デート・ア・ライブ 狂三リビルド   作:いかじゅん

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本当は短編集として出そうと思ったけどそこそこくらいのものになったので気まぐれな短編として投稿します。毒にも薬にもならないくるみんが士道くんのこと好き好き大好き愛してるぅー!ってお話です。いやマジでそれだけなので期待し過ぎないでね。昨日思いついて今日偶然書き上げたんで。
それでも良い方は本編ではあまり無かった全編ギャグ調のリビルドをお楽しみください。







リビルド・アンコール
『狂三ラブ・スリープ』


 

◆時子さんの添い寝マジック

 

 

「はぁ。とどのつまり」

「くるみんったら渋い言葉使うね」

 

 黙らっしゃい、と言わんとする気持ちを抑えて狂三はソファーの眼下に正座する二亜と折紙を見下ろした。二亜は言わずもがな足が痺れて辛そう――なのと背後でマリアが足を突いているのが原因――だが、折紙は『私は何も悪いことはしていない』と素知らぬ顔で語って全くへこたれた様子がない。本当に正座という苦行に慣れているとしか思えない姿に、狂三は再びはぁと溜息を吐いてから言葉を続けた。

 

「狂三、溜息を吐くと幸せが逃げる。息を殺すことが大切」

「もう言葉の隙間を補足していただけると嬉しいのですけれど」

 

 と思ったのだが、今度は折紙が余計な口を挟んで来たことでそちらの言葉を返さざるを得なくなった。この方、わたくしなら足りない言葉を何でも補完すると思っていませんこと? と疑問に思いながら今度こそ言葉を続ける。

 

「えー、こほん。被告人、本条二亜、鳶一折紙。あなた方には五河家安眠保護条約に違反し、被害者の下着を盗んだ挙句に強引な同衾を敢行した疑いがかかっています。五河妹裁判長の判決に従ってくださいましー」

「くるみん、既に面倒くさくなってきてない?」

「被告、本条二亜、死刑。鳶一折紙、被害者と三日の接触禁止令」

「絶対面倒くさくなったよね!? つかあたしだけ重くない!? 裁判長妹ちゃんじゃなくてくるみんじゃんそれ!」

「裁判長、三日は不当。あまりに惨たらしい、死刑以上の刑期に異議を申し立てます」

「もう何でもいいですわ」

 

 アホらしいと匙を投げるように両手を軽く上げ、一々ノリがいい二亜と無駄にノリがいい折紙にジトっと視線を向けた。

 

「まったく。するならするで抜け目なく行ってくださいまし。面倒になった琴里さんが面倒事を投げるのはいつもわたくしなのですから」

「三回目は想像以上の対策がされていた。次は確実に仕留める」

 

 暗殺者でもあるまいに、と思ったが獲物を狩り取る目付きが本気であることから、この方ならやりますわね〜と狂三は投げやりな感想を抱いた。

 

「そーそー、次は怪盗ミッドナイトカイト勢揃いでやったるわん!」

「知らない。そのような怪盗団に所属した覚えはない」

「えぇ!? もう認めようぜーオリリン。少年やれーちゃんに内緒で怪盗に変身するとか、ちょっと女主人公っぽいと思わない?」

「………………」

 

 ありだな、みたいな目をしているのは冗談でも止めて欲しいものだが、と狂三は二度三度では飽きたらない溜息を吐いた。

 ――――まあ別に、なんてことはない日常の一幕だった。

 士道の寝床に精霊の誰かが潜り込むなど日常茶飯事だし、そのため狂三と二人きりの際は彼を精霊マンションの自室に呼ぶ必要があって――――閑話休題。とにかく、寝床に入って起床の挨拶までぎっしり予定(・・)が詰まった夜から朝にかけての時間がある、ということだ。

 襲撃の種類は二つ。貞操観念が危険で危ないという意味での過激と、物理的な攻撃が危険で危ないという意味での過激。どちらにせよ、デンジャラスな人生を送っていますわねぇと他人事のような同情を抱いた。

 ともあれ、やりすぎた場合には注意をしなければならない。どちらかならともかく、どちらもを取るのは些か強欲的だ、とは妹様からのお達しだった。どちらも許さないという段階でない辺りは琴里の苦労が偲ばれる。なお、被害者の苦労はプライスレス。

 

「ま、少しは自重してくださると喜ばしいですわ。そもそも、わざわざ寝床に入らなくとも士道さんに頼めば接触の三つや四つ……」

「わかってない! わかってないなぁくるみん!」

「な、なんですの」

 

 唐突に叫び上げた二亜に思わずビクッと肩が弾んでしまう。ちなみに、立ち上がろうとした二亜はマリアの介入(悪戯)で足が動かず、半ばゾンビ映画で地べたに這いずるモブゾンビのような挙動をしている。

 

「少年の温もりは確かにそれで得られるかもしれない。けど、少年で暖まったお布団の温もり、柔らかさ、匂い……それは長年使われた少年の部屋の布団にしか存在しないのだ!」

「……いえ。洗ったり替えたりしていればそこまでは……」

「そんなもので少年の愛が消えるものかぁ!!」

 

 二亜の口から叫ばれる愛ほど安っぽいものはないのではなかろうか。それと折紙は残像が残るほど首を縦に振ってまで同意をしなくてもいいのだが、と思わざるを得ない。

 しかし、使われたベッドでしか得られない味わい、と言うと実に変態的で語弊が生じるものだが、言わんとしていることが理解できない狂三ではない。

 

「ほらほらぁ、くるみんも興味出てきたっしょ? いっちょやってみようぜぇ。一度やると癖になるよぉ……?」

「違法薬物のような誘い文句はやめてくださいまし」

「あいてっ」

 

 持ち合わせていた本で二亜の頭を軽く叩いた。大層な力説をしてはいるが二亜のことだ、理由の半分以上が冗談と悪ふざけで構成されているに違いない。もっとも、横で高速縦首振りを敢行している折紙は理由の十割が士道で構成されているに違いないが。

 

 それはそれとして、狂三の興味が二亜の言う魅力に惹かれることはない。冗談めかした手法で相手を拐かす夢魔からはもうとっくに卒業をしているのだから。

 

 

 夜も夜。深夜という時間帯に、少年の安らかな寝息だけが響いている。今宵の襲撃は羽を休め、彼も心行くまで安眠を貪ることができるであろう。

 ――――夜闇に蠢く深淵の()から少女が姿を現すことがなければ。

 

「きっひひ……さあさ、士道さん。あなた様の快眠、いただきに参りましたわ」

 

 夢魔は笑い、悪夢を届けに微笑む――――もっとも、彼女の笑みに応える人間は非常に安らかな寝息を立て続けている。

 

『何をしていらっしゃいますのかしら?』

『まあ、興味がないとドヤ顔でモノローグをした手前、引くに引けずで格好を付けた、というところでしょう』

「く……」

 

 しかも影の中から分身の煩わしい声が聞こえ、今ばかりは足で蹴りつけるわけにもいかず歯を噛んで静かに影を閉じた。

 夜遅くに殿方の部屋へ音を立てずに侵入する。普通ならば難しいところを、未だ精霊の力を自在に行使できる狂三であれば容易くクリアできた。そうまでして侵入した理由はもちろんのこと――――――

 

「……べ、別に士道さんのベッドで同衾に興味があったわけではありませんわ。ただあまりにも二亜さんと折紙さんが力説をするものですから、一瞬だけ確かめてみようと……ま、まあ? わたくしの一声で『ん、いいぜ』とか仰りそうな困った士道さんですけれど」

 

 小声で言い訳を重ねて虚しくありませんの? という声が影の中から聞こえてきた気がした。補足をするならば、仮に士道へ同衾を提案したらニュアンスが『え、いいの?』くらいに変わりそうなものである。

 兎にも角にも狂三は単に、断じて、絶対に二亜や折紙の言葉に唆されて添い寝をするわけではない。一瞬だけ、言葉の真偽を確かめるために部屋を訪れたに過ぎないのだ。

 

「さて……そう言えば、士道さんのお部屋はあまり訪れたことがありませんでしたわね」

 

 意外なことに、という注釈を付けることにはなるが、狂三が士道の部屋を訪れた回数は総合で多いとは言えない。妹の琴里や不法侵入の折紙は置いておくとしても、気持ちが通じあった者同士にしては珍しいくらいの数かもしれない。

 二人きりになるなら狂三の部屋を使うかデートに行けばいい。それ以外なら、皆と共有するリビングがある。ある意味、この部屋は特別な時にしか二人きりにならないのだな、と狂三は思い返した。件のデート中はお互いに意識をしすぎて危険な場所だった、というのもあるのだろうけれど。

 そう思い返せば本当に数えられる。たとえば七罪の一件、折紙の一件、クリスマスは口を噤むにしても、あとは令音、澪との一件で――――――

 

「…………こほん。さ、目的を果たしてしまいましょう」

 

 あの時は、さしもの狂三といえどゆっくりと感傷に耽って味わう余裕はなかった。他意はなく、息を整えるために咳払いをして足音を立てずに士道のベッドへと迫り、静かに布団を捲った。

 中は特に驚くほどのものでもない。士道のパジャマは見慣れているし、かくいう狂三もラフな寝巻き姿だ。これは迅速に部屋に戻り証拠を残さないためのものであり、決して他意はない。

 しかし――――ふわりと香る士道の匂いに鼻腔がくすぐられ、狂三は得も言えぬ感情に襲われた。

 

「いや、折紙さんでもあるまいし、ですわ」

 

 それを一瞬で振り払う。そもそも士道の匂いなど嗅ぎなれているし――――いやそれこそ折紙さんのようですわ、と言葉にならない言い訳を払うように首を振り、狂三は士道のベッドに身体を忍ばせた。

 形としては添い寝になるが、元々の距離が近いためピッタリと密着をするような形になっている。必然と見上げるように士道の寝顔が目に映り、狂三はくすりと微笑を零した。

 

「うふふ、いつ見ても可愛らしい寝顔ですこと」

 

 首元を指でくすぐってやれば、まるで猫のように小さく喉を鳴らす。一体どんな夢を見ているのか、と想像すれば途切れ途切れの寝言を口にする。

 

「…………あぁ」

 

 ――――幸せだ。時崎狂三は今、幸福の絶頂にある。そんな感嘆が零れてしまうほどに。

 愛しい人と時間を共有する。罪人には過ぎたる幸福を、罪人との道を選んだ彼が与えてくれた。二人で掴み取った物の重みが自然と声になって溢れ出す。

 士道の姿が。士道の匂いが。士道という存在そのものが愛おしくて狂おしくて堪らない。彼の胸板に顔を押し付ければ、図らずも恍惚とした表情になり、人には見せられない頬の紅潮と緩みが生じる。

 

「まあ……気持ちが、わからなくも……ありません、わ……」

 

 二亜の戯言が意外なことに的を射るものだったと感じる心地よさ。この同衾は士道に包まれ、無駄がない。確かにこれは狂三の部屋に士道を招くだけでは得られない温もりだ。

 瞼が落ちそうになる微睡みの中、狂三は辿々しい同意を口ずさむ。このままだと本当に眠ってしまいそうになるが、寒空からベッドに放り込まれるような仕打ちを受けたわけではない。まだベッドから離れることはできる。この温もりを覚えて帰れば、明日の機嫌はさぞ良いものになるだろうと狂三はベッドから身体を引っ張りだそうとして――――――

 

「んっ」

「…………へ?」

 

 できなかった。具体的には、寝巻きがはだけかけた腰周りにするりと入り込んだ士道の手が、グッと妙に強く込められた力で固く捕らえて離さない。

 

「し、士道さん? 起きて……いらっしゃいますの?」

 

 返事はない。寝顔は変わらず寝息も穏やか。しかし、狂三を抱き寄せる手は明らかに就寝中の人間が出していい力ではない。というか、精霊の力を使っていませんこと!? と狂三が焦り顔になるほど強い。

 このまま抱き寄せられて添い寝する、というのは一時的な多幸感に包まれるだろう。が、起床時に間違いなく大惨事だ。大惨事の被害を被るのが狂三であることに間違いはない。

 対策は二つに一つ。上手く寝惚けた士道の拘束を抜け出すか、士道を起こして口裏を合わせてもらうか、だ。というか初めから後者にすればよかったのだ。狂三が口先で士道に負けるはずがない。主題を隠して言い訳を正当化し、手玉に取るなどお手の物。よし、今すぐそうしましょうと狂三は士道の耳元に唇を近づけていき。

 

「……狂三」

「っ!?」

 

 鼓膜を震わせてゾクリと背筋を通り抜ける蠱惑的な声色。

 

「すき、だ」

「〜〜〜〜〜〜!!?」

 

 そのような声で紡がれる好意の発露に狂三の脳髄は打ち震え、瞼の奥が明滅を繰り返してスパークしている。

 

「すき、すき……くるみ、すき……」

「ま……そんなっ……こども、みたい、に……」

「すき、すき、すき……だいすき…………くるみ……すき……」

「っ、あぁ……も、う……っ。何なん、ですのぉ……わ、わたくしだってぇ……」

 

 視界がぐるぐるぐるぐる回りに回る。普段は聞けない気の抜けるような声色。けれど愛おしさを詰め込んだ優しい声音。

 あの日、初めて受け取った〝好き〟が頭の中で何度も繰り返される。あの日から一日だって忘れたのことのない大切な告白。士道が好きと口にして愛してると謳う度に、狂三の頭に再生される機能が付け加えられたのかもしれない。

 落ち着け。この程度で動揺してどうする。時崎狂三は精霊だ。十二の弾丸を自在に操り悪夢(ナイトメア)の称号を冠するに至った者だ。この程度の責め苦で根を上げるはずがない。

 

 まあ、誤算があったと言えば。

 

「……あいしてる」

「きゅう」

 

 これは責め苦などではなく幸福の絶頂であるわけで。狂三は精霊である以前に士道へ『好き好き大好き愛してる』の好感度が振り切れた女でもあるわけで。

 今生で成し遂げたことのないキャパシティオーバーによって、狂三の意識は闇の底へと誘われたのだった。

 

 

 事の顛末を告げるというのなら、まあこれほど簡単なことはあるまい。

 不覚なことに『好き好き大好き愛してる』攻撃で途切れた意識は、二亜の「少年に寝起きドッキリ仕掛けようぜー!」という昨日の今日で飽きもしない、というか聞こえてくる叫び声はドッキリとは言わない声を後になって知ることになった。加えて士道も狂三を抱きしめ、安心しきったように眠っていたため、現れた二亜が毛布を思いっきり引き剥がしてもなお全く起きる気配がなかった。

 

「おっきろー! しょうねーん! 愛しの二亜ちゃんとオリリンとれーちゃんが起こしに――――」

「ふぁぁ…………あ」

「添い寝上手の時崎さん!?」

 

 そこから先はもう言うに及ばず、だ。二亜からは笑顔で捲し立てられ、折紙からは恨みと嫉みと次は負けないという闘争心が篭った視線を向けられ、挙句寝惚けた士道の手から逃れられず時崎狂三ともあろう女が着崩れた寝巻き姿で言い訳を重ねる羽目になった。

 

「いいのですの? これは偶然ですわ。偶然わたくしは士道さんのお布団の中へ入り、偶然にもこの手に囚われてしまった憐れな女精霊なのですわ。断じて、決して、士道さんに寝言という名の愛を囁かれて気を失ってしまったわけではありません。ええ、ええ。そのような姿をこのわたくし時崎狂三こと〈ナイトメア〉が晒すはずありませんわ」

「少年好き好き大好き時子さんなら晒しそうだよね」

「それはもういいですわ!!」

 

 ちなみにだが、何故か付き添って(大方二亜の仕事を手伝った帰りだろう。何故に朝帰りから言うに及ばず)いた未零にさり気なく助けを求めてみた。彼女は友人であり優秀な従者様。いつだって狂三を助けてくれるに違いないのだ。少女の手を借りればあっという間に危機を脱することができる!

 

「……別に私は構いませんけど、今ここで纏めてイベントを消化するのと、逃げ出して言いふらされて被害が十倍ほどに膨れ上がること。どちらが我が女王のためになるかと言われると……」

 

 主人の行く末を良いものへと導く聡明な従者であったため、見事頓挫したことをここに記しておくとしよう。

 

「くるみ……す――――――」

「い・わ・せ・ま・せ・ん・わーッ!!」

 

 以後、士道の知らない狂三の弱点に士道の寝言が追加されたとかされていないとか――――――真相は悪夢を捨てた少女の幸福の中にのみ、存在している。

 






お互いへの特効キャラなので立場が逆転するともちろん同じなんですが、士道くんがくるみんの布団に潜り込むのは流石にヤバいよね。許可取ってやろうね!ちょろみんなので余裕で許可取れると思うけど。

こういう短編でいいなら割とネタがないわけじゃないのでたまーーーーーーに書こうかなぁとか思ってます。Twitterで質問箱あるのでこういうの見たい、こういうのどうか的なものがあればリビルド・アンコールとして出せます。多分1割未満の確率で。本編中でも本編前でも内容次第で。


未零ブイアール/アナザーにあった精霊VR格ゲーのリビルド版。シリアスだったりギャグだったり、本編で終ぞ実現しなかった未零VS狂三を異色のタッグバトルでお送りしたりとか。

狂三ブルーキャット/五河家に現れた青がかった毛並みの正体不明な猫を狂三が存分に愛でるお話。一体猫の正体は何者なんだー(棒)

七罪アナザーダイアリー/狂三BADENDのその後を描いたお話。高校生になった七罪と、消えた罪と消せない記憶に苛まれる狂三。そして狂三の日記に綴られたものとは……。

狂三ロスト/前回のちょっとした続きくらいなら……。


頭の中にパッと出てきたのはこんな感じかなぁ、って。最近一周まわってデアラはノーマルの方が書けるような気がしてきた。気がするだけかもしれないので更新の時期は未定。まあ完結作品だし忘れられた頃に顔を出したりするんじゃないかな、タブンネ。
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