蒼の男は死神である   作:勝石

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どうも皆さん、勝石です。

今回の話はゆゆゆシリーズのネタバレを含む説明会です。
一応原作ネタバレのタグは付いているので大丈夫だと思いますが、改めて読む前に注意してください。

それではどうぞ。


Rebel09.世界の実情

「………………っあ!!」

 

ラグナが目を覚ますとまず目に付いたのは白い天井だった。

 

「知らねー天井だ…」

「もう少し捻りのある台詞が言えないのかしら?ラグナ」

「!?ウサギ!」

「何よ、その間抜けな顔は。自分の状況が今になっても把握できないほど愚鈍だというの?」

「テメェ!人が目を覚ましてからいきなりそれか!…つつ」

「…はあ。まあ良かったわ。この調子なら問題なさそうね」

 

身体を起こして開始早々レイチェルに詰られるラグナだが、反論した後に右半身に小さな痛みが走った。改めて自分の体を見ると自分の体は包帯に包まれ、その下にはガーゼが付いていた。そして何より特徴的だったのは真っ黒になった『右腕』だった。

 

「…」

「…今更後悔なんてしているのかしら?」

「冗談抜かせ、ウサギ。ただ…『また』こいつと一緒になるとは思わなかったからよ…なんだか不思議な感覚だ」

「あら?『また』だなんて随分と感慨深そうに話すじゃない、ラグナ」

「い、いや。アレだ。デジャヴ?てやつだ」

「…ラグナ、こっちを見なさい」

 

「洛奈」の様子がおかしいことに気づいたレイチェルはラグナのベッドへ寄ると突然ラグナにアイアンクローをかまして強引に自分の方へ向けた。

 

「いだだだだ!!おいウサギ!離しやがれ!」

「答えなさい。『貴方』、何か隠しているわね。少なくても私が知る『綾月洛奈』は確かに柄の悪そう子だったけれど雰囲気はどこにでもいる『子供』と同じだったわ。でも今の『貴方』からは明らかに『成長しきっている』ように感じる」

「そ、それは…」

「答えなさい」

「分かった!分かったから先ず離せ!」

 

 

 

 

「別の世界にいた頃の記憶が蘇った?」

「…そうとしか説明できねーんだよ」

 

あのままではレイチェルに頭を握りつぶされそうだったので観念したラグナは自身にある点滴や心電図を取って服に着替えてから自分の素性を吐いた。自分が元は別の世界の人間だったこと。自分が経験してきたこと。そしてなぜ自分がこの世界で二度目の生を受けたのかがわからないこと。その全てをレイチェルに話した。

 

「俺が言えるのはここまでだ」

「…本当ならばいい精神科医を今すぐ勧めたいところだけど」

「何だとウサギ!!」

「貴方がここまで事細かに『蒼の魔道書』や仕組みは少し違うけれど『術式』の知識を持っていると信じざるを得ないわね。むしろ…」

 

レイチェルはラグナの『右腕』へと視線を移す。

 

「『蒼の魔道書』がこれほど親和しているわけも辻褄が合うわ。望んだか否かはともかく、貴方は既にそれを手にしていたのね」

「できることならここでの縁はあって欲しくはなかったがな…」

 

苦笑いするラグナに対してレイチェルはもう一つ気になることを聞いた。

 

「一応聞くけれど『この世界』に来てからの記憶はまだあるのよね?」

「ああ。ジン、サヤ、巫女、師匠、ココノエ、メガネの姉ちゃん、それにスミ、ギン、ソノコの事だろ?しっかり覚えてるよ」

「自分の名前はどうかしら?」

「知ってるよ。『中学一年の綾月洛奈』だろ?楽勝だ」

「私は?」

「知らねえよ」

「フフ、そういうことにしておくわ」

 

今度はラグナがレイチェルに質問してきた。

 

「今度はこっちが聞く番だぜ。ウサギ…この世界は…どうなってやがるんだ?」

「…そのことにも関係するけれど、ラグナ。貴方、病院に来る直前の記憶はあるのかしら?」

「…ああ。思い出したくもねーがはっきりと、な」

「そう…いいことラグナ」

 

レイチェルは先ほどよりも真剣な顔をラグナに向ける。

 

「貴方がその蒼の魔道書を持った以上、貴方はあの子たちと一緒に『樹海』へ行くことになるわ」

「樹海?」

「貴方ね…貴方も見たはずよ。あの根に満ちた世界を」

「あそこか…。そうだよ、ウサギ!あの化け物どもは何だよ!あんなモンにジンたちは毎回戦っているのかよ!」

「そうよ。あの敵は現在の四国の…貴方に分かりやすく説明するならマスターユニットに当たる存在である『神樹』を破壊しようとしていて、『頂点』などという痴がましい名前で呼ばれているこの世界の汚物、『バーテックス』よ」

「バーテックス…確かギンのやつもそう言ってたな」

「彼女からそこは説明されているのね。ならそこからもう少し説明するわ」

「おう」

「バーテックスとは人類を根絶やしにせんと『天の神』と呼ばれる存在が送り込んだ尖兵よ。『この世界』の西暦におけるあらゆる科学兵器を用いても撃退することができず、とうとう人類の大半を殲滅していったわ」

「おいおい、嘘だろ!?『黒き獣』でもそこまではできなかったぞ!!」

「それは貴方の世界では術式が早い段階で完成させることができたからよ。でもこの世界はそうではなかった」

 

確かにレイチェルの言う通りではある。ラグナの世界では「大魔道士ナイン」のおかげで術式を開発することができ、それを更に戦闘に特化させた事象兵器(アークエネミー)を使うことで初めて黒き獣を倒すことができた。逆にもしそうでなかったら更にたくさんの人々が死んでいただろう。

 

「アレは黒き獣より強いのか?」

「アレの恐ろしさはその『力』ではないわ。その『数』よ」

「何だと?」

「アレは何体しかいないのではないわ。『無尽蔵に増える』のよ」

「はあ!?何だそりゃ!?大赦はそれを!?」

「当然知っているわよ。『知っていて隠している』の。まあ確かにこんなこと発表したら四国はパニックになるものね。実際西暦の頃はバーテックスが原因で大混乱が起きたもの」

「あいつら…ジンたちはこれを?」

「知らないと思うわ。これ以降話すこともね。子供に話せる内容ではないわ」

「じゃあなぜ俺には話したんだよ?」

「貴方の場合素行と見た目はともかく、魂は既に成熟しているから」

「要は中身大人のくせに子供っぽいって言いてーだけじゃねーか」

 

レイチェルは一度悪戯っぽく笑いながらその後続ける。

 

「このままバーテックスが侵攻を続ければ人類は滅亡する。それを憂いた『土着の神々』が集まって、巨大な防御結界を張った。それが今の四国を包み込み、以来『土着の神々』の集合体を人々は『神樹』と呼ぶようになったわ」

「…神樹の外はどうなったんだよ」

「…一面炎の結界に覆われたわ」

「!!」

 

外の世界が火の海。つまり世界は終わりかけているという意味だ。

 

「…なるほどな。つまりバーテックスが神樹を攻撃するのは」

「結果的に人間を滅ぼすためよ。神樹の守りがなくなれば、人類は簡単に滅ぶわ」

「…!!」

「だから神樹は人間に自身の力を与えたの。ただし、一部の無垢な少女たちにね」

「それは巫女からも聞いたな。そいつらが敵と戦う『勇者』や敵の情報をもらう『巫女』だったりするのか」

「そう。そして勇者が持つ神樹の力を科学技術や呪術など、『人間の力」を用いて最大限までに引き出せるようにしたものが勇者システムよ。でもそれは万能ではないわ。『あの子』が研究に関わるようになってからはかなり進んできているけれど、まだ研究が足りないの。それに完全には守ったりはしないわ。場合によっては戦闘で命を落とす」

 

その言葉を聞いてラグナの顔がいつにも増して真剣になった。怪物との戦いで命を落とす可能性がある。それも年端もいかない子が、である。

 

「ふざけやがって!」

「気持ちはわかるけれど落ち着きなさい。ここからは少し貴方も関係している話よ」

「…ックソ!」

「確かにしばらくは勇者にしか戦闘に出すことができなかったわ。でもある時、勇者システムと同様、神樹の力の一部である『精霊』を持ちながら他の人間でもある程度使えるようにできる技術が生まれたわ」

「それが『この世界』の術式か」

「そうよ。貴方の母の姉、綾月九江(あやつきこのえ)が開発に成功したもの。当然九江博士はそれを使って勇者たちとともに戦える武装を作ろうとしたわ」

「それが…事象兵器(アークエネミー)てわけか」

「そうよ…勇者システムと比べて身を守る勇者服がない分危険度は勇者よりも高い代わりに高い火力、そして適性があれば性別年齢関係なく使うことのできる汎用性を誇るわ。最も設計の多くをやっていたものの、開発できたのは貴方の弟さんが持っている『氷剣ユキアネサ』と『魔銃ベルヴェルク』だけだったわ。ベルヴェルクの精錬を終えた後に事故に遭って…そのまま行方不明になってしまったの。ベルヴェルク共々ね」

「じゃあもうアークエネミーは…」

「いいえ。博士の娘が政策を取り組んでいるわ。最もまだ難航しているみたいだけど」

「そこはあっちとは違うんだな…そういや『あっち』のアークエネミーの核は人の魂とからしいけど」

「そういう意味ならアレは精霊を必要な器となる材料に憑依させ、それを製錬させて作っていたわ。ただ精霊は滅多に人前には現れないから難航していたようだけれど」

 

ようやく知っている話題が出てラグナは余裕を取り戻してきた。レイチェルはまだ続ける。

 

「次は樹海ね。まあ簡単な理屈よ。そのまま市街地で戦ったら被害が甚大になるから神樹が特殊な空間を作り出して勇者たちを移動させ、バーテックスもそこへ誘い込むの」

「なるほどな。そこなら好きなだけ暴れていいってわけか」

「そんなわけないでしょ、このお馬鹿さん。樹海だって神樹の内部には間違いないのよ。だからもし過剰に樹海が傷つけば…現実世界でも悪影響が出るわ」

「うぐっ…」

 

どうやらラグナが思っていたより樹海はデリケートな戦場だったらしい。前回は大橋のあちこちにバーテックスを叩きつけていたが大丈夫だったのだろうか?少し心配になった。

 

「さて、ここに来てようやく貴方がなぜこの戦いに参加しなければならないのか説明できるわ」

「ようやくかよ。待ちくたびれたぜ」

「貴方の蒼の魔道書の能力(ドライブ)、『ソウルイーター』は周りの生命力や力を際限なく吸収することができる。それは神樹やバーテックスも例外ではないわ」

「ああ、だけど神樹も同じっつーことは樹海も傷つくかもしれねーだろ?いいのかよ神樹はそれで?」

「そのリスクを踏まえたうえで神樹は蒼の魔道書とそれを使うことのできる貴方を欲しているのよ。恐らく純粋な戦闘能力だけならそれは勇者システムよりも強力だもの」

「マジかよ…」

 

流石最強の魔道書と呼ばれているだけはある。だがラグナは別のことを懸念していた。

 

「ウサギ、俺は勇者のそばにいても大丈夫なのか?勇者の力を吸収してしまったら」

「樹海がそもそも神樹の力に溢れているから流石に一緒に戦うくらいは問題ないとは思うけれど、直接魔道書を使えば貴方の考え通りのことは起こるでしょうね」

「…じゃあ最後にもう一つだ。こいつも使い続ければ暴走するのか?」

「…ええ。それを使い過ぎれば恐らく貴方はその黒き獣になる可能性は高いわ」

「…分かった」

 

それを聞き終えてラグナは再び身体を寝かした。レイチェルからこの世界の粗方の説明を受けたことである程度世界の現状を知ることができた。

 

「…あいつらは無事だったか?」

「…体の傷は大したことはなかったわ。でも精神はかなり参っていたわよ」

「…そうか」

「聞いた話によるとあの三ノ輪さんて娘を庇ったそうね。今だから言えるけど、あのときもし三ノ輪さんが貴方の立場だったらどうしようもなかったわ」

「ん?どうしてだよ?」

「蒼の魔道書は勇者とは相性が余り良くないのよ。だから三ノ輪さんがやられていてもあの子は蒼の魔道書では助けられなかったの」

「そうかよ」

「…芹佳は貴方がいなくなったとき、本当に心配していたわ」

「…巫女には悪いことしちまったな」

「ホントよ。どうしてこう後先考えずに行動するのかしら?」

「悪かったな。単純で」

「ところでラグナ」

「何だよ」

「これを聞いてもなお貴方は…神に抗う覚悟はあるかしら?」

 

いつもの揶揄う目つきとは違う視線に対してラグナはゆっくりと答えた。

 

「…ああ。相手がどんなやつだろーと関係ねー。俺はもう…あいつらを失うのはごめんだし、あいつらが生きている『この』世界を守りてー」

「そう…そんな貴方に芹佳からプレゼントよ。もし戦うことを決意したら渡してほしいと。何でも代々家に伝わるものらしくて」

 

そう言ってレイチェルは隣の椅子に乗せていたであろう荷物を渡してきた。

 

「こ、こいつは…!?」

「ちょっと…これまで『前の』世界でも持ってたなんて言わないでちょうだい」

「生憎ながらてめーの懸念通りだよ…」

 

レイチェルが渡してきたのは「赤いコート」と「セラミックス製の大剣『荒正(アラマサ)』」だった。どちらもラグナにとっても非常に馴染み深いものだった。

 

「まさかまたこいつらと戦う日が来るなんてな」

「その割には少し嬉しそうね。愛着というものかし…!」

 

レイチェルが言葉を途中で切って警戒を一気に上げ、ラグナも身体を起こした。敵襲を知らせる大橋の鈴の音が聞こえてきたのだ。

 

「そろそろ時間よ」

「ああ…ウサギ」

「何かしら?」

「…こっちの『母さん』を頼む」

「…」

 

そう言ってラグナはコートと剣を手に取って消失した。

 

「…馬鹿ね。そういうことは本人に言うものよ」




いかがだったでしょうか?

説明回は設定を作るのが好きな人は楽しいかもしれませんが読者はそうでない可能性があるので少し不安です。

次回、再び樹海に足を踏み入れるラグナ!果たしてバーテックス相手にどう戦う?

それではまた
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