デート・ア・ライブ 狂三リビルド   作:いかじゅん

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一年半、これまでご愛読ありがとうございました。士道と狂三の物語を見届けてくれた皆様に、感謝を。







エピローグ『狂三フィナーレ』

「……慣れたかい?」

 

「…………」

 

 藪から棒。主語が抜けている。時折、そんな苦言を狂三より承ったときがあったが、自分の癖はこの人譲りじゃないかと思うときもある。

 とはいえ、これをやるのは短くとも端的に解釈してくれる相手のみ。そういう意味では、目の前の彼女も人を選んでやっていると見るべきか。

 飲み物のストロー――見事、琴里に苦言を呈されたので普通のジュース。彼女はいいのに理不尽ではないだろうか――から中身を吸いながら、未零は半目を作って返してやった。

 

「……慣れたも何も、ここ数日はあなた方の検査に付き合わされていただけでしょう」

 

「……その通りだ。すまないな、忘れてほしい」

 

 ……この人、こんなにコミュニケーションが下手だっただろうか? と能面で返されたそれに、不思議な疑問を抱かずにはいられなかった。

 慣れた――――――ここでの生活には慣れたか、という意味を含むことは理解していた。が、言葉にした通り、ここ数日にかけて〈ラタトスク〉の施設で精密な検査を受けていた未零には、何とも縁遠い問いかけであった。

 普通の精霊であれば、検査にここまでの時間を要することはなかったかもしれない。未零自身、特別手のかかる要望などは述べたつもりもないからだ。

 それがなぜ、数日も入念な検査を行っていたかといえば、一つは未零の特異体質に違いない。

 始源の精霊から生まれた劣化品(・・・)――――――と言うと、多方向からあらぬ視線が飛ばされてくるので、ここはオブラートに分霊とでも呼称させてもらおう。とにかく、そういうことだ。

 一度目は自傷。二度目は重症からの痩せ我慢。三度目は自爆特攻。以上が〈   (アイン)〉の使用回数、及び連なる未零の負傷回数である。精霊と名乗る割に、肉体が脆弱なのが特色とも言えるのだが、〈ラタトスク〉からすれば特に気にかける事柄らしい。

 未零から言わせれば慣れたことで大した問題ではなかったのだが、さすがに霊力を封印された(・・・・・)身であるため、その影響がどうなっているか調べることに異論はなく、大人しく付き合うことになったというわけである。

 理由の半分は以上となる。そして、もう半分は――――――ふと、外の風景へ視線を向けた。

 

「……ふむ」

 

 独り言つ。ガラスの向こう側には、変わらぬ光景があった。親子、兄妹、恋人、夫婦――――――変わらぬままの関係性と、至って平和な日常風景。

 この世界が、たった二人の手で創り変えられた(・・・・・・・)とは、到底信じられないほどに世界は平和だった。

 検査を終え、彼女と共に帰路につきながらも、未零の心からはその不可思議な感覚が抜け切っていない。当然それは、ティーカップに手をつけて隈深い目元を未零へ向ける彼女も同じことのようだ。

 

「……気になるかい?」

 

「まあ、あなたと同じくらいには」

 

 再び問いかけられ、彼女に――――村雨令音(・・・・)にその言葉を返すのは、思いを同じとする上で必然だった。

 長引いたもう一つの理由――――――狂三と士道が世界を書き換えた、その影響によるものだった。

 確かに、目に見えた変化は……多くないとは言わないが、大多数には見られなかった。問題なのは目に見えない内部。細部までの情報。何より、琴里たちは記憶を持ち越している(・・・・・・・・・・・・・・・)ということだった。

 

「……霊力の経路(パス)を強化していた影響だろうね。記憶と情報の擦り合わせは、まだ時間がかかりそうだ」

 

「……それが良いことなのか、悪いことなのかは別にして、ですけれど」

 

 記憶を保持することを選んだのが誰の意志なのか。少なくとも、精霊たちは望んで記憶を持ち越したことになるのかもしれない。

 世界は、塗り替えられた。たった二人の意志で、独裁的な判断で……それが世界にとって良いことだったのか、それとも悪いことだったのか。それこそ、答えは出ないのだろう。

 世界が再構築されたことを知覚している人物は、そう多くは数えられない。多くはないからこそ、その中に〈ラタトスク〉の司令である琴里が含まれていたことは、苦心に値することなのだろう。もっとも、部下が優秀であるため問題はない……と言いたいが、令音も琴里側であるため存外(部下の性格を含めた理由で)苦労はするかもしれない。幼き司令官様の手腕に乞うご期待、といったところか。

 

「……まったく、どれだけ変えてきたのやら」

 

 何が変わり、何が変わらなかったのか。スケールの大きさに想像もできず、未零は頬杖を突いて苦笑を浮かべる他なかった。

 

「……精霊たちの心情に配慮して書き換えたこと、同じ意味で書き換えなかったこと。それは様々にある。一つ言えることは――――――あの二人は世界に勝った、ということだけだろうね」

 

「世界に勝った……か」

 

 放たれた言葉を繰り返し、呑み込む。世界に勝った――――――それがどれほどのことか、士道たちがよく知っているはずだった。

 一度世界を変えた。そうして幾度となく世界を救い、二度目は自分たちの約束のために、エゴで世界を変えた。それも、未零が想定していた狂三の到達点を中継地(・・・)扱いとまできたものだ。

 

「あなたをどうにかする手段だったはずでしたが、あなたをどうにかしてからあの霊結晶(セフィラ)を使うとは……」

 

「……君の想定は、どこまでだった?」

 

「私の霊結晶(セフィラ)であなたの力を取り込んで、もう片方はどう転ぶかでしたね。正直、あなたを抑え込むのにどちらかは犠牲にするつもりでしたし」

 

 そのために、未零は攻略前夜に己の裡にある霊結晶(セフィラ)と『狂三』の霊結晶(セフィラ)入れ替えた(・・・・・)

 士道が攻略に成功した、あるいは一歩手前まで到達したとき、未零が澪の力を抑え込むだけならば自然の色を保つ霊結晶(セフィラ)の方が都合がよく、もう一つを『狂三』に託しておくことで最悪の場合(・・・・・)でも狂三だけは生かせるようにした。

 

「〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉の中でも言いましたけど、結構ギリギリだったんですよ。あの正面からの場面で狂三に霊結晶(セフィラ)を渡そうものなら、あなたが間違いなく本気で取りに来てしまいますし」

 

「……否定はできないな」

 

 令音の返しにはぁ、とわざとらしく気苦労の息を吐く。

 本当なら、当の本人の目の前にしてすることではないのだが、ここまで苦労させられたのだ。この程度は言わさせてくれないと気が済まない……当の本人は、今は令音だとシレッとした顔をしているのだが。

 ――――――賭けに勝っていたのは、実のところ未零だった。あの時点で同じ賭けを乗り越えたウェストコットの動きも、そして澪の動きも読めていた。しかも都合のいいことに、澪の力を受け取った未零は想定していた以上に澪の霊力を吸収(・・・・・・・)できる状態にまでなっていたのだから、取るべき行動は一つしかなかったと言えよう。

 狂三に士道に精霊たち、果ては諦めていた澪まで。ウェストコットを道連れに、未零が欲したあらゆる望みを叶える道があの時間軸だった。

 

 そうして、未零の〝計画〟が完璧な形で到達した瞬間――――――

 

 

「……私が少しづつ進めて、やっとチェックメイトまで持っていった駒を、盤上ごとひっくり返しちゃうんだからなぁ」

 

 

 どんでん返し。テーブルに頬を押し当て、その理不尽さに感服した。

 完膚なきまでに理不尽を吹き飛ばす、理不尽。まるで、本物のデウス・エクス・マキナ。しかも、解決へ向かっていた物語を好き勝手に変える、相当に我が儘な神様とは恐れ入る。

 さしもの未零も、完全に敗北を認める他なかった――――――不満があるわけではない。あまりに不条理な方法に、呆れ返っているだけだ。

 心から感謝はしている。嬉しいという気持ちが大きい。彼らの目的が達成されたことを、存分に祝福しよう。が、それでも言わせてもらいたいのだ。そんなのありか(・・・・・・・)、と。

 

 

「――――――一種の空間転移(・・・・)

 

 

 ぽつりと零された言葉、見解(・・)に未零はぴくりと眉根をあげ、顔を上げて令音と目を合わせた。

 

「……君はどう思う?」

 

「……どうもこうも、あなたと出す答えなんて大概同じになりますよ。あの弾……ていうかもう弾すら撃ってませんね。〈刻聖帝(ザフキエル)〉・【0の弾(エフェス)】の特性は、間違いなく空間転移です」

 

 文字通り、空間と空間の跳躍。それだけならば、令音と未零が驚くことはないし、わざわざ互いの意見を示し合わせる必要もない。第一、空間跳躍というだけならば澪、澪の力を再現した顕現装置(リアライザ)が行使できる。ああ、それだけならば(・・・・・・・)、だが。

 

「……ただし、空間の定義は大きく異なりますね。あれの意味する空間転移は、時間移動(・・・・)。空間と空間というよりは、時間と時間(・・・・・)を自在に行き来している。結果として、それが空間転移に見えるだけです。――――――下手したら違う世界(・・・・)にも飛べますよ、あの人たち」

 

 もしくは、未零たちの観測外で既に体感した(・・・・・・)可能性すらあるか。その答えは、狂三と士道の二人にしかわからないことだ。今は置いておくとしよう。

 結果として、あの力は時崎狂三の〝本質〟を余すことなく捉え、生み出された銃弾。時を超える性質、彼女の本質を突いた理想の力と言えよう。

 時を超える。それも、【一一の弾(ユッド・アレフ)】や【一二の弾(ユッド・ベート)】のように一方方向でも、【六の弾(ヴァヴ)】のように意識だけでもなく、あらゆる時間、あらゆる瞬間へと転移を可能とした究極の時空間転移(・・・・・・・・)。それが狂三の〝本質〟が生み出した【0の弾(エフェス)】の意味である……というのが、未零と令音の予想だった。

 令音としては予想通りの見解よりは、違う世界(・・・・)という部分に興味を示したのか、あごに手を当て「……ふむ」と思案をし始める。

 

「……凄まじい力だね。私であっても、世界の壁を隔てた干渉には時間がかかってしまうものだ」

 

「……出来ること自体、おかしいと思うのですが」

 

 まあ、澪の力ならそのくらいは出来ておかしくはないか、とも未零は考える。同時に、澪ですら難しい時空間干渉を行うあの力は、世界すら超えるもの(・・・・・・・・・)なのだろう。

 時間と時間を行き来する能力。それだけなら、強化された【一二の弾(ユッド・ベート)】というだけのことかもしれなかったが、未零は目を細めてもう一つの予想を打ち立てる。

 

 

「あの力、もう一つ仕掛けがあるはずです。恐らくは、世界の抑止力。因果の修正――――――そういう条理を超える(・・・)力。言い換えてしまえば、あの二人は世界より強い(・・・・・・)。身も蓋もない単純明快な理屈ですけれど、それが肝心なことだったのでしょうね」

 

 

 もとの歴史を辿ろうとする強制力。時間の辻褄合わせ、とでもいうべきか。一番の例は、間違いなく折紙の両親の死。【一二の弾(ユッド・ベート)】によって変更された時間軸上で、未来の折紙が過去の折紙へ復讐心を与え、それにより遡行した折紙がまた両親を――――その遡行すら組み込まれた歴史的特異点の改変を行った。が、それでも折紙の両親は現代へ至る時間の間に死してしまった。

 だが、それを実感すると同時に、士道はこう考えたのだろう。世界の意志というものを上回る力(・・・・・・・・・・・・・・・)があれば、歴史の改変はより完璧なものになるのではないか、と。もっと単純な話、【一二の弾(ユッド・ベート)】を超える権能があるのなら、因果の強制力を排除できるのではないか、ということになる。……実際にそれをやれたとして、今度は複雑化する歴史を自分たちの望み通りに変えられるか、という問題に行き着くのであるが――――――

 

「……不可能ではないだろうね。士道の中には、精霊の天使が残らず封印されている」

 

「……ていうか、現実にまざまざと見せつけられてるんですから、可能だって認めるしかないじゃないですか」

 

 未零の思考を読んだ令音へ、その簡単すぎる答えを返した。

 そう、そうなのだ。こうして考えを重ねたところで、既に歴史は変えられている(・・・・・・・・・・・・)。未零たちは歴史改変の生き証人でもあるのだから、認めないわけにはいかないのだ。何度も言うが、不満があるわけではない。ただ、あまりにも荒唐無稽の理想論をデタラメな理屈で完遂させられて、今になって言葉として呆れが飛び出しているだけだ。

 

「……まさか、ここまでとはね」

 

 令音の零した言葉のニュアンスは、そこから読み取れるものがいくつもあった。そのうちの一つを拾って、未零は声を発する。

 

「到達点の可能性としては、精霊全員にあるものだと思いますよ。精霊に優劣はない――――――原因があるとしたら、器側です(・・・・)

 

 精霊は澪から霊結晶(セフィラ)を受け取り、あるいは霊結晶(セフィラ)から生まれた者。今回は狂三が神化(しんか)へ至り、澪と同等の領域に踏み入ったわけだが、別にそれは狂三だけが到達し得る領域だったというわけではない。

 先の通り、精霊として生まれ直した時点で誰もがそこへ足を踏み入れる可能性(・・・)を秘めていた。霊結晶(セフィラ)に適合した存在というのだから、それは当然の推測である。その時点で問題となるのは、述べた意味をそのままに〝器〟の問題だ。

 

「あなただって、士道の感情次第で精霊の状態が移り変わることは想定していたでしょう?」

 

「……ああ」

 

「……けれど、私にもあなたにも予想できないことがあった。今回は(・・・)、器側の想いまで予想以上に膨れ上がり、しかもそれが長期的に、さらには予期せぬ状態で維持されていたのが大きなファクターです」

 

 封印をせずに霊力の経路(パス)を繋ぐ。正確には、封印の自覚すらなく歪な経路(パス)を繋いだこと、だろう。どちらにしろ、澪と未零が共有する知識の中には存在していなかった可能性。

 極論、精霊とは〝器〟に霊力を封印させるために生み出したものであったのだが――――――封印をされていないくせに、一番に心が通じ合うなど理屈を通り越したイレギュラーだ。

 これが果たして、この世界だけの力だったのか。あるいはそうではないのか。まあ、並行する世界を観測していない未零にはわからないことだった。

 

「結果、天使は予期せぬ形で進化を遂げていった。歪だったからか、その歪を適応させるためかはしりませんが、その機能は短期間のうちに極限まで研ぎ澄まされていった……ちなみに、カッコつけて言ってますけど、大体はあなたのせいですからね、これ」

 

「……私かい?」

 

 小首を傾げ、何を他人事みたいに話しているのか。大元、根本的な元凶で事の原因は間違いなく澪だというのに。

 それは霊結晶(セフィラ)を与えたからとか、狂三が最悪の精霊として生きる原因を作ったとか、そういう後から生じた理屈ではない。もっと単純で根深く、そしてどうにもならないものだ。

 大きく息を吐き、その原因を言葉にして示す。経路(パス)が歪になったことはファクターの一つとは言ったが、本家本元はこうだ(・・・・・・・・)

 

 

「――――――もとの持ち主が恋に溺れたんです。進化の理由には最適でしょう」

 

 

 言い切って、乾いた喉を潤すためにジュースを煽るように一気に飲み干した。それを令音は、大きく目を丸くして見ている。自覚がなかった、というほどではないと思っていたのだが、どうなのだろうか。そればかりは、未零とは違うものだからわかりようがなかった。

 天使は主の心を映し出す水晶。霊結晶(セフィラ)もそうであるならば――――――恋に狂った少女が生み出した水晶が、恋心で進化を果たすことに何の障害があろうか。

 

「狂三の未来予測も、あれは恋心故に士道との未来(・・・・・・)を視せていた。だから士道との未来を手放せば視せる必要はなくなりますし、逆もまた然り。……利用した私が言うのもなんですが、私たちの天使まで〝観測〟範囲に入れるのは冷や汗ものでしたけれど」

 

 狂三の意志ではなく〈刻々帝(ザフキエル)〉の意志によって行われる予測は、時崎狂三の心を映す天使が望みを叶えているともいえる。だからこそ、未零が従者としてついていた時点では未零の正体を予測して狂三に視せることはしない……というのは理屈だけの話で、割と焦らされたものだと終わってから溜息が下がる思いだ。

 すると、半ば感想のように言葉を口に出していた未零を、令音がじっと見つめていることに気がつく。こうして見ると、成長した自分(・・・・・・)であろう人といるのは、思った以上にむず痒くなりそうだなんて思いながら未零は口を開く。

 

「……何か?」

 

「……いや。――――――君は本当に、好きな人のことをよく見ているね」

 

「――――――――」

 

 そう微笑ましげに微笑を浮かべた令音に、思わず指で遊ばせていたストローを容器の中に落とした。

 確かに、端的に、それも極限まで切り詰めたならば、令音の言う通りではある。未零は好ましいと思った人のことは気にかけるし、大体が危なっかしい人ばかりなので注意深くもなる。

 狂三は言わずもがな、認めよう。だが、だ。今の話、話題の半分は――――――

 

「……わかってて言ってます、それ?」

 

「……?」

 

「…………いいです。わかってないなら、それで」

 

 もしかして、真士以外からの好意には鈍くなっていたりするのだろうか。ありえる。凄くありえる。そのくせこの人、街中に出かけたらひたすらに声をかけられるタイプだ。本質は澪なのでお人好しで押しに弱い――意図せず自分への戒めになった気がするが――実際、ここに来るまでに何件――――――ああ、やめよう。慣れない疲れがぶり返してきた気がして、頭を抱える。こればかりは、同じ貌が揃って歩くことによる弊害を甘く見ていた未零が悪い。

 喫茶店の壁にかけられた時計をちらりと確認する。休憩にしては、長く居座り過ぎたかもしれない。 

 

「……そろそろ行きますか」

 

 言って、椅子から腰を浮かせようとすると、

 

「……ん。なら、少し付き合ってほしいんだが」

 

 そんなことを唐突に言い始めたものだから、未零は訝しげに聞き返した。

 

「何にです?」

 

「……家に日用品の買い足しと、その他の必要そうな物もかな」

 

「……? あなた、日用品が足りなくなるほど家にいたんですか……?」

 

 あごに手を当てて必要なものを打ち出していく令音に、未零は疑問を重ねた。

 この村雨令音という人は〈ラタトスク〉解析官、及び来禅高校物理教師という脅威の二足わらじを成立させている。その分、家に帰ることは稀のはずだ。未零の近しい記憶の範囲でも、病室で寝込む未零に空いた時間のほぼ全てを回していたくらいには、家に帰るという習慣から離れている。

 彼女が家を持つのは形式上、それが人間らしいから(・・・・・・・・・・)だ。隠す必要がなくなったら、平気で〈フラクシナス〉の私室が日常範囲で構わないと言いかねない……は言い過ぎかもしれないが、そこに強いこだわりはない人だろう。

 総評にすると、日用品が足りなくなるほど、しかも他のものまで買い求める必要があるのか、ということだ。〈フラクシナス〉の私室ならともかく、未零を付き合わせてというのは疑問を感じる。

 と、変わらず訝しむ未零を見て、令音は平然と爆弾発言(・・・・)を繰り出した。

 

 

「……いや、君の分(・・・)が足りなくてね」

 

「――――――は?」

 

 

 ここ一番、素っ頓狂な自分の声を聞いた気がした瞬間だった。

 指を自分に向け、大きく首を傾げる。

 

「……私?」

 

「……君だね」

 

 指を刺される。自分と併せて二つの指で指定をされれば、どれだけ鈍かろうと理解が及ぶというものである。

 

「……なんで?」

 

 まあ、それで感情的な理解が追いつくのかどうかは、また別の話ではあった。

 

「……これから一緒に暮らすからじゃあないかな」

 

「……なんで!?」

 

 それも、強制的に理解をさせられてしまうのではあったが。

 落ち着きかけた腰が全力で浮き上がり、平静を保つ令音と自然と距離を詰めて未零は新事実に驚愕を露にした。

 

「……言っていなかったかな?」

 

「……聞いてませんけど!?」

 

 思わず叫びをあげると、他の客が僅かばかりこちらへ視線を向け始める――――ハッと目を見開き、一度落ち着きを取り戻すため一呼吸を入れる。内容が内容であったため、令音が意図的な認識を反らして(・・・・・・・・・・・)いたのだが、さすがに声を荒らげては意味をなさなくなってしまう。

 気を落ち着かせ――こうしていると、令音と自分が似ているという意見には些か同意し兼ねる――改めて令音の真意を問うた。

 

「……どうしてそうなったんです?」

 

「……どうしても何も、君が言ってくれたんじゃないか」

 

「……はい?」

 

 いつ、どこで、どういう意図で、未零がそんな言葉を――――――幾らかの疑問が頭を過ぎった瞬間、同時に思い起こされる自身のとある発言までも甦った。

 

 

『――――――私はあなたと一緒にいるから。〝私〟は『私』じゃないけど――――――〝私〟はあなたの妹だから』

 

 

 ――――――言った。確かに言った。それがそう解釈されるのかどうかは、賛否が別れると言う他ないものだったが。

 

「過大解釈がすぎるでしょう……!!」

 

 あの時の、しかもあれだけ取り乱した状態での発言一つで、よくそこまで解釈して決断できるものだと未零は顔を手で覆って自らの迂闊さに嘆く。

 そんな後悔先に立たずの未零に、相も変わらず無表情な、それでいて少し悪戯な笑みのようなものを見せる令音が声を発する。

 

「……しかし、現実的に君は行き場がないだろう?」

 

「……や、狂三と使っていた隠れ家の一つや二つはありますし、わざわざあなたの家じゃなくても……」

 

 加えて言えば、〈ラタトスク〉側は喜んで精霊マンションに未零の場所を用意しているだろう。狂三がどうなるのかはわからないが、未零は正当に封印された精霊と同じなのだから。

 それは令音とて知り尽くしていることのはず。未零の主張はそういった正論であるのだが――――――

 

 

「――――――駄目、かな?」

 

「っ――――」

 

 

 正論だとしても、時として感情が容易く覆すことはあろう。

 その物憂げな瞳が曇る様を未零は直視したくなかった――――――その上で、重ねると。

 

 

「――――駄目なんて、言ってない」

 

 

 未零自身、嫌だとは一言も言っていない(・・・・・・・・・・・・・)のだ。

 紅潮した顔が自らの頭に浮かび上がるように熱く、誤魔化すように伝票をひったくり勢いよく立ち上がった。

 

 

「……どうせ行き場があるわけじゃないんです。どこへだって付き合います(・・・・・・・・・・・・)

 

「……そうか。ありがとう――――――未零」

 

 

 そうして、並んで歩き出す。ありえるはずのなかった光景が、二人の間で現実となって存在している。

 姉妹と言うにはまだぎこちなくて、あるはずだった姿には程遠いけれど――――――三十年に比べたら、なんてことはない長さになるだろうと、未零は仄かに微笑んだ。

 

「……うん?」

 

 表情の変化に令音が小首を傾げる。それを見て、未零は道化ではない自分自身(・・・・・・・・・・)の笑顔で令音の顔を覗き込み、言葉を発した。

 

 

「……ううん。なんでもないですよ――――――姉さん」

 

 

 いつかの明日。果ての約束を守るため、創造された未知なる未来へ歩き出す。

 それはきっと――――――止まっていた時間が動き出した、何よりの証明なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 天宮市から電車とバスを乗り継ぎ、そう長くは続かない時間だった。

 それが、そんな程度の距離が、『なかったこと』になった凄惨な悲劇が引き起こされた場所だということを知る者は、この世界(・・・・)でも多くはない。

 そのうちの二人である士道と狂三は、道すがらゆっくりとした足取りで言葉を交わしていた。

 

「元気そうだったな」

 

「ええ、ええ。とても喜ばしいことですわ。――――――本当に、よかった」

 

 宿願の成就を噛み締めるように――――真の意味で噛み締めているのだろう。狂三は万感の想いを乗せて言葉を発した。

 時崎狂三が打ち立てた悲願の根源(・・)。今日この日は、再確認にすぎなかった。だが、士道たちが存在する時間へ帰還を果たした今、それは言うまでもなく重要の一つだった。結果がわかっていても、こうして予定を立てて訪れることは必要だったのだと、狂三が浮かべた表情を見て士道はホッと息を吐く。

 同時に、僅かに目を細めて士道は言葉を続ける。

 

 

「――――会っていかなくて、よかったのか?」

 

 

 狂三は今、それができる立場にある。力がある。それでも狂三は、首を縦には振らなかった。

 

「……世界を変えたとはいえ、折紙さんのような記憶の残留からあの瞬間(・・・・)のフラッシュバックが起こり得ないとは言いきれませんわ。ましてや、わたくしは彼女を殺した女(・・・・・・・)――――――わたくしの存在は、あの方々には既に余分なものなのですわ」

 

 ――――――いつか必ず、取り戻すと誓った人がいた。

 犠牲にしてしまった大切な人がいた。大切にしてくれた人たちがいた。それら全ての平穏を取り戻すため、少女の短い生涯を無へと封じ込め、精霊は修羅となった。

 そして、手にした力の果てで取り戻した存在へ――――――狂三は触れることをしなかった。

 贖罪であったのかもしれない。本当に、口にした理由だったのかもしれない。どちらにせよ、狂三は選択した。家族を、命を賭して取り戻した友の平穏を、揺るがす可能性を排することを。

 ならば、士道が言えることなどただの一つしかあるまい。

 

 

「そっか――――――なら、いつかは会いにいかないとな」

 

 

 狂三の選択を肯定しながら、望む未来を提示する。

 目を丸くした狂三へ向かって、続ける。

 

「俺たちが約束したハッピーエンドなら、そうじゃなきゃおかしい……だろ?」

 

「……き、きひひひひひひ。まあ、その通りですこと。まさか、士道さんに当然のことを諭されるだなんて……ふふっ」

 

 士道が言ったことがそんなにもおかしかったのか、聞き慣れた笑い声の後にもくすくすと笑みを零す狂三。だが、そこに否定の色はなかった。それだけで、士道が穏やかな気持ちでいられる理由になる。 

 今は、それでいい。けれど、いつか必ずその日(・・・)を迎えさせてみせる。

 

「じゃあ……帰るか」

 

「ええ。帰りましょう――――――皆様のもとへ」

 

 繋いだ手には、罪がある。この手を繋ぐために犯した罪過を、世界の誰よりも身勝手な行いを、士道は決して忘れることはない。この罪に終わりはなく、永き時の中で背負い続けるものだ。

 だけど構わない。士道はそうしたかったから、選んだ。狂三といたかったから、みんなの救いを『なかったこと』にしたくなかったから、そこに正しさなど存在しない道を選んだ。この手を繋ぐことができたのだから、それだけで十分すぎる価値があると士道は――――――世界を創り変えた最悪の魔王は前を向いて笑うのだ。

 

「さて、帰ったらみんなの手伝いをしないとな。令音さんが未零を連れてくるまでに終わらせないと。ええと……なんて名前だっけ?」

 

「『れーちゃん歓迎会もといくるみんと少年の帰還を祝してもとい色々お疲れ様でした会』ですわ」

 

「漫画家なんだからもう少し捻ったらどうなんだ……? いや、捻ったネタは漫画に使うからこそなのか?」

 

「わかりやすくても、覚えられなければ意味がありませんわねぇ」

 

「はは、違いないな」

 

 くだらない話をしながら道を歩く。こうしていると、周りからどう見られているのだろうか。やはり、恋人だろうか。ああ、そう思われていたら嬉しい。だって、素直に『そうです』とやっと胸を張って言えるようになったんだから。

 久方ぶりに感じる自然と流れるだけの時間の中で、ゆっくり、ゆっくりと士道と狂三は歩く。それは今までできなかった士道たちの願いを、ようやく叶えることができたからかもしれない。

 夢物語だった。叶うことはないと言われた。だけどこうして掴めた――――――皆が生きる穏やかな未来を。

 そうして歩き続け、見慣れた光景が常に視界へと入り込むようになった時、自然と二人の足先は言葉もなく同じ方向へと向かっていた。

 

 一陣の風が凪いだ。それは、狂った運命を祝福し、迎えられるかのように――――――二人はそこ(・・)へ至った。

 

 

『――――――――』

 

 

 互いの手だけを繋いで、少年と少女は足を止めた。

 時期は違う。始まりとは景色が違う。それでも見紛うはずはない。違えるはずはない。その光景に意味があったのではない。士道の意味はあの瞬間、あの少女へ捧げられていたのだから。

 運命の日々。始まりに出会った少女。最初に出会ってしまった精霊。絶対に忘れられぬその名。

 運命は交わるべくして交わった。そして狂うべくして狂った。

 

「…………いろんなことが、あったな」

 

 始まりを目の前に、ようやく士道が吐き出したものはそんなありきたりな言葉だった。

 

「……そう、ですわね」

 

 とは言っても、狂三とて同じようなものではあったのだが。一拍を置き、そんなふうに返してくる。

 そう……まるで、互いに何かを狙うため、隙をみつけようとしているかのように(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 故に、ここから始まるは思い出の語り。座興にして、それでいて舞台に必ず必要なものである。

 

「――――十香と六喰が石窯のオーブンレンジと圧力鍋をプレゼントしてくれたことがあったんだけど、今に思えば何があったんだ……?」

 

「乙女には秘密が付き物ですわ。ふふっ、仲が良くなって微笑ましいものでしたわ……見ているだけで胃がもたれましたけれど」

 

「現場は見てたのかよ……。そうだ、七罪が学校に通いたくないからって、いろんなことに挑戦したりもしてたな。ちょっと上手くいかなかったみたいだけど……友達がいるみたいだから、安心してよさそうだな」

 

「……知らぬは本人ばかり。能鷹隠爪。才能を隠すにも卓越した才能が必要なものですが、七罪さんのそれは些か特殊ですわねぇ」

 

「……? まあ、七罪がすごいやつなのは事実だよな。もうちょっと自信が付けばなぁ。――――――みんなでスキーに行ったりもしたよなぁ」

 

「おひとり様、車椅子での参加でしたけれど。四糸乃さんが楽しそうで何よりな小旅行でしたわ……遭難という理由をつけての淫行はどうかと思いましたけれど」

 

「それ誤解だって言ったよね!?」

 

「悲しいですわー。残念ですわー。士道さんの倫理観があそこまで欠如していただなんて。ああ、ああ。捜索の立役者である四糸乃さんが報われませんこと。ま、あの時のわたくしには関係ないことでしたが」

 

「……狂三だって、【一〇の弾(ユッド)】を使ってまで俺たちを探すくらい焦ってた癖に」

 

「!? だ、誰から……」

 

「匿名希望の赤と白の人さんたちから」

 

「もう答えではありませんの!! まったく……夜のドッキリは如何でしたか?」

 

「分身まで使って念の入れようが酷かった。マジで焦ったんだからな……」

 

「ふふっ。夕弦さんの悲鳴は大変に貴重なものですわ。……その分、そのあとの十香さんが現れた時が皆様一番の悲鳴だったのは、実に口惜しいものでしたわ」

 

「悔しかったのかよ……はは、少し取り出しただけでもこれだけあるんだもんなぁ。みんなと出会って、本当にいろいろあったよ」

 

「うふふ。ですが、これからはもっと増えていきますわ。もちろんあの子とも……楽しみですわね」

 

「それは、女王様の予言かな?」

 

「いいえ。女の勘ですわ」

 

「そりゃあ、信じないわけにはいかないな。ていうか、今に思えば狂三はちょっと覗き見しすぎじゃないか?」

 

「仕方ありませんわね。わたくし、目が多いものでして」

 

「それで言い訳を片付けるなよな。……まさかとは思うけど、精霊攻略の最初から見てたのか?」

 

「ええ、ええ。そのまさかですわ。十香さんとのデートも、最初から最後まで見ていて――――――」

 

 ――――――あ、まずいな。

 漠然と、直感的に悟る。どちらからともなく、もしくは全くの同時に。

 ああ、いけない。その中身がいけない(・・・・・・・・・)。言うなれば、これはチキンレースだったのだ。どちらがそのワードを引き出すのか、という。たとえ直接的でなくても、狂三は今悪手を打った。彼女らしからぬ、無防備な一手と言えよう。

 最初から最後まで見ていた――――――精霊とのデートの終わりに何があるのか、狂三は知っているだろうに。

 だがしかし。ああ、しかしだ。策略、策謀を巡らせるのが時崎狂三という女だが、彼女は決してそれだけで成り上がってきた女ではない。一途で優しくて、けど変なところで強がりなこの少女は、最後の最後まで勝負を手放したりはしない(・・・・・・・・・・・・)

 まあ、なんだ。ご高説を垂れ流し、期待をさせて申し訳ないが――――――最後の一瞬は、早撃ち勝負(・・・・・)だったのだ。

 

 

「ん――――――」

 

「――――――!!」

 

 

 それは、互いの驚きであったのかもしれない。

 近く、近く、あまりにも近く――――――二人は、口づけをした。

 甘くて、愛おしい気持ちが溢れて。離したくない。暴力的な快感が、甘く、甘く、甘く――――――ああ、これが幸せというものなのなら、この価値は世界を一つぶっ壊ししてなお幾億の釣りに等しいものだった。

 

 

『――――――――――』

 

 

 長い。時が止まったようだった。けれど幸せな感覚が、時を動かしているようだった。

 唇に伝わるえも言われぬ感触が離れた瞬間、閉じた目を開いた二人は、互いの考えに思わずぷっと吹き出してしまった。

 

「今の……どっちが勝ったと思う?」

 

「あら、あら。わたくしの勝ち……と言いたいところですが、今回は引き分けという形を取って差し上げてもよろしくてよ、わたくしの愛しい人(士道)

 

「ふっ。それはまたとない提案だ。俺のお嬢様(狂三)

 

 焦れったくて、恋しくて。幾度となく繰り返したやり取りさえ、また愛おしくて。赤く染まった貌が、ただ好きで。

 勝ち負けなど、どうでもいいのだ。ただ言葉を交わしたかった。ただ愛し合いたかった。だから士道は、狂三の頬に手で撫で上げる。乱反射する紅と金色(・・)に映り込む自身の貌は、これ以上なく幸せに映っていた。

 意味など、士道と狂三にだけわかればいい。もう一度、何度でも、何度でも、何度でも、またキスをする。

 

 

 

 

 

「愛してる、狂三。おまえのために世界を壊しても足りないくらいに――――――好きだ」

「はい。士道さん、愛していますわ。命を捧げても足りないほどに――――――好きです」

 

 

 

 

 

 ――――――愛して、狂う。

 

 狂っていてもいい。あなたのためなら、何だって構わない。

 行為に正しさはなく。形はどうしようもなく歪で――――――矛盾を貫く愛だけは、正しいと時は刻まれる。

 

 好きだから。それだけで、人を愛する理由は揃っているから――――――この戦争(デート)の勝者たちは、その報酬(キス)を勝ち取った。

 

 

 

 

 

 

 恋に始まり、愛に終わる。神に抗いし少女(ヒロイン)と出会った少年(主人公)は、神など関係ないと少女の手を取った――――――ただ、恋をしたから。

 

 歪んだ運命が紡いだ二人の物語は、これで終幕(フィナーレ)。けれど、時は止まらない。

 進み続ける時の中で。変わり続ける未来の中で――――――手を繋いで歩く少年と少女の道は、その時を刻み続けるのだろう。

 

 

 








終わりましたわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――――――ッ!!

皆さん今です!評価の瞬間はこの完結の時に!!タイミング逃したとかあったら是非に!!

まあ最後まで欲求にがめつい私の願いはともかく、『デート・ア・ライブ 狂三リビルド』。無事本編完結と相成りました。わーわーどんどんぱふぱふぱちぱちー。
長かった。本当に長かった。もう二度と本編全再現とかやらないです。ていうかやれないです。よく完結できたもんだと思います。
ここからはバラバラな裏話とか今後の予定を語っていこうかなと思います。よろしければ作者の長語りにお付き合い下さいませ。ちなみに自分でもドン引くくらい長くなったのでお気を付けを。

まず初めに、このエンドについて。澪、令音の生存。これは初めからほぼ確定させていたことでした。多分、後半にかけて割と露骨に伏線があったので予想できた方が多いと思われます。未零がたまに語っていた〝代役〟なんて最たるものですからね。
その上で原作と違う『澪バッドエンド』というタイトルを使用したのは、まさに澪の救いは生き延びることではない、というところにあるんです。
澪の救いというのは、私は原作19巻『澪トゥルーエンド』が全ての答えだと思っています。彼女はシンと再会し、愛する人と永遠を得る結末を迎えました。それは澪にとって何よりの救いであり、トゥルーエンディングです。そんな死を願う澪にとって、生きることは地獄であり罰である。
だから私は生きることは澪の救いではないと思い、そう書きました。この世界の澪は犯した罪を背負い続け、生き続けるという罰を受ける。だけどそこに大切な人たちはいるから、約束があるから――――――バッドエンドのその先で、いつかの明日があると信じて。
『澪バッドエンド』というタイトルはそういった意味を込めました。あの時点で、実は澪がトゥルーエンディングへと至る道は消えていたんですよね。澪が士道たちを超えたところで、その先に待つのは独りよがりの理想郷。決して満たされぬ仮初の楽園。そんな澪、令音の今後については……また後程。

そして世界の再構築エンド。これに関しては、実のところ固まっていたのは四糸乃編辺りだと記憶しています。それまでは少し違う形だったのですが、士道と狂三の約束が決まった時点で完全にルートが固定されましたね。その前の時点だと、タイトルの狂三リビルドってのは単純に狂三メインヒロインの再構築という意味でした(照れ)
まあでも、狂三をメインヒロインとして狂三を完璧に救うというのなら、この士道はこの道を選ぶと私は行き着きました。約束したなら、絶対に果たしに行くよなぁ、と。
あ、原案でも未零は生きていますよ、さすがに。私はハッピーエンドありきのifバッドエンドはわりと好きですが、ハッピーエンドなしのビターやバッドエンドは書けませんしね。

次はそんな『未零』のお話。この子も何だか成長していったキャラでしたね。無価値が意味を持ち、生きる道を選ぶ。最後はこの子から言わないとな、と思いキャラが動いてくれました。
オリジナルヒロインの癖にメインではなく、メインヒロインにぞっこんなキャラ。でも狂三に好意があるなら大歓迎。ただし狂三の敵なら殺す……いやほんと、ド直球に忠犬なキャラ付けしたなぁと。
最初期、このリビルドを考え出した当初は未零はメインヒロイン、もっと言うなら狂三とのダブルヒロイン枠でした。〈擬象聖堂〉の能力に死に位置づけた阻害系があるのも原案の名残で、眼鏡がスイッチとなり違和感などを殺して士道たちと学園で平然と生活を送る精霊。そして偶然街で出会った琴里と正体を隠して交流……だったかなぁ。始原の精霊の分霊、という設定はこの頃からありました。この子と折紙関係は一切なかったの今考えると凄い。
変えた理由はダブルヒロインでこの要素は私が扱い切れる気がしなくて、とっ散らかるというのが理由でしたね。単純に狂三をメインに据えたかったというのも理由。
それで弄り考えながらやっていたら、いつの間にか狂三の忠犬……じゃない忠臣キャラにジョブチェンジ。仇とも言うべき存在が何より近い従者だったという王道になった、のかな?
連載初期の頃はバレないようにキャラ付けが大変でしたけれどねぇ。道化師のキャラなんてまさにそのためですし。結果として澪の側面とは別の未零の側面として生き残ったなぁって。大仰なリアクション取るのは未零の側面です。いや人に好意を告げるくせに人の好意には受け身なこの子が楽しくてね……。
オリジナルヒロインの戦闘能力としては、かなり抑え目に考えました。というよりピーキーなキャラ。澪の小規模版、肉体的ハンデ、超火力は自爆前提〈   〉のみ、などなど。相性問題強烈にしたのも、無双する立ち位置にはしたくなかったというのがあります。特殊マウント、高機動!ただし物理防御力0回復力マイナス!あと味方のバフ無効!どうしろと。その分この子に特殊技通る時は余程の緊急時です。例にすると【四の弾】は判定が割と際どかったり。
仮に十香や折紙と戦ったらまず勝てねぇな、的ポジショニング。魔術師相手には特性上強気に出れるけど、精霊相手だと大体に不利がつく。というか戦闘系精霊には基本〈   〉で殺す以外には勝ちの目が薄かったりします。まあそうなったら一目散に逃げれるのがこの子なんですけれど。だから戦争(デート)もデレてる士道ではなく精霊たちほぼ総掛かりのものでした。勝てないけど逃げるから負けもしない、みたいな。無双はメインヒロインの役目なのでね、いっそ清々しい。

お次は精霊たち。はい、大変でした、本当に。出番作るのに苦心していたのがもうバレバレだったでしょう。メインヒロイン固定化させると視点使えるキャラこんなに少なくなるんだなって……。
出番が増えたキャラ、減ったキャラはそれぞれいます。増えたキャラの最たる例は、言わずもがな折紙と二亜でした。

『折紙』は本人の章で大々的に扱って、その後はサブに落ち着くかなーとか思ってたんですよ。落ち着きませんでした。むしろ未零との絡みが数倍増えてました。おかしい、未零が勝手に動いた……。未零の好意云々は元からあったのでそこまでは予定調和。あれでもこの子って好意を抱いたら尽くすキャラだし葛藤があったとしても、狂三がやばくなるまでは折紙も贔屓するよなぁ……はい、ここが分岐点でした。
反転折紙の攻撃を受けて、ってのも初期の初期からあったのですが、そこからここまで関係が派生するとは想像力が足りなかった。いや書けたから足りたのか……?
元々メイン枠の中でも重要な役割を担うヒロインでしたが、メイン章が終わったあとは未零と繋がるヒロインとなりましたね。変態ですけど、だがそれが折紙だ。デビ紙の台詞と出番は勝手に増えた、私は悪くない。いや実際『十香ワールド』をやらない時点で増やす以外にありえなかったわけですが。

お次は『二亜』。可愛い二亜ちゃん。君のおかげでマジでやりたい放題だった。ありがとう二亜。ギャグからシリアスまでおちゃのこさいさい。ただし酷い目には合う。
この子はマジで動かしてからその力に気付かされました。時期は六喰の手前で最終章直前だというのに〈囁告篇帙〉込みで目立ちすぎる……。なお未来記載は本人の元に行くとそこまで役に立たないものとする。だって難しい未来は霊力で弾かれちゃうし……。

お次は扱いが難しかったキャラと出番が思ったより伸びなかったキャラ。
一番難しかったのは…………『四糸乃』です(懺悔)

これには理由があって、四糸乃がいい子すぎる。いい子すぎて題材にしようとすると『女神四糸乃はそんなこと言わない!!!!』って脳内の七罪が殴ってくる。自分で解釈違いを起こして書きづらい。正直万由里編のツッコミギャグ描写すらあれ『よしのん』の台詞だったなぁとか反省してます。マジでいい子すぎて言わせたい台詞がなかなか思いつかなかったです。それでも神的にいい子なのを伝えられていたら嬉しい。

出番が思ったより取れなかったかな?と反省したのは『十香』ですね。もう少し狂三と同じ想いを持つ原作メインヒロインとして出番を上げたかったのですが、下手をすると一気に持っていく力強さもあり……とはいえ狂三フェイカー、五河ディザスターなどはやりたいことをやらせてあげられたし、五河アンサーでも狂三が答えを見出す最後の一人として描けたのでそこは大丈夫だったかなぁと反省中に思いました。狂三との友情を強く押し出したし、しいていえば日常とかでもう少し狂三と絡ませてあげたかったかな、みたいな。ていうか折紙の侵略がマジで大きすぎて私がそう思ってるだけなのだろうか。
狂三は親友であり戦友であり恋友である……的な感じに書けていたら嬉しい。未零ともそれなりに共闘したり相対したりと最強の精霊としては推し出せていたかなぁとも。あれこれ意外と頑張れてた?

十香を語ったならこの子も必要。というわけで反転十香、『天香』ちゃんです。…………メッタメタな話をすると、この小説を書き始めたのは去年の2月頃だったんですよ。その頃って『十香ワールド』が発売前なんですよ。つまり天香は謎多き反転精霊だったというわけです。そして、ご存知の通りこの小説の終着点は『澪トゥルーエンド』の再構築――――――あとは判るな?
カッコつけてねぇで何も考えてなかったって言えよこのバカ野郎!!!!!!!
とまぁ割と天香に関しては触れられない棚上げ状態でした。それが早い段階で『十香ワールド』での肉付けが行われたのは本当に行幸でしたね。
十香の幸せを願うが故に、十香の幸せが失われれば途方もない喪失感、渇きと飢えが襲いかかる。自らが満たせるものは闘争。十香を悲しませる存在を消し去ることで、修羅と交わることで癒される……そんなキャラとして私は描きました。
そんな彼女だからこそ、長く続いた故に起こった狂三が女になったことには気がついて、士道に対してまあこれほどの修羅を女に変えるなら多少は買ってやる、くらいの気持ちです。あとは狂三と関わって、霊結晶(セフィラ)に込められた黒の面が必然的に増した士道が偶発的に召喚した魔王が繋がりとなっています。最終的に彼女は十香の幸せを願う者。ならば力を貸さないわけがない、ということ。
……未零とはそういう意味で同族嫌悪かもしれませんね。未零が目指すものは狂三の生存ですが、そこに狂三の幸せが伴うのなら最高、的な考えはありますし。ていうかなかったら問答無用で過去改変ルートにぶち込みますしね。それは澪の分霊ということを考えると、それこそありえないことでしょう。人の気持ちを考えられず、慮ることができないなら、そもそももっと目的だけの効率を目指してるんじゃないかなぁ。

話が逸れちゃいましたね。ていうか長ぇ。お次は恐らく想定通りの出番と活躍を見せたキャラ、『琴里』。
今作では士道の〝妹〟という絶対的な側面を重視しました。作中でも士道と似たり寄ったり、影響が強いとよく念押ししていましたしね。代わりに真那が割を食いました。狂三を味方にすると真那の扱いが辛い。
兄のために。そして兄の想い人への情。歪なのに、士道の命を狙っているのに、誰より士道の命を諦めなかった時崎狂三への友愛。多分、この二人が関係性としては原作から一番かけ離れていると思います。狂三が精霊たちの中で気楽に、長らく話しているのは琴里ですからね。何かを企む時も仕方ないわね、と言いながら巻き込まれてあげる枠。
そんな彼女が澪とガチバトルしたのは、未零を見ていた流れとして澪に、令音に言葉をぶつけさせてあげたいな、というのが一つ。単純に構成を練っていた時に琴里は超メイン枠だったというのがもう一つ。未零の枠で触れましたが、琴里は未零との関わりが密接にあるヒロインだったので、狂三、未零に負けないほどの出番があった……ていう流れで、一話限定特別フォームを習得。
原作では終盤まで暴走の関係で精霊での殴り合いには参加できなかったので、派手にやらせてあげたかったんです。おかげさまでビックリ精霊の万国ドッキリショーもといチートとチートの殴り合いになりました。絶対的頂点が澪だからそれ以下は何をしてもインフレにならないと思ってるだろこいつ。

その他の子達に関しても、実は天香と共通している『澪トゥルーエンド』までの構想という点がなかなか難しかったです。特に八舞姉妹。マジでヤバかった。元は一人って前提崩れなくてマジで良かったです。この辺仕掛け人の記憶を持つ未零ちゃんの思考面を描写してしまった弊害ですね……。

なつなつなっつん、もとい『七罪』は士道と狂三に明確に救われ、同時に二人の相容れない願いを尊重したいと思うキャラになりました。友達だから叶えてあげたい、けどそれをするには……という願いと悲しみをぶつけて最後の答えに至る。七罪に関しては過去も明かされたのが『十香グッドエンド』なのでさすがに本編中には絡ませられなかった、無念。

『六喰』はそもそも最終章一歩前、というどうにもこうにもな中、頼れる仲間として頑張ってもらいました。家族として支え、思慮深く心理を見抜く。戦闘では……よく考えたら仲間入りしてから初めて戦ったの無理ゲー澪なのか(困惑) 〈封解主〉がいちいち無茶ぶりに答えてくれて有能。この子も解決していない事柄はどうなったのか、というところですが……?

『美九』は…………もうちょいシリアスな面に関わらせたいんだけど関わるところが少なかった、ていう自己分析です。なので二亜以上にギャグ振りで暴れてました。五河アンサーとかは真面目だったのに……。なので彼女の歌姫としての側面だったり、すごい子なんだぞ、というのは反省点であると同時にやり残したことです、ええ、ええ。

『耶倶矢』、『夕弦』。セット運用が前提で話をしていたり、士道が〈颶風騎士〉をちょくちょくメイン使用していたり、賑やかしから重要なアシストを含めて縁の下の力持ちという形でした。その分、メインとなるのはやはり少なかったかなぁ、と。八舞合体イベントは『十香グッドエンド』でしか起こりえませんしね。この子たちは次回作に持ち越し、かもしれません、ふふふ。

そして『万由里』。彼女は唯一、外伝系列の作品から登場となりました。未零と絡んだ理由は言わずもがなでしょう。凜祢も本来は同様の理由で出演予定でしたし。蓮はまたちょっと複雑かもですね。ネタバレになるので未登場キャラは曖昧にしますが。
未零との交流は決して長いものとは言えませんでしたが、それでも残したものはありました。未零は性格上、自分以外の誰かの死を忌諱します。それは理不尽だから、という未零の基本方針にもなっているわけですね。その中で、それでも未零は狂三を生かすための選択を取る。そのために、万由里は救えないと知ってしまっていた。自らの霊結晶は、必ず狂三のためにあらねばならかったから。
だから万由里は救えない。救わない。救えないけど、消えることが決まっているならせめて……。万由里の消滅は、少なからず未零に影響を及ぼしました。最後には見捨てなければならない人たちも、万由里と違い僅かな可能性が残されているならば、それを狂三が望むのならば、未零ひとりの命で済むならば……それが折紙編での未零の行動に繋がっていた、のかも。
そんな万由里が最終章で再登場するのも必要なこと。霊結晶を持たない霊力体だからこそ、割と自由なんですよねこの子。サラッと霊力を伝って夢の中に侵入して未零の存在を繋ぎ止めたり、無意識下の霊力で構成された無間地獄空間に留まっていたり。
え、結局未零を手助けしてた万由里がどうなったかって?本当はご想像にお任せエンドだったんですけどネ。


さてさて、いよいよと主人公の『士道』。正直、語りたいことはあまりないです。彼が取る行動、言動、答え。それらは余すことなく物語に叩きつけて満足した気がします。主人公ですから。
狂三に恋をして、恋をしたから救いたい。狂三がほしいから諦めない。狂三のためなら、世界を壊しても惜しくない……私の書く士道くんは我欲的な側面が強かったでしょう。救いたいと思った人を絶対に救い、その上で狂三を救う。絶対的な我が侭主人公、それがリビルドにおける『五河士道』の人物像です。
そこに力が備わっていたのは偶然かもしれない。でも、救いたいと願ったのは自分自身の意志。たとえ力がなかったとしても、士道は狂三を諦めない。『十香グッドエンド』で解釈一致した時は嬉しかったりして。
恋のため、愛のため、狂った少年の強欲な物語。原作とは違った主人公の形、になってたらいいなぁとか。結局言いたいこと言ってるじゃねぇか。

そして大トリ『時崎狂三』。絶対的メインヒロイン。物語の構想から寵愛を受けし者。まあハッピーエンドになるなら精神的には追い込んでいいよね、みたいな考えはありました。そりゃあ、未零という狂三セコムが肉体面の損傷背負ってるならねぇ。
コンセプトは可愛い狂三を存分に。狂ってるけど底にある心を隠しきれない少女。少年と出会い、恋と罪過に揺れる精霊。そして主人公とベッタベタな甘々に興じるヒロイン、などなど。
知っての通り、私は恋愛面のドロドロした感じは苦手なので、精霊たちとの絆も描いていって士道と狂三の関係が自然となるように書いていきました。だって、引き離す以前にくっつかねぇんだもんこの二人。霊力という名目で精霊たちを救うにつれ段々と対応が甘くなりながら、最終的にそれが原因で狂三は五河アンサーの結末を迎えることになりました。
この子は自分のためには諦めない。罪を背負い戦い、取り戻すためだと謳いながら、自分自身のためには諦められない精霊。甘さを抱えながら、若き個体が士道に絆される可能性を持ちながら、だとしても自分だけのためにそれを諦めることをしない。そんな修羅と化した子だからこそ、自ら創り上げてしまった皆の救いは『なかったこと』にはできないのかな、とか。
諦めない女、それが『時崎狂三』なのかなと私は考えます。諦めないからこそ立ち上がり、諦めないからこそ苦しむ。結局彼女、五河アンサーでも士道を殺せなかっただけで諦めはしてませんしね。だから士道も答えがなければあの選択はしなかった、ていうかできなかった。心が絶望するだけですから。

当然の結実ですが、士道と狂三の関係という話の決着は『五河アンサー』といえるでしょう。『狂三アンサー』から始まった戦争(デート)の答えにして、終着。あの手を取った時点で、二人の物語は決着し、残りは澪との因縁などを含めたエクストラステージ。いやだって澪くらいなんだもん、憂いなく手を組んだ士道と狂三を相手にできるの。
メインヒロインだから多少盛るか、くらいの考えだったんですけど澪がいるからとめちゃくちゃ盛る結果になりましたね。軽い気持ちで考えた未来予測とか最初はここまで重要になるとは思いも……狂三が士道にとって最凶の味方であり敵だったからこその強化判断なので、今回限りでしょうけれど。

最終的になぜ私が士道と狂三の物語を書いたかといえば、なかったからです。ええ、あまりないんですよ士道と狂三のお話。そら公式が最大手なんですからわざわざ書きませんよね。だから書きました。デアラで士道のメインヒロインを絞るというナンセンスな禁じ手を投じてでも書きたかったのです。
さしあたって原作にはない狂三とは……つまりイベント事へ軽々と出演はできないくるみんは必然的に強襲イベが多め、だから大っぴらに(意地を張りながら)味方になって士道たちと交流する狂三が見たかった。
ただ、本編が最優先だったので避けたのですが、そう言うならアンコール時空のお話こそやるべきものがあった……かもしれません。狂三が関わる〝理由〟であり〝建前〟は精霊ですので、そこをあんまり崩したくなかったという事情もあるのですが、一番はやはり本編の進行を止めたくなかったのが……うーん難しい。実際、裏設定で士道との戦争にかこつけて精霊たちとのアンコール時空のイベントはこなしてますしね。

そういった事情の分、トリックスターは未零とメイド個体の仕事でした。ちなみにメイド個体は結構好き勝手に動きました、瞬瞬必生ともいう。大まかな役割は変わっていないのですが、終始ギブアンドテイクな予定だった未零との関係が少し絆された感じになったからなぁと。まあ、未零と澪でもそうですが、根本を変えてしまうと説得力がないですからね。メイド狂三は特異ではあるけど『時崎狂三』なので、良かったと思っています。え、結局この個体はどの瞬間の感情から生まれたかって?それは本編で察してもらえると嬉しいです。いや未零に関して言及してる時点でバレバレでしょうけど。この設定にして良かったとは思います。あと私、他意はなく女同士の友情描いてるつもりなんですよ、本当に――――――ちなみにメイド服はこの狂三の趣味です。

あとは裏設定とかは語るとキリがないので裏設定のままですね。狂三の霊力供給を本編中は割と未零が担っていた、とかせいぜい折紙編くらいでしか描写しませんでしたし……使わなかった設定とか甘いものがありますねぇ。
あとは文章。これ、折紙編を境に明確に変えています。そこまでは三人称よりで折紙編からは視点を固定した地の文の形成をしました。如何せん、創作をするのが数年ぶりだったので手探りで申し訳ない……強調する感じで文を書くのが癖のようなものなので、くどさとかもあったでしょう。でも強めにいきたい今日この頃。

はてさて、ここからはこれからのことを少しばかり。士道と狂三の物語は書ききりました、が、狂三に関しては書き切ったとは言えません。これはリビルドではなく『時崎狂三』という少女の魅力を伝えきったか、というお話。
途方もない罪を背負った精霊とどう向き合うか、というのが狂三の一つの魅力ですが、今作はその点を少し柔らかくしているのが見てわかると思います。確かにリビルドの被害も死より残酷なものだと言いましたが、原作だと死者の分の重み凄まじい女の子というのも純然たる魅力。あの修羅を、摩耗しきった精霊を書かないのはあまりに勿体ない。初期士道では太刀打ちできないほど心が死にかけていた狂三ですからね、原作初期って。だからこそ士道の光が眩しく映り、絆されていくのは同じなのでしょうけれど。

というわけで次回作は狂三の過去を忠実にした『時崎狂三』を書きたいなぁとか。具体的には原作の一年前を舞台にした狂三の〝記憶喪失〟ネタ。……やだなぁ、士道と狂三のイチャイチャ甘々青春ラブコメものに決まってるじゃないですかー、やだなーもー、嘘じゃないですよー。別に狂三を虐めないとは言ってないですけれど。修羅の狂三が記憶を失うことが、どのような意味を持つのか、うふふ。
暫定タイトルは『狂三フォーシーズン』です。うわ凄いエロゲっぽい……。

それでチラチラとそれっぽいことを言っているので察していると思いますが、狂三リビルドの後日談もお届けしようと思っています。やり残したこと、皆様にお見せしていないもの……などなど、ですかね。

EXTRA TIME『未零アナザー』。

本編の後日談、この世界の先を少しお見せしようかなと。恐らくこの後書きが届けられている頃、私が再び執筆をしていると思いますので、一週間~二週間ほどの期間をおいて更新できたらと思います。
リビルドでの狂三と士道は書き切ったのもあり、この章のメインは未零が担当です。まあでも士道と狂三の憂いなしのイチャイチャは入れておきたい。皆様に砂糖を吐かせたい。あとはこの組み合わせが見たいなーとかあれば……後日談以降は、その辺はかなり融通が効きますからね。

残るは以前に言ったif、士道エンドと狂三エンドを形にできたらなーとか。
狂三エンドはこの世界の士道を犠牲にする選択肢を選んだ先。
士道エンドは時崎狂三の死が成立(・・・・・・・・・)したifです。はい、本編でさりげなく積み重ねていた士道闇堕ちフラグ成立ルートですね。でもこれ最後に書くのか……という気持ちはあったりなかったり。迷いどころですねぇ。

さあ、バカほど長くなった後書きも、そろそろ〆といたしましょう。一年と半年もの間、皆様の評価や感想が大変に嬉しかったです!ちなみに今も待ってます!!
それでは、次は『未零アナザー』でお会いしましょう。なんか完結した気がしませんが、いつもの感じでいきます。次回をお楽しみに!!


ちなみにライダーネタはガチで私の趣味です。もしかしたら士道と狂三しか知らない旅の中で通りすがりや別世界の騎士(ライダー)と出会っていたりして……なんてね。この長い後書きまで本編を完走してくださった方、本当にありがとうございました!!

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