デート・ア・ライブ 狂三リビルド   作:いかじゅん

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箸休め回。合流回とも言うし伏線回とも……?


第六十五話『トラブル・モンスター』

 

 

 二回。

 

 漠然と浮かび上がるこれが何かと言うと、なんということはない。時崎狂三が五河士道の自宅に入った回数、である。他の精霊たちから見れば、本当になんてことはない数字なのだが、こと狂三にとっては大事な大事な二回だった。しかも、うち一回は彼に招かれたというのもあり更に特別なものだった。

 もう片方の一回は――――――正直、忘れたい。感情の制御を怠った挙句、勢いに任せてあの方と添い寝? 大胆ですわー、弱みに漬け込む卑しい女ですわー、と分身体から非難の声が聞こえてくるようだ。無論、狂三の被害妄想と幻聴……のはずだ、多分。

 

 とまあ、その距離感の近さに反して意外や意外。彼女は士道の自宅へ足を踏み入れた回数はそう多くない。距離感と釣り合わない理由としては、他の精霊の出入りが激しいのはもちろんのこと性格も戦術も相性が良いとは言えない――と当人達は思っている――炎の精霊がほぼ常にいることが大きい。こと距離感という意味では、狂三に負けず劣らずの五河琴里であったりするのだ。世界で一番(妹として)愛してる、と士道に叫ばれたのは伊達ではない。

 

「…………ふぅ」

 

 額を伝う一筋の汗。敵と相対する時でさえ、ここまでの緊張感を齎すことは不可能だと考える。そう感じてしまうほど、狂三の目の前に立ちはだかる扉はあまりに大きく、鉄壁だった……!! ――――――単に、五河邸の玄関と言うだけなのだが。

 ハンカチを取り出し汗を拭う。というか、いつから時崎狂三はこの程度のことで足を止めてしまうようになったのだろうか。自問自答し、そんな前の話ではないなと結論付けた。単純な話、友人の家を訪ねる行為で緊張するのがおかしいのであるが……好きな殿方の(・・・・・・)、という前提が付くと話が拗れややこしくなってくる。

 

 深夜に夜這い紛いなやり方で家へ侵入する方が遥かに難易度が高いのではないかと思うのだが、幸か不幸かその事に気づいて考えたのは分身体のみで、本人にはさっぱり自覚がない。

 

「落ち着きなさい、落ち着きなさい、時崎狂三。平常心、平常心ですわ。わたくしは冷静、冷静ですわ」

 

 感情が高ぶっている時に出る言葉を二度繰り返す彼女特有の癖が出ている時点で察せるものはあるが、念じる言葉とは裏腹に心臓が飛び出そうなくらい激しく鼓動していた。

 

 これは気を落ち着かせた方が。いえ、いえ、今出て行っては『わたくし』の動揺を深めるだけ。ここは静観の構えが必勝かと――――勝利の法則は決まりましたわ。しかし、士道さん派閥としてはここは是非に――――――などの会話が行われているか定かではないし狂三が知る由もない中。

 

 

「――――――!!」

 

 

 カッと目を見開いた狂三が指を玄関のチャイムのボタンへかける。あと一押しあれば、そのチャイムは役割を成し来客を告げる運命の鐘を鳴らすだろう。分身体が固唾を呑んで見守る中、ついに狂三は細やかな指に力を込め――――――

 

 

『この――――――いい加減にしなさあああああああああああああああいッ!!!!』

 

 

 家全体が震えドアが破れるのではないかと思える絶叫に目を丸くする事となった。その叫び声の威力は、ゆうに扉を超え狂三の髪を大きく揺らすほどのものだった。は、少々言い過ぎだがそのくらいの迫力があったのは確かだ。はて、今の声は聞き間違いでなければ……。

 

「……ふむ。どうやら苦労しているようだね」

 

「あら、あら。令音先生」

 

 隈に飾られた双眸。いつ倒れるとも思える不健康そうな身体。そんな身体に負けないほど恐ろしいまでの美貌。〈ラタトスク〉の解析官、村雨令音がいつの間にか(・・・・・・)狂三の背に立っていた。いつの間にか(・・・・・・)、という部分に注釈する形で、つかぬ事をお聞きしますが、と狂三は声を発した。

 

「……令音先生、いつからそこに?」

 

「………………たった今、かな」

 

「…………申し訳ありませんわ」

 

 起伏の少ない表情筋に反して嘘が得意ではないらしい。ばっちり不審行動を見られてしまったことと、それを見ていないものとしてくれる令音へ、目を閉じてフルフルと羞恥で震えてしまいそうになりながら狂三は頬を赤く染め軽く頭を下げた。

 

「……シンが抱えている事情は把握しているかな?」

 

「ええ、ええ。ある程度は『わたくし』からの報告で聞き及んでおりますわ。何やら大変愉快(・・)な事になられていらっしゃるようなので、ご様子をと思いましたの」

 

 報告を受けた時は何事かと思いはしたが、精霊が相手ならばまあそういう事もあるだろうと受け入れた。それより問題なのは、勝負が終わったというのに七罪を攻略するどころかそのような嫌がらせまで行われているという事だった。

 面白いものが見られそうだという興味本位が半分、これ以上静観するのは好ましくないという判断が半分で狂三は今に至る。別枠として、一度自分から士道の家へ訪ねてみたい願望が存在していたかは本人のみぞ知る。

 

「……なら話が早い。以前のように、君への協力を要請させて欲しい」

 

「構いませんわ。元よりそのつもりでしたもの。想像以上に厄介な相手のようですわね」

 

「……感謝する。なかなかこちらに尻尾を掴ませてくれない相手だ……ところで、彼女は元気かな?」

 

「彼女……ああ、あの子のことですか」

 

 一瞬ピンと来なかったが、令音が名前を言わずに狂三へ尋ねる人物など一人しか該当しない。彼女が頷いたところを見るに当たっているらしい。

 

「壮健ですわ……ですが、まだ本調子というわけではありませんでしょうけど」

 

「……わかるんだね」

 

「わかりますわ。あの子、嘘が下手ですもの」

 

「……ありがとう。君があの子をちゃんと見てくれていると安心出来る」

 

「? ええ、まあ、わたくしはあの子を預かる身ですので、当然ですわ」

 

 僅かに唇の端を上げた令音は心なしか嬉しげ見えて、その事に疑問を感じた狂三は小首を傾げる。それが、彼女からお礼を言われるほどの事かと思ってしまったのだ。

 とはいえ、違和感があるかと言われればそうでもない。あの子が〈フラクシナス〉の医務室で大人しくしている間、何かと少女を気にかけていたのは他でもない令音だったのだ。結局、そうなった理由がわからないという疑問が発生してしまうのだが。

 

「令音先生は、あの子の事を気にかけていらっしゃるのですわね」

 

「……あの子だけ、というわけではないよ。シンや精霊たちは皆、大切な存在だ」

 

「それはそうなのでしょうが――――――」

 

 それだけで済ませてしまうには、何かおかしな違和感がある……理屈的な、と言うよりは直感的な何かに近い。それが、また〝何か〟に阻まれているようにも感じて――――――家の中から大騒ぎする音が聞こえてきたことで、それを中断させられ狂三は令音と目を見合わせた。

 

 

「……話しすぎたね。お邪魔しようか」

 

「そうですわね。ですがわたくしは――――――少し、装いを変えて(・・・・・・)お邪魔させていただきますわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だあああああああッ!! ちょっとは落ち着きなさいあなたたち!! あ、こら耶倶矢、夕弦、物を勝手に取らないの!!」

 

「くーくくく! いちどわがりょうちにはいったものはかえせぬなー!」

 

「とうぼう。かえしてほしかったらつかまえてみるがいいです」

 

「な……ああもう!!」

 

「琴里、落ち着けって……」

 

「わかってるわよ!! 士道、あなたも…………ああうん、ごめん。無理よね」

 

 怒りに我を忘れそうになっていた琴里が、士道を取り巻く状況を見てふと我に返る。琴里を取り巻いている子供達(リトル・モンスター)は耶倶矢と夕弦。つまり残りは全て士道の元へ集まっているのである。

 お腹が空いたと連呼し続ける十香。やたらトイレに連れていこうとする折紙。今にも大声で泣き出してしまいそうな四糸乃。だーりん、だーりんと綺麗な声で士道を呼ぶ美九。琴里からチュッパチャプスを強奪し走り回る耶倶矢、夕弦。普段の装いであれば正気を疑うような光景になるのだろうが、今は皆一様に子供の姿(・・・・)となっていた。そのため、この大騒ぎも子供が起こしているものと思えば納得は行く。納得が出来たところで、解決できるかは別問題なのだが。

 

 七罪の力は変幻自在。それはわかっていた事だったが、まさか精霊達を含めて幼児化(・・・)させることが出来るとは思いもよらなかった。現在、五河邸が託児所紛いの光景になっているの原因はそのためだ。四方から疲労した身体を引っ張られ、服が伸び放題になって半ば悟り顔となってしまっている士道を見遣り、琴里は頭を抱える。こうなってから早数日。琴里は士道のフォロー係として頑張ってはいたが流石に限界が近い。白リボンの自分でもここまでではない子供たちを数人まとめて四六時中面倒を見る……崩壊しかけて当然だった。

 

「……お邪魔するよ」

 

「令音!! 助かっ……た、わ?」

 

 救世主が舞い降りた。突然開いたドアから聞こえてきた声へ真っ先に顔を上げて…………共に入ってきたもう一人の女性に、口をあんぐりとさせた。令音がああ、とその女性を手で示唆しながら声を発した。

 

「……琴里は会うのが初めてだったね。私の友人の時子さんだ。今日は手伝い(・・・)に来てくれた」

 

「と……っ!? ちょ、士道――――」

 

「わーひさしぶりだなーときこさん。よろしくおねがいします」

 

「士道!?」

 

 あんまりにもあんまりな思考停止の棒読み。二度目となると適応力があるのかないのか。それとも、サングラスとポニーテールという滅多に見られない彼女の姿に見とれているのか。多分、後者の方が答えに近い気がすると妹は直感的に察した。

 令音に紹介された他称・時子さんはペコりといつもとは違ったお辞儀をすると、被っていた帽子を取りそれをクルクルと遊ばせ――――――何の変哲もない帽子の中から、大量の〝お菓子〟をばら蒔いて見せた。

 

『おおー!!』

 

 それに食い付いたのは子供達である。空を舞うお菓子たちに目を輝かせ、キャッキャッと掴み取りを始めた。なんと、あの折紙ですら興味深そうにお菓子をマジマジと眺めている。

 

「……実は、彼女の本職はマジシャンなんだ。ああ、みんな、お菓子は好きなように食べてくれて構わない。ただし、仲良くね」

 

 令音の声が聞こえているか定かではないが、子供たちは何もないところからお菓子が次々と現れるという夢のような光景に夢中になっていた。一瞬にして全ての注意をそちらへ向ける芸当をやってのけた時子――――――もとい、時崎狂三は手を前に回して、マジシャンがショーの終わり際にする礼を取った。

 

「……ふふっ」

 

「!!」

 

 ついでに、サングラス越しから士道だけに分かるように可愛らしいウィンクもお見舞してくれた。彼はお菓子ではなく、可憐な彼女に心奪われてしまったらしい。

 

 

 

「――――――助かりましたわ。予想通り、思考も身体に引っ張られてしまうようですわ」

 

「思考も……?」

 

 ええ、とテーブルにサングラスと帽子を置き、髪を解いた狂三を見遣る。ポニーテール姿がなくなって少し残念と思ったが、髪を下ろした狂三は大変に貴重なので眼福眼福……などとは考えていない。妹の目が鋭くなったので考えていないということにしなくてはいけない。

 ちなみに、程なくして子供たちは皆眠ってしまった。マジック披露のあと、令音と二人で楽々と子供をあやし寝かしつけたるという偉業に、思わず琴里と二人で小さな拍手を送ってしまったくらいだ。

 

「思考は肉体の状態に引っ張られてしまうものですわ。短期間ならまだしも、このように長期間子どもの姿を取らされてしまっては、否が応でもその状態に適応しようと精神が持っていかれてしまいますわ」

 

「なるほど。あなたのその変装に折紙が疑問すら抱かなかったのはそういうことね……」

 

「そういうこと、ですわね。以前のような〝裏技〟をせずともよく、わたくしとしては楽でしたわ」

 

 狂三の口からあの時と同じ〝裏技〟という単語が出て、士道も彼女の説に納得がいく。あの時、八舞姉妹事件の折披露した時子の姿は彼女なりに何か細工をしていたのだろう。しかし、今回はそれをせずとも違和感すら持たれなかった……これは、七罪の力で長期間身体を〝変えられた〟結果、折紙や他の精霊たちの思考や行動が段々と年相応に変化し始めているということで――――――

 

「……ちょっと待ってくれ。それってかなりヤバくないか?」

 

「ヤバいわね」

 

「ヤバいですわね」

 

「……ヤバい、だろうね」

 

 士道に倣う形で美人三人が謎の口調を揃えるとなんだかムズ痒い気持ちになるのでやめて欲しかったが、今はそんなこと言っている場合ではないとコホンと恥ずかしげに咳払いをしてから言葉を続ける。

 

「早めに何とかしないとな……今だって、狂三や令音さんの助けがなかったらもっと大騒ぎになるところだったんだし。二人のお陰で助かった」

 

「なんてことはありませんわ。子供は嫌いではありませんし……わたくしとしては、琴里さんの子供らしい姿を拝む事が出来なかったことが残念ですけれど」

 

「……なったとしても、あなたには絶対見せないわよ!!」

 

 動物の威嚇のように唸る琴里をあら、あら残念、と本当に残念そうに眉を下げる狂三。一体どこまでが本音なのやら、と思いながらも士道は彼女のその一歩手前の発言の方に気を取られていた。

 子供は嫌いではない。先程のように子供たちをあやす狂三の姿を軽く想像して………………………………――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「……シン?」

 

「え、あ、はい!! なんでしょう!! ちゃんと聞いてます!!」

 

「……まだ何も言っていないが」

 

「……ごめんなさい、なんでもないです」

 

 

 不思議そうに首を傾げる令音に顔を手で覆い隠しながら誤魔化す。危ない、軽くトリップしかけた気がする。まさか自分の妄想に意識を殺されかける日が来るとは……狂三、恐るべし。やはり心して戦わねばならない相手なのだと再確認した。

 

 そんな勝手に自爆して勝手に決意を新たにしている士道を後目に、琴里は狂三と会話を続けていた。

 

「それで、あなたは私がみんなみたいにならなかった理由、知ってるんじゃないの?」

 

「あら、あら。わたくし、琴里さんならご想像がつくと思っているのですが」

 

「……まぁね」

 

 想像できないわけがない。気を失っていたメンバーや霊力に耐性がある士道を除き、何故か琴里だけが難を逃れた理由。常にポケットに忍ばせているそれを、琴里は手に取りだした。

 

「美九の〝声〟だけじゃなく、〈贋造魔女(ハニエル)〉みたいなものまで防ぐなんて、とんでもない物を渡してくれたわね」

 

「そう驚く事ではありませんわ。分裂した力とはいえ、あの子の〝天使〟はこの程度のこと軽々とやってのけますわよ」

 

「みたいね……」

 

 白い〝お守り〟を手に、琴里は改めてこの驚異的な力に圧倒された。一度目は機械越しの〝声〟。しかし二度目は〝天使〟による直接の光だ。密度の違いは大きい。

 思い返すのは〈贋造魔女(ハニエル)〉の光に包まれようとしていた、あの一瞬のこと。天使の光は、まず間違いなく琴里も含めて標的としていた。それを防いだのは――――――否。

 

 

「……違うわ。防ぐなんて生易しいものじゃなかった」

 

「――――――あら」

 

 

 琴里の呟きに目を細め、クスリと微笑みをこぼす。そこに気づいたか、そう言うかのような微笑みだった。

 そう、防ぐと言うだけであれば霊力で防護しているのとなんら変わりはない。だが、琴里を光から守った力はそうではなかった。一瞬の光景を思い返し、思考する。光を遮断したのではない。アレは光を消し去っていた(・・・・・・・)

 

 

「――――――消滅。まさかあいつの〝天使〟って……!!」

 

「ええ、ええ。大正解ですわ。あの子の〝天使〟は降り掛かる災厄を消し去る(・・・・)――――――先日あの子が見せた力と、似ていますわね」

 

 

 先日の事件で白い少女が見せた圧倒的な力。令音でさえ解析不能と言っていたが、あの時彼女は似て非なる(・・・・・)、と言うべきかもしれないと語っていた。それが正しいのであれば、理屈はどうあれあの〝消滅〟の力と似通っていて、それでいて完全に同じではないというになる。

 あの力に関してはわからないが、少女の纏う〝天使〟についてはある程度形となって見えてくる。同時に、少女の神出鬼没さの説明にも繋がった。

 解析を通さない、気配を感じさせない違和感。いるのかすら怪しく感じる瞬間がある存在感。琴里に渡された〝お守り〟が天使と同質のものであるならば、琴里の考察を裏付ける結果となる。総評としては、少女が纏う〝天使〟はあらゆる空間的な攻撃、探知などを片っ端から(・・・・・)〝消滅〟させている、ということだ。

 

 ここまで理解して、そのとんでもなさと恐ろしさに琴里は頭を抱え込んだ。

 

「……何よそれ、反則じゃない。道理でこっちの解析を何から何まで弾くと思ったわ」

 

「ふふふっ。わたくしが気がついた時、内心で全く同じ事を考えましたわ。なんて、デタラメなのでしょうね」

 

「あなたにだけは言われたくないと思うけど」

 

「そのお言葉、そっくりそのままお返しいたしますわ」

 

 ……言葉で言い争う不毛さはともかくとして、精霊というのであれば結論としてどれもデタラメには違いがない。ただ、その中でも〝時間〟という絶対的な概念と並ぶほど概念の〝消滅〟という力は特化されすぎていると感じてしまう。

 

 何より、その力を人に譲渡出来る(・・・・・)となればデタラメを超えた何かであろう。

 

「やっと繋がったわ。あなたが士道と接触した時、こっちが精霊の力を感知出来なかった理由。こっちの感知を殺して……いえ、違うわね。霊波そのもの(・・・・・・)を〝殺した〟のね。だから、あの時のあなたはさも一般人のような反応を示した」

 

「……本当に、鋭いお方ですわね。まあ、そう不安な表情をなさらずとも、こちらに関しては制約がありますのでご心配なく。力の譲渡はわたくし、そして琴里さんだけの特権ですわ」

 

「私も……?」

 

「ええ、ええ。わたくしの予測が正しければ、ですけれど。けど良かったですわ。わたくし一人の予測では一抹の不安が残っていたのですが、琴里さんが同じ結論を出していただけると安心出来ますもの」

 

「……あなた、そのために私に話を振ったんじゃないでしょうね」

 

「うふふ。物のついでですわ」

 

 ついでということは、元からそういうつもりではあったということじゃないか。と、半目で睨むも狂三は涼しい顔でそれを受け流している。

 霧がかかったように見えていなかった白い少女の事が見えてきたと同時に、今の発言を聞くに重要視する狂三にさえ、殆ど自身のことは話していないということがわかる。

 まだわからない事は多いが、それらがわかっただけでも少し前進したかと口の中の飴を転がし……すっかり白い少女のことばかり話し込んでいて、本命の話が進行していないことにようやく気づいた。

 

「って、今は七罪のことを探らないといけないんだったわね。お陰で私には七罪の力が効かないって事もわかったし、対策を立てましょう――――――令音」

 

 琴里の声に令音、そして彼女と会話していた士道も声が聞こえる範囲まで合流する。あくまで、十香たちを起こさないような声量で会話を試みなければならないのだ。そんなめんどうな状況を解決するためには、やはり根本から原因を取り除くのが一番手っ取り早い。

 

「……ん。今シンにも説明したところだが、七罪は霊波の隠蔽を行いこちらの観測を逃れている。既に隣界に消失(ロスト)している可能性もあるが……」

 

「そちらに関しましては切って捨ててよろしいでしょう。執念深い性格をしていらっしゃるようですし、このまま引き下がるとは思えませんわ」

 

「引き下がるとは思えないって……これ以上、まだ何かあるのか? そもそも、七罪はどうしてこんなことしたんだ」

 

 理由がイマイチわからない。そう、士道の中で一番燻っているものはそれだ。士道に勝負をしかけた理由。勝負に負けた七罪が精霊たちを幼児化させた理由。狂三が言うように、引き下がるとは思えないという理由。どうにも、七罪にそこまでさせるだけの〝理由〟に思い至る事が出来なかった。

 うーん、と唸って考えるも、士道は七罪ではない。七罪の思考をトレースすることは不可能に近いため、納得のいく理由は出せそうになかった。

 

「そうですわねぇ……士道さんは七罪さんが抱える何かしらの〝秘密〟を見てしまった。話の流れとしてはこうですわ」

 

「……シンに思い当たる節がなく、その理由がわからない以上、本人に聞いてみるしかないだろうね」

 

「ええ、ええ。そちらに関してはわたくしも協力いたしますわ。わたくしが力を貸すからには、そう長くはお待たせいたしませんわ」

 

「助かるけど……いいのか?」

 

「特別ですわ。あの子を救ってもらった借りがありますので、そちらを早めにお返ししておこうかと思いましたの」

 

「とかなんとか言って、士道のこと放っておけなかっただけでしょ」

 

「な・に・か、仰いまして?」

 

「な・に・もー?」

 

「ははは……」

 

 さっきまで二人で何かを話していたかと思えばこれだと、仲が良いのやら悪いのやらわからない二人を見て苦笑した。ひとまず、七罪捜索に関しては狂三と令音に任せておけば問題ないようだ。

 

 

「あとは七罪さんがこのようなことをする理由ですが……近いと感じるのは〝秘密〟を見られた腹いせと嫌がらせ、でしょうか」

 

「嫌がらせ……これがか?」

 

「ええ、ええ。何故そう思うかと言うと――――――秘密を見られたからには生かしてはおけないと、わたくしならばそう思うからですわ」

 

『………………』

 

「……冗談ですわよ?」

 

 

 どこまでが冗談だったのか、士道でも見当がつかなかった。

 狂三の冗談は狂三が言うと冗談には聞こえない。本人は困った表情で微笑んでいるが、本当に冗談には聞こえないと思ったのが本日の成果だった。

 

 







愉快な分身体たちは今日も今日とて元気です。本体もなんか愉快な方向で元気です。狂三一人でやると本編時空じゃなくアンコール時空寄りになるからこうなる。懐かしの時子さんスタイルもご登場となりました。ちなみに筆者はポニテ好き。それはそれとして子育て狂三って謎の背徳感とロマンを感じる(殴)

令音が何やらだったり解説やら状況説明やらの回になりましたが、アンノウンが扱う天使のメリットが判明。そしてデメリットも間接的に繋がったと思います。まあこれだけか、と聞かれるとそうではないですね。また後々をお楽しみに。令音と狂三の仲が深まるのは良いことですね(笑顔)

次回は七罪追跡回。狂三参戦でショートカット込み込みだったりなんだり。後はとある分身体の出番があったり……?
感想、評価などなどお待ちしておりますー。次回をお楽しみに!!
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