デート・ア・ライブ 狂三リビルド   作:いかじゅん

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後書きも本編も長めな章クライマックス、どうぞ。








第百七十四話『神を超え往く魔王(キャスリング)

 士道は、それを夢かと認識しかけた。目の前の光景は、あまりに現実から掛け離れていた。澪の手で消されかけた士道が見た、走馬灯とも思えた。

 けれど、彼女は――――五河琴里は、そこにいる。

 

 

「琴……、里」

 

 

 雪のように舞い散る白い炎。舞い降りた天使の証明である白い翼。烈火の輝きを放つ焔の双眸。天女の羽衣を白く、白く――――少女のように、白く。

 白い炎と混ざり合った袂を一つ振るい、赤い髪を風に靡かせ、茫然自失の士道が零した己の名を、彼女は確かに返したのだ。

 

「なぁに、おにーちゃん(・・・・・・)

 

 にこりと笑った琴里の顔は、人懐っこい、愛する妹そのもので――――安堵の涙が零れてしまうことを、止められるはずがなかった。

 

「琴、里……琴里!!」

 

「うん、お待たせ。狂三も久しぶり……になるのかしら」

 

 たはは、と苦笑しながら狂三へ視線を向ける琴里。思い返せば、確かに二人の顔合わせは少なかった気がするが、狂三はそんなことよりと言わんばかりに大きく目を見開いて驚きの感情を発露していた。

 

「……琴里、さん?」

 

「そうよ? 何よ、お化けでもみたような顔しちゃって。それ、あなたの専売特許じゃなかった?」

 

 琴里の変わらない、琴里らしい返答に、今度こそ狂三は、普段は見せない破顔の表情になって、涙を見せないように目元を必死に拭った。

 

「っ……ああ、ああ。その憎まれ口、琴里さん、ですのね……!! 本当に……っ!!」

 

「狂三……」

 

 狂三らしくない――――そう、らしくない姿を見せてしまうほどに、彼女は安堵し、そして追い詰められていた。

 長い間共にいた大切な子は、自分を庇い消滅した。やっと憂いなく向き合えるはずだった友達を一瞬にして失って、希望を次々と打ち砕かれ、それでも絶望の未来に立ち向かい続けていた。そうして芽生えた十香という希望でさえ、目の前で奪われた。

 どれほど狂三の精神が強固であろうと、彼女は無敵の存在ではない。友を無常に殺され続け、人より多くの未来を視ることになって、心が磨り減らなかったわけがないのだ。

 絶望的な状況で、遂に万策尽きたと思われた瞬間、殺されたはずの琴里が駆けつけてくれた。ありえなかった未来が、目の前に開示された――――それは狂三と士道にとって、どれほどの救いとなったことだろうか。

 急いで傍に駆け寄る士道と、狂三を見た琴里は心を痛ませるように眉をひそめて声を発した。

 

「……無理させたわね。二人とも下がってなさい。ここからは私に任せて――――司令官も、たまには身体を動かさないとね」

 

「な……待ってくれ、俺たちも――――」

 

 純白の戦斧を肩にかけ、向き直る琴里へ士道は慌てて静止を投げかけた。

 琴里がどうやって生き延びたのか。なぜ白い少女と同じ翼(・・・)を生やしているのか。その白い炎は一体、どういうことなのか。疑問は尽きないが、琴里は澪と戦う気なのだろう。

 ――――無茶だ。澪は十香を含めた三人でも敵わない、生み出した精霊の原初存在。神に等しい力を持つ。今の琴里がどのような状態かはわからないが、それでも一人で行かせるわけにはいかない。

 そんな思いで言葉を発した士道……それを遮ったのは、意外な人物だった。

 

 

「……琴里」

 

 

 それは、恐らく放心や驚愕。信じられないものを見た士道たち以上の感情を、起伏の薄かった彼女が見せていた。

 あの――――崇宮澪が。

 

「あら、どうしたの令音。そんなあなたの表情、初めて見たわ。いやね、可愛い顔が台無しよ」

 

「……なぜ、君が。君は、私が」

 

「――――殺した、でしょう」

 

 琴里が、真っ直ぐに言葉で穿つ。それに事実以上の感情はない、と士道は感じた。……少しはあるのかもしれないが、少なくとも憎しみの類は乗っていないように思えた。

 けれど、澪は僅かながらにぴくりと眉を動かす。それも、これまで冷静に事を運んでいた澪らしくない動揺だった。

 

「ま、そうよね。私も死んだとばかり思っていたんだけど――――綺麗な死神(メイド)さんに、命を救われたのよ」

 

 言いながら、少しだけ顔を反らして狂三を見遣り、フッと複雑な表情を見せた琴里。だが、直ぐに澪へ視線を戻してしまい深く読み取ることはできない。

 

「だから、殺されたっていうのは間違いないわ。あなたにとっては殺し損ねた、の方が正しいかしら」

 

「……その力は、なんだい?」

 

 琴里の纏う白い炎と、翼。それを見て、澪が訝しげな顔で問う。それによって、琴里の力は澪の想定を超えている――――恐らくは、狂三と十香以上に〝イレギュラー〟な状況なのだということが理解できた。

 澪の問いに、琴里は皮肉を混じえた声音で答える。

 

「わからない? これ、元々はあなた(・・・)の力じゃない」

 

「……あの子(・・・)、か。だが、君とあの子の霊結晶(セフィラ)は私の中にある」

 

 回収された。士道と狂三はそれを見ていた。しかし、今琴里が纏っている力のそれは、士道が感じる限り澪が取り込んだ〈灼爛殲鬼(カマエル)〉と、もう一つ(・・・・)

 士道たちを背にした琴里が、困惑する令音をくつくつと笑いながら声を返す。

 

 

「自分のことになると、何にもわかってないのね、令音。私たちを騙し切ったあなたが言ったんじゃないの――――あの子は、『私』だって」

 

「……!!」

 

 

 琴里の言葉で、士道は気づいた。同時に同じことを思ったのだろう狂三も、士道と顔を見合わせる。

 

「狂三、あいつが……」

 

「ええ、ええ。どうやら、そのようですわ――――本当に、困った子ですこと」

 

 複雑そうに零した狂三に、大いに同情してしまい士道は苦笑を漏らす。

 間違いない。あの過保護な従者(・・・・・・)が何かを仕込んで(・・・・)いたのだ。それも、ここに至るまで士道や狂三どころか澪さえも気がつけない、何かを。

 澪も何かの答えに行き着いたのだろう。細く、しかし深い息を吐き琴里へ――――自分の中にいる少女へ、視線を向けた。

 

「……困った子だ。個人として私の邪魔をする気はないと、あの子は言っていたはずだが」

 

「ああ。あの子ったら、そんなこと言ってたのね。でも、間違ってないじゃない――――あの子は(・・・・)、あなたの邪魔をしてないわよ」

 

 きっとしたり顔をして、少女の代わりに言葉を吐いた琴里。

 その通りだった。確かに、ここに至る少女の妨害策――――しかし、少女は(・・・)澪と直接敵対はしていない。しているのは士道や狂三、精霊たち……少女の力を継いだ、琴里だ。

 あまりにも詭弁だが、真実を語らない少女らしい物言いだ。澪も、少女の言葉を鵜呑みにした自身を戒めるように目を細めた。

 

「……そうだね。あの子は、そういう子だ。狂三のためなら、自分だって騙してみせる――――さて、琴里」

 

 ふと、会話を断ち切った澪は、細めた目で琴里へ舐めるように視線を向けた。

 

「っ……」

 

 その仕草に士道は息を呑む。幾度か対峙して、感覚でわかる。それは、澪が力を行使する直前に見せる、澪なりの殺気に当たる行為だと。

 

「……君は生き延びてなお、私の邪魔をしに来た。そういうことになるのかな?」

 

「半々ね。あなたに言いたいことが山ほどあったから、そのついでに邪魔しに来てあげたわ。大人しくしてられない私の性格、よく知ってるでしょ?」

 

「ああ、だから琴里――――逃げてくれないかい?」

 

 そんな、意外すぎる澪の言葉に士道と狂三は目を見開き、琴里が戦斧を持つ指を僅かに揺らし、声を返した。

 

「なんですって?」

 

「逃げてほしい。そう言ったんだ」

 

 琴里が聞き返すも、返答は提案と変わりない。

 

 

「今さらどうしたっていうのよ。霊結晶(セフィラ)を回収するのに、鬼と見間違うくらいの働きをしてたじゃない」

 

「……幾分かの霊力は欠けてしまったが、シンを不死にするには今ある力だけで十分だから――――親友(・・)を、二度も殺したくはない」

 

「――――――」

 

 

 真摯に、傲慢(・・)に、告げられた言の葉。

 澪にとって、嘘のない願い。琴里を殺したくない気持ちは、本当。澪は一度であっても、殺意で精霊を殺したりはしなかった。精霊たちを、娘のように大切に想っていた。

 だからこそ、令音の親友で澪の娘のような存在の琴里を、二度殺めることはしたくないと言っている。

 精霊の力を回収した時点で、既に雌雄は決した。琴里が逃げるなら、澪は追いかけない。澪はあくまでシンを永遠の存在とするために――――だが。

 

 

「ねぇ、令音――――それ、私が聞き入れると思う?」

 

「……ん、思わないな」

 

 

 それ故に、澪は誰より残酷になれる――――敵対するというのなら、親友でも手にかける。大罪を被る。

 

 

「でしょう? だったら――――」

 

「……ああ。それならば――――」

 

 

 ああ、ああ。お互いに、親友である二人が微笑んで。言葉を交わして――――――

 

 

「――――〈灼爛聖鬼(カマエル)〉ッ!!」

 

「――――〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉」

 

 

 戦斧を振るい、手を掲げ、殺し合い(・・・・)を再開した。

 焔の刃が煌めき、白い炎を無慈悲な破壊の力として解き放って、法たる世界と衝突。瞬間、凄まじい爆炎が壁のように立ち上った。

 

「狂三!!」

 

「ええ!!」

 

 衝撃と降り注ぐ火の粉、とは名ばかりの大きな石ほどの火の礫に怯むことなく、士道は狂三と共に走り出そうとした。

 琴里がきた。まだ、士道たちの希望は失われてはいない。最後まで諦めない。戦う意志を、二人は失っていない。

 

 が――――――

 

 

「――――――――」

 

「な……」

 

「っ!!」

 

 

 琴里から告げられた、伝えられた(・・・・・)ある言葉に、揃って足を止めてしまう。

 自身のものではない言葉を伝えた琴里は、果たせたことを満足げに微笑み、足で地面を踏み砕いて炎の柱を幾つも生み出す――――こちら側は、自分たちの領分だと言わんばかりに。

 

「琴里!!」

 

 凄まじい火の勢いに顔を両手で覆いながら、士道は愛する妹の名を叫ぶ。振り返った琴里の顔を見て、気づく(・・・)

 その顔は、知っている――――自分がずっと、琴里へ向けてきた笑顔(・・・・・・・・・・)だったから。

 

 

「ちゃんと伝えたわよ。じゃ、私は私でいってくるわ――――私の戦争(デート)にね」

 

 

 ――――無茶する妹を見送る、兄。

 

 そんな、いつもと真逆のシチュエーションを背に、琴里は白い翼を羽ばたかせ、業火の中へ飛翔した――――己の戦争(デート)を、始めるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 〈擬象聖堂(アイン・ソフ・アウル)〉。正常作動を確認。〈万象聖堂(アイン・ソフ・オウル)〉、及び〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉の干渉を遮断。

 〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉――――障害発生。同時に――――の使用不能。適合時間の不足によるものと推測。

 推奨行動を提案。直ちに撤退を――――――

 

 

「――――黙って、なさいっ!!」

 

 

 頭の中に響く煩わしい何者かの声。戦斧を全力で振り回し、『根』を焼き払うついでに声まで焼き尽くす。

 自身の力、どれほど無謀なことをしているかなど先刻承知。

 琴里に必要なのは、無茶無謀だと進言する司令官としての言葉ではなく、無茶と無謀を押し通す力と意志。

 

「だぁ!!」

 

「…………」

 

 〈灼爛聖鬼(カマエル)〉を振り被り、白い炎を纏った刃を全力の一刀にて叩き付ける。澪は手を掲げ複数本の『枝』を重ね受け止める――――が。

 

「っ――――ああああああああッ!!」

 

「……!!」

 

 業火爆現。己の中を燃やし尽くし(・・・・・・)、全力を超える一撃を生み出す。

 己の体内にある肉が、骨が砕かれていく。砕きながら、琴里は吹き出る炎を加速源とし『枝』を叩き潰した(・・・・・)

 

「……速度は十香以下。だが力は十香以上、か」

 

 驚異的な剛力に防御の札を砕かれながらも、冷静な分析で琴里の戦力を把握し、距離を取りながら相対する。辺り一帯の『根』を焼き尽くしながら、琴里も澪を逃がすまいと翼を羽ばたかせる。

 澪の感情は見えている。表情にも出ている。が、嫌になるくらい平坦なそれに、琴里は戦斧を振るいながら声を発した。

 

「はっ、相変わらず嫌ってくらい冷静ね!!」

 

「……そうでもないさ。十香といい君といい、私の法が通じないんだからね」

 

 法の天使〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉。モノクロの空間を一つの世界に、澪は世界の法則を自在に書き換えられる。精霊たちを尽く葬り去った、圧倒的な法の暴力。

 だが、澪の力は琴里へ干渉できない。それは何故かなど、これまでの経験があれば当然誰であっても理解できると琴里は口を歪ませた。

 

「馬鹿ね。法だの何だので理論的に縛ろうとするからよ――――空間的干渉(・・・・・)を〝殺す〟と確証をくれたのは、あなただったわよね、令音」

 

 天使〈擬象聖堂(アイン・ソフ・アウル)〉。その力は、物理的な干渉には無力だが、空間、概念といった特殊な干渉には無類の強さを発揮する。

 それはもちろん、この究極の空間干渉さえ例外ではないのだ。法が概念である限り、〈擬象聖堂(アイン・ソフ・アウル)〉は法を殺す(・・・・)。琴里を縛ろうとする法の力を、『死』の概念を以て打ち払う。

 それを琴里が気づき、何より解き明かしたのは令音。他ならぬ始源の精霊その人なのだ。

 

「……そうだね。それは確かに〝道理〟だ。私の世界といえど、その道理に合わせなければいけない。なら――――」

 

 琴里の振るう戦斧を難なく避けた澪は、ふわりと宙を舞うように上空へ浮かび上がる。それを追う琴里へ、澪は手を向けて、

 

「――――君ではなく、君の周り(・・・・)を支配しよう」

 

 瞬間、琴里を取り巻く重力(・・)が何十倍にも重く、人を潰せるほどの質量を以て襲いかかった。

 

「な……」

 

 がくんと飛行高度が落ち、羽ばたかせていた翼が押し潰されるように琴里の身体にへばりついてくる。

 重力操作。魔術師の随意領域(テリトリー)でも行われるもの。あちらは空間内の対象を明確に計り、イメージするはずだが……澪のそれは、琴里ではなく周り(・・)という漠然と曖昧なイメージで、なのに魔術師の何百倍という規模と質であった。

 

「ち、洒落臭いわね……っ!!」

 

 子供騙しの小賢しいやり方だ。すぐさま、重力に対抗できるだけの力を練り上げる――――しかし、二手目を要した澪が一手、速い。

 

「――――【枝剣(アナフ)】」

 

「が――――ッ」

 

 モノクロの地面から夥しい数の枝が密生し、琴里の全身を隈無く串刺しにした。

 人間なら即死と思える殺され方。だが、琴里は二度、三度と、喀血しながらも深々と突き刺さる枝を燃やす(・・・)。対外も、内外も分別なく焼き尽くしていく。

 破壊と再生の炎。この程度(・・・・)、数秒あれば傷一つなく元通りにできる――――――

 

 

「そこまでだ」

 

 

 澪はその数秒の隙を突き、手ずから琴里の胸を貫いた。

 

「ぁ……」

 

「……あの子の力を返してもらう。それは、『私』のものだ」

 

 貫いた手を探るように動かし、琴里の体内に同化した霊結晶(セフィラ)へ澪が干渉し、眉をひそめた(・・・・・・)

 

「……っ」

 

 違和感を覚えたように、澪が手を戻そうとし――――琴里の腕がそれを掴み取る。

 

「――――捕まえた」

 

「な……」

 

 目を見開く澪と、不敵に笑う琴里。澪を逃がさぬよう体内の炎へ霊力を焼べ、潰さんばかりに腕を掴む。

 自身のもう片方の腕を使い、〈灼爛聖鬼(カマエル)〉を振り上げた。

 

 

「――――切り裂け(・・・・)、〈灼爛聖鬼(カマエル)〉」

 

 

 琴里が告げたそれによって戦斧は焔に巻かれ、一刀(・・)へ生まれ変わる。

 白い炎を、白い刀へ。辺り一面を焼き尽くしていた炎を全て、刀身へ注ぐ(・・・・・)

 豪炎の音が消え、世界を一瞬の静寂が包み込む。

 

 

「――――【翼刀(ヘネツ)】」

 

 

 己の翼を振るうような軽々しさで、琴里は静寂を切り裂いた。

 

「く……!!」

 

 澪目掛けて振り下ろされた刃を、澪が『枝』と『根』を呼び出し、さらに障壁を下に敷くように展開――――それを重ねた紙のように切断し、刀は振り切られた。

 モノクロの世界が、割れた(・・・)

 

「ちっ……!!」

 

「……」

 

 触れた切っ先から切断されたのは、モノクロの地面(・・)。空間の果てまで見えるほど、地面の果てが見えないほど、琴里の一刀は深く地面を割いた。

 だが、外した。『枝』と障壁が僅かではあるが澪から攻撃を逸らさせる時間を与えてしまい、必殺の一刀は澪の霊装をほんの少し切り裂いた程度に留まる。

 攻撃を外し、無防備なまま苛立たしく舌打ちした琴里へ『枝』による刺突を解放。琴里が貫かれ再生している間に、澪に一定の距離を取られてしまった。

 

「普通、掴まれてるのに避ける?」

 

 〈灼爛聖鬼(カマエル)〉を戦斧へと戻して確かめるように一振し、呆れた声音を零す。

 〈灼爛聖鬼(カマエル)〉・【翼刀(ヘネツ)】。変形させた天使の刀、その刀身へ生み出される炎の全てを収束。切っ先に触れるものを焼き切る一撃。

 澪の不意を完璧についた一撃だった。事実、澪とて焦りを感じていた。にも関わらず、避けられてしまった。焦りを感じたなら当たるべきだろう、そこは。

 まったく、理不尽この上ないと愚痴を零す琴里へ、澪は以前(・・)時たま見せていた何とも言い難い顔で拾った言葉を返してくる。

 

「……君こそ、致命傷を受けてからの動きとは思えないが」

 

「何よ。そういう天使を私に押し付けたのはあなたじゃない」

 

「……それもそうだね」

 

 あっけらかんと天然気味に返す澪に、琴里も思わずぷっと吹き出して笑う。そういうところは、本当に変わっていない――――令音と澪は、同じなのだとわかる。

 

「……ふむ」

 

 澪が目を細め、琴里の胸を貫いた手を閉じては開きを繰り返す。恐らくは、その違和感を思い返すために。

 

「守護――――いや、呪詛。もはや、呪いの類いと考えるべきかな」

 

 数々の霊結晶(セフィラ)を回収してきた澪が、用心を期して手ずから奪いに来たはずの霊結晶(セフィラ)。それを防いだ琴里の仕掛けを、一発で看破してみせた澪に琴里は賞賛の声を贈る。

 

「らしいわね。決められた言霊を込めて、霊結晶(セフィラ)を埋め込む……。当然、取り出すにはその合言葉が必要になる。知らないなら、埋め込んだ精霊へ霊結晶(セフィラ)はへばりついたまま――――私が死ぬまで(・・・・・・)、取り出せない」

 

 琴里がこれを知ったのは、霊結晶(セフィラ)との同調が強くなってからだった。霊結晶(セフィラ)を定着させるだけに留まらず、呪い(・・)じみた繋がりを持たせる。

 澪の〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉なら、この程度の呪いは『法』で無視できるはずだが……琴里へ『法』の力は通用しない。単純に込められた言霊を知ればいいのだろうが――――唯一、込められた言葉とその意味を知っていたものは、時間へ溶けて消えた。

 つまり、琴里の霊結晶(セフィラ)を取り除く方法はこの世にたった一つ――――琴里を、霊力行使が出来ぬほど殺し切る(・・・・)こと。

 

「……なるほど。用意周到だ」

 

 息を吐く澪に、琴里も内心で同意しておく。

 澪以外で精霊を半殺しにすることなく、霊結晶(セフィラ)を取り出せる存在はいない。正直他の、例えばエレンやアルテミシアが相手ではまったく役に立たないだろう。

 澪を強引に人の法則へ落とし込むだけの、力技(・・)。法外な澪が相手だからこそ、意味を生むやり方だった。

 

「……だが、それだけじゃあない」

 

 琴里を、否、琴里の力(・・・・)を澪が見やる。

 

 

「異なる霊結晶(セフィラ)の同調作用。属性を逸脱した進化融合――――あの子の霊結晶(セフィラ)が、よもやこんな力まで持っているとはね」

 

 

 そう。琴里の中にある少女の霊結晶(セフィラ)がもたらした、異常現象。

 残された〈灼爛殲鬼(カマエル)〉の残滓を白い少女の霊結晶(セフィラ)が取り込み、融合。まるで力を掛け合わせるように膨れ上がり、精霊としての力が飛躍的に増大している。

 仮に、元の封印されていない〈灼爛殲鬼(カマエル)〉であったとしても、ここまで無茶苦茶な戦い方は叶わないことだった。

 

「……あの子を〈灼爛殲鬼(カマエル)〉で治療したことが、さらに繋がりを強める結果を引き出した、か。厄介だが、興味深い現象だ」

 

 今にして思えば、〈灼爛殲鬼(カマエル)〉が白い少女を治療できたのも、お守りによる繋がりが大きかったのだろう。それにより両者の性質が大きく近づいたことで生まれた、半ばイレギュラーな形態。

 精霊同士の繋がりを、始源の精霊が興味深そうに探る不可思議な光景がそこにあった。戦っているというのに、何だか不思議な気分で琴里は声を発した。

 

「そうねぇ。言うなれば、私たちのミレニアム特別バージョン、ってところかしら」

 

「……珍しいね。琴里が、そんな冗談を言うだなんて」

 

 キョトンと目を丸くした澪に、琴里は自嘲気味な表情を見せ声を返した。

 

 

「――――こうでもしなきゃ、やってられないでしょ」

 

「…………」

 

 

 どうして、琴里たちは戦っているのだろう。琴里は、なぜ親友と殺し合っているのだろう。

 理由はある。原因もある。なるべくして、そうなった。だからこうして、琴里は親友と対峙している。大切な人たちを、これ以上奪わせないために――――もう一度、言葉を伝えるために。

 

「ぐ――――あぁッ!!」

 

 裂帛の気合いを込め、炎を纏う。強圧が琴里の身体を縛る。琴里への干渉ではない『法』を無力化することは不可能。しかし、対処法がないわけではない――――重力が何十倍もあるのなら、あると弁えた上で力を叩き込めばいい。

 己の肉体を溶かしかねない熱量を展開する琴里へ、澪が眉をひそめて声を発した。

 

「……もう止めたまえ。肉体を破壊するほどの強化再生――――それは、遠回しな自殺(・・)だ」

 

「……っ」

 

 身を案じている。裏表のない本心からの忠告に、琴里は喉元から迫り上がる血溜まりを乱雑に吐き出して、口元に弧を描いた。

 精霊の肉と骨を断つ炎による肉体強化。その反動すら、即座に炎によって再生し、さらに強化し続ける。琴里が戦斧を一つ振るう度、身体の細胞は強化の反動によって死に至り、そして再生する。

 傍から見れば、澪と拮抗しているように見えるこの状況――――そこに、埋め難い隔絶した差があることは、琴里と澪だけが知ることだった。

 

「遠回しな自殺、か。……ま、そうなるかしら。もってあと数分、もしかしたら数秒かもしれないわね――――けど、十分よ」

 

 地面を踏み砕いて足場を作り、脚部に炎を集中。

 

 

「あなたに、言葉を伝えるくらいならね」

 

 

 瞬間、炸裂した炎を加速源に、脚の骨を砕きながら突撃。澪の分析を上回る速度を以て戦斧を振り下ろした。

 

「ねぇ、令音」

 

「……ん」

 

 戦斧を振るう琴里と、『枝』で貫かんとする澪。

 そんな殺し殺されのやり取りの中で、二人は穏やかに言葉を交わし始めた。

 

「……ほんと、あなたには感謝してるのよ」

 

 血飛沫が舞う。琴里の命が、刻一刻と減らされている。それでも琴里は、言の葉に力を注ぐことを止めなかった。

 

「助けてもらったことは山ほどあるし、楽しかった思い出も数えられないくらいある。たぶん、人生でこんな親友に出会えるのは二度とないんだって、私は思ってる」

 

「……私も、そう思っているよ」

 

 炎が枝を焼き、枝が琴里の肉を断つ。けれど、互いの信は崩れることなく、続く。

 

「そんなあなたが、私たちを精霊にしたとか、正直悪い夢だって思いたかった。悲しみとか、怒りとか、困惑とか、何かいろいろごちゃ混ぜになっちゃって。あなたがいなくなったあとで、よく司令席に座れてたと自分でも思うわ」

 

「いや……琴里なら、どんな状況でも司令官を選ぶさ。私が言えた言葉ではないがね」

 

「あはは。光栄だけど――――今はもう、私は司令官じゃないわ」

 

 愛するクルーを守れず、艦を墜とし、一人生き残った〈ラタトスク〉の司令官。今の琴里に、人の上に立つ司令の立場などありはしない。

 けれど、だから琴里は――――齢十四の女として、伝えたいことを、叫びたい言葉を我慢しないと決めた。それもまた五河琴里なのだと、教えられた(・・・・・)から。

 

 

「――――なんで、言ってくれなかったの」

 

 

 ただ子供のように、琴里は令音へ感情を打ち明けた。

 

「言ってくれたら、何かが変わったかもしれない。私にだって、何か出来たかもしれない」

 

 無理だ。不可能だ。霊結晶(セフィラ)から伝わってくる、白い少女の中に眠っていた悲劇の記憶。澪の優しい心を三十年の妄執へと変えてしまった、静かで狂気的な意志の光。小娘一人に話したところで、結論は何も変わらない。そう、琴里の中に残された記憶が叫んでいる。

 そして、少女を蝕んでいた〝何か〟の正体にも、気づく。記憶と妄執の中に消えてしまったもの。澪と少女では気付くことが出来ない、確かな感情。

 

「私たち、それくらい親友じゃない。私、あなたのこと好きよ」

 

「……ああ。私も琴里が――――皆のことが好きだ」

 

 偽りならざる言葉の応酬。真実、澪は琴里の言葉へ真っ直ぐに返した。

 けれど、と続けながら。

 

 

「――――でも、私はシンがいないと駄目なんだ。もうすぐ、シンと一緒にいられる。そのために、君たちとは一緒にいられない」

 

 

 琴里が令音を嫌うことができないように、令音も琴里を嫌うことはない。でも、止まれない。親友を喰らってでも取り戻したいものが、村雨令音にはあったのだ。

 そう言った澪の表情に、琴里は歯を食いしばって、戦斧を振り下ろしながら、告げた。

 

 

「だったら――――笑ってよ、令音」

 

 

 その顔に、笑顔なんてなかった。

 

「え……」

 

「笑いなさいよ。三十年、願いに願った好きな人に会うんでしょう? 笑って、満たされなさいよ。どんな形であれ、それが頑張ってきたやつの権利でしょ――――なんで、そんな顔してるのよ」

 

 澪は、令音は、立ち向かってくる琴里へ――――ただ、悲しげに力を振るうだけだった。

 

「あなたが喜ぶなら、私は何も言わなかった。司令としても、士道の妹としても、あなたの親友としても……何も言わずに、ただあなたを倒そうって思った」

 

 自分たちを脅かす、ただの敵として琴里は戦うつもりだった。同情の念も親友としての情も捨てて、琴里は戦えただろう。

 

 

「だけどあなたは、全然嬉しそうじゃない。答えてよ、令音。大事な人を取り戻して、寄り添って――――未来のあなたは、ちゃんと笑えてる?」

 

「――――――――」

 

 

 その未来を、澪は思い描いたのだろう。思い描いて、しまったのだろう。

 白い少女を蝕んでいた、尋常ならざる無価値の証明。それは、それは――――――記憶に眠る、あまりに悲しく、破滅的な願望。

 

 

「――――シンとなら笑える、はずさ」

 

 

 琴里の切なる問いかけに澪は、令音は――――後悔も未練をも押し殺す妄執を以て、その腕で刃を振るった。

 

 

「この――――ばか、令音ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

 

 叫びがただ虚しく、令音の心には届かない。美しく軌跡を描く焔の刃――――涙のように落ちて、消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 閃光。爆炎。モノクロの世界に轟音と、幻想的な白い炎。それは戦場の音であり、殺し合いの音でもあった。

 琴里と澪が、戦っている。勝算を考えれば、助太刀に入るべきなのだろう。元々、士道と狂三だけでは澪に対する勝算は〝ゼロ〟。皆無であり、絶望的だった。

 だが、士道と狂三は動かない。動かないだけの理由を、他ならぬ琴里から得てしまった。

 

「どういうことだ……?」

 

 士道はぽつりと、新たに生まれた疑問を呟いた。

 琴里の攻撃により、澪と士道たちの境界が断絶されたあの一瞬。琴里は、ある言葉を士道たちに届けた。

 

 

『戻るなら、全てを観測して、尚且つ十二じゃなく〝六〟を使え――――だそうよ』

 

 

 それは、琴里の言葉ではない。間違いなく、澪に取り込まれ消えたはずの白い少女が残していた、今この状況だからこそ意味を持つラストメッセージ。

 士道には完全な理解ができずとも、メッセージの意味を読み取れる狂三がいる。彼女なら、そんな信頼に応えたかのように、狂三はあごに手を当て神妙な顔で声を発した。

 

「〝六〟……六番目(・・・)――――【六の弾(ヴァヴ)】を使い、澪さんの力を〝観測〟したわたくしの意識だけを……まさかとは思いましたけど、あの子はやはり……」

 

「ど、どいうことなんだ? 【六の弾(ヴァヴ)】って、確か〈刻々帝(ザフキエル)〉の……」

 

 【六の弾(ヴァヴ)】。〈刻々帝(ザフキエル)〉の弾の一つであり、士道が一度だけ名前を耳にし、それ以外は何も知らない(・・・・・・)数少ない弾の名。

 それが今になって、どのような意味を持つのか。狂三の口から、確信となった推察が語られていく。

 

「恐らくは、これがあの子の〝計画〟。わたくしに始源の精霊の力を全て〝観測〟させ、【六の弾(ヴァヴ)】――――意識だけを過去へ飛ばす(・・・・・・・・・・・)弾を使い、この事態を『なかったこと』にしながら、経験を継続させること……」

 

「な……!!」

 

 【六の弾(ヴァヴ)】の正体と、少女の〝計画〟。

 過去へ遡る力を持つ弾が、【一二の弾(ユッド・ベート)】以外に存在していたことへの驚き。白い少女がこの事態を想定し、そして狂三を必ず生き残らせるため、躊躇なく自身を犠牲にしながらも〝計画〟を続行したことへの畏怖にも似た驚嘆。

 しかし、それは正しく希望の一撃。全てを救う道を開く弾丸に違いなかった。

 

「じゃあ、【六の弾(ヴァヴ)】を使えば――――――」

 

 意識だけを過去へ飛ばし……如何な力を持ってしても退けることが叶わなかった澪を出し抜き、このチェス盤で常にチェックをかけられた〝詰み〟の状況から抜け出すことができる――――考えて、士道は言葉を止めた。

 狂三が眉を歪めていること、そして何より、狂三が己の力をここに至るまで忘れていたとは思えなかったのである。

 チャンスは、幾つもあった。澪といえど、狂三の遡行を阻止できないタイミングはあった。しかし、狂三は【六の弾(ヴァヴ)】を一度であっても使う素振りすら見せていない。

 

「……〈刻々帝(ザフキエル)〉!!」

 

 それが何を意味するのか。今一度、巨大な時計盤を影から持ち上げた狂三によって、すぐさま理解させられた。

 刻まれた『Ⅰ』から『ⅩⅡ』の数字。今まで、幾度となく目撃し、違和感だけを覚えていたそれ(・・)が氷解すると共に、背筋が凍る。

色を失った(・・・・・)二つの数字。一つは『IV』。もう一つは――――【六の弾(ヴァヴ)】を示す、『VI』の数字。

 文字盤の一番下に位置するそれに触れながら、狂三が悔しげに言葉を吐いた。

 

「……琴里さんとの戦いから、【六の弾(ヴァヴ)】は眠った(・・・)ままなのですわ。今も呼びかけ続けていますわ。ですが……」

 

 〈刻々帝(ザフキエル)〉は、何も示さない。雄大な文字盤の輝きを示すこともなければ、狂三の呼びかけに影を返すこともない。

 完全なる沈黙。天使は使い手の心を映し、力を返す水晶――――だが、沈黙した力を扱えるわけではなかった。

 

「【五の弾(ヘー)】や【一〇の弾(ユッド)】の力が増大したことにも関係しているのでしょうけれど……幾ら霊力を込めたところで、扱えなくては意味がありませんわ」

 

「そん、な……」

 

 芽生えた希望が失われ、再び絶望が肺腑を満たしていくのがわかってしまった。

 これで、本当に詰みだというのか。白い少女が、命を賭して残してくれた言葉が――――命を賭して(・・・・・)

 

 

「――――――」

 

 

 思考が冷える。絶望してしまったからではなく、ある違和感を感じだからこその無駄のない思考。

 【六の弾(ヴァヴ)】を前提とした〝計画〟。狂三を知る白い少女だからこそ、織り込むことのできた――――そんな少女が、狂三に起こった異常を見逃していた?

 断じて、ない。少女と士道には、ある種の絶対的信頼のようなものがあった。時崎狂三という精霊に対して、一部の隙もない観察(・・)考察(・・)を可能にする眼力。互いにそれを、持っていること。

 だからわかる。少女は間違いなく、狂三が扱うことのできなくなっていた弾を知っていたはずだと。少女が命を賭して事を為す以上、知っていなければならない。終わりを定めていたというのなら、最大限に活用してみせるのがあの少女だ。

 そして、行き着く。少女が言葉を伝えたかったのは、狂三ではなかったのではないかと。

 

 ――――【六の弾(ヴァヴ)】の力を知らない、士道にこそ知らせたかったのではないのかと。

 

「――――っ」

 

 考えることを止めるな。思考を、ここで停止してはならない。このために少女は、持てる力と情報の全てを賭して今の〝時間〟を生み出した。きっとそうなのだと、士道には思えてならなかったのだ。

 なぜ、士道だったのか。狂三は初めから【六の弾(ヴァヴ)】の可能性には行き着いていた。故に、あのメッセージは狂三に対する意味はない。狂三を必要としたのは、士道が【六の弾(ヴァヴ)】の存在を知らなかった(・・・・・・)からで――――――

 

 

「――――俺が、知らない?」

 

 

 呆然と零した自身の言葉に対する、強烈な違和感。明らかにおかしいと、士道は気がついた。

「士道さん……?」

 

 様子がおかしい士道に、狂三が気遣うように声をかけてくる。

 そんな狂三の肩を掴み、士道はしっかりと狂三の瞳を覗き込みながら声を発した。

 

「狂三、お前は今眠ってる(・・・・)って言ったよな。〈刻々帝(ザフキエル)〉の中に、〝眠っている〟、って」

 

「え、ええ……恐らく、琴里さんとの戦闘の損傷から、士道さんとの経路(パス)やあの子の力を通じて、想定しない変化が――――――」

 

 〈刻々帝(ザフキエル)〉を知り尽くした、狂三ならではの考え方。その異常を、そう捉えてしまうもの無理はない。

 けれど、士道は狂三の考え方を首を横に振って否定した。そして、狂三の考え方への〝矛盾〟を、己の知識から証明した。

 

 

「違う、それはおかしい――――なら、俺は知っているはずなんだ(・・・・・・・・・・・・)!!」

 

 

 眠っている――――〈刻々帝(ザフキエル)〉の中に存在しているのなら、士道が知らないはずはない(・・・・・・・・・・・・)

 思い出した。ああ、知っていた(・・・・・)。あの日――――経路(パス)の狭窄を起こした士道は、設計にない(・・・・・)繋がり方をした狂三との経路(パス)を通じ、〈刻々帝(ザフキエル)〉を顕現させた。その時に、〈刻々帝(ザフキエル)〉に存在する力の全てを、頭の中に刻み込んだ。

 

 対象時間を加速させる【一の弾(アレフ)】。

 対象時間を遅延させる【二の弾(ベート)】。

 内的時間を促進させる【三の弾(ギメル)】。

 高次元の未来予測を可能とする【五の弾(ヘー)】。

 対象時間を停止させる【七の弾(ザイン)】。

 過去の履歴を切り離し再現する【八の弾(ヘット)】。

 異なる時間軸の対象と意識を繋ぐ【九の弾(テット)】。

 記憶を経験として伝える【一〇の弾(ユッド)】。

 莫大な霊力を喰らい、未来と過去へ時を繋ぐ【一一の弾(ユッド・アレフ)】と【一二の弾(ユッド・ベート)】。

 

 〈刻々帝(ザフキエル)〉という天使の全貌――――その中に、【四の弾(ダレット)】と【六の弾(ヴァヴ)】の力は存在しなかった(・・・・・・・)

 おかしな話だ。眠っていると表現するならば、力は存在していなければ(・・・・・・・・・)ならない。何故なら、そこに在る(・・)のだから。

 

「俺じゃなきゃ気づけなかったんだ……だってお前は、〈刻々帝(ザフキエル)〉の力の全てを知ってるんだからな!!」

 

「ど、どういうことですの?」

 

 いつもとはまるで逆の立場に、士道は不可思議な感慨を覚えながら笑みを作った。

 精霊と天使は一心同体。天使の力を手にした瞬間から、精霊は天使の力がどんなものかを知っている――――故に、狂三は誤認してしまった。

 

 狂三の中から〝消えた〟力が、〝眠っている〟と誤認したのだ。

 

 しかし、士道は違う。〈刻々帝(ザフキエル)〉から後天的にその力の情報を会得した。だから士道は気づく。士道だけが(・・・・・)気づくことができる。その力が、既に狂三の〈刻々帝(ザフキエル)〉から失われている(・・・・・・)、と。

 狂三は知っていた。士道は知らなかった。それがこの〝矛盾〟を紐解く鍵だったのだ。

 

「俺が知らないから、気づけた……!! 【六の弾(ヴァヴ)】は眠ったんじゃない、狂三の中から消えたんだ(・・・・・)!!」

 

 思考が止まることを知らない。ああ、ああ。今までわからなかった疑問が、次々に紐解かれていく。

 士道は【四の弾(ダレット)】を知り、【六の弾(ヴァヴ)】を知らなかった。

 それは何故か。ああ、やっと思い出せた――――士道はあのあと(・・・・)、狂三の記憶の断片を覗いていた。

 では何故、そんな記憶を除くことが出来たのか――――狂三と経路(パス)を繋いだから。

 

 そう。士道は精霊の力を、精霊と経路(パス)を繋ぐことで振るうことが出来る。逆説的に、経路(パス)がなければどんな絆があろうと扱うことは出来ない。

 封印もなしに、士道が完全なる〈刻々帝(ザフキエル)〉を振るうことなどできるのか。答えは、もちろん先の理屈により〝否〟と断定できてしまう。

 どんな歪な経路(パス)であれ、経路(パス)が生み出される〝原因〟が存在していなければならない。

 〝原因〟が在るからこそ〝結果〟がある。どうして気がつかなかったのか――――自然発生した経路(パス)など、存在しなかったのだと。

 

 では、士道と狂三はいつ(・・)その繋がりを得たのか。忘れ去られていた、最大の疑問。そして【四の弾(ダレット)】と【六の弾(ヴァヴ)】は、何処へ消えてしまったのか。

 

「狂三――――お前、俺とキス(・・)したか?」

 

「……はぇ?」

 

 歯が浮いたようなぽかんとした返答が狂三から返ってくる。この状況下で、士道は頭がおかしくなったとしか思えないことを言ったのだから、当然といえば当然のこと。大変可愛らしい反応ではあるが、士道はいつだって本気だ。能力上〝キス〟に関しては、特にだ。

 グッと顔を寄せ、間近に迫った狂三と瞬きする間もなく目と目を合わせる。

 

「答えてくれ!! お前は俺とキスをしたことがあるか!? いや、どこかで絶対にあるはずだ!!」

 

「な、なな何を仰っていますのこんな時に!!」

 

「こんな時だからだよ!! 思い出してくれ!! 唇と唇じゃなくてこう……なんていうか、えぇっと……」

 

 顔を真っ赤にした狂三に、士道もまたこんな自意識過剰なことを言ってしまって顔が熱を帯びているのは理解している。まあ、それ以上に周りが高温なので釣り合いが取れているかもしれないが。

 必死にある一点を思い出そうとして頭を抱える。経路(パス)が繋がった〝原因〟。あるとすれば、士道の意識が途切れたあのとき(・・・・)

 そうだ。忘れ去られた感覚があったはずだ。あのとき、士道は意識を失い、夢を見て、そして――――――

 

 

「――――頬、だ」

 

 

 自身の頬に触れ、その微かな感覚を思い起こす。

あのとき(・・・・)、士道と狂三が命の危機に瀕し、白い少女の手で救われた直後――――何かが士道の中に吸い込まれた(・・・・・・・・・・・・・・)感覚。それは次第に失われ、誰にも、当事者の士道でさえも忘れていった違和感。

 だが、思い出した。士道だけでは意味がないそれは、観測してこそ意味を持つ(・・・・・・・・・・・)

 

「……キス――――あのとき(・・・・)、わたくしは……」

 

「っ、狂三!!」

 

 顔をしかめ、忘我の中へ消えていった記憶を甦らせるかのように狂三が言葉を零していく。

 そう。狂三は知っているはずだ。他ならぬ狂三だからこそ、士道の知らない〝原因〟をしている(・・・・)はずなのだ。原因なくして、結果はありえないのだから。

 そうして、目を見開いた狂三は、士道に全ての意識を奪われたように見つめ合い、言った。

 

 

「――――しましたわ。わたくし、あなた様の頬に口付けを――――あなた様を、守ってほしいと」

 

 

 祈りを、込めて。互いを祈り、互いを救おうとした士道と狂三。その歪な繋がりが、有り得ならざる経路(パス)が――――観測された。

 

『……!!』

 

 瞬間、士道と狂三の中に繋がりが引き起こされた。胸に温かい光が鼓動を鳴らすように、起きる(・・・)

 一つは祈り。士道を守りたいと願い、ずっと助けてくれていた時間の逆転。

 もう一つは、士道たちが望む力。繋がりが深すぎたばかりに、封じた士道ですら存在を認知できないほど深く沈んでいた、時を超える可能性(・・・・・・・・)

 

 士道と狂三の間に結ばれた、想定外の経路(パス)。それは――――正規の方法ではない、精霊から行われる唇以外へのキス(・・・・・・・)

 『力を吸収するための力』として用意された士道唯一の固有能力と、二人の想いが混ざり合った言わば〝バグ技〟に等しいものだったのだ。

 

「……まさか、こんな方法だったなんてな」

 

 零したそれに、苦笑が混じってしまうのは我ながら無理もない。誰も思わない。士道を生み出した澪でさえ、わからなかったこと。

経路(パス)は必ず、唇と唇のキスでなければならない。そう思い込んで(・・・・・)いたからこそ、誰も気づくことができなかった。何せ、士道と狂三は本当に唇と唇のキスはしていないのだから。

 

「わ、わたくしだって思いもしませんでしたわ……あのような戯れのキスが、まさかこんなことに……」

 

「……戯れって割には、随分と恥ずかしそうだな?」

 

 視線を逸らして愚痴る狂三という物珍しさから、思わずからかいの言葉を投げかけてしまう。が――――――

 

 

「し、士道さんがキスを迫る光景が、わたくしには否応になしに視えてしまうのですわ!! 恥ずかしいのも当然でしょう!!」

 

「〈刻々帝(ザフキエル)〉の中の俺は、そんな節操なしのケダモノなのかよ!?」

 

 

 別方向から殴り返されてしまった。そういえば、今の狂三が異常な程に未来が視える。だから、士道が迫った(・・・)と狂三視点からは観測されたのだろう。

 ……そりゃあ、まあ、命の危機に瀕した際の吊り橋効果とかあったりなかったりするのかもしれないが。邪な考えが一瞬でもなかったかと言われると、嘘になってしまうかもしれなくもないが。というか、こんな時なのに可愛すぎるぞこの女の子。

 

「――――だぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 そんなやり取りの最中、琴里の猛々しい叫びと炎の衝撃波が空間を振動させ、ハッと二人は視線を向けた。

 炎の隙間から琴里と澪の姿が見て取れる。思いの丈をぶつけ合うかの如く、ボロボロの霊装で力を振るう二人。だが、やはりというべきか、あのままでは澪を打ち破ることは叶わない――――それで、よかったのだ。

 

 

「士道さん」

 

 

 差し出された手を繋ぎ。

 

 

「……ああ!!」

 

 

 息を大きく吸い込んで、吐き出す。

 己の中にある力。士道はこのためにここにいた。

 決して諦めずに絶望の中でもがいた。誰もが足掻き続けた。

 

 そんな皆の想いがあるからこそ、士道は――――この引き金に指を掛けることが出来た。

 

 

 

「来い――――〈刻々帝(ザアアアアアアアフキエエエエエエエル)〉ッ!!」

 

 

 

 告げる。汝の名を指し示し、謳う。

 

 瞬間、士道の左目が無機的な音(・・・・・)を奏、蠢いた影が集い、見慣れた短銃を士道の手に握らせた。

 狂三のものではない、士道の銃。時の天使〈刻々帝(ザフキエル)〉。顕現させることに、何一つ不自由はなかった――――理由など、言うまでもないだろう?

 

 

「……なに――――?」

 

 

 士道の動きに気がついた澪が、その表情を変えた。

 澪もまた、狂三と同じ考えを持っていた。聡明であるが故に引き起こされる、勘違い。彼女は常に【六の弾(ヴァヴ)】の存在を警戒していたはずだ。狂三が使えないことも、知っていたはずだ――――士道を生み出した澪だからこそ、士道と狂三の経路(パス)を繋いだ想定外(・・・)に気づくことなど不可能だったといえる。

 

 全てはこのためにあった。狂三の未来予測――――それが狂三の力の〝本質〟ではないことは、澪自身が語っていたことなのだから……!!

 

 そして気づくことができたとしても、澪を止める精霊がいる(・・・・・・・・・・)

 

 

「――――どこを見てるの?」

 

 

 琴里の右手を包み込む大砲(・・)

 

 

二つ目(・・・)――――受け取ってちょうだい、神様」

 

 

 表情は不敵に――――けれど、悲しげに。

 焔を吸収し、その先端から産声をあげるような熱唱が鳴り響く。

 

 

 

「〈灼爛聖鬼(カマエル)〉――――【白砲(メギド)】ッ!!」

 

 

 

 かつてのそれとは違う、熱く、紅の意志を保った『天使』の絶唱。

 

 ――――爆裂。

 

 万象を焼き尽くす紅蓮の咆哮。造られた楽園を滅ぼす、反逆者の砲炎。

 この世のあらゆる炎を凌駕する焔が、一本の線を引き、澪を中心に拡散する超高密度の炎塊を作り出した。

 空気すら焼き焦がす滅殺の焔――――撃ち込んだ反動で、琴里でさえも翼を散らし、彼方へ吹き飛ばされていく。

 

「琴里――――っ!!」

 

 吸い込む空気が肺を焼き焦がすかのようで、それでも叫ばずにはいられなかった。

 そして、琴里は満足したように、笑っていた(・・・・・)

 

 

「いってらっしゃい、おにーちゃん――――お義姉ちゃん(おねーちゃん)

 

 

 そう言って、送り出す声が、士道と狂三には聞こえたから。それ以上の言葉は、必要なかった。

 全ての視界が炎に包まれるその中で、二人はいく――――この時間へ、悲劇が起こらない未来へ辿り着くために。

 

『――――――』

 

 狂三の身体を引き寄せ、その背に銃口を向ける(・・・・・・・・・・)

 それはまるで、愛する者と心中する姿――――だが、事実は逆転する。

 

 未来を、運命を、世界を変えるため。

 

 少し早い約束を、果たしにいこう。

 

 

 

『――――【六の弾(ヴァヴ)】』

 

 

 

 かくして――――引き金は落ちる。

 

 螺旋する銃弾が、二人を撃ち抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「――――――!!」

 

 目覚めというには、薄暗い部屋の中。靄のかかった意識が引き戻された士道の視界に映り込む、見慣れた天井。

 眠り慣れたベッドに、見慣れた風景の部屋――――それが自分の部屋だと確信したとき、士道の身体は動いていた。

 置かれたスマートフォンを手に取り、起動し――――――

 

 

「ああ――――」

 

 

 その安堵を、激情を、ただ一言に収めるには重すぎるものを、心の底から吐き出した。

 繋がった。ここへ、繋がった――――もう一つ、確かめねばならないことがある。

 

 半ば飛び出すように、士道は足早に出かけた。

 まだ早朝とも言えぬ時間の中、周りの景色すら定かではない記憶で、必死に足を動かす。走る、走る、走り続け――――――

 

「……ぁ」

 

 〝彼女〟を、見つけた。

 かつて約束をした、高台の公園で。夜空が見える、この場所で。

 

「ああ――――!!」

 

 同じように息を切らして、両の目に涙を溜めた愛しい少女が――――時崎狂三が、そこにいたのだ。

 

 どちらからともなく、再び走り出した二人は、気づけば互いの身体に飛びつくように重なり合っていた。

 

「士道さん、士道さん!!」

 

「ああ、ああ……っ!!」

 

 言葉にならない激情を、互いの鼓動を確かめ合う。

 ――――取り戻した〝時間〟を、確かめる。

 失われかけたこの温かさを。失われかけた記憶を。全てを覚えている自分たちを――――それが何より、皆が生きている(・・・・・・・)証拠なのだと。

 抱き合い、見つめ合い、けれど歓喜だけではないその表情で、こくりと頷いた。

 

 

「ここから、ですわね」

 

「ああ。俺たちの戦争(デート)は――――まだ終わってない」

 

 

 何も終わってはいない。否、始まっていない(・・・・・・・)

 

 だからこそ、世界は変わる。未来は変えられる。

 

二月十日(・・・・)――――悲劇を打破しうる可能性を秘め、この日に二人は帰還を果たした。

 

 

 

 

 

 全ての運命を変える――――最後の戦争(デート)を始めよう。

 

 

 






FINAL TIME『狂三リビルド』

さあ――――物語を、創り変えましょう。


入城(キャスリング)。キングとルークを同時に動かし、キングを安全圏へ逃がすこと。そもそも五河士道の役割は戦うことではなく、初めから澪を観測した狂三を逃がすことにあった。……壮大にやったんで細かいところは勢いで大目に見てくださると嬉しいです、はい。チェック手前の状況を押し返せる駒、それが何このチートな琴里だったというわけですが。

五河琴里、〈イフリート〉・霊結晶(セフィラ)融合体。
琴里の中に残された灼爛殲鬼の残滓が新たな霊結晶と融合〝進化〟を果たした形態。ミレニアム特別バージョン。ぶっちゃけ仮〇ライダーの劇場版特別フォーム。一話限定でのみ許されるチート形態。
天使〈灼爛聖鬼(カマエル)〉には〈擬象聖堂〉の特性が組み込まれ、空間干渉を殺し、物理干渉には不死身に近い再生能力で対応する。組み合わせてはいけないチートその一。
体内で炎を燃焼させ、内部を破壊するほどの強化を施しながら瞬時に肉体再生を行う。これにより霊力吸収状態の十香すら超えるパワーを得る。チートその二。
翼刀(ヘネツ)】。戦斧を刀へと変質させる。空間さえも焼き尽くす全ての炎を刀身へ込め、至近距離にて一瞬ではあるが爆発的な破壊力を有する。
白砲(メギド)】。言わずもがな最大最強の必滅兵装。範囲攻撃という点で見ても、この火力に迫るものは澪の霊力を取り込んだ十香の【最後の剣(ハルヴァンヘレヴ)】、もしくは澪の霊結晶そのものを取り入れたごにょごにょ……くらいなもの。

なお、本編を参照しての通り、この琴里をもってしても澪を討滅し得る可能性は決して高くはなく、むしろ時限強化での自滅の可能性が高い。強い、崇宮澪とっても強い。

書いてて、何でここまでして勝てない雰囲気出てんの……?って思ってました。ちなみに本当に今話限定の特殊フォームです。こんなチート何度も出せるかい。最終章手前で澪が現れてしまったからこその切り札でした。
ちなみにチートにチートを返す戦いは書いててとても楽しかったです。重力が数十倍ならそう弁えた上で強化すればいいじゃない……理不尽すぎるこれ、1回やってみたかった。

この展開は最初期から決めていて、士道たちを送り出すのは琴里。【六の弾】は心中のように描写して……っていうのもずっとしたかったことでした。正直、【六の弾】を隠せた理由捻り出すのに苦労しましたけどね!!知らなかったからこそ、気がつけた。澪ですら干渉不能で出処不明の経路の中にあって士道もしっかり自覚しないと取り出せないとか、どう対策しろと。

琴里に関しては、そういえば令音の親友だけど正体判明からの対面はあんまりなかったなぁ……と。立場を失って、白と黒を重ね合わせた琴里だからこそ……私の独自解釈大目でしたが、いかがでしたでしょう。お義姉ちゃんも書けましたね!!


さて、さて。とても長くなってしまいました。何せ、最終章なもので。そう、最終章なのです。最終章に来てしまったのです。五河アンサー編は二人の最終章、こちらは物語の最終章。この屁理屈ずっと用意してましたごめんなさい。
完結まで遠すぎるわ!とか言っていたのに、いつの間にか最終章まで辿り着いてしまいました。これも一重に、皆様の応援のおかげ。ありがとうございます!! そして、現在遅れながらも最終章進行中なので、評価とか感想とか評価とか感想とか!!お願いします!!本当に!!待ってます!!

どこまで強欲なんだ、って感じですけど評価にはお話で返すつもりです。今話で回収された伏線は多数ですが、まだ語られていないもの。そして、取り残したものがあります。
最終章・『狂三リビルド』。長い、長い物語の終局点。どうか、最後までお付き合いいただければ幸いです。
それでは、次回お楽しみに!!
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