

「ラグナ…レイチェルちゃん…二人はこの日記にあるユニットについて知ってるの?」

「…ああ。今説明する」

「うん。お願い」

「……マスターユニットは世界を作り出し、その世界を構成する『魔素(まそ)』とそれによって引き起こされるあらゆる事象を観測する、文字通りの『神』だ。そしてアイツは境界の奥深く、『天ノ岩戸(ネメシス・ホライゾン)』の先にある。そこに辿り着けるのは…蒼の継承者だけなんだ」

「じゃあ…ここの研究者たちがやってきたことは…」

「…無意味だったわけじゃねえよ…境界に入れるのは特殊な『人間』である『次元境界接触用素体』くらいだが、そいつらにも継承者になれる可能性があった……例外はいるがな…」

 

未来にいる結城の方の友奈を思い出しながらラグナは言った。彼女も継承者だが、素体ではない。今は時々未来の方のレイチェルが様子を見てやっているから私生活においては問題ないだろう。

 

因みに素体たちは確かに造られた存在だが、少なくともラグナは彼女たちを『人形』とは呼びたくはなかった。あの世界にいるノエルやニュー、ラムダ、そして『第一素体(ジ・オリジン)』を覚えている彼からすれば素体たちは紛れもない人間だ。

 

「じゃあ…こいつらのせいで…皆苦しんでたのか!?」

「…そういうことになるな」

 

ラグナの言葉に球子は思わず拳で机を叩く。

 

「それでは、スサノオの方は何なのでしょうか?」

「…アマテラスには自身を護る存在がいるわ。一つは破壊を司るスサノオユニット、そしてもう一つは…護りを司るツクヨミユニットよ」

「その内の一つが発見されたから…人間は境界へ手を伸ばそうとした…」

「そもそも最初から手なんて出さずにユニットを放棄すれば最初から何も起こらなかったはずよ…」

 

千景の指摘に全員が同意した。しかし過ぎてしまったことは仕方がない。現に計画が頓挫した今でもバーテックスは際限なく四国を襲いに来ている。罪のない者たちのためにも自分たちは負けられない。

 

「しかしスサノオユニットはお父様が引き取った後に隠したそうよ。だからもうアレを人類は手にすることはないわ」

「ではツクヨミユニットも?」

 

若葉の発言にレイチェルは少し黙り込んでしまったが、ラグナがすぐに答えた。

 

「ああ。飛びっきりに安全な場所にあるぜ」

「そうか…ならば良いのだが…」

 

そう言って若葉は周りを見渡す。電気が動いていたので希望があると思ったが、どうやらここにはもう人はいないようだ。

 

「……地上へ戻ろう。こんなところにいても仕方がない」

「研究資料はどうするの、乃木さん?」

「置いて行く。こんなものを四国へ持って帰ってしまったら良からぬことに使われるかもしれない」

 

研究の内容を他の人間には伝えないと決めた若葉たちはここから転移で去るためにレイチェルの周りに集まった。

 

「ではそろそろ…どうした、二人とも?」

 

若葉がラグナとレイチェルの方を見ると、二人は空間の隅にいる影を睨みつけていた。

 

「……そこにいる覗き魔。良い加減にしてくれないかしら?此方へ助けを求めて来ないから放置していたけれど、この期に及んでまだ観測()られていると不愉快だわ」

「出て来いよ。何だったら力づくでそこから引きずり出してやろうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう。よもや見破られていたとはな」

 

彼らに返ってきたのは低い男の声だった。影から声の主が姿を現すと、二人がより警戒を強める。

 

男は紫色のマントに身を包み、仮面をつけた奇術師のようだった。こちらを見る目付きは自分たちの内側すらも見つめられているようにも感じる。

 

「え~っと…ここの研究員ですか?そうでしたら早くこちらに…どうしたの、二人とも?」

 

怪しさは感じていたものの、生存者を保護しようと友奈が男に話しかけるが、彼女を含める勇者たちを守るようにラグナとレイチェルが前に出る。

 

「……ふふふ…面白い…面白いぞ…こうして『再び』相まみえるとはな…ラグナ=ザ=ブラッドエッジ…いや、『蒼の男』」

「なっ!!?」

 

その呼ばれ方を聞いてラグナの警戒心が一気に強くなる。そんな話し方と眼をする者で自分を知る人間はラグナの知る限り、世界を越えようと一人しかいない。

 

「テメェ……何でここにいやがる!!」

「知り合いなの?」

「…ああ」

「しかし、これほど上質な魂が多数存在するとは…実に興味部深い。『この世界』の詳細を知るために『この時代』へ足を運んだが、思わぬ収穫だ」

 

苛立たし気にしているラグナに対して男はレイチェルや勇者たちの方を見ると益々顔の笑みが広がっていく。それを見て勇者たちの背筋に冷たいものが走る。その仮面の紳士に向かってラグナが叫んだ。

 

「二度と会いたくなかったぜ、『レリウス=クローバー』!!!」

「さあ、観測()せてもらうぞ。貴様らの持つ力を」




貴方まで来るんですか…

というわけで今回最後に登場したゲストキャラはブレイブルーのおける事件のほぼ全ての元凶その2。狂気の人形師、レリウス=クローバー!なおいつも仮面をつけてクククと邪悪に笑っているので何故か変態仮面と呼ばれることも…

次回、レリウスの魔の手が迫る!それではまた。
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