蒼の男は死神である   作:勝石

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どうも勝石です。

またしても四コマイベントになりました。あの漫画の絵柄は個人的に好みなので個人的にとても嬉しいです。

さて今回はとうとう西暦の時代に黒き獣が出現!!この敵を相手に勇者たちは果たしてどう戦うのか!!それではどうぞ。

The wheel of fate is turning...Rebel1...Action‼


Rebel81.躰と臓

「やっぱり落ち着きませんね…」

「そうですね…」

 

ラグナたちが任務へ出かけている間、巫女たちは丸亀城で彼らの帰りを待っていた。

 

「あんずは今回初めてタマと離れ離れだよな…大丈夫なのか、タマは心配だ…」

「はい…こうして皆さんの帰りを待っているというのは…やはり心細いです」

「…ひなたたちはいつもこんな気持ちで待っていたんだな」

「私たちには戦う力がありませんから…こうして皆さんの無事を祈る事しか出来ません。その時に帰ってくる皆さんの傷を見ると…安全な場所にいて何も出来ないことを歯痒く思います…」

「ひなたさん…」

 

ひなたの吐露に水都も共感を覚える。巫女は樹海へ行ってバーテックスと戦う力は基本的には存在しない。危険な戦場から帰ってくる勇者たちを思うと、少し不安を感じるものだ。

 

特にここ最近では強敵が増えてきて、傷つく者が増えていき、ついには生死の境をさまよったものまで出てきた。それに対してレイチェルは表情を変えずとも小さく言った。

 

「あの娘たちならそれほど心配しなくても問題はないわ」

「レイチェルのその謎の自信はどこから湧き上がるんだ?」

「ヴァルケンハインもいるもの、そう大事は起こらないわ。それに根拠のない自信は寧ろ貴女の醍醐味でしょう?」

「なんだよそりゃあ」

「褒めてるのよ、これでも…それにあの娘たちなら意地でも帰ってくるでしょう」

 

その言葉を聞いて球子たちが小さく笑った。

 

「…そうか、そうだな!!サンキュー、レイチェル!!」

「大したことは言ってないわよ」

「いえ。励ましてくれてありがとうございます、レイチェルちゃん」

「…好きに捉えなさい」

「あらあら。そっぽ向いちゃって、可愛いですね」

 

ツーンとした顔で三人から顔を反らせるレイチェルをひなたたちは微笑まし気に見る。しかしそんな会話をしていると突如獣の遠吠えが四国中に響いてきた。

 

「うわぁッ!!?何だったんだ、今のは!!?」

「…何かあったわね」

「何かって…何なんだよ!!?」

 

突然の声に驚く球子に対してレイチェルの顔に緊張が走る。樹海が傷ついて街に被害が出ることがあっても神樹の結界のキャパシティを超えるようなことが出来るバーテックスはこれまで一度もいなかった。

 

「あう…!!」

「うぅ……」

「おい、ひなたに水都!!どうしたんだ!?」

「今、神樹様から…神託が…!!!?」

 

神託を受けた二人の顔は青ざめる。神樹から伝わった神託がかなり衝撃的なものだったようだ。

 

「あ…そんな…こんなことって…」

「何があったの…うん、ヴァルケンハイン?」

 

けたたましい声が轟く中で二人の狼狽え様にレイチェルが追究しようとしたが、すぐにヴァルケンハインから連絡が来た。彼の話を聞いて、レイチェルの顔にも剣呑さが広がる。

 

「…状況を理解したわ。すぐポートを用意するから準備して」

「お、おいレイチェル!!何があったんだよ!!?」

「どうやら…神託が触れていた闇が出てきたみたいよ」

「まさか…ラグナが!!?」

「…それよりも危険な存在よ。貴女たち、すぐに大社に連絡して、香川の人間を他県へ移るよう伝えてきなさい」

「そ、そこまでなのかよ…」

「ええ…事態は急を要するわ」

 

レイチェルの言葉に三人は理解を示したようで、とにかく巫女二人は端末で大社へ連絡し、球子はポートから来るであろう勇者たちを迎えるためにレイチェルと共に待っている。

 

少ししてポートが開き、そこから杏たちが入ってきた。見た様子では特に目立った傷はない。

 

「おいあんず、皆!急に帰ってきて、一体どうしたんだよ!!?」

「うん…外にいたバーテックスがね…」

「話はヴァルケンハインから聞いているわ。今回のバーテックス、この前のものよりも危険な個体のようね」

「それどころでは済まなさそうです…」

 

杏の言葉に偽りや誇張はない。先ほど自分たちが対峙した怪物は恐らくバーテックスの中でも最強の部類だろう。そこで千景があることに気付いた。

 

「そういえば高嶋さんとヴァルケンハインさんが遅いのだけれど…まさかまだあの怪物のいるところに!!?」

「…千景さん。その話によりますともしや他にも残った者がいるんですか?」

「ラグナと若葉が残ると言っていた。若葉はしばらくしたら戻るとは言っていたぞ」

「そうですか…あの二人が一緒でしたら滅多なことはないと思いますが…」

 

焦りで慄く千景の代わりに答える棗の言葉にひなたは不安に思いつつも納得するが、レイチェルは考え込む。あの男のことだ。若葉のようにすぐに戻るといったことをやるはずがない。

 

そんなことを考えていると友奈とヴァルケンハインが遅れてポートから出てきた。

 

「遅くなり申し訳ございません、レイチェル様」

「いいえヴァルケンハイン、皆を無事に連れてきてくれてありがとう」

「高嶋さん!!大丈夫だった!?」

「うわぁ、ぐんちゃん!?私ならどこも怪我してないから大丈夫だよ!だから落ち着いて」

「良かった…ともかく無事みたいで…」

 

感極まって友奈に抱き着く千景。彼女の性格を考えてしまうと恐らく彼女はあのまま黒き獣のいる場所に留まると千景は考えた。病院から出たばかりの彼女がそうしたらきっとただでは済まなかっただろう。

 

そうしなかったのは大方彼女が大事そうに抱えている赤コートの主のおかげだろうか。それに気づくと千景が友奈に聞いてきた。

 

「あら?どうしてあの人のコートを高嶋さんが…」

「約束だって…無事でいるからこれを持って先に戻っていて欲しいって…」

 

心配そうにコートを見ながらそう友奈は語った。しかしそれを見て歌野は告げた。

 

「そういえば諏訪の時も似たようなことをしていたわね…」

「あの時は自分の鍬を預けていたね…」

「まあそれなら心配はナッシングと思うわよ、友奈さん。態々そんな大事なものをギブしたならラグナも自分の言葉を守るわ」

「うん…そうだね…そうだよね!今までも何だかんだ生きて帰ってきたし!」

 

歌野の話を聞いて自分を鼓舞した友奈に対してレイチェルが話に入ってきた。

 

「貴女たち。戻ってきて早々で悪いけれど、すぐに香川の人々を避難させましょう。もし二人が時間を稼いでくれているなら、時間を無駄にするわけには行かないわ」

「そうですね…それにあれをどうするのかも考えておかないと…あの様子だと身体は完成されているから襲ってくるのも時間の問題でしょうし…」

「そもそもアレが樹海の中に入ったら被害も甚大になるかも…」

「その対策について話し合うためにも丸亀城へ集まりしょう」

 

その意見に同意して少女たちは丸亀城へと足を運ぶ。その時に友奈はちらりと壁の方へ視線を移した。

 

(本当に…二人なら無事に帰ってこれるよね…)

 

普段なら大丈夫だと言い聞かせられるのに、今は心の中の不安が取り払えず、二人の身を案じる彼女であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃のラグナと若葉はというと

 

「うぉらぁぁぁぁぁ!!!!」

「やぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

黒き獣と星屑を相手に奮闘していた。義経を宿らせた若葉のスピードは勇者たちの中でも最速だ。どれだけ多くの星屑が寄ってきたとしてもすぐに彼女が切り伏せていく。ラグナも自分に近づく星屑を大剣で倒していく。

 

しかしそれでも問題があった。黒き獣自身の暴れっぷりもあってラグナが中々接することが出来ずにいた。彼の話によると自分が獣に近づくことさえできれば後は自分でやれるらしいが、いいタイミングが見つからない。

 

加えて黒き獣が神樹に形成された壁はどんどん腐食していくのが分かった。先月のスコーピオンは樹海を侵食させていたが、こちらは四国を守る要である壁までやられていた。かなりまずい状況だった。

 

星屑も獣の前でバリケードを形成するように彼の前の道を塞ぐ。面倒だと思ったラグナは大剣を鎌に変えようとするが、

 

「待てラグナ。ここは私が先陣を切る!」

「ワカバ、何か策でもあるのか!?」

「奴らを斬ったら迷わず突貫しろ!その間のことは私が何とかする!!」

 

その言葉にラグナは素直に従う。大剣を腰に付けると若葉が刀で星屑の壁に一閃。

 

「一閃…緋那汰ぁぁぁぁぁ!!!」

 

綺麗に二つに分かれた壁から隙間が出来る。それを見逃さなかった若葉はラグナに叫んだ。

 

「行け!!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

それを聞いてラグナも一目散に駆ける。当然それを黒き獣が見逃すはずがない。彼に向けて噛み付こうとするが、彼らの頭を弾き飛ばす突風が現れた。若葉だ。

 

「祈禱緋那汰ぁぁぁ!!!」

「ワカバ、テメェ!!」

「こっちに構うな!!早く!!」

「ッ…ああ!!!」

 

彼女が繋いだチャンスを失うわけには行かない。そう感じた彼は全速力で黒き獣へと走っていく。やがてその近くまで来ると、大剣を大鎌に変形させて突撃する。

 

「ここだぁ!!!」

 

黒き獣の腹部に向かってラグナは鎌の斬撃を喰らわせてその身体を刻んでいく。瘴気を身体中から漏らす怪物だが、その時に一瞬紅い光が見える。

 

(以前のテルミの話の言う通りなら…あれがこの世界の黒き獣の御魂…しかもこの気配…やっぱあれ、窯か…)

 

それが分かれば話が早い。こいつさえ破壊すれば後は身体が勝手に砂になって消えるはずだ。だがその前に魔道書の力をぶつけて活動を停止させる必要がある。早速御魂のある方へラグナは突入しながら、蒼の魔導書の出力を上げる。

 

「ぐっ!!!おおおぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

腕に力を込め、激突と同時にありったけの力を黒き獣にぶつける。それに応じて獣を包む瘴気も一気に弾けると真っ黒な躰を露わにしつつ、頭を垂らし始めた。

 

「動きが止まった…ラグナの奴、やったのか!!」

 

黒き獣の攻撃を躱しつつ、周りを旋回していた若葉も敵の沈黙に気付く。その腹を見ると黒い瘴気が漏れている穴があった。

 

それを見て、若葉はラグナがあの中へ入ったと理解した。自分としては彼を追いかけて中に入りたいところだが、彼は自分が敵を止めたら戻るようにと言った。

 

少し悩んでいると突然獣も首の一つを振り回して若葉を吹き飛ばそうとする。若葉もそれに気づいて壁の方へと飛び乗って獣の様子を観察する。

 

瘴気に包まれた躰は剥きだしになった獣の動きはかなり鈍くなっており、壁の方にも力なく寄り掛かりながら打ち付けていく。木片による土煙は生じるが、それでも壁は健在だった。

 

それでも敵は咆哮を上げて若葉に威嚇し、噛み付こうとする。弱体化してもなお、その殺意は落ちることはない。これは確かに下手に戦っても暴れる相手に叩き落とされてしまうかもしれない。

 

ここはラグナの言う通り、退却しよう。そう決めると若葉は急いで壁の中へと退散して丸亀城へと向かう。その後ろから黒き獣は若葉に向かって恨めし気にこれまでのどれよりも大きな声で吠えた。

 

無事に丸亀城へと戻ってこれた若葉をひなたたちが出迎えた。彼女のことが気がかりで仕方がなかったひなたはすぐに彼女の元へ駆けつける。

 

「若葉ちゃん!!得体の知れない敵と戦ったと聞きましたが、ご無事ですか!?」

「何とかな…だが事は私たちが思っている以上に大変な状況になっているようだ」

「どういうことですか?」

「…奴には壁を腐食させる力があった。以前のスコーピオンの時もそうだったが、奴には壁を…神樹様が形成した結界を破ることが出来るようだ」

「壁を…ということは…」

「…奴ならば力づくで四国へ侵入出来る。樹海化が起こったとしても市民への被害が甚大なものになる」

 

若葉は悔しそうにそう言う。今の四国の状態で奴と戦う必要がある以上、どう転んでも犠牲者が出てしまう。それを防ぐためにも

 

「まず、香川にいる民間人を別の県へ避難させる必要があるな。奴はまだ動ける状態だったから…時間はあまりない」

「それならば心配はいりません。先ほど大社の方々にはすでに連絡しましたので、すぐに報せが出るでしょう。それより今しなければならないのは」

「ああ…奴にどうすれば勝てるのか、考えねばなるまい」

「それより若葉ちゃん…身体の傷の少なさに対してかなりお疲れのようですが」

「敵と打ち合うたびにな…」

 

若葉はラグナを突入させるために黒き獣と少し応戦したが、全く躰が傷ついているようには感じなかった。というより傷つけてもぶつかり合う度にすぐさま再生してしまうというべきだろう。その時に自分の身体の方が重くなっていくのを感じた。

 

「そんなことが…」

「まるで身体の精気が吸い取られていくような感触だったよ」

「他に何かありませんでしたか?見た目でも何でも」

「ああ…今考えてみると…アレからは暴走したときのラグナと同じような気配を感じたよ。奴から漏れ出ていた力もラグナが良く使っているものと酷似していた」

 

その言葉にひなたは敵の正体を察した。

 

「…そういえば彼も以前話していましたね。自分の腕はバーテックスだと」

「まさか…あれがそうなのか?確かにそうであれば彼でないと止められないことと辻褄が合うのだが…」

「恐らくそう考えて間違いないでしょう。彼は元々未来から来た人間です。つまり彼にとっての過去ではあのバーテックスが存在し、それが出現した時期が…今だった」

「つまり、私たちがここで何とかしなければ」

「彼の未来も…変わってしまうかもしれませんね」

 

そもそもここでアレを倒せなければ自分たちの未来がない。アレを相手にして若葉はそう感じた。

 

「ところで若葉ちゃん。そのラグナさんはどこですか?共に残ったと聞いていますが」

「…ラグナは蒼の魔道書の力を開放させながら一人怪物の中へと突貫した。そしたら怪物を覆っていた瘴気も剥がれて、躰が見えるようになって動きも鈍くなったが…それでも辛うじて動いていたから退却した。元々私はそこまで行ったらそれ以上手は出さないという話だったからな」

 

その話を聞いてひなたはラグナが後続のためにも若葉を下がらせたのが分かった。若葉は勇者たちのリーダーでバーテックスと対抗出来る力を持った数少ない人物の一人だ。ここで余計な怪我をしてしまったら小さな勝機すらも失ってしまう。

 

「…彼は、あの中で今も戦っているのですね」

「ああ…そのためにも今は城で待っている皆とも話し合おう。アレは今でも虎視眈々と壁の向こうからこちらへ攻撃する機会をうかがっている」

「そうですね。皆さんはいつもの教室で待っていますので、急ぎましょう」

 

若葉とひなたは城の中へと急ぐ。黒き獣との本格的な衝突のカウントダウンが今、始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…とにかく、ここが黒き獣の中のようだな」

 

一方侵入に成功したラグナはというと、黒き獣の核である御魂を破壊しようと内部で歩き回っていた。すぐに見つかるものだとは思っていたが、どうやらそう簡単にはいかないらしい。

 

前の世界の黒き獣には躰と心臓があり、元の世界ではそれは蒼の魔道書とムラクモユニットが該当する。しかしこの世界ではムラクモユニットの前にそもそも素体の精錬が出来なかった。

 

バーテックスの躰と御魂の関係はそれと似たようなものだろう。そしてこっちは御魂さえ破壊すれば倒せる。普通のバーテックスながらばそうなんだが、問題はこれが黒き獣と同じ特性があるのか、そして御魂がどのような形で自身の破壊を阻んでくるのかだ。

 

元の世界では獣の心臓と躰を同時に倒さなければならなかった。自分がここにいる以上、外の世界は若葉たちに任せるしかない。その時に犠牲者なく倒せるのかが気がかりだった。

 

未来で封印の儀を行った時も御魂は一筋縄では破壊されなかった。スコーピオンは分裂していたし、カプリコ―ンは毒ガスをまき散らしていた。スタークラスタだって規格外の大きさになって勇者たちを苦戦させていた。

 

だから恐らく今回でも似たようなことがあるだろう。幸い自分ならば御魂の破壊が出来るから後は探し出すだけだ。

 

「敵が一匹もいねえのが気持ち悪ぃな…」

 

そう悪態を吐いていると、壁から見慣れた星屑の顎が自分を取り囲むように足元や頭上から出現する。この黒き獣の肉体だって今はバーテックスによって形成されたものだ。こいつらがいても不思議ではない。

 

「チッ…うざってぇぞ!!」

 

腕から瘴気を出しながら地面を思いっきり刺すラグナ。それに呼応してか、足場全体が激しい振動に襲われた。痛みのせいか黒き獣が暴れ出したようだ。

 

「クソ!!こうなったら仕方ねえ。こいつらを無視してとっとと御魂を探し出す!!」

 

すぐそばにあったはずなのに何処へ行ったというんだと考えているとしばらくしてそれはあった。見慣れたピラミッド、溢れ出てくるエネルギー、しかしこれまでの御魂とは違う邪気。これがどうやら黒き獣の御魂だろう。

 

「おう。ようやく見つけたぜ、この野郎」

 

御魂を見据えてラグナも大剣を構える。御魂の方もラグナに気付いたのか、のらりくらりと去ろうとする。それをラグナは逃がそうとしない。御魂に斬りかかって破壊しようとするが、大剣は空を切る。

 

だが少しずつしてラグナの攻撃も当たるようになっていく。攻撃を掠らせていく内に軌道が予測できるようになった。次第に御魂にも傷が目立っていく。

 

それに対して御魂もついにエネルギーの刃を飛ばしてラグナを迎撃する。攻撃は大剣で弾いていくが、そこから放たれる弾幕のせいで御魂との接触が難しくなった。

 

「デッドスパイク!!!」

 

服や顔を掠める刃を避け、瘴気を飛ばして攻撃する。それを敵は躱していくが、やがて動きを止めた。

 

とうとう観念したのかとラグナは止めの一撃を入れようと踏み込む。しかしその時、御魂に変化が現れ始めた。三角錐の物体は徐々に変化していく。

 

「…おい。こんなもん聞いてねえぞ…」

 

今までも御魂は様々な形で勇者たちを妨害してきた。だが今回は訳が違う。今回の御魂はその姿を人の形へと変えていったのだ。

 

躰は真っ黒。こちらを見据えてくるのは真っ赤なモノアイ。その下には三日月のような笑み。四肢の詳細も見てくるにつれてラグナもどんどん不機嫌になっていく。

 

腕の脇や足も鋭利な刃が形成される。髪の先にも巨大な刃物が出来、躰から八つの破片が飛び出ると針のようなペタルとなって御魂を守るように囲む。

 

「…例え形は違っても…こっちの世界に来ようとも、俺とアイツの腐れ縁は切れねえみてえだな…」

 

苦い顔をしながらもラグナは大剣を構える。対して人型となった御魂は抑揚のない声で言葉を並べる。

 

《起動――起動――起動——起動――認識――》

 

この御魂が与える試練。それは敵対したものにとって縁深い強敵と戦うこと。単に力が強いや憎いでは決定づかない。最も相手を動揺させることの出来る姿で御魂は戦うのだ。

 

これから先の戦いの苛烈さ、そして例え本人でなくともこの相手をすることに対して複雑な思いを持つラグナを余所に御魂は自分の方を見ると機械の如く淡々とした口調が愛しい恋人に甘える少女のものへと変貌する。

 

《対象を確認――――――――――――あ~~!!ラグナだぁ~~!!久しぶりだね!四回目…だっけ?》

「……少なくとも俺が『テメェ』と会うのは今回で初めてだよ。つーか『そのツラ』と『また』戦うたぁ…クソ、めんどくせえ」

 

忘れるはずのない声でこちらに話し掛け、かつて自身と死闘を繰り広げた次元境界接触用素体の少女、『ν(ニュー)-13』の姿となった御魂に大剣の柄を握るラグナの力は一層強くなっていった。




バーテックスの身体と御魂の設定ってなんか黒き獣の躰と心臓の設定にちょっと似てね?丁度13星座だと蛇使い座があるし、蛇(黒き獣)と使い(ニュー)で成立できる。しかも偶然なのか、ν-「13」だし。

そう思った故に今回の黒き獣がバーテックスとして登場させていただきました。

さて今回登場したのは御魂が化けた姿ではありますが、ブレイブルー髄一のヤンデレヒロイン、ν-13!!いや、元々登場させる予定はなかったけど、やはりブレイブルーにおいてもラグナvsニューは色んな形で繰り広げられるので、ここでも出させていただきました。

次回は勇者たちがどうするのか、そして少しだけラグナ対ニュー!!それではまた。

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