11月11日、土曜日。
空気こそ冬の様相に近づいているものの、空模様は晴れ晴れとなり、デートの日としては絶好の機会だ。ここは相変わらず幸運に恵まれたと言えよう。
右耳に付けられた小型インカムの調子も好調そのもの。士道がわざわざ調整せずとも、上空一万五千メートルで滞空する〈フラクシナス〉との通信もバッチリ……なのだが、どうにも気になって士道はインカムの調子を確かめるようにこまめに動かしてしまう。なぜかと言いうと。
『耳元を仕切りに気にしていると、鳶一折紙が不審に思ってしまいますよ。ほら気楽に気楽に』
「……気にしてる原因、わかってて言ってるよな?」
顔が引き攣っているのが自分でもわかる。原因は、その声。どこからどう聞いても琴里のものではないそれは、何を隠そう精霊・〈アンノウン〉のものだった。
これから折紙とのデートだと言うのに、どうしても気になってしまう士道は再三の形になるが通信先の琴里へ声を飛ばした。
「本当にいいのかよ、琴里」
『仕方ないでしょ。大体、許可しなくても無許可でやるつもりでしょうし、それならこっちの指示が聞こえる範囲に入ってもらう方がマシなのよ』
「ぐ……」
正しくぐうの音も出ない正論だった。そう、何を隠そうこのデートのサポート役、というより半監視役に〈アンノウン〉、そして狂三までついてしまったのだ。
『士道さん、わたくしのことは気になさらないでくださいまし。わたくし公認のデート、楽しんでくださいませ』
「気になる!! 逆に気になるから!!」
大層愉快なんだか、本心ではどうなのだかわからなくなる狂三の声に叫び返す。くすくすと小さな声が聞こえてくる辺り、からかわれていると士道は小さくため息を吐いた。
まあ、今までも隠れて精霊とのデートを見ていたらしく、今回は特例措置でこういう共同戦線のような形に――士道のあずかり知らぬところでいつの間にか――決まってしまっていた。本来、精霊封印の後を考えれば精神的な影響もあり〈ラタトスク〉は他の精霊攻略、もっと言えばデートなどを見せるのは悪影響だと否定的なのだが……狂三はそれこそ今更、〈アンノウン〉も同じくと判断されたらしい。懇切丁寧に説明したが、理由の半分以上は琴里が言うように、勝手に動かれてはたまらないというのが本音なのだろう。
目的地に向かって歩きながら、士道はキョロキョロと辺りを見回して口を開く。
「……ちなみに、どっから見てるんだ?」
『少なくとも、あなたに見つかるような隠れ方ではないのでご安心を』
全く安心できないし全く落ち着かない。
「そうかい……けど、大丈夫なのか? 折紙がお前を見つけたりしたら」
『ああ、それは大丈夫です。会って確かめたので』
「……はぁ!?」
『……はぁ!?』
兄妹仲良くハモった驚きだった。無論、街中で好奇の目に晒されるのは士道だけなのだが。はぁ、と狂三のため息のようなものまで聞こえた気がしたが、とにかく士道は真偽を確かめるために追求を投げかけた。
「いつ!? どうやって!? っていうかなんで会って大丈夫だったんだっ!?」
『……質問は一つずつにしてくださいよ』
出来るか、この状況で。何だか前の世界の折紙の行動力が乗り移ったかのような〈アンノウン〉の行動に、頭が痛くなり立ち止まって物理的に頭を抱えた。
『いつかと言われれば昨日ですよ、昨日。ほら、鳶一折紙が恋愛相談室を開いてたでしょう?』
「な、なんでお前がそれを知って……」
『だから、その時に会いに行ったんですよ。ああ、もちろん格好は変えましたけど。狂三の制服を借りて』
〈アンノウン〉の言う通り、お馴染み士道のクラスメイトの亜衣麻衣美衣になぜか祭り上げられ、折紙が昨日の昼休みに恋愛相談室を開いていた。中身は、なぜか妹がいない殿町宏人が「俺の妹に手を出すなよ!?」と地球外生命体の兄に身体を乗っ取られたのか心配になる言動をし始めたり、その他もろもろ色々と相談内容を疑うような反応が士道に降り掛かり、折紙当人に話を聞く時にも少し――少しどころではない――トラブルがあった一件である。
相談室、と言っても昼休みの僅かな時間で〈アンノウン〉が折紙と接触していたなど信じられない。
「……狂三?」
『……わ、わたくしは悪くありませんわ。ちゃんと問題ないと予想して、結果的に問題はありませんでしたし……たまには、この子が言い出したなら叶えて差し上げたいものですし……』
『思った以上にダダ甘になってるわね……』
珍しく歯切れが悪い言い訳の内容に、琴里がそう呟いた。なんと言うか、今まで我儘を言ってこなかった子供を存分に甘やかす親のようだ。士道も、今回ばかりは狂三の味方はしてやれそうにない。つんつんと指を合わせて言い訳を並べる狂三が目に浮かんだ……可愛いな、と平常運転したのはさておき。
さすがに、知らない生徒が入り込んでいたなら大なり小なり話題なる――――――そこで、ふと耳にした噂が士道の頭を掠めた。
「もしかして、『男子がぶっ倒れるくらいの美少女がいたはずのに誰もその顔を覚えていない怪奇現象。来禅高校七不思議の一つ』ってお前のことか!?」
『なんで私一人のことなのに七不思議になっているんですか……?』
「……さあ?」
人というのは噂を盛りたがるので、悪ふざけで段々と話が大きくなっていったのだろうか。真相の程は不明だったが、否定されなかったということは、この噂の正体が〈アンノウン〉で間違いないということだ。
『……私だって考えなしじゃないですよ。要は、〈アンノウン〉が私だと鳶一折紙が判別できなければ良い話なんですから。私にとっては、霊力を隠したまま人の記憶に印象を残さないようにするなんて、そう難しいことではありません』
ちゃんと、狂三から理論のお墨付きはもらいましたしねと白い少女は付け加えた。確かに理にかなっている方法ではある。どちらかと言えば、頑なに白いローブ以外の姿を見せなかった〈アンノウン〉が、あっさりとその外装を脱いで学校内という近場にいたのがあまりにも衝撃的なのだが。
しかし、その理屈で言うと少し疑問が生じる。琴里も同じだったのか、士道より先に彼女が〈アンノウン〉に問いかけた。
『じゃあ、なんで噂になってるのよ。印象に残らないんじゃなかったの?』
『……それだけ私の素顔が強かったってことじゃないですか? 私、〝これ〟だけは狂三やあなたにも負けないくらい自信あるんですよ』
士道は少女の言葉に意外なものを感じていた。以前、あれだけ自己を否定していたというのに、その言葉には偽りは見られず、それどころか少し誇らしげなもののように聞こえたのだ。
人が隠しているものを無理やり暴く趣味はない、と散々思ってはいるのだが、そんなことを言われると気になってしまうのが人という生き物らしい。士道がそうであるように、やはり琴里も同じであったらしく、また士道より先に声を発した。
『へぇ、それは是非拝んでみたくなったわね。ご利益もありそうだし』
『……あなたが見ても、特に意外性はないかもしれませんよ』
『どういう意味かしら?』
『
『……』
それは、精霊たちのことを言っているのだろうか。白い少女の相も変わらず曖昧な物言いに、士道は訝しげに眉を顰める。
だが、肝心な部分を士道はまだ聞いていなかった。
「なあ、そこまでして折紙に会いに行って、何を話したんだ」
『……まあ、とりとめのない簡単なお話ですよ。話すほどのことでもありません。それより、早く待ち合わせ場所に行った方がいいんじゃないですか?』
「む……」
露骨な態度で煙に巻かれてしまった。とはいえ、今日は〈アンノウン〉を攻略するための時間ではなく、折紙とのデートの時間だ。少女の言っていることは正しい。
「そうだな……こっちの折紙は違うから確実とは言えないけど、もう待っていてもおかしくない」
時刻は十時十二分。約束の十一時には早すぎるのだが、前の世界で色々事情があり折紙に嫌われるための計画の一環で、一時間以上デートに遅れて行った時があるが、不動明王が如く士道を待っていた少女が折紙なのだ。早く行く理由はあれど、時間ちょうどに行って待たせる理由はないだろう。士道の深読み過ぎだというなら、その分は自分が待つだけで良い。
士道の言動に思うところがあったのか、琴里が含みのある声色をインカムから発した。
『ふーん、随分詳しいのねぇ。ただのクラスメートのわりには』
「……もとはといえば、折紙と知り合うきっかけになったのはお前らなんだけどな」
今でもよく覚えている。元々のきっかけがあったとはいえ、折紙との会話や接触が多くなったのは琴里の〝訓練〟で折紙を口説くことになったのが根本の原因なのだ。今となっては、折紙と親しくなるきっかけになって感謝がないわけでもないが、それとこれとは話が別だ。
『さぁー、私には何のことかさっぱりわからないわね』
『士道さん、わたくしにもわかりませんので、ご説明願えませんでしょうか』
「ハハ、ナンデモナイナンデモナイヨー」
この世界の琴里は本当に知らない上に、完全にやぶ蛇をつついてしまった士道はデート開始前から脂汗を滲ませることになった。
『口は災いの元、ですよ』
「……ご助言痛み入るよ」
逆に何も言わなすぎるのもどうかと思うがね、と皮肉を返せる余裕もなく、士道は力なく返答した。
そうして、いつもより賑やかなサポートという名の半出歯亀とくだらない話をしている間に、士道は駅前広場の噴水前に辿り着いた。
折紙はそこにいる。秋らしいカラーのスカート。可愛らしいと言えるブラウスとカーディガン。以前の世界の折紙であれば、あまり意識して着ることのないスタイルに、士道は少し息を呑んだ。
だが、それも一瞬。折紙が美人なのはわかっていることだ。それに見惚れるのも、男として見る目があるのだとポジティブに考えよう。さあ、鳶一折紙を救うため――――――
「五河くん? 早いですね」
「はは……それはお互い様じゃないか?」
「ふむ……」
出だしは悪くない。デートを観察しての〈アンノウン〉の感想がそれだった。士道が折紙を思わず下の名前で呼んで、それを上手く利用して名前を褒めることで好意的な展開に持ち込めていたし、折紙が士道からの提案で彼を下の名前で呼ぼうとして、結局は恥ずかしくて初々しい反応を見せていたりと……など、前の世界では見られない初心な少女のデートというのは、なかなかに興味深いものがある。
と、折紙がこれからどこへ向かうのかと士道へ問いかけた瞬間――――――〈フラクシナス〉からサイレンが鳴り響いた。
「これは……」
『あら、あら。これが噂の……』
知らないわけではなかったが、こうして擬似的に共同戦線を張るのは初めてなので、リアルタイムで観測できるのも初めてだ。
①『「実は、君と見たい映画があるんだ」映画館で恋愛映画を』
②『「買い物をしようと思っていたんだ」楽しいショッピング』
③『「まだるっこしいのはやめにしないか」大人のホテルに直行』
村雨令音の操作する解析用顕現装置と連動した〈フラクシナス〉のAIが、精霊の心拍や微弱な脳波などの変化を観測し、瞬時に対応パターンを画面に表示――――――というシステムらしい。 要は、精霊とのデートに欠かせない〈ラタトスク〉側のフォローシステム。いつもインカムから士道へ飛ばされる指示は、これの影響を多大に受けている。
「……んー、狂三はどう思います?」
『折紙さんを普通の女の子と判断するのであれば、②の選択肢が堅いですわね』
当たり障りのない無難な回答だ。少女としても同意見だし、〈ラタトスク〉側も似たような会話状況を見せている。①も悪いわけではないが、これから会話をしていく中で会話のない空間に入ってしまうのは惜しい。それを考えたら、②はこれ以上ない選択肢、なのだが。
「…………」
狂三がこういう言い方をするということは、彼女も内心では気になっているのだろう。そう、
そしてその気持ちは、以前の折紙を知る士道も同じだった。
『ちょっと待ってくれ』
『どうしたのよ』
『――――――その選択肢だったら、試してみたいことがあるんだ』
その時、〈アンノウン〉の思考は士道と完全にシンクロしていたと言える。彼は選んだ、禁断でありながら
即ち――――――お城のような大人のホテルを。
瞬間、〈フラクシナス〉からけたたましいアラームが響き渡ったのは言うまでもない。
『感情値、安定しません!!』
『鳶一折紙!! 動揺しています!!』
『ったりまえでしょ何考えてるの士道おおおおおお!!』
珍しく本気で焦っている琴里の叫び声が、少女と狂三の耳にキーンと伝わってくる。まあ、兄が精霊とデート中にも関わらず、突然こんな奇行に走ればそうもなるだろう。当の士道は全く反省もなく至って真面目なのだが。
琴里が大慌てで誤魔化しの指示を飛ばし、通りすがっただけということで表としての体勢はどうにか事なきを得た。
『折紙なら絶対ここだと思ったんだがなぁ……』
『いやどういうことよそれ』
『ですが――――――好感度、上がっているのではなくて?』
狂三の言葉にはぁ? と琴里が訝しげな声を返した。
『ちょっと、狂三までどうしちゃったのよ。そんなわけ……』
『あ、いえ司令。それが……感情値は変動していましたが、狂三ちゃんの言う通り、好感度は微かに上がっているような……』
『は?』
クルーからの返答を聞き、琴里は今度こそ信じられないという口を大きく開いているだろう声を発した。
一つ目の目的地をスルーし、次の議題はショッピングの場所。当然、三つの選択肢が再び用意された。
『①セレクトショップで彼女をコーディネートしてあげよう』
『②ペットショップで動物と戯れ、二人の距離を縮めよう』
『③強力な精力剤や媚薬の並んだ裏通りの薬屋に行こう』
これが趣味の知れている、たとえば狂三が相手なのであれば②が有効である。しかし、そうでない折紙なら無難な選択肢で①になるだろう。
『士道、聞こえる? ここは順当に①――――』
『いや③しかないだろこれは』
「五河士道に同意見です」
『……申し訳ありません琴里さん。わたくしも同じですわ』
むしろ、鳶一折紙を語る上で③があるのなら外せるわけがない。何だか少し楽しくなってきた気までしてきている。白い少女は至って大真面目だった。
『は? 何言ってるよあなた達。どう考えても年頃の女の子が行くようなところじゃないじゃない!!』
『いやでもほら、折紙だし……二人もそう思うだろ?』
「ええ、鳶一折紙ですから……」
『本当に申し訳ありません、琴里さん』
『どういうこと!?』
意外と常識的な意見が増えてきた狂三まで巻き込まれていることに、琴里も混乱を隠すことなく悲鳴にも似た声を上げている。
『どういうことって言われても……折紙と言えば精力剤、精力剤と言えば折紙みたいなところあるじゃないか』
『いやちょっと待ってマジで意味わかんない。あなた達の知ってる『鳶一折紙』って、一体どんな女の子なのよ』
どんな、と言われると大変説明が長くなって難儀なことになりかねないのだが、短くまとめるなら……ほぼ三人の意見が一致してしまう。
『どんなって……そりゃあ、各種精力剤を煮詰めた液体を飲ませてきたり、家に逃亡防止用のトラップを仕掛けてたり』
「監禁した相手にペットボトルの強制間接キスをしたあと、そのペットボトルの口をひと舐めしたり」
『……き、危険な戦場に無謀な装備で士道さんを助けようと駆けつけたり? ですわ』
ついにいたたまれなくなったのか、狂三がフォローのようでフォローになっていない解説を入れ始める。なお、監禁エピソードは更に続きがあり、トイレの世話をしようと迷いなく士道のズボンに手をかけた実績まで残されている。これらのエピソードが、何一つ膨張のない実話なのが鳶一折紙が鳶一折紙足る所以だった。
『はぁ!? そんな機械生命体みたいな女の子いるわけないでしょ!!』
それがいたんです。機械生命体みたいな女の子が。前の世界では……少なくとも、この世界でも今の折紙の中には。
なお、結局③の選択を選んだ結果は――――――
『ごめんなさい五河君。やっぱりこのお店、私にはよく分からないみたい』
『あぁ、そっか――――――ん? 折紙、これは……?』
『え――――えぇぇぇぇぇっ!? な、なんで私こんなものを――――――!?』
感情値に恐ろしい波を作ったのは、言うまでもない。
「私、どうしちゃったんだろう……なんであんなの抱きしめて……」
折紙自身、前の世界……というより、恐らくは彼女の中に眠っている折紙の意思が介入しているとしか思えない行動に困惑しているのか、落ち込んだように眉根を下げる。
とはいえ、こうなったのはあの選択肢を選んだ士道の責任だ。彼女が落ち込んでしまう必要はないと、士道はフォローのために口を開いた。
「気にするなって。こっちが気紛れに妙な店寄っちゃったのが悪かったんだし。お詫びになにか一着プレゼントするよ。何がいい?」
既に困惑する折紙を落ち着かせるために場所を入れ替え、お洒落なセレクトショップの手前までは来ている。値段は、士道だけならしばらく趣味に何も割けなくなるような値段の服ばかりだが、今の士道のバックには〈ラタトスク〉がいる。
出会ってまだ日も浅く、士道が男子高校生という立場を考えれば折紙から見ても意外な提案だったのだろう。折紙が慌てて両手を振りながら声を発した。
「そ、そんな悪いよ!!」
「大丈夫だ、任せろ。その代わり――――――その服を着た姿を最初に俺に見せてくれよ。それがお礼っていうことで」
「……五河くんって、結構女泣かせ?」
照れたような折紙の虚を衝く言葉に、士道は素っ頓狂な声を発していないか慌てることとなった。
「へ? な、なんで……?」
「なんか、手馴れてるなー、なんて」
「そ、そんなことないって!!」
「ふふっ、冗談だよ――――――じゃあお言葉に甘えちゃおうかな。せっかくだから五河君が喜びそうな服を選ばないとね」
冗談めかしながらも、少し上機嫌になった口調で店内を見て回り始める折紙。結果的には助かったが、士道の方は大いに動揺させられたと軽く息を吐き出した。まさか、折紙にあんなことを言われることになるとは。
『うぷぷ……女泣かせですって。見抜かれてるじゃないの』
『良かったじゃないですか。鳶一折紙のお墨付きですよ。あなたの場合は、
「勘弁してくれよ……てか、〈アンノウン〉はどういう意味だそれ」
インカムからいつもより多く響く声に、ため息を交ぜたまま言葉を返す。立場上、本来の意味で女泣かせをしでかすことになっているのは否定しないが、色んな意味でとはどういう意味なのか。
『どういう意味って、そのままの意味ですよ。行動そのもので物理的に泣かせに来るじゃないですか、あなた』
「物理的にって……」
言い得て妙な話だ。散々そのことで皆に怒鳴られていれば、〈アンノウン〉の言動の意図もある程度は読み取れる。何と答えて良いものか、と居心地の悪さを感じていると、白い少女は言葉を続けた。
『悪いとは言っていませんよ。まあ、我が女王を泣かせるのは程々にして欲しいものですが』
『誰が、いつ、どこで、泣いていましたの?』
『あら、狂三の泣き顔なら是非私も見てみたいわね。写真とかある?』
『ありませんわよ。あったとしても、琴里さんには絶対お見せしませんわ』
『……んー、泣き顔って程じゃないですけど、左目にコンタクトを入れようとして――――』
『いつの話をしていますのっ!!』
『……シン。折紙は店の奥の試着室に入ったようだ。見失わないようにね』
「あ、はい。ありがとうございます、令音さん……」
デート中に女子会に放り込まれた男子の気分を味わうことになるとは、と辟易してしまう。気になる話題ではあるが、女子のノリに突っ込んでいけるほど士道の精神は強靭ではないし、今は折紙を追わなければいけない。
追うと言っても、令音からのフォローに従えば自ずと出来ることなど限られる。何やら騒がしくなってきた耳元にソワソワしつつも、折紙が試着室から出てくるまで適当に時間を潰して――――――
『――――――きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』
「っ!? どうした、折紙っ!!」
響いた悲鳴に試着室の前まで駆け寄り、声をかける。すると、士道の声に反応する余裕さえないのか折紙はただならぬ雰囲気で声を発した。
『わ、私、なんでこんな……』
「くっ、すまん折紙!! 開けるぞっ!!」
『えっ……? あ、だ、駄目、五河く――――――』
何かあったのなら、折紙の身の安全が最優先だ。制止を振り切った士道は試着室のカーテンを開け。
「……へ?」
白く麗しい肢体を包む紺色の生地に、可愛らしい耳と尻尾が揺れる背徳的な絵面を見てしまった。ついでに言えば、革製の首輪までついている。
「折紙……その格好――――まさか、俺の喜びそうな服って……」
「違うの!! 誤解しないで!! こんな服、手に取った覚えもないのにぃぃぃぃぃぃっ!!」
格好に似合わない、悲痛な折紙の悲鳴が響き渡った。
『……これ、前の世界でも着たことがあるってことですかね?』
『わたくしが知るわけがないでしょう』
投げやり気味な狂三の言葉と、ビーッ! というアラームが耳元から聞こえてくる中、士道は必死に折紙を宥める。
『ちなみに、どうなのですか士道さん』
……頼むから、話をややこしくしないで欲しい。実際、記憶に強烈に残っている光景を思い出し、士道はある意味同時に行われる
これを読んでいるということは、私はもうストックを書ける状態ではないということでしょう。嘘です県外のイベント行ってるだけです。ストック減らしすぎたら投稿感覚伸びちゃうんですけど。
さり気なくアンコール1、5巻のお話が出ましたが、まあ余程ありえないものでなければ似たようなことが起こっていたというアレです。うち5巻の方は、また近いうちに……かもしれません。
わちゃわちゃデート回ですが、この辺狂三側で進行していたのもあって〈フラクシナス〉の選択肢も初登場ですね。初登場でこれは酷い。狂三がツッコミ側に回るのか(困惑)
次回、デート大詰め編。さぁさぁ、歴史に消えた舞台の幕が開かれます。感想、評価、お気に入りなどなどお待ちしておりますー。次回をお楽しみに!!