探偵は秘密がお好き   作:ねことも

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(2)の続き。
  


苦悩する契約者と、執事の正体(3)

 

「まったく…とんだ甘ちゃんネ」

 

不意に聞こえてきた声に、アンジェリーナは目を開けて後方を振り返った。

 

「貴方は…」

 

「ごきげんよう。マダム・レッド…

今宵は喧騒が絶えないドラマチックな夜だと思いませんか?」

 

ジェームズの執事のグレルがそこにいた。

妙な事に…彼はいつものおどおどした気弱な雰囲気はなく、どこか芝居がかった口調で

挨拶をしてきた。

 

その不自然な態度に、アンジェリーナは警戒の念を露わにする。

ちょうど、ハートレス退治が一段落して安堵の息を漏らしていたシエルもまた、

突然の乱入者を訝し気に見つめていた。

 

「…グレルさんはどうしてこちらに?」

 

二人の声を代弁するように、リエは平静な表情を崩す事無く質問を投げかけた。

 

「ご主人様を追いかけてきたんです。

…体調がすぐれないのに、寒い夜中にあんな火遊びをしていたなんて

…驚きましたよ」

 

「そうですか…では、質問をしてもよろしいですか?」

「ええ、どうぞ」

 

「グレルさん、貴方のご主人様はジェームズさんですか?

それとも…切り裂きジャック?」

 

リエの問いかけに、グレルは口元を三日月のように吊り上げた。

 

 

「そうですねぇ、教えてあげてもいいですけど…アナタはどっちだと思います?」

「【どちらでもない】…と個人的には推測しています」

「それはナゼ?」

 

「切り裂きジャックが犯した一連の事件を検証している間、彼以外にも共犯者がいるか

いないのかも合わせて調べていました。結果として…切り裂きジャックは自らの能力を

用いた単独犯で、協力者の影は見当たりませんでした」

 

 

それに…とリエは付け加えるように言葉を続ける。

 

 

「もし、貴方が関与していたなら…メアリ・ケリーさんは確実に殺されていたでしょう。

他の事件も、些細な証拠を残さずに完璧に未解決事件を作り上げていたはずです」

 

 

この数年の間に切り裂きジャックが犯した事件の内の数件で、彼の者の犯行だと示す

証拠がいくつか残っていた。万人には分からなくても、推理力に長けた人物がいたら

足跡を辿って犯人を割り出せるものばかりだった。

切り裂きジャックは狡猾なタイプだが、完璧に証拠を消す事はできなかったようだ。

 

 

「そして、一番の理由は貴方の纏う【気】を感じなかった事。

人間とは異なる…特有の神気が残っていなかった。

それこそが、貴方が『切り裂きジャックの味方ではない』という何よりの証拠です」

 

 

アンジェリーナはゴクッと喉を鳴らした。

リエの推理が正しければ…グレルは人間ではない!

 

 

 パチパチパチパチ

 

「エックセレント! 100点満点だわぁ~v」

 

 

グレルが拍手をして、賛辞の言葉を口にした。

 

「お前は…一体何者だ?」

 

シエルが目を鋭くして問いかけると、グレルはリボンとメガネを外し出した。

 

「“アタシ”は女優なの。それもとびきり一流よ」

 

「ええ、とても素晴らしい演技力でした。

私もよく観察しなければ、分からなかったくらいの実力でしたね」

 

「ウフフ、そう言ってもらえると光栄ネ☆」

 

月の淡い光がグレルの全身を映し出す。

光を浴びるや…グレルの髪色が闇を連想させる黒から、鮮血を思わせる赤へ染まっていく。

 

「やっと本当の姿になれた!

スッピンで人前に出るのは恥ずかしかったのヨ。ンフフッv」

 

「…な、なんか…キャラが一気に変わってない?」

 

乙女な口調で喋るグレルに、アンジェリーナは顔を引くつかせる。

 

「改めて、グレルさん…貴方の本当の目的を教えて頂けますか?」

 

「そうね…パーフェクトな回答をもらっちゃったし、ご褒美にリエちゃんのリクエストに

応えてあげましょうカ」

 

黄緑色の目を爛々と光らせて、グレルは話していく。

 

 

「アタシはね、女優とは別に【本業】があるの。

数年越しの仕事を終わらせるためにココに来たワケ。

…ダカラ、とっとと狩らせてもらうワヨ!

 

 

 

【苦悩する契約者と、執事の正体】

 

 

 

そう宣言するや、グレルは大きく跳躍した。

空中を移動する中、彼は大きな武器…チェーンソーを出現させて両手に構えた。

ブォンッ!と鋭い機械音を鳴らしながら、グレルが辿り着いたのは…戦闘の真っ最中の

切り裂きジャックとセバスチャンのところだ。

 

「まさか…グレルの目的って…!?」

 

アンジェリーナの顔が蒼白になっていく。

グレルの乱入は予想外だったのか、セバスチャンと切り裂きジャックの目は彼へ向かう。

 

「ごきげんよう、ようやく会えたわネ…切り裂きジャック」

「だ、ダレだ…!?」

「あーらやだ、気付かないなんてガッカリさせないデヨ~」

 

次の瞬間、動揺する切り裂きジャックの肩から斜め下にかけて亀裂が入った。

 

 

――――ブシャァアアア

 

 

その身に取り込んでいたシャドウ達が消え失せると同時に、血が飛び散っていく。

 

「正解は……アナタの執事DEATH★!」

 

真っ赤な血で濡れた衣装を気にする様子もなく、グレルは狂気に満ちた笑みと共に

決め台詞を言う。

 

…切り裂きジャックの頑丈な身体にダメージを与えた。

その場面を目の当たりにしたシエルの額から汗が流れ落ちる。

 

「あの尋常じゃない素早さ、強力な武器……奴も悪魔なのか?」

「いいえ、違います」

 

リエが緩慢に首を振り、それを否定した。

 

「グレルさんが持っている武器は特殊なもので、魂を刈るための道具です」

「魂を刈る…それって…」

 

信じられない顔でアンジェリーナは、リエに説明を求める。

戦いの現場を真剣な表情で見つめながら、リエはグレルの正体について言及する。

 

 

「この世界で人の魂を刈り取り、審査して回収するのは…

神と人との中立であるはずの存在の役目。

グレルさんの正体は、その仲介役とも言える種族…【死神】です

 

 

 

【つづく】

  




※グレルは変身を解いて、本来の姿へ戻った!

※ストックが切れたので、更新が不定期になります。

  
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