「――――いやぁぁぁぁぁぁぁ!! 私は絶対に諦めませんよぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「くっ、ここまでやってまだ戦えるっていうの!?」
「ギャグ補正はどのアニメでも最強の存在なんだよ妹ちゃん!! なっつん、縄の追加!! とーかちゃんにパス!!」
「だからって全身縛られて動き回るのはおかしくない!?」
「静まるのだ美九よ!!」
扉を開けて、早一秒。阿鼻叫喚。どうしてこうなった、などと聞くことすらも野暮なことなのかもしれない。
ソファーに眠る狂三と、いつでも彼女を待避させられるように備える折紙。それに飛びかからんばかりの勢いで……アイドルに対する表現ではないのだが、もはや芋虫と見紛う拘束のされ具合で暴れる美九。それを抑え込む琴里、二亜、七罪、十香。あまりの光景に部屋の隅に八舞姉妹の手で待避させられ、呆気に取られる六喰と四糸乃。
そして、キッチンでマイペースに角砂糖フルチャージで俺の必殺技パート五みたいなオリジナルブレンド(?)を啜りながら、悠々と白い少女が士道を出迎えた。
「……おかえりなさい」
「……ただいま」
よくもまあ、この状況でそこまで冷静にいられるな。とツッコミたいのも山々だったが、少女の場合は関わって苦労したくないのが本音かもしれなかった……美九の矛先が、自身に向けられる的な意味で。
狂三を守るためなら、それもやむなしと考えそうなものではあるが、七罪たちが(霊力まで使って)涙ぐましい努力を行った結果、それは未然に防ぐことが出来ているらしい――――と、少女が再び外装で顔を隠していることに、士道は小首を傾げながら声を発した。
「顔、もう隠さなくていいんじゃないか?」
「……こうしていないと落ち着かないんです。癖みたいなものですよ」
「いや、それはそれでどうなんだ……」
とはいえ、強く強制することも出来ず困った顔を作る士道。すると、そんな士道の帰宅にようやく気がついた二亜が声をかけてくる。
「おお、おかえりー少年。首尾はどうだい?」
「とりあえずは、何とかなった……って感じだ。悪かったな、心配させて」
「ひゅー、さすが少年くん。経験値が違うねぇ」
「何だよそれ」
確かに、この一年でそこらのナンパ師とは比べ物にならないスキルを修得した士道ではあるが、妙な表現の仕方に思わず吹き出して笑みを零す。……こういう二亜の軽い調子の気遣いが、今の士道には十分な助けになっているのは言うまでもない――――暴れ狂う美九の姿がなければ、より様になっているのだろうけれど。
「いい加減諦めなさいよ!!」
「しんみょーにお縄につくのだ!!」
「嫌ですぅ!! そこに理想郷があるんですぅ!! ユートピアをインストールしなきゃいけないんですぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「アイドルが言語を壊したらおしまいじゃないの!?」
〈
「……ん」
眠り姫の瞼が、ゆっくりと浮き上がった。
そのあまりに幻想的な光景に目を奪われて――美九の「あぁっ!?」という切実な悲鳴はともかく――動けない間に、狂三は無事に覚醒を終えた。
狂三の傍で控えていた折紙が、彼女の状態を確かめるため起きがけに声をかける。
「狂三」
「……ああ、ああ。折紙さん、お手数をおかけいたしました――――――」
わ。まで続くことはなく、狂三は辺りの光景に絶句した。
荒れたリビングと、息絶えだえが複数人に、地面に顔を伏せ咽び泣く美九。誰がどう見ても、異常事態である。
「…………何がありましたの?」
「戦争の爪痕。気にしなくていい」
「いつの世も、犠牲を伴う
「合掌。また一つ世界が護られたのですね」
……狂三の美貌という美しき世界を救えたという点で、夕弦のそれは間違っていない気がすると士道は何度か頷いた。愛する妹と七罪からの視線が痛々しいが、もはや気にはしない。
その間にも、狂三は幾度か目を瞬かせて、軽く頭を抱えながら感覚を確かめるような仕草を取った。それを見た四糸乃が、案じるように狂三へ言葉をかける。
「大丈夫……ですか? 少し、休んだ方が……」
「いえ、いえ。少しばかり
狂三が見せた顔は、
それは後で共有するとして、思案顔の狂三に四糸乃の手で動くパペット『よしのん』が声を発した。
『んー、よくわかんないけどー、無理はよくないんじゃなぁい? ほらほらー、四糸乃の可愛いパワーで癒しちゃうよーん』
「よ、よしのん……!!」
「うふふ。それではお言葉に甘えさせていただきますわ」
「狂三さん!! 私もご伴侶に預からせてください!!」
「美九さんはもう存分に癒して差し上げましたわよ、未来で」
「何も覚えていない今の私が憎いですぅ……!!」
血の涙を流す美九はともかく、四糸乃を抱いて頭を撫でる狂三という構図は大変に眼福。とてもとても癒されて最高だな、と無性に髪をかいて喜びたい気分だった。また最愛の妹となつなつなっつんの視線が厳しいことには目を瞑ろう。
「……」
心が和む光景を目にした少女が、僅かに微笑んだ――――結局、目に見えなければ士道の想像でしかないのだが。
白い少女は、そうして士道が入ってきた扉へと向かっていく。士道が止める……より早く、反応した狂三が声を上げる。
「お待ちくださいまし。わたくし、これからあなたに話が――――――」
「嫌です」
瞬間、リビングの空気が一気に凍り付いた。
「……はい?」
「……だから、嫌です。私、あなたと話すと素直に従ってしまいそうになるので、嫌です」
まさかの『嫌です』三段活用。しかも、今まで狂三の頼み事に従順だった白い少女がやるものだから、破壊力が恐ろしいことになっている。
他の精霊たちも口をあんぐりとさせているし、狂三も固まってしまっていた。それを見ながらも、少女は息を吐いて扉に手をかけて出ていこうとする。士道は辛うじて、それを止めにかかることができた。
「お、おい、〈アンノウン〉!!」
「……外の空気を吸ってくるだけです。逃げたりなんかしませんよ」
「そんな心配をしてるんじゃなくてだな――――――」
バタン、と。鮸膠も無いとはこのことを言うのだろう。あっさりと扉を閉められ、いつもの調子を見せることもなく――こちらが素なのかもしれない――立ち去った白い少女に、沈黙が落ちる。
誰もが、狂三へ視線を向けていた。何ともまあ……器用な
「……この想い。何と例えるべきなのでしょう」
頬に手を当て、いつにない曇り顔になった狂三。……実のところ、士道は似ている事例を知ってはいるのだが、さすがにトドメとなる一言を告げるつもりは――――――
「むん。じゃが、うぬも主様に好意を示しながら、似たようなことはしておったのじゃろう?」
「……………………」
「許したげてムックちん。それはもうオーバーキルだよ……」
なかったのだが、容赦なく六喰から告げられたその事実に、さしもの狂三も頭を抱えて黙りこくった。同情気味な二亜の言う通り、恐ろしいオーバーキルである。
そう。何を隠そう、相手への好意を口にしながら一線を引く行動――――少し前までの狂三が、狂三自身に返ってきてしまっているのだ。
あまりにも居た堪れないのか、強気な黒リボンの琴里が完全な同情の表情で狂三へ声をかける。
「あ、あの子も色々考えたいことがあるのよ、うん。ほら、元気だしなさいよ」
「……気にしていませんわ。ええ、気にしてなどいませんわ。因果応報ですわ。わたくし、泣いてなどいませんわ」
「く、狂三さん……」
『ありゃー。狂三ちゃんが七罪ちゃんみたいに……こりゃあ大分重症だねぇ』
「……士道」
チラリと、折紙が士道へ視線を飛ばす。恐らく、
「狂三」
あちらも気にはかかるが、士道が行ったところで狂三と結果は同じになる。言われずとも、士道はそうするしかない。
だから、物珍しいメンタルケア――――
「お、お邪魔いたしますわ」
「おう……って、何でそんなに緊張してるんだ」
狂三にしては珍しく、という表現も珍しくは無くなってきたかもしれない。
士道に笑われたからか、頬を赤くした狂三がなおも緊張を孕んだ声音で返してくる。
「し、仕方ないではありませんの。士道さんから、このようなお誘いは……その、初めてのことですわ。そう思ってしまうと……」
「……そ、そう言われてみると、そうだな」
何故か、気楽に構えてた士道まで緊張してしまう。
そりゃあ、しているわけがない。男女の関係。しかし、一線は越えられない。ずっとそんなことをしていたものだから、士道は狂三を自分の部屋という領域に誘ったことがあるはずもなく――――しかし、二人で話そうと
「ど、どうぞ」
「……え、ええ」
軽い衝撃を伴って、士道の隣に狂三が収まった。
「……」
「……」
暫しの、沈黙。隣から感じる体温が、微かな息の音が……お互いに、緊張しているのだと理解できる。
愛おしさの熱量。緊張から解放されていたはずなのに、別の緊張が士道を襲う。縮まった距離では、もうこのようなことは起こらないと思っていたもので――――――
「……ぷっ」
士道は思わず、笑ってしまった。突然の笑い声に、狂三が目を丸くする。
「士道さん?」
「ん、いや……俺たち、
男の部屋に招いて、二人きり。そのことを自覚して、緊張感が満ちる――――
今まで、自分たちは何をしてきた。精霊を相手にし、自分たちだけの世界を作り、何度も愛を伝え合い……傍から見れば、さぞおかしなものだったであろう。
そんなことをしていた士道たちが、今さら、この程度のことで動揺している――――相手の愛おしさから、逃れられない。順序が滅茶苦茶で、こんなもの笑うしかない。
目をぱちくりとさせていた狂三も、きっと士道と同じ考えに行き着いたのだろう。口元を抑えて、小さく笑い出す。
「ふ、ふふっ!! 確かに、おかしな話があるものですわ。わたくしたち、もっと過激なことをしていましたのに」
部屋へ招き入れたことは初めてだが、狂三が部屋を訪れたことは何度もある。しかも、添い寝に目覚めから狂三と、二度とも衝撃的な形で。
狂三という特別な女の子と出会わなければ、こうはなっていなかった。出会って、そして今は通じ合って、こんな当たり前の緊張を感じられて。
「はは、本当にな。こんなの……普通の、高校生みたいだ」
その言葉の重みに、士道は自分で驚かされたのだ。
普通の高校生・五河士道。それが一年前の士道であり――――――最初から、普通ではなかったことを知った。
運命という大いなる意思は、士道に普通を許さなかった。小さな日常があればいい。そう、思った時もあった。皆とただ、小さな世界で、普通に――――もうそれは、叶わない願いなのかもしれない。
普通の少年と少女では、いられない。精霊という宿命を背負う少女と、精霊の力を受け入れる器として生まれた少年。そういう運命の中、二人は出会い、
「学校。また、行こうな」
「……ええ。あなた様となら、是非に」
だからそれすらも、叶わないことなのかもしれない。世界を変えるという大罪を背負う士道たちには、遠すぎる願いなのかもしれない――――そんな普通がなくとも、構わない。
この握った手の温もりがあるのなら、世界の果てであろうとも。皆が幸せになるハッピーエンドのためになら、
ほんの少しの小さな願いを、士道は狂三の手を握り、祈った。
「〈アンノウン〉のこと、どうだ?」
ふと、零すように問いかけた士道。それに対し、狂三は難しげに眉をひそめた。苦々しい、とまではいかないものの、彼女の中でも難儀な課題のようだ。
「……会話すら拒絶されたのは、初めてのことでしたわ」
「だろうな。つっても、
似たような、とは表現したものの、会話が成立しない状況にまで追い込まれた経験は士道にもない。
好きだから、話さない。白い少女は、複雑だろう。自身が命を賭して果たそうとした計画――――時崎狂三の〝生存〟というたった一つの願い。少女の存在があるが故に、一見無謀とも思える選択肢を士道たちが手にし、不安定になってしまった。
士道たちは譲らない。が、少女もまた簡単には譲れない。令音とのデートを明日に控え、楽に解決できるものではないとわかっている。だから狂三も、こうして悩ましい思いをしているのだ。
大胆不敵で頭の回る狂三が、ずっと一緒にいた従者一人のことで頭を悩ませるのは、少し可愛げがあるなと微笑ましい気持ちになる。
「……士道さん。悪いお顔をなさっていますわ。悩んでいるわたくしで、楽しんでいらしているのではなくて?」
「おっと、そんなことないぜ。俺の彼女は今日も最高に可愛い、って思っただけさ」
「騙されませんことよ」
ジト目で見つめてくる狂三に、「本当のことなんだがなぁ……」と苦笑混じりに返す。嘘は言っていない。全てを告げているというわけでもないが。
ただ、よく見ると頬の赤みが引いていない辺り、少しのダメージはあったようだと士道は満足を得た。本当に、可愛らしい
「あいつに何を伝えるのかは、考えてるのか?」
「……そう、ですわね。何から伝えるべきなのか――――けれど、伝えたい言葉は、はっきりしていますわ」
「そっか」
狂三がそう言うなら、大丈夫なのだろう。時崎狂三が少女に望んでいることは、誰より狂三が知っている。
そんな狂三が確信を持って、笑顔を見せるのだ。余計な気遣いは、それこそ余計。釈迦に説法は御免蒙るというものだ。
ただ、そうなってくると
「あら、あら……士道さんは、少々迷いがあるようですわね」
「ん……まあ、な」
狂三に対して、隠し事をする意味などない。素直に頷いて、続ける。
「あいつの中にあるものが、あいつを縛り付けてる。あいつだって、心のどこかでわかってると思うんだ」
「…………」
「確証なんてないし、俺だけの記憶じゃ得られない。俺の勘違いかもしれない……正直、そうであってほしいと思っちまう。けど、それは――――――」
きっと、悲しく残酷な〝価値〟。零してしまった言葉を、しかし崇宮真士の記憶を垣間見た狂三には、自然と理解が及ぶものだったのだろう。
その瞳に――――苛立ちの色は、なかった。
「……それが、
その真実に、澪自身さえ気づいていない。願いを受けた白い少女ですら、忘れようとしたものなのかもしれない。
これは全て、士道の想像だ。もしかしたら、澪はそんなことを考えていなくて、本気で自分の願いを叶えようとしているだけなのかもしれない。いや、そうであってくれた方が、まだ救いがあると思えてしまう。
けれど、五河士道と崇宮真士。崇宮澪と白い少女。そして、ただ悲しげに目を伏せた狂三が、澪の矛盾を認めてしまいそうになる。
「……その願いが、本当にあるんだとしたら――――あいつは、それに抗って『生きたい』と願った。そう、考えてた」
生まれ落ちた瞬間に感じた願いは、悲しく破滅的なものだった。それが少女に影響を与え、僅かな〝自我〟を芽生えさせ……今も、無意識に少女を犯す願いとなっている。
それが士道の考え
「そういう物言いになるということは、士道さんの中に迷いがある、ということですわね?」
「……ああ。完全に、間違ってるとは思ってない。けど、俺が見てきたあいつとは、
あとほんの一歩のこと――――それはやはり、時崎狂三の口から語られた。
「……士道さんは、澪さんの〝願い〟があの子に影響を及ぼしている。そう、お考えですのね?」
「ああ。お前は、違うと思うか?」
「いいえ。けれど、あの子がわたくしに願ったことを鑑みることで、答えらしい答えを見つけ出すことが出来ますわ。あの子は、きっと――――――」
今度は、狂三が。誰より白い少女と共に過ごした時崎狂三が、士道へ〝答え〟を告げる。
それを聞いた士道は、一瞬目を丸くし、
「――――そう、だよな。あいつ、そういうやつなんだよな」
でも、
その〝答え〟を得て、なんとも言えない悔しさに、士道は笑いながら不貞腐れるように勢いよくベッドに背を預けた。
「あーあ。答えに行き着きそうだったのに、やっぱ狂三には叶わないのかぁ」
澪の
そんな拗ねた様子が可笑しいのか、狂三はくすくすと口元に手をやり声を発した。
「うふふ。士道さんがわたくしに口先で勝とうなど、千年早いというものですわ」
「お、言ったな? 何があって、俺の可愛い狂三はここにいるんだっけ?」
「わたくしが負けたのは皆様。士道さん個人ではありませんわ。つまり、わたくしは士道さんとの口喧嘩に負けたことはありませんわ」
「ああ言えばこう言う……」
「何か仰いまして?」
「いえ、何でも」
ニッコリとしたとてもありがたい圧のある笑顔に、こんなの俺じゃなくても口答え出来ないよなぁ、なんてことを贔屓目に思う。
多分、士道は狂三に一生叶わないのだろう――――惚れた弱み、というやつかもしれない。
感慨にふける士道の視線の先で、ふと、狂三が表情を硬くしたことに気がつく。
「狂三……?」
「士道さんは……どこまで、本気でしたの? わたくしに……敗北を、認めたときのこと」
「へ?」
まさか、今更になってそれを聞かれるとは思っていなかった士道は、素っ頓狂な声を発して、それから「あー……」と気まずい声を零す。
頬を掻きながら、それでも隠すことでもないと士道は天井を仰ぎながらハッキリと言葉を声にした。
「全部だよ。お前だって、本当はわかってるんだろ? 大体、俺の目的を先に話したとして、狂三は絶対聞かなかった。『聞いて損をしましたわ。論外ですわね。話になりませんわ』、くらい畳み掛けてたと思うぞ」
「いえ、あなた様のお言葉を何もそこまで……恐らく、否定はいたしましたけれど」
申し訳なさそうな表情で微笑む狂三に、士道はだろうな、と苦笑した。
時崎狂三という少女は、頑固で負けず嫌いだ。目的のためなら敗北を選ぶことはする。しかし、本気の勝負から逃げることはしない。けれどそれは、確かな実力と類まれなる天賦の才があるからこそのプライド。そして彼女は、現実的な視点が存在している。
つまりは、この世界の士道の死という確実的な現実と、何の犠牲もなく理想の世界を目指すという夢物語――――前者を成し遂げる確実な自信がある狂三には、後者を示したところで届きはしない。
浅薄な見立てをしてきたわけではなく、士道は狂三という精霊を理解していた。わかっているからこそ、士道の言葉は全て
「俺は、本当にお前がそう望むなら、それでいいと思ってた。死ぬなら、お前に殺されたいって。今だって、その考えは変わってない――――――でも、信じてた」
だからこそ、士道の選択肢は
狂三の手を取るため、取らせるため。
「――――狂三が俺と、
決して、正しいやり方ではなかった。琴里たちには迷惑と、ひたすらに心配をかけてしまった――――けれど、狂三へ見せる笑顔から、士道に後悔がないのはよくわかることだろう。
それは狂三の、心底呆れながらも愛おしさを感じさせる微笑みから、士道自身が読み取れた。
「……仕方のない人。それで撃てなかったわたくしも、随分と甘い女ですわ」
「いいんじゃないか、それで。俺はどんな狂三でも愛してるぜ」
「まあ、まあ……」
――――
でも、そうでなければ狂三は今の選択をすることはなかった。だから士道は謝らないし、この選択を、一生後悔なんてしない。
後悔のない選択だったと誇るためにも――――澪を救うためにも、明日のデートは成功させなければならない。
「……明日の勝算は、如何程のものでして?」
「勝算のない勝負じゃない、とは思ってる」
元々、好感度自体は高いと予想している。澪……令音は精霊を愛している。だからその好感度を、如何に
精霊をデレさせて、封印する。単純明快な理屈は、相手が始原の精霊であっても有効。だが――――――
「そのお顔。何かしらの不安があるようですわね」
「……やって見なけりゃ、わからない。今は、これしか方法がないからな。けど、もし
士道は予知能力者ではない。だから、予測から成る漠然とした不安だけが心にあった。
もし、もしも、この漠然とした不安が現実になった時、士道は、彼女に告げられるのだろうか――――あまりにも残酷な、可能性を。
「そのときは」
「え……?」
恐らくは、狂三らしく思考までも読んだ言葉が零れ落ちる。
目を丸くして彼女を見上げる士道に、狂三は口元に優雅な笑みを浮かべ、
髪に隠れた瞳が顕になるほど、近く。
胸の高鳴りが聞こえてしまうほど、近く。
「――――わたくしが、共に背負って差し上げますわ。あなた様の苦しみも、痛みも……背負ってしまえる、
時崎狂三は、女神よりも美しかった。
息が止まってしまいそうなほど。
時が止まってしまいそうなほど。
誰より、何より。五河士道が、世界を見て感じた全てのものより、美しいと思った――――きっと、白い少女が見た狂三も、世界で一番美しかったのだろう。
世界で、狂三の真なる美しさに最初に気づけたのが、士道ではなく少女だったのかもしれないと思うと、少し妬けるなと士道は僅かに頬を緩ませる。
「一心同体、ってやつか?」
「ええ。わたくしたち、運命共同体ですわ。とっても、とっても……素敵でしょう?」
「最高だな。俺好みだ」
一方的ではなく、互いに伝え合う。恋の先にある愛とは、共同体ではなくてはならない。たとえ歪でも、他人に理解されなくても、互いが繋がっているのなら――――それは正しく、愛なのだろう。
「さて、さて。それはともかく」
「ん……?」
大変素敵な笑顔です狂三様。しかし、どうして不穏な雰囲気を醸し出していらっしゃるのでしょうか? 士道の思考が勝手に声になってくれるはずもなく、雰囲気を変えた狂三が蕩けるような声を発した。
「士道さんは、落とす心配より
「……えっと」
「令音先生、綺麗ですわ。真士さんの感情を差し置いて、士道さんが令音先生に籠絡される……という可能性もありますわよねぇ?」
「そ……」
そんなことはない、とは簡単に言い出せないのが困ったものだ。
デートとは、一方的であってはならない。即ち、手段で終わってはならないということ。士道が心から楽しまなければ、相手を楽しませることなど出来ない――――そういう意味で村雨令音という女性の相手をすることは、さほど難しいものではないのだ。
士道には崇宮真士の記憶がある。崇宮真士は澪が好きで好きで仕方がない。それを
そもそも、ないわけがないのだ。村雨令音という女性は、魅力的で、不思議な雰囲気を纏って……精霊を救いたいと願った、士道の大事な恩人なのだから。
……とまあ、言い訳を垂れたところで、士道が言葉に詰まってしまった事実に変わりはなく、狂三の圧が増した事実にも変わりはない。
「素直なのはよろしいことですわ」
「す、すまん……」
「きひひひひ!! さあ、さあ――――そもそも、わたくしは怒りなど感じていませんわ」
え、と。続けられた言葉に士道は意外な声を零して――――はだけた素肌が、視界を熱をもって侵食した。
「っ……!!」
「所詮、建前のようなもの。けれど、あなた様の想いを、譲りたくはないのですわ」
下に着飾られた――――
「狂、三……」
「もう、我慢などしなくていいのです。わたくしも、あなた様も……どうか――――――」
この世で唯一、士道と狂三にはあるのだと。許容量を容易く超えた興奮が、脳に熱を持たせる。
多くは語る必要はない。ただ、その美貌を。その熱を――――――
「感じさせて、刻ませてくださいまし。わたくしと士道さんの――――――心を」
「――――ああ」
ただ狂三と、全てを重ね合わせた。
見せられないよ!!!!
士道くん外でもやれるんでね(参考出展輪廻ユートピア・狂三リメイン)。部屋は余裕でしょう。ナニとは言いませんけれど。ナニとは言えませんけれど!!!!タイトルも繋がりとか関係とかの意味なので他意はないです。コネクトはさすがに直球がry
美九こんなだったかなぁ……と原作を読み返し、これより酷いなぁ……となる。美九を真面目に書きたいと思うのに勝手に暴れていく。
こんな『嫌です』の使い方初めて見た気がする。直訳は『好きだから話したくない』です。えぇ……次回はそんなあの子のお話です。
感想、評価、お気に入りなどなどお待ちしておりますー。次回をお楽しみに!!