蒼の男は死神である   作:勝石

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どうも勝石です。

シリアス展開を考えているとフルギャグを書きたくなる…だったら敢えてフルギャグを書くぞ!当然ながらカオス値マックスで行きますぜ!

というわけで今回は久しぶりに神世紀組の出番。今回の話では意外なゲストが登場しますが、それによって神世紀と西暦が激突?果たして真相や如何に。

番外編なのに一万字越えですが、どうぞ


花結いの確率事象7.三人御先

「…えーと。アンタたち、もう一回名前を言ってくれないかしら?」

「ラグナだけどネーチャン。アンタ誰だよ?」

「なんかこうして会うのは久しぶりな気がすんな…それと、俺もラグナだ」

「二人ともラグナじゃないのよ!!!?」

 

現在、勇者部は混沌の渦に巻き込まれていた。今日は何者かが樹海に迷い込んだようだったので、彼女たちは捜索に出たのだ。

 

するとそこで自分たちが知っているものよりも小さい少年と大きい青年が互いに言い合っている場面に出くわした。細かいところは違うが、あまりにも似通ったそれを見て、讃州中学勇者部は混乱していた。

 

しかも二人を見て小学生組、元小学生組、そして西暦組が思わず名前を呼んでしまっていたから、ますます大混乱になった。そのため、一度二人に勇者部の部室へ来てもらって、そこで話し合っていたのだ。

 

「これってやっぱり、東郷さんたちと同じで過去と未来のラグナ君が来たってことかな?」

「…まさかこんな形で会うとはな」

「そういえばこんな時期もあったね~。なんだか懐かしいんよ~」

「そうね。思えば私たちが初めて綾月君に会ったのは小学生の時だったもの」

「そうだな~。あの頃から何もかもが始まったんだっけ」

 

ほのぼのとしながら中学生園子と東郷、銀は語った。小学生時代の自分たちはというと自分たちが良く知る頃のラグナと仲良く話していた。

 

「何だか久しぶりだな、ラグナ!勇者部に来てどうなんだ?」

「結構いいところだなって思ったよ。まあ、驚いたところもあったけどよ」

「何かあったの、綾月君?」

「いや…未来のスミたちとかジンたちが滅茶苦茶大人っぽくなってんのを見てちょっと驚いたぜ」

「それは未来の私たちも同じだったよ~。私たち自身もそうだったけど大人になったラッくんやジンジンを見たときは雰囲気が男の人らしくなっていて驚いたな~」

「そうだな…でもサヤが健康になって、学校にも通って、しかも友達に囲まれているのを見れて良かったよ」

「刃君はちょっと……変貌し過ぎだけどね…」

 

それに関してはわすゆ組は全員頷いた。その刃だが、今はこの部屋にはいない。

 

「そういえば東郷先輩。刃兄様はどちらにいらっしゃるのでしょう?こういう時でしたら一番ここにいそうですが…」

「刃君なら綾月君たちが部屋に来てから高速で後方転回しながら部屋を去ったわ。なんだか奇声をあげていたけど喜んでいるみたいだし大丈夫でしょう」

「兄さんパラダイスだぁぁぁぁぁぃぃぃイヤッフーーーーーーーー!!!!!」

「ほら」

「全く…刃兄様ったら」

 

またしても兄さんスイッチが入ってしまった刃に苦笑いしながらも椿姫は楽しそうにしている刃を見て嬉しそうにしていた。実際自分も同じ立場だったら間違いなく舞い上がる。小さい刃と大きい刃なんてきっと楽園のようなものだろう。

 

「それにしてもラグナ…お前本当にデカくなったな!アタシにもその身長を分けてくれ!!」

「身長なんてどう渡すんだよ、ギン。まあ、そっちも元気そうにやっていて何よりだ」

「皆のおかげだって!そっちも大事なさそうで良かったよ」

「ありがとな」

 

大きくなったラグナは中学生の銀と談話した後、仲間たちに溢れた部屋を見渡した。そこへ西暦組に眼が入った。

 

「おうテメェら。そっちはこっちで元気にやってるか?」

「うん!神世紀の皆は良い娘たちばっかりだからすごく楽しいよ!」

「そいつは良かった。正直ジンとかは変に突っかかってきてねえか心配だったが、どうやらその様子じゃあ心配なさそうだな」

「少し気難しいところはあるが、仲間のことを大切にしていることが一緒に戦っている内に良く分かったからな。今では時々共に訓練をしている」

「そりゃあ腕が鳴るってもんだな。アイツの剣も中々だっただろ?」

「ああ。いい腕をしている。あれほど頼もしいなら神世紀は大丈夫だろう」

 

若葉から刃の近況を聞いていると、噂をすれば何とやら。件の如月刃が部屋の中へ戻ってきた。

 

「兄さぁん!!!ああ、兄さぁん!!!まさか僕のために繁殖してこっちに来るなんて夢みたいだよ!!!」

「繁殖ってなんだよ…ったく、テメェは相変わらずだな」

「一体何があったら未来のジンはあっちと同じことになるんだ…」

「そんな顔しないで、小さい兄さん!!!僕はただ兄さんが殺したいほど好きなだけなんだ!!!」

「あの頃と別の意味でダメな感じになってんだけど…」

「ああぁぁぁぁでもその顔も最ッ高にイイよぉぉぉぉ、兄さぁん!!!!」

「ブラコンだとは知っていたけど…ここまで来るともう変態の領域ね…」

 

小学生ラグナと千景が刃にドン引きしていると、結城友奈が三人のラグナの間に入ってきた。

 

「でもこれでどんな敵が来ても問題ないね!!」

「おい、ユウナとかいうアンタ。そいつはどういうことだよ」

「だって両手にラグナ君だよ!しかももう一人までいるんだよ!これなら絶対負けることないよ!」

「何を言っている、結城友奈!!兄さんハーレムは僕のものだ!!!」

「は、はーれむですって!?ダメよ、友奈ちゃん!!不特定多数の殿方と逢引だなんてはしたないわ!!」

「テメェのモンじゃねえし、ユウナはそこまでの意味で言ってねえし!!」

 

訳の分からないことを二人に中学生ラグナが突っ込んでいるとそこへ更に妹まで混ざりこんできた。

 

「刃兄さま、違います!!兄さまたちを囲うのは私の方です!!」

「サヤぁぁぁぁ!!?テメェまで何言ってんだぁぁぁ!!?」

「先ほど神樹様からお二人は明朝に元の世界へ送還されると聞きましたので!!二度とないかもしれない機会を刃兄さまに取られてたまるものですか!!あの二年間で甘えられなかった分を今日目一杯してもらうんです!!」

「サヤ…しばらく見ねえうちに逞しくなったな…」

「いや、今感心してる場合じゃねえだろ、オッサン!!!」

「誰がオッサンだ!!テメェから見れば四年くらいしか違わねえんだぞ!!」

 

挙句の果てに自分同士で喧嘩を始めるラグナ。するとそれまで傍観に徹していたレイチェルが別のことを口走った。

 

「ふーん…でもラグナ。実のところ、貴方は一体誰に一番強く思われているのかしら?」

「ウサギぃぃぃ!!?テメェなんてことを言ってくれてんだ!!!」

「おい、レイチェル=アルカード!!それは僕よりも兄さんと強い絆で結ばれている奴がいるということか!!!」

「そうよ、えいゆうさん。これだけ多くの時代の勇者たち。その多くがラグナと接点があるもの。貴方に勝る可能性のある者が一人はいるのではなくて?」

「ほう……言ってくれるではないか…ならば!沙耶!!!」

「了解しました!!!」

 

さっきまでいがみ合っていた筈の兄妹だったが、こういう時の息はぴったりである。沙耶はすぐに何やら手を組んで祈りだしていると、レイチェルがラグナズに悪い笑顔を見せた。

 

「さて、三人とも。覚悟することね」

『何の覚悟だよ?』

「皆の想いを一身に受ける覚悟、よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラぁぁぁぁグナ自慢コントゥぇぇぇぇスッ!!!!実況はこの私、ミノ・ワーギンとぉぉぉ!!!」

「中学ミノ・ワーギンドゥエぇぇぇぇぇすぅぅ!!」

 

どうしてか『綺麗な顔をしたアラクネ』と黒いハクメンである『テルメン』の着ぐるみを着た小中学生の銀たちがテーブルに座りながら何やら紙を筒状に丸めて、マイクのように持ちながら盛り上がっていた。

 

「今回のコンテストではぁぁぁ沙耶さんが用意してくれた精霊に思念を全員で送ってもらいまぁぁぁす!!!その時に考えている人物への想いが一定以上になると、精霊がその姿を当時のその人に変化しまぁぁぁす!!!」

「その時に最も綾月洛奈、ないしラグナ=ザ=ブラッドエッジに対して強い想いを示したものの勝ちとなりまぁぁぁぁぁす!!!」

「今回の精霊は大量の思念を受け取りますからね。姿を変えるのに唸る必要はありません」

「はい!!精霊の解説の方、ありがとうございます、沙耶さん!!!審査員の方は防人組の隊長、楠ぃぃぃぃ芽吹ぃぃぃぃ!!!」

「まさかのイベントに巻き込まれたけど、請け負った以上は全力で取り組むわ」

「そんな仕事人みたいなこと言わなくても良いんだよ、メブーーー!!?」

「宵闇の令嬢にしてコンテストの主催者、レイチェルぅぅぅ=アルカードぅぅぅ!!!」

「精々滑稽な姿を見せて私を愉しませて頂戴、ラグナ」

「完全におちょくり目的で来てますな、こりゃあ…」

「そして衛士最高司令官にして黒騎士ぃ、睦月ぃぃぃ神楽でぇぇぇす!!!」

「おお、こいつは面白えことになってんじゃねえか!!ヒューヒュー!!」

「睦月のことだから絶対参加すると思った」

 

完全にお祭り騒ぎと化したこの状況。最早ラグナたちに撤退という選択肢はなかった。

 

「おい、もうどうしようもねえぞ、これ…」

「ウサギの野郎…何を企んでやがるんだ…」

「放っておけよ。今に始まったことじゃねえ。要は俺たちが変に反応しなけりゃあアイツも飽きて早々に切り上げるだろうさ」

「そうだな。下手に反応したらそれこそ野郎の思うつぼだ」

「じゃあその方向で行こうぜ。ジジー共、しくじんじゃねえぞ」

『ジジー言うな』

 

流石同一人物。この状況で簡単に団結した。暫くすると身軽な巫女服に着替えて帝モードになった沙耶が二体の精霊を引き連れながら帰ってきた。

 

「それでは、両陣営。準備はよろしいですか?」

「当然だ!!いくz」

「刃兄さまは何が出てくるのかが分かりやす過ぎるので初めは解説に回ってください」

「おい、ふざけるな!!」

「なんか面白そうだし、皆行っくよ~!!」

「皆さん、これは簡単には負けられませんよ!!」

『おお~~!!!』

 

気合十分の少女たちが念じると、精霊が光い出した。何が出てくるのかがちょっと怖いが、刃に比べればマシだろうとラグナたちが考えていると精霊がいた位置に飛び上がりながら驚いた顔をしたラグナがいた。

 

「ブッ!!?」

「おーーーーっと!!小ラグナ、堪らず噴いたぁぁぁ!!」

「…そういやこんなこともあったな」

「これは…小学生の頃の綾月君ね…ここにいる綾月君たちよりも若いみたいだけど誰の思念かしら?」

「あ、それ私のだ~。嬉しいな~」

 

最初に出てきたのはどうやら小学生の頃の園子のものだった。一番若いラグナは思わず噴き出したが、後の二人は懐かしそうに見ていた。

 

「これは僕たちが初めて園子に会った頃の兄さんだな」

「最初に見たときはちょっと怖そうな人かと思ったけど、話してみるとすっごく面白い人でね~。あれから仲良くなったんだよね~」

「そうだね~そのっち~。ジンジンとサッちゃんとも友達になったのはこの頃だったから一層思い出に残ってるよ~」

 

中学生園子も懐かしそうに語っていると風が中学生ラグナに肘を当ててきた。

 

「へ~。ラグナにもそんな幼い頃の思い出があったのね~」

「おい、フウ。何でニヤニヤしてんだ?」

「まあまあ、お気をなさらずに」

「気にするわ!!」

「幼馴染同士だなんて…キャー!!ラグナさんたち、かわいいです!!」

「おいアンズ!?テメェまで何を言い出してんだ!?」

「おい……何でかは知らねえが、このサヤっぽいネーチャンの視線に寒気を感じてきたぜ…」

「じゃあ次は誰なんだろう?」

 

高嶋友奈がそう聞いてくると、もう一体の精霊が彼を映し出し始めた。そこからは寝転がりながらも狼狽えているラグナがそこにいた。

 

「ああ…こいつはヒナタ、テメェか」

「はい。膝枕をしていたら目を覚まして慌てふためいているラグナさんですよ」

「こっちでもされたけど、未来でも同じことをやられたのかよ俺…」

「良いじゃねえか、ラグナ!美少女に膝枕してもらえるなんて中々ねえぞ?」

「神楽さんの場合、もう少し自重すればやってもらえると思うんだけどね〜」

「じゃあそうしたら雪花ちゃん、やってくれんのかい?」

「にゃはは、お断りだよ」

「ですよねー」

「ひなたさん…何と羨ましいことを…」

 

帝モードなのに沙耶から素の声が出てしまった。いつも彼女は兄に甘えているが、兄が誰かに甘えているところを見たことがない。いつもは彼に甘えている沙耶だが、自分に兄が甘えてくる姿をちょっと想像したら心の中で大はしゃぎしてしまった。

 

「このときは遠征に出ていたのですが、長旅に疲れているだろうと思って膝枕をしてあげたんですよ」

「ひなたの膝枕は快適そのものだからな」

「ほう、ご先祖様。その辺も詳しく」

「しまった!!今回はラグナがメインだから自分に火花が飛んでこないと思ったのに!!」

 

子孫二人が目を輝かせながらメモを手に迫ってくるのを見て、若葉は逃亡した。当然園子達もその後を追跡した。一応このことを知っていたので大人ラグナは気にしている様子を見せなかったが、ひなたは言葉を続けた。

 

「でもあまりにも気持ちよさそうな寝顔でしたので、こっそり写真を撮らせていただきました♪」

「ヒナタぁぁぁ!!!?テメェ、知らねえ間に何撮ってんだぁぁぁぁ!!!?」

「良いじゃないですか。いつも皴を寄せたような顔をしていますから偶にはラグナさんのゆったりした顔も残しておかないと」

「そんなモン必要ねえだろうが!?いいから早くその端末をよこs」

「はい、チーズ」

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」

「流石は普段からあの若葉ちゃんを手懐けているひなた嬢だ。ラグナの余裕をブラフで簡単にひっくり返し、更にお宝も容易くゲットしたぜ」

 

知らないところで失態を撮影されていた大人ラグナが写真を消そうと彼女に迫ったが、逆に正面から撮られてしまった。完全に手玉に取られていた彼に神世紀の勇者たちは驚いていた。

 

「やっぱりラグナってこう…肝心のところは抜けてるわよね…」

「それが良いんだよ、三好!!分かってないな!!」

「分かりたくもないわよ、少佐…」

「あの、ひなたさん…その写真は本当にあるんですか?」

「いえ。気持ちよさそうに寝ていましたので本当に撮ってはいませんよ。そんなの無粋じゃないですか?」

「そうですか…」

 

それを聞いて沙耶は少し落ち込んだが、ひなたは彼女に耳打ちした。

 

「大丈夫ですよ。ここで撮った写真はちゃんと沙耶ちゃんの端末に送りますから」

「ありがとうございます!」

 

沙耶は目を輝かせながら元気に返事した。もう帝としての貫禄は地に落ちているが、嬉しそうにしているので誰も野暮を言わない。対してラグナたちはというと自分同士で会議を開いていた。

 

「おいどうしてくれるんだよ!!結局動揺しまくってんじゃねえか!!」

「テメェはまだ何もやられてねえからそんなこと言えんだよ!!思った以上にキツイんだぞ、これ!!」

「つーか俺はこれから先、どんだけ勇者に面白がられるんだ…」

「それより、アレ見ろよ」

 

大人ラグナがレイチェルの方を指さすと、そこにはクスクス笑う彼女がいた。

 

「ヤベーよ…ウサギの顔見てみろよ。アレ完全に面白がっている奴だぞ…」

「クソが……他人ごとだと思って…」

「いやー。それにしても愛されてんなぁ、ラグナ!!このモテ男め、羨ましいぜ!!」

「だったら今すぐ代われ、カグラ!!テメェも大概だろ!!?」

「それじゃあ意味ねえだろ~?ま、今回は甘んじて可愛い子ちゃんたちと存分に戯れとけって」

『ふざけんなぁぁぁ!!』

 

神楽は残念ながら力になれそうにないようだ。虚空を仰でいると、精霊が早速次の姿へと変化し始めた。出てきたのは、剣を振りぬきながら何かと対峙しているラグナだった。

 

「あら?これはもしかして私かしら?」

「何!!?鷲尾、貴様!!兄さんに気があったというのか!!?」

「そんなことないわ。でもこの頃はちょっと思い出深いことがあって」

「あ、ホントだ!これって私たちと初めて出会った頃のラグナ君だよね!」

 

結城友奈の指摘を聞いて、刃は一旦冷静になる。

 

「……何があったのか、詳しく聞かせろ」

「あの時は私、足も動かなかったことと記憶が無くなっていたこともあって、バーテックスと戦うことがとても怖かったの。でもその時に綾月君が現れた時、彼の背中を懐かしく感じたのよ。何でか恐怖が消えて行って、でも複雑な…そんな感情。そのせいか、このときの彼の背中がとても印象深かったの」

 

東郷の言う通り、今目の前にラグナはちょうど彼が讃州中学と出会った頃のものだ。あの時は何故そう感じたのかは分からなかったが、今ならそれは仲間に再び出会ったことが嬉しかったのと本来ならここにいる必要のなかったであろう彼が再び戦うことを少し悲しく思ったのだろう。

 

「…そんなこと、全然知らなかったぜ」

「話してはいなかったから当然よ」

「…そうか。ならばこれ以上は問わん」

「ありがとう」

「素敵な話ですね~」

 

亜耶がそう言っている内に向かい側の精霊も光り出した。そちらに注目していると、そこには手に持った鎌を下ろしたラグナが笑いかけていた。

 

「おっとぉ?これは誰の思念なんだぁ?」

「大人になった綾月さんですよね…ということは西暦の方でしょうか」

「けどこれって普段ラグナがあっちで訓練している時の恰好だよな。右腕が上手く動いていないようだしさ」

「でも鎌で訓練するのは自主訓練か…それか…」

 

他の者たちが思案していると、刃が突如倒れた。

 

「ぐふっ!!?」

「おい!!どうした、ジン!!?」

「そんな馬鹿な…まさか…ラグボを見たことのある人間が西暦にいただと!!?」

「いや、分かんねえって!!こっちには少なくとも全然分かんねえって!!」

「流石刃君だね!私じゃあ全然分かんないや」

「分からない方が普通なのよ、友奈。アレは少佐とか東郷みたいになって初めて出来るようなものだから」

 

親友がアレを出来るレベルに達しないことを心の底から夏凜は願う。そんな喧噪に紛れてただ一人、忍び足で外に出ようとしていた。

 

「千景、どうした?」

「い、いや!!ちょっと用事が!!」

「…明らかに慌てているな。それほど大事な用事なのか?」

「そそそそ、そうよ!!何っきゃもんだゃいあるにょ!?」

 

棗の問いに千景は答えるが、挙動不審で噛みまくってるその様は怪しさ満点である。バタバタしている彼女を見てから改めてラグナを見ると、球子が何かに気付いた。

 

「ああ!!分かったぞ!!これは千景に大鎌のレクチャーをしているときのラ「わああああああああ!!!!」もがッ!!?」

「あはは…タマちゃん…自分から地雷を踏んじゃダメだよ…」

「なるほどな…普段はちょっとツンケンしてるが、これはまた可憐な嬢ちゃんだぜ…」

 

球子の言う通り、千景はラグナから大鎌での戦い方を教えてもらっていた。片腕ではあるが、戦闘経験が豊富で、あまり扱われない武装を使う貴重な手本であることもあって千景にとって彼は良い訓練相手だ。

 

そして時々彼相手に優勢のまま立ち回ることが出来ると、ラグナはきちんと褒めてくれたのだ。自分も彼の知らないところで努力していることもあって、それが認められたように感じて嬉しかったのだ。

 

「くぅぅぅぅ…確かに彼のことは悪くは思ってはいないけど…よりにもよってこんな形で出てくるなんて…」

「…まあ、でも悪い気はしねえよ。嫌われているよりは嬉しいぜ」

「………そう」

 

多くを語る必要はない。というよりこれ以上この話題について話すのも二人ともらしくないだろう。言葉数は少ないものの、両者が互いの絆を確かに感じ取っているのを見て、見守っていた高嶋友奈は安心したような顔を浮かべた後に精霊がまだ輝いていることに気付いた。

 

「でもまだまだ光っているね。もっと姿を変えていくのかな?」

「冗談だろ!!?まだこんな公開処刑みてえなことをされなきゃならねえのか!!?」

「おや、どうやら神世紀組の方の精霊が姿を現したみたいですよ?」

 

ひなたの言う通り、沙耶の精霊たちはまだ光り輝いている。今度は仕方なさげにしながらも何かに持ち歩いているラグナだった。

 

「お、今度のラグナは部活に参加している奴じゃねえか?」

「そのようね。このときは一体何があったのかしら?」

「…あ~。これ、アタシかも」

「お姉ちゃんの?」

「ほら。ラグナって、多少大変なことを頼んでも仕方ないとか言いつつ、結局何だかんだ助けてくれるでしょ~?アタシはちょっと文化祭の買い出しで大変だった時期に手伝ったことを思い浮かんだんだけど、よく考えたらこれいつものアイツだわ」

「やっぱり何だかんだ先生じゃん!!!」

「だから、スズメ!その変な呼び方やめろって!!」

 

雀の指摘を中学生ラグナは取り下げるように言っているが、普段から困っているものを放っておけない彼がそのような名前を付けられても仕方のないことである。

 

「でもラグナ君が優しい人なんだっていうの本当のことだからね~。そう呼ばれても仕方ないよ~」

「あはは、私もそう思うよ、結城ちゃん。でも皆に先生って呼ばれたら私はちょっと寂しいな~」

「それは何故なの、高嶋さん?」

「ほら、先生って生徒から一歩距離の離れた存在でしょ?私は皆が一緒に居られる方が良いなって思うから」

「それもそうね…」

「じゃあ先輩というのはどうかしら。高嶋さん、友奈ちゃん?」

「何だかんだ先輩か~それ、なんかかっこいいね、東郷さん!」

「その方も親近感があって良いね、東郷さん!」

「だから!!その何だかんだっつー訳分かんねえフレーズは何なんだよ!?」

 

おかしな話題で盛り上がっていたが、次に西暦組の方でも変化が見られた。

 

「おい、まだ光っていやがるよ!!」

「今度のラグナ先輩はいつのラグナ先輩でしょう…?」

 

光が治まるとそこからは額の汗を拭いながら鍬を地面に突き刺しているラグナだった。その姿を見て刃がフィーバーし始めた。

 

「汗に濡れた兄さんキターーーーーーーー!!!」

「刃兄さま、落ち着いてください」

「ぐほッ!?」

「のえる!!?いきなり何を!?」

「流石に見ていられないのと、精霊が消えてしまう可能性があるので」

 

騒ぎ立てる刃に沙耶は容赦無く腹パンを決めて鎮めた。西暦組はというと、このラグナについて話し合っていた。

 

「あ、うたのん!これって諏訪にいた頃に畑仕事をしていた時のラグナさんだよね!」

「ホントだわ!!あの頃に手伝って貰っていたけど、結構手慣れていてサプライズしたものよ」

 

歌野と水都は諏訪に来た頃のラグナを思い返していた。

 

「あの後もちょくちょく丸亀キャッスルにある畑での仕事も手伝ってくれているから助かってるわ。サンキューソーマッチ、ラグナ!」

「こっちはこっちで気晴らしになってるから気にすんなよ、ウタノ」

「でもあの頃は気にしなかったけど、今になって考えてみればいきなり農作業が出来るのって結構意外だよね。適当にやっても耕せるわけじゃないのに」

「多分ガキの頃から巫女の畑仕事の手伝いを時々していたからだろうな。そういやあの人もここに来てんのか?」

「心配しなくても大丈夫だよ、大きい兄さぁん。まだ来てないけど多分そのうち来るよ。大赦の神官共もいるからね」

「ジン、テメェ復活早すぎんだろーー!!?」

 

大橋の英雄はしぶとい。妹の腹パン程度では一分で万全に戻ってしまうのだ。

 

「はあ…流石にもうねえだろ…」

「貴方たち、何を見当違いなことを言っているのかしら?まだ半数も行っていないわよ?」

「ふざけんじゃねえよ、ウサギ!!テメェ、さっきからずっとニヤニヤしやがって!!」

「どの時代においても、貴方は騒ぎと混沌を起こす存在。本当に見ていると退屈しないわ」

「半分以上のケースはテメェが原因だろうが!!」

「あらあら。年齢が違うせいか、声が被って怪音波が出来ているわね。では、私は席に戻っていくからまた後で」

『おい、待てぇ!!!』

 

ラグナズはご満悦のレイチェルを追いかけようとしていたが、再び光が生じた。またしても西暦の方からだった。

 

「うわ、マジで来やがったよ!!」

「頼む!!変な奴じゃなきゃもうこの際何でもいいから出来るだけ普通っぽい奴を!!」

「いや、俺はそこまで変なことをしていないはずなんだが…」

 

小中のラグナたちが祈る中、光が晴れて行った。そこにいたのは白目を剥きながら海老反りになっているラグナだった。

 

『普通どころかエライ処刑現場が出てきたんだけどぉぉぉぉぉぉ!!!!?』

「あぁ!?綾月君が海老反りに!!?」

「こ、こりゃまた…何とも言い難い現場だな…」

 

まさかの光景に大人である神楽を含めて神世紀組は仰天していたが、それに対して西暦組からは申し訳なさそうな雰囲気が出ていた。ただこの状況は神世紀組でも何が起こっていたのかがすぐに分かった。

 

『棗ね…』

『棗だな…』

「古波蔵棗か…」

「古波蔵先輩ですね…」

「棗さんですわね…」

「棗ちゃんだね…」

「棗ちゃんだな…」

『棗さんね…』

『棗さんですね…』

「良く分かったな」

「分かるわ!!」

 

まさかの整体を受けている自分だったことにラグナたちは驚きを隠せないでいた。だがすぐに沙耶の方から声が上がった。

 

「あ、すみません。どうやら少し精霊が間違えてしまったみたいです。棗さんが本当に想っていた兄さまはこれから出てきます」

「な、なんだよ。ただのバグみてえなモンか…冷や冷やさせやがって…」

「でも助かったぜ。やられていることが思い出深いって思われていたらショックだったぞ」

「まあそんなことはなかったってことだな。そうだろ、オッサン?」

 

中学生のラグナが大人ラグナに聞いてくるが、大人ラグナは答えない。ただ二人から気まずそうに眼を反らしているだけだった。

 

「…お、おい。なんで黙ってんだよ?な、そんなことなかったんだろ?」

「…………ソウダナ」

「なんでそんな棒読みなんだよ!!?いや嘘だろ、ジーさん!?嘘だと言ってくれよ!!?未来で俺海老反りにされんの!!?」

「それでは、次のラウンドに入りましょうか」

『やめて!!!!』

 

こうして一日中精霊は様々なラグナたちを見せ続けた。色々なことはあったものの、二人のラグナは楽しそうで翌日の朝には勇者たちに名残惜しそうにしながらも別れた。




というわけでわすゆ、ゆゆゆ、のわゆのそれぞれのラグナがゆゆゆいに一時的に集合して、さらに勇者全員で思い出話を本人の前で語られるという珍事をやらかした回です。

ここでは書かなかった娘たちもいるけどそれはご想像にお任せします。書くかもしれませんが。

次回では本編に移る予定です。それではまた。
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