デート・ア・ライブ 狂三リビルド   作:いかじゅん

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エピローグ。まだまだ様々なものが始まったばかり。


第三十四話『次なる舞台へ』

 

 士道がどうにかこうにか目を覚ました時、どうやら事は丸く収まってくれていたらしい。辿り着いた時より酷い惨状にはなっていたが、笑い合う八舞の二人。そして――――――

 

 

「お疲れ様でした、士道さん――――――あなた様の願いは、ちゃんとお二人に届きましたわ」

 

 

 狂三の言葉と極上の微笑みが――――――何よりの証明だった。

 

 動けないほどでは無いが身体がどうにも言う事を利かないので、今は大人しく十香の肩を借りてのろのろと旅館への道を歩いていた……この、台風でもこうはならないだろうと言うくらい、荒れに荒れた薄暗い道を眺めながら。

 

「……これ、旅館まで吹っ飛んでたりしないよな……?」

 

 士道の心から心配だ、という呟きにビクッと揃って仲良く耶倶矢と夕弦が肩を揺らしたのが雰囲気で分かった。まあ……まさか姉妹喧嘩(・・・・)でこんな事になったなど、誰も信じないであろうが。

 そんな様子をクスクス、と笑い声を漏らし楽しそうに狂三は眺めていた。

 

「ご心配には及びませんわ。旅館も、クラスの皆様もご無事ですわ。あの子が、先に確かめて連絡をくれましたもの」

 

「ああ……あいつか。それなら安心だな」

 

 狂三が連絡用の端末を見せながら語った事で、士道も安堵の息をこぼす。彼女が言うあの子(・・・)とは、間違いなく白い少女〈アンノウン〉の事だろう。今回は姿を見せなかったが、この分だとやはり同行していたらしい。

 と、露骨に安心した様子の耶倶矢がまた怪しげな笑いをしながら声を発した。

 

「くくく……流石は純潔なる吸血鬼。優秀な眷属を従えているとはな……」

 

「指摘。それは耶倶矢の中の狂三であって、非常に正しくありません」

 

「う、うるさいし! 同じようなものだし!!」

 

「きゅーけつき……? 狂三は人の血を吸うのか?」

 

「いえ……いくらわたくしでも、生き血は御遠慮願いたいですわ……」

 

「――――――はは」

 

 表情の種類は様々であったが、四人全員が笑顔で会話をしている。その事に、士道は心からの笑い声を出した。身体中ボロボロだし、疲労感だってとんでもない。とんだ修学旅行になったが……本当に、みんな無事で良かった。

 

「……ところで、十香よ」

 

「要請。少しの間、士道を貸してはいただけませんか?」

 

「む……別に構わんが、何故だ?」

 

「い、いいから、少しの間だけ、ここで待っているがいい」

 

 有無を言わせぬ口調で、二人が士道の手を取り脇道に逸れて行く。残されたのは不思議そうに首を傾げた十香と、何となく二人のする事を察して複雑な表情で微笑んでいる狂三。

 何を話せば良いのか、何を話すべきなのか。考えあぐねるように沈黙した二人だったが、程なくして十香が先に口を開いた。

 

「……感謝を伝えていなかったな。感謝するぞ、狂三。狂三のお陰で、私とシドーは助かる事が出来た。狂三がいなければ、シドーも二人の元へ行く事が出来なかったかもしれん」

 

「――――――そのようなこと、ありませんわ」

 

 十香の言葉を否定するように、狂三は首を横に振る。きっと、狂三が余計な首を突っ込まずとも、士道はあの場に辿り着く事が出来た。いや、あの瞬間にその未来さえ(・・・・・・)狂三は〝予知〟したのだ。寧ろ、あのようなもの(・・・・・・・)を使わせてしまったことを考えれば、余計な事をしてしまったのかもしれない。だから、十香の感謝は受け取る事が出来ない。

 

「むぅ……そんな事はないと思うぞ」

 

「十香さんはお優しいですわね――――――わたくしが、まだ士道さんの命を狙っていると言っても、同じ事が言えますでしょうか?」

 

 見るまでもなく、目を見開いたのが分かった。息を呑む十香に、狂三は怪しく微笑みながら言葉を続ける。

 

 

「わたくし、士道さんと〝勝負〟をしていますの。あの方が勝てば、十香さんと同じく霊力を封印されるつもりですわ。ですが、わたくしが勝った時――――――その命はわたくしの物になると、お約束いたしましたわ」

 

「っ……!?」

 

「それでも十香さんは、こんなわたくしに礼など必要と思いますの?」

 

 

 今回、士道を助けたのはそのためだと……暗にそう言っている。その反応を見るに、やはり十香には伝えられていなかったらしいと狂三が笑う。

 別に、この行動に理由はない。ただ何となく――――――気まぐれで、十香の反応が見てみたくなっただけだ。

 

 狂三の言葉を聞いた十香は、むぅと考えるように目を瞑り……それから、目を開き宵闇の瞳で真っ直ぐに狂三を見返した。

 

 

「それでも、助けられた事には変わりない。私は礼を言うぞ」

 

「……物好きな方ですわね。わたくしが勝てば、士道さんの命はないのですよ?」

 

「――――――私は、シドーを信じている」

 

 

 瞳を逸らさず、そして眩しい笑顔で笑う十香を見て、今度は狂三が目を見開いて驚く番だった。

 

 

「シドーは私を……皆を救ってきた。そんなシドーが狂三の勝負を受けたのなら、何か考えがあっての事なのだろう。だから私は信じている。その選択をしたシドーを――――――シドーが勝つと、信じられるのだ」

 

「――――――ああ、ああ」

 

 

 全く、嫌になるほど真っ直ぐな心。五河士道に対する全幅の信頼感。彼が負けるはずがないと、本気で十香は信じている――――――それを、少しだが理解してしまえる自分が、今は少し腹立たしい。

 

「……そんなに士道さんを信じていらっしゃるということは、わたくしの事は信じてくださらないのですね。悲しいですわ、泣いてしまいますわ」

 

「な……っ!? そ、そうは言っていないのだ!! いやしかし狂三が勝ってしまうとシドーが……!!」

 

 明らかな嘘泣きに大慌ての純真な十香を見て、狂三が笑う。なんというか、ここまで言っても狂三の事を拒絶しない十香を相手に色々考えていたのが、馬鹿馬鹿しくなってしまった。

 この場合、大層おモテになる(・・・・・・)士道へ怒るべきなのか……それとも、十香にこんなにも信頼されている事を羨む(・・)べきなのか。どの道――――――

 

 

「――――――負けられませんわねぇ」

 

 

 また一つ、狂三の強情(・・)な部分に火がついてしまったことだけは、確かだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「ちょ……待っ――――――ぎゃあああああああああああっ!?」

 

「終わってみれば大団円。良い旅行でしたねぇ」

 

「……あの悲鳴を聞いて、よくその台詞が言えますわね」

 

四方向(・・・)から引っ張られ空港のロビーで非常に響く悲鳴を上げる士道……を、遠巻きに見ながら述べる感想がそれなのか、とフードコートの空港グルメに舌鼓を打つ白い少女を見て、狂三が呆れたような笑みで飲み物を飲む。

 

「そうですか? 男なら、美少女四人に囲まれたあの状況は役得だと思いますけど」

 

「士道さんの身体がボロボロでなければ、そうであったかもしれませんわね」

 

 〝アレ〟と〈鏖殺公(サンダルフォン)〉を人の身で扱ったのだ。今の士道はさぞ、肉体的疲労がピークに達している頃だろう。それを十香、何やら包帯を巻いてボロボロの折紙、更に霊力を封印された(・・・・・・・・)耶倶矢、夕弦に囲まれどんちゃん騒ぎ。これでは嫉妬をする気も失せるというものだ。

 

「とか言いながら、ちょっと羨ましいって顔してますよ、我が女王」

 

「っ……あなたの思い違いですわ」

 

「そういう事にしておきます。良かったですね、お友達も増えましたし」

 

「ですから……!」

 

 狂三としては、そんなもの増えていないし増やした記憶もないし増やす予定もない。全く、と再び飲み物を口に含んで、ゆっくりと旅行と言うには些か苛烈すぎた出来事を思い返す。

 DEMの陰謀を阻止する事になったかと思えば、二人の精霊が同時に襲来。事もあろうに、その精霊を攻略する手助けまでする事になり……挙句、件の魔術師は落とし穴に真っ逆さま。本当に、あの方といると飽きが来ないと思えてくる。しかし、結局あの落とし穴は誰の仕業だったのだろうか? 素人が掘ったとは思えないほど深い落とし穴は、あの時の狂三にとっては時間短縮、及び霊力の温存に繋がり感謝するべきところなのだろうが……まあ、この空港で大はしゃぎしている三人娘があんなものを掘ったなど、狂三と言えども予測できる筈がなかった。

 

 そして、精霊の封印。狂三としては深入りし過ぎた、というのが本音だ。彼女の最終目的を考えれば、好ましい行動とは言えない……どちらにとっても(・・・・・・・・)。次からは士道以外への過度な干渉は、極力は控えるべきであろう――――――士道が引き出した〝精霊〟の力の事を考えても。

 

「一つ、聞いてもよろしくて?」

 

「私が答えられることなら、なんなりと」

 

「あなた、士道さんがほんの一瞬とはいえ引き出したあの力――――――〝反転〟に関してまで、予測していましたの?」

 

 士道が引きずり出した〝アレ〟を視界に収め、感じた瞬間、狂三は過去に一度だけ経験した感覚――――――〝反転〟状態と同じものを感じた。本能的に悟った、と言い換えても良い。狂三も士道も反転し切った訳では無い。狂三はともかく、士道は霊結晶を直接取り込んでいる訳ではなく、霊力の回路(パス)を通しているだけなので恐らくは完全に堕ちる(・・・)心配はない……そう狂三自身は予想するが、所詮予想は予想でしかない。感覚的な理由は、確信と言えない。だからこそ、狂三は白い少女に問いを投げかけた。

 

「……〝反転〟と言うだけあって表の〝天使〟とは表裏一体の関係。引き出せる可能性は考慮していました。まさか、あんな形で引っ張り出すとは思いもしませんでしたが」

 

「やはり、想定外でしたのね」

 

「……えぇ、私の想定が甘かった。申し訳ありません」

 

「構いませんわ。人の感情の〝ブレ〟を正確に読み取る事など、どんな御仁であろうと不可能なこと。悔いるより、あなたの見解をお聞かせくださいまし」

 

「……ん。問題ないでしょうね。所詮は、条件が重なって顕現したに過ぎない力。今は気にしても仕方なきこと。五河士道の心持ち次第、ではありますけどね」

 

「概ねわたくしと同意見ですわね。あなたがそう仰るなら、信じる事にいたしますわ」

 

 士道さんに関しては言うまでもありませんし、とさり気なく彼への信頼感を自然と口に出した狂三が、何やらジッと彼女を見つめる白い少女の姿に首を傾げる。

 

 

「何か?」

 

「……いや、私が言うのもおかしな話ですけど、そんなにあっさり信じて良いんですか?」

 

「何を今更――――――わたくしを信じる者(・・・・・・・・・)の言葉を信じずに、一体何を信じると言いますの」

 

 

 あまりにも平然と、さも常識と言うように語る狂三の表情を見て、少女は呆気に取られてしまう。豪胆、大胆、表現の方法は様々であるが……ともかく、この優しい女王(・・・・・)の姿に少女は思わず笑を浮かべた。

 

 

「……ふふっ。狂三、少し素直になりましたね。あなたの勇者様の影響ですか?」

 

「わたくしの、ではありませんわ」

 

「あら、影響を受けたのは否定しないんですね」

 

「……帰りますわよ。わたくし達は忙しい身なのですから」

 

「はぁい。仰せのままに――――――我が女王」

 

 

 ――――――こうして、颶風が巻き起こした嵐の物語は終わりを告げる。

 

 

『〈ナイトメア〉介入……ふむ、想定外な事象ではあるが、〈プリンセス〉が確かに精霊だと判明したのなら非常に大きな意義があった。ご苦労だったね、帰投してくれ』

 

「……はい。その前に一つだけ、ご質問が」

 

『ほう、なんだい?』

 

「精霊の力を扱うことの出来る人間というものが――――――存在すると思いますか?」

 

 

 しかし、〝種〟は撒き散らされた。祈り、悪意、願い。様々な物を乗せたそれは、少年と少女の戦争(デート)を更に過激な道へと誘う事であろう。

 

 

 

「――――――士道は、私が殺します」

 

 

 

 さあ、次の舞台(ステージ)はすぐそこに。休む間もなく――――――戦争(デート)は続いていくのだから。

 

 






悲願の道標=士道。士道=好きな人、というのもあり行動が士道基準になったけど、やっぱ負けず嫌いや気まぐれ屋は治らないきょうぞうちゃん。表面上は大人の対応をする彼女の内心は……?

次回からは美九編。強烈すぎる新たな精霊にちょっと普段と違った白い少女が見れるかも。そして何より何より例の美少女登場ですよ。誰とは言いませんけど、一体なに道くんが苦労するのかは言いませんけど。この主人公いつも体はってんな。

感想、評価などなどお待ちしておりますー。次回をお楽しみに!
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