その様はまさに豪華絢爛。しかし贅沢ではあるが、常人にとっては華やかとは言い難い演奏会だった。数百もの光の軌跡が空に煌めき、黒の弾丸が闇夜に紛れて鉄を穿つ。どちらも、見た目こそ華やかではあるがその実、殺戮をもたらす暴力の体現。
『狂三』の一人が魔術師の纏ったユニットを破壊する――――――瞬間、彼女に小型のミサイルが着弾しその影を散らす。だが、『狂三』は誰一人として怯まない。笑っていた、自らの死を。笑っていた、
それが分かる。分かってしまうからこそ、それは五河士道の心を痛ましく貫いた。士道にとって、彼女たちもまた『時崎狂三』であるから。
「っ…………」
「士道さん――――――参りましょう」
彼が何を思ったのか、彼女には手に取るように分かる。優しいこの方が、こういったやり方を好まない事を知っている。だから、エゴだと分かっていても、これ以上この凄惨な戦場を見て欲しくはなかった。彼はきっと、仮初の命だと分かっていようと、途方もない数が消えていこうと、その全てに慈悲を持って『狂三』の死を受け止めてしまうから。
戦場を俯瞰し、静かに道を指し示した狂三の声に、彼は一度覚悟を決めるように目を閉じ――――――力強く頷いた。
「――――――ああっ!!」
決めたのは自分自身。戦いにおいて彼女の手を借りる、それはつまり
「順序は逆になってしまいましたけど、この隙に目的の場所まで駆け抜けますわ。少々荒っぽくなりますが、ご容赦くださいませ」
「そろそろ、こういうのにも慣れてきたところだ……何度も悪いけど、頼む」
「あなた様の為なら、喜んで。〈
一つの弾丸が彼女の頭に突き刺さった。刹那、一条の光が戦場を駆け抜ける。戦の真っ只中をすり抜けるように、高速化した狂三が飛ぶ。本来は辿り着いてから撹乱の為に分身体が暴れ回るはずが、向こうが先に襲ってくるというなりふり構わない暴挙があったため、生死の境を彷徨うようなやり方となった。
慣れていきた、とは言ったものの真横で爆裂する弾頭は容易く士道の命を奪い取るものだと思うと息が詰まる。降り掛かる強烈なGに意識を持っていかれそうになりながら、爆心地を通り抜けた狂三が元の速度に戻り彼の身体を地面に下ろす。彼女のお陰で五体満足で立つことが出来たが、流石に頭がふらついてしまう。
「大丈夫ですの、士道さん。お怪我はありませんこと?」
「あ、ああ。大丈夫だ。行こう狂三――――――」
そんなものに構っていられないと、気合を入れて両の足で立ち、気遣ってくれる狂三を見遣り――――――背筋が凍る。理屈じゃない、ただ〝何か〟が彼女に迫っていた。
「っ、危ない!!」
「きゃ……っ!?」
肌感覚だけで〝それ〟を感じ取った士道は、本能的に彼女の腕を引いた。さっきまでとは逆に、士道が狂三をその身で抱きとめるように受け止め、咄嗟に後ろへ倒れ込んだ。抱き込んだ彼女を決して傷つけぬよう、硬い地面へ背を投げ出した痛みに耐えながら閃く光と――――――ぶつかり合う音を聞いた。
「崇宮――――――真那」
「――――――!!」
彼女の名を呼ぶ少女の声は、何故か
「真……那!?」
「兄様!! よくぞ、ご無事でっ!!」
言いながら、真那が右腕のレーザーを薙ぎ払う。同時に、白い少女も刀を払うように後方へと飛び退いた。士道を、と言うより狂三を守るように。真那は士道を見て安堵の表情を見せたのも一瞬、すぐさま白い少女を、と言うよりこちらも狂三を見て殺意を込めた視線を向ける。
「待っててください兄様!! 今すぐ兄様の身体に張り付くその外道女を細切れにしてやります!!」
「は!? いや違うから!! 狂三とはそういう事じゃなくてだな……」
「分かっていやがります。琴里さん共々、〈ナイトメア〉に誑かされてしまったのですね、お労しい。ですが、今すぐ真那が兄様の目を覚まさせてやりますとも!!」
「なんでそこで琴里が出てくるんだっ!? っていうか話を聞いてくれないかな!? ほら、狂三も何か言ってくれよ!!」
「……誑かした、という点は否定できませんわ。やりますわね真那さん」
「頼むから話をややこしくしないでくれな!?」
神妙な表情で納得と言わんばかりに頷く狂三に、士道が鋭いツッコミを入れていく。ちなみに、抱き合った状態から変化がないので誤解と混乱は深まるばかりだった。
狂三の物言いがふざけていると感じてしまったのか、真那の視線が更に鋭くなったのが分かる。とにかく、真那を説得しない事にはこの場は収まりそうにない……と、額に汗を滲ませながら士道は必死に声を上げた。
「え、ええと、真那? お前が無事だったのは嬉しいが、今は剣を下ろしてくれないか? これには深ーい事情と訳があってだな。お前がDEMの魔術師で俺を捕まえに来たのは分かるんだが――――――」
「あ、いえ。私、DEMは辞めました。今は〈ラタトスク〉の世話になっていやがります」
「は……はぁ!?」
情報が大渋滞し過ぎて、士道の頭の中はパンク寸前だった。なぜ真那がDEMを辞めたのか、なぜ〈ラタトスク〉の元にいるのか。後者の話が本当ならば、先程出た琴里の名前も理解出来る。出来るが、なんでそこから共々誑かされたという話につながってしまうのか。
ゆっくり話を整理整頓したいところではあったが、今はとにかく時間が惜しいし何より一触即発の二人が話し合えるとは――――――
「……埒が明きませんね」
「っ!?」
沈黙を保っていた少女が声を発した瞬間、士道は言い様のない戦慄を覚えた。いつもの飄々とした少女でも、狂三に見せる従者のような少女でもない。見たことがない白い少女がいた。自分に向けられたものでは無いと分かっているのに、士道はその強大な〝殺気〟に当てられただけで身体が震えてしまいそうになる。
「……彼女は私が相手をします。あなた達は先に進んでください」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!! 真那は敵じゃ――――――」
「――――――いいえ。彼女は、私の〝敵〟です」
静止の声がピタリと止まってしまうほど、冷たい少女の声。士道の知る少女のものとは思えぬ拒絶の言葉。間違いなく、少女は真那の事を排除すべき対象として見定めていた。
少女の背にいる士道でさえ身体が竦むほどの敵意をぶつけられた真那が、狂三から視線を逸らし臨戦態勢を取る。
「どなたか存じ上げねーですが、邪魔をするつもりなら……」
「……私の方は、あなたが『狂三』を
「……!! ふん、要は〈ナイトメア〉の仲間という認識で間違いはないみてーですね」
敵意が、もう一つの敵意と交わる。濃厚過ぎる殺意が密集した空間は、士道が口を出すことさえ叶わない。あと数秒といらず、精霊と魔術師の殺し合いが始まる。そんな空気が場を満たしていた。
「……崇宮真那。あなたの境遇には同情もあります。理不尽だとも思います。けど、それ以上に――――――あなたは私の〝敵〟です」
「上等でやがります。何のことだか知らねーですが、やるなら受けて立ちますよ」
各々の武器を構え、真那と少女の視線が交錯する。なぜ少女が真那を敵視するのか、それは分からない。分からないが、ここで二人が争ってはダメだという事は分かる。竦みそうになる身体に鞭を打ち、身を乗り出そうと試みる士道の耳に――――――一発の弾音が轟いた。
「そこまで、ですわ」
「狂三……」
二人の成り行きを見守るように沈黙していた狂三が、空へ銃を向けていた。今の発砲音は彼女のものに他ならない。最悪の場合、これが戦闘開始の合図になる可能性もあったが、どうやら少なくとも白い少女が相手なら狂三はこれで止める自信があったらしい。肌を燃やさんばかりの殺気が一瞬で消え去った事に、士道は安堵の表情で息を漏らす。
「わたくしたちは真那さんと争いに来たわけではありませんのよ。これ以上はナンセンスですわ……刀を収めてくださいまし」
「……それが、我が女王のお決めになったことなら」
さっきまでの頑なな態度を無くし、刀を鞘に納めた少女があっさり真那に背を向け狂三の傍に寄る。
「ハン、しっぽを巻いて逃げるだなんて、らしくねーことしやがりますね、〈ナイトメア〉」
「お、おい真那……」
一方、真那の方は収まりが付かないといった様子で未だに警戒を解いていない。狂三に言われたところで素直に聞くとは思えなかったが、だからといって挑発するのはやめて欲しかった。幸いにも、狂三が挑発に応じる様子はなく髪を手で払い冷静に言葉を返した。
「時間を無駄にすることは、わたくしが最も嫌うことですわ。真那さんほどの実力者に一度種を明かしていると、相手をするのは手間がかかるというだけの話ですわ……なんですの、その顔は」
狂三の言葉を信じられない、奇妙なものを見た……という表情の真那を彼女が半目で見やる。
「……なんか、変なものでも食べやがりましたか? あの〈ナイトメア〉がおべっかをしやがるなんて気色悪いったらないですね」
「前言を撤回して、今すぐ真那さんを天国に送って差し上げてもよろしくてよ?」
「狂三、ストップ、ストップ!!」
良い笑顔で、ただし額に青筋が浮かんでいるのが見える笑顔だったが、そんな表情で銃を構える狂三を慌てて士道が止めに入る。せっかく白い少女が引いてくれたのにここで狂三と真那が戦ってしまっては何の意味もなくなってしまう。
はあ、と士道の説得を聞き入れて銃を下ろした狂三がため息を吐く。彼女とてらしくない、真那が気味が悪いと思うのも無理はないと思っている。少し前までの自分なら皮肉の応酬でもしていたのだろうが、今の自分はそこまで
「士道さん、ここから先は別行動にいたしましょう。真那さんと仲良く、という雰囲気ではありませんし、戦力は彼女がいらっしゃれば大丈夫でしょう」
「っ、けど……」
「外の陽動は続けますわ。それと――――――」
無防備に背中を晒し――――とはいえ白い少女がいるのだから真那も手は出せない――――歩き出した狂三が、一度だけ足を止めて士道と視線を交わす。
「わたくしがいない間、くれぐれも無茶をなさらないように。
「え……」
「約束したところで、無茶をなさるのが士道さんでしょうけれど――――――それでは、御機嫌よう」
薄く微笑んだ狂三は、靴音を鳴らし今度こそ夜闇に消えた。その言葉の真意を理解し切れるのは、本人しかいないのだろう。
「――――――よろしかったんですか? 彼を崇宮真那に任せて」
「問題ありませんわ。真那さんの実力なら大抵の相手はどうとでもなりますでしょうし」
どうとでもなるからと言って、イコール士道が無茶をしない事には繋がらないのが困ったものだが。けど、狂三とて士道の心配ばかりはしていられない。彼女がやらねばならぬ事は、山のように積み重なっている。
「……前々から思ってましたけど、我が女王、もしかして彼女のこと好んでます?」
「あら、嫉妬ですの? 珍しいですわね。嬉しいですわ、嬉しいですわ」
「……ご冗談を」
からかう狂三に少女は苦笑混じりのため息をつく。少女は真那を〝敵〟だと思っている。が、それは少女にとって彼女が〝敵〟足り得る存在であるからであって、崇宮真那という存在を敵視しているわけではない。心境は複雑ではあれど、彼女の人格までを否定する気は更々ない。
〝子犬〟だのなんだの呼んでいたが、狂三から真那へ向ける感情というものは殺意だけではない気がした。殺し殺されの関係であるはずなのに、である。茶化すような笑みだった狂三が、ふっと感傷に浸るような笑みを零す。
「別に大した理由はありませんわ。ただ、真那さんの生き方が少しだけ――――――」
そう、少しだけ、精霊ではなく一人の少女として……その生き方が、眩しく映ってしまうのかもしれない。遠く、思い出したところで、自分が名乗るには遅すぎる夢の形。最悪の精霊が名乗るにはあまりに滑稽で、荷が勝ちすぎている崇宮真那の生き方が、少女は嫌いにはなれなかったのだ。
崇宮真那。崇宮。タカミヤ――――――
あの女のように、霊結晶を与える〈ファントム〉という謎の存在。崇宮を名乗る士道の妹。偶然にしては出来すぎている、謎に包まれた
止める、というより
まさか、
「――――――狂三」
その声にハッと顔を上げる。いつの間にか立ち止まり、物思いに耽っていたらしい。少女が狂三を覗き込んでいた。
「……どうかしましたか? 顔色が優れないようですが……」
「なんでもありませんわ。余計な事を考え過ぎていましたわ……あなたはこのまま『わたくし』たちと共に。ちょうど良い機会ですし、わたくしは別件で動かせていただきますわ」
「別件?」
「――――――囚われの精霊」
ここまで大事になっているのなら都合が良い。世界のどこかに幽閉されていると言われる精霊を探すには、またとない機会だ。囚われているのはただの精霊ではない。
「……ん。わかりました。お気を付けて」
「ええ、ええ。まあ、あまり期待はしていませんわ。それに見つからずとも、
「……否定はしませんけど、私に期待され過ぎても困りますよ」
〝悲願〟の成就には欠かせない筈の第二の精霊探しではあるが、狂三は躍起になっているわけではなく見つかれば良い、程度の優先度としていた。
理由は三つ。一つはあまりにも
三つ目。これは、狂三にしては珍しい理屈抜きの直感のようなものだが、待っていても……いつか現れる気がするのだ。誰の前に? 無論――――――精霊を救う少年の前に、だ。
「まったく。一体どんな協定を交わしたのか知らねーですが、一度騙された女と仲良くするだなんてどうかしてやがります。聞いてますか兄様!?」
「あーあー聞いてる、聞いてるよ。あれから色々あったんだって……」
その色々を説明できる気はしないのだが、と思いながら士道は詰め寄る真那を片手で静止しながら自分の髪を掻き毟る。
「その色々が気になりますが……まさか! 〈ナイトメア〉に骨抜きにされやがったのですか!? やっぱりあの悪魔はここで始末しておくべきでしたか……」
「違う!! あ、いや……違うこともない、か?」
骨抜きという表現は間違っていないどころか大当たりではあった。ただし、真那の想像と実際の出来事はかなり食い違っているので、士道の呟きに目を剥いて当然の如く怒りを顕にした。
「それはどういう意味ですか兄様!! ちゃんと説明して…………ああ、そーでしたそーでした」
言葉の途中で耳を抑えるような仕草をして眉をひそめる。ヘッドセットに備えられたインカムから大声で怒鳴られたらしい。怒鳴られても特に焦る様子はなく、真那はポーチ状になった腰のパーツの中に手を入れると、そこから何かを差し出して来た。
「兄様。これを」
「これは……インカム?」
「ええ。どうぞ。回線は繋がっています」
受け取ったインカムを右耳に装着する。手馴れたそれは、やはり想像通りの声を数時間ぶりに聞かせてくれた。
『士道、聞こえる?』
「琴里!! 良かった、無事だったのか!!」
愛する妹にして〈ラタトスク〉の司令官の声に、士道はようやくホッと一息つけた気分だった。美九の演奏以降、完全に連絡を絶たれていて内心気が気ではなかったが、落ち着いた彼女の声に安堵の声を上げた。
『ええ。何とかね。私に美九の演奏が効いてたらヤバかったかもしれないけど……誰かさんの〝お守り〟が助けてくれたわ。礼を言うべきかしら、誰かさん?』
「あ、いや……その……あれはだな……」
間違いなく〝お守り〟が士道由来のものではないことに気づいている口振りに、どう返せば良いか分からず口籠もる。ただの〝お守り〟ではなく、理屈は分からないが妹を守る力になってくれたのはありがたかったが、バレた時の言い訳までは考えていなかった。
『冗談よ。士道が私のことを心配してくれたのが嘘じゃないってことくらい分かってるわ』
「ああ、心の底から安心したよ。お前が無事で、本当に良かった」
『……そ、それより。あの後、何があったか説明してちょうだい』
今度は琴里が少し吃った声を発したことに首を傾げながらも、返答をした士道が手短に通信が切れた後の出来事を説明した。エレンに十香が連れ去られてしまったこと、そのあと狂三の全面的な協力により彼女が囚われた場所が判明したこと。それが、そびえ立つDEMインダストリーの施設内であること。
それを聞き、しばらく熟考するように押し黙った琴里が、重苦しい声で言葉を発した。
『……駄目。危険よ。認め――――――』
「認められないって言っても、俺は行くからな」
そんな彼女の答えを遮り、士道もまた決意の篭った声を返す。彼の言葉に琴里が息を呑んだのがインカム越しでも分かる。
『っ、馬鹿なこと言わないで!! DEMが危険な組織だって分かってるんでしょう!?』
「そんな危険な組織にさらわれた十香を放っておけねぇだろ!!」
『放っておけなんて言ってないでしょ!? 少しは命の勘定に自分を入れてちょうだい!!』
「入れてるさ!! 入れた上で、俺は十香を絶対連れ帰ってみせる!!」
『この……バカ兄っ!! 良い? よく聞きなさい。こういう場合はもっとちゃんと準備をしてから――――――』
「そんな悠長なこと言ってられない――――――『狂三』が、魔術師たちを足止めしてくれてる」
『っ……』
今なお、外での戦闘は続いている。幾人もの『狂三』がその身を犠牲にしながら、道を開き続けているのだ。傲慢だと分かっている、自己満足だと分かっている。けど士道は、彼女たちが切り開いてくれた道を何一つ無駄には出来ない。誰一人として、その死が無駄だったなんてことは、絶対に言わせない。
「これを逃したらもうチャンスはやって来ない……頼む、琴里!!」
『……ああっ、もうっ!! ほんっと、どいつもこいつもわからず屋なんだから!!』
苛立たしげな声と共にガン! と椅子の肘掛部分をかなりの力で叩く音が聞こえて来た。琴里が心配してくれている気持ちはよく分かっている。が、これ以上問答が続くようなら士道は本気で説得をしながらでもDEMへ乗り込むつもりだった。
そんな士道の考えも琴里にはお見通しなのだろう。諦めと呆れを盛大に包んだ声色で琴里が言葉を続ける。
『どうして私の周りはこんな自分勝手でわからず屋で強情な駄々っ子ばっかりなのかしら……』
「……悪い。最近になって自覚はしたよ」
『安心しなさい。あなたの事だけを言ってるんじゃないから――――――言っておくけど、社屋内は随意領域によって通信が阻害されてるわ。こっちからは外部のサポートくらいしか出来ないわよ』
「!! いや、十分だ。ありがとう、琴里」
暗に認めてると言葉にした琴里へ士道は感謝を伝える。ふん、と不機嫌さ増し増しではあるがいつもの司令官様の凛々しい声が返された。
『止めたって聞かないのは私がよく知ってるわよ。分かってると思うけど、やるからには中途半端は許さない。全員揃って無事に帰ってくる……例外も失敗も認めないわ』
「分かってる」
やるからには成功する。やるからには勝つ。それが、自分たちの決まりだ。
『さあ――――――私たちの』
「ああ――――――俺たちの」
何の決まりか、など今更問うまでもない。世界一過激で、苛烈な――――――
『
「
「てか、真那に狂三のこと伝えといてくれても良かったんじゃないか?」
『伝えたわよ、説得もしたわよ。出来うる限り、誰かさん達のせいで説明しようにも簡単には出来ない事を噛み砕いてしっかりね。誰かさん達の、せいで!!』
「…………俺が悪かったです、ごめんなさい!!!!」
狂三にとってはそこで死しても直前の形を再現出来る分身体ですが、士道にとっては紛れもなく『狂三』の死なわけでして。まあ複雑ですね。狂三としても自分の力の一つであり譲歩は出来ないし士道も口には出せないといううーんこの。
白い少女にとっての〝敵〟。これは意外と単純明快で少女のこれまでの言動を見ればかなり分かりやすくなってます。その境遇には同情する理不尽だと思う、けれど少女にとってたとえ誰であろうが彼女の中にある一線を超えてしまえばそれは紛れもなく〝敵〟である。精霊だろうと魔術師だろうと、選択肢を間違えていれば五河士道であろうとそれは同じでした。
それはそれとして将来的に真那をどうやって説得するんでしょうね(小声)
狂三さえも恐れる真実。いや、このリビルドの狂三だからこそ恐れる真実と言うべきもの。開けてしまえば物語が終わりかねない致命的な矛盾、とだけ。わかるかな?
次回からは原作イベント消化したりなんだり。章のタイトルの子のターンとも言う。
感想、評価などなどお待ちしておりますー。次回をお楽しみに!