「――――――七罪が目を覚ましたって!?」
無機質な扉を開けるなり、椅子に座る琴里へ向かって声を張り上げていた。
〈ラタトスク〉が所有する地下施設の一角。設計元が同じなだけはあり、風景としては〈フラクシナス〉艦橋と似た造りとなっており複数のモニターと様々な計器が設えられていた。
「ああ、早かったわね士道………………と、狂三」
くるりと椅子を回転させた琴里は士道…………と、彼と共に入ってきた狂三を見てなんとも言えない間を置いてその名前を呼んだ。表情もまた表現し難い。そんな琴里の様子に苦笑しながら狂三は声を発する。
「あら、あら。わたくしは歓迎されていらっしゃらないようですわね、悲しいですわ」
「いや……単純に、なんか違和感持たなくなってきただけよ。気にしないでちょうだい」
精霊を封印して保護するのが〈ラタトスク〉だと言うのに、封印をしていない精霊が組織の切り札である士道と行動を共にしていることに対して、そろそろ感覚が麻痺して違和感を感じなくなってしまっていた。司令官としてどうかとは思うのだが、極自然な流れで士道と一緒に部屋に入って来られてもなんでここにいるんだ、と全く思わなかった辺り時の流れというのは不思議なものだ。
「それより七罪はどこ……って、琴里、どうしたその顔」
「あー……ま、士道も気をつけなさい」
「は?」
琴里の顔に薄らと引かれた赤い線。まるで猫にでも引っかかれたような跡をポリポリと掻きながら、琴里は傷について深く語ることはなく士道をそのまま七罪がいる部屋へ送り込んだ。
部屋の様子は音声共々モニターで確認出来る。狂三の応急処置もあり、幸いにも命に別状はなかった七罪は〝天使〟を扱う事は出来なくとも会話は問題なく行える程度に回復している。事は、
「で――――――どこまでがあなたの読み通りだったのかしら」
琴里はチュッパチャプスを口に含みながら、直球に話を切り出した。モニター部屋には、必然的に狂三と二人っきりだ。誰かに邪魔をされる心配もないし、盗み聞きをされる事もない。
「さて、何のことでしょうか」
「とぼけなくていいわよ。
結果論、七罪は士道に救われた。しかし、そこまでの過程に〝あの〟狂三が介入していたとなれば話は違う。エレンが七罪を襲おうとしている、それを助けに行く選択肢を用意したのは他ならぬ狂三なのだ。
「こうやって七罪と話し合う機会を設けられたのが偶然とは思えないわ。七罪が殺されかけるところまで計算してたのか――――――」
「なーんて、
「……心外ですわ。わたくし、そこまで心がない女だと思われていたのですね。ちょっと傷つきましたわ」
戯けるように手をヒラヒラとさせる琴里を見て、狂三は真剣そうな表情を一変、本当に傷ついて拗ねたような表情で少し頬を膨らませる。
七罪が傷を負って、〝天使〟が使えなくなり強制的に話し合いのテーブルに着かせることが出来た。倫理的な考えなどを除けば、結果としては七罪攻略の糸口となった形だ。
冷静沈着、冷酷無慈悲。士道と出会う前の狂三を分かりやすくイメージするとそんな言葉の羅列が思い浮かぶ。イメージ通りの彼女であれば、この状況を完璧にコントロールして全て読み通りでしたわ、とか言い出しかねないと琴里は思ったのだ。無論、今の狂三がそのような事をするとは思えないので、単なるからかい半分だった。
「けど、DEMが七罪を狙ってること知ってなら、こうなることも本当に予想してたんじゃないの?」
「十香さんたちとどちらを狙うか、まではわかりませんでしたわ。結果として、十香さんたちは完全に狙いから逸れていた、それだけですわ」
エレンの口から語られた事が真実なのであれば、彼女に指示を出すアイザック・ウェストコットはどういうわけか十香たちを静観するような形を取っているらしい。だから彼女たちの代わりに、長期間こちらに留まっていた七罪がターゲットになったのだろう。はぐれた精霊で尚且つ能力上、油断を含めてエレンと相性が悪い七罪は格好の獲物だ。
DEMインダストリーが何をしてようとしているのか。深く掴めているわけではないが、精霊をむざむざと渡してやる義理はない。DEMと狂三たち、お互いが七罪を探し出し、流れとして七罪を救う事になったというだけに過ぎない。
「状況の複雑さから、七罪さんが傷を負う結果は防ぐ事は叶わないとは考えましたわ。しかし、わたくしとてそうなる事を望んだりは致しませんわ」
「わかってるわよ。こんなこと計算尽くでやるような冷酷女だったら、士道を好きになるわけないもの」
「……士道さん〝が〟、わたくしを好きになったのですわ」
「どっちにしろ同じじゃない……」
かなり違うし重要な事だ。少なくとも、狂三の中では。
ただまあ、人をそんな甘い精霊みたいに言われるのも心外だった。狂三は士道のようなお人好しになった覚えも、利にならない事を優先して行うような人物でもない。狂三の利になるから七罪を助ける〝選択肢〟を彼らに用意した、それだけだ。
「しかし、自分たちをあんな姿にした精霊を何一つ迷いなく助けようとするなんて、十香さん達にも本当に呆れてしまいますわ」
七罪が危険だ、と教えた瞬間、誰一人として助けに向かう士道を追うことに躊躇い一つ持たなかった。まあ、持つような者がいないことは知っていたし、持つようなら連れていくつもりだってなかったが。
自分たちに害をなした精霊を命懸けで救う。言葉にするだけならこんなにも楽だが、実践することは難しい上にどんな打算があっても他人には理解し難いだろう。人助けとは言うほど簡単ではないからこそ、それを迷わず行える善性に狂三は呆れと感服を覚えた。
「そんな士道たちに付き合うあなたも大概よ。安心しなさい」
「…………」
「何よ」
「いえ……ご兄妹ですわねぇ、と」
殆ど同じ事をサラリと言える辺り、共に育った影響というのは馬鹿にできないものなのだと思った。少なくとも、利になるからと言い訳するのも忘れてしまうくらいには驚きだ。
は? と目を丸くする琴里はともかくとして、モニターの中の士道と七罪の会話も着々と進んでいた。今は布団にくるまって目元だけ出した状態の七罪が、なぜ助けたのかと士道のお人好しぶりに暴れながら困惑しているところだった。
『なんで助けたか、なんて言われてもなぁ……誰かがあんな奴に襲われてたら、助けるしかないだろ』
『ふ……ふざけんなっ!! そんなわけないでしょうが!! 言いなさいよ!! 何が目的!? 一体どんな打算があれば、自分を困らせた犯人を助けるっていうのよ!!』
士道の場合、打算があるパターンの方が珍しいのだが七罪はそれを知る由もない。ちなみに、数少ない打算と呼べるパターンがあったのは狂三だというのだから、ある意味でタチが悪い。
それと、士道の表情を見て彼がこれから言わんとしていることが狂三には手に取るようにわかる。彼の人生……と、言うよりはこの半年間か。それは、
『……いや、まあなんだ。確かに結構な被害は受けたけど……精霊と話す時は、程度の差こそあれ似たようなもんだったからな。ほら、十香とか四糸乃とかいるだろ? もう知ってるかもしれないけど、あいつらもお前と同じ精霊なんだ。正直何度か死にかけてるんだぜ?』
『し、死に……?』
『ああ。問答無用でビーム撃たれたり、街ごと氷漬けにされそうになったり』
『は……はぁっ!?』
『好きな女の子が自分の命狙ってたり、その子を庇って危うく消し炭になりかけたこともあったなぁ』
『え……は、え!?』
「…………」
「…………」
話題の当事者二人が聞いているとわかっていてやっているのだろうか。お互いがどんな顔をしているか見てみたい気持ちはあったが、どちらも火傷しかねないのでグッと当事者たちは堪えた。
『あとは台風に襲われて吹き飛ばされそうになったり……ああ、最近で言うと街の人たちが全員洗脳されて一斉に襲って来た時は流石にヤバかったな』
布団の隙間からなんだコイツ、化け物か、みたいな目で見る七罪を苦笑いしながら士道は言葉を続けた。
『だから……なんというか、被害を受けた人がいる以上、気にするななんて言えねぇけどよ、十香たちはみんな、そういうのを反省して、乗り越えて今ああして暮らしてるんだ。だったら、お前にそれが出来ない道理はないだろ?』
――――――それを簡単に口に出してしまえる彼の善性は、ほとほととんでもない人に捕まってしまったのだと感じさせられる。きっと彼は、彼自身が救いたい人であれば誰であれ受け入れてしまう。大罪を犯し、今なお罪を重ね続ける狂三であっても、それは変わらない。
彼の言動に呆れ返ったのか、それとも少しは心を開いたのか。ほんの少しだけ言葉のトゲが抜けた七罪が声を発する。
『な、何よそれ。恰好いいこと言ったつもり?』
『や、別にそんなつもりは……それより、俺からも一つ、質問いいか?』
『…………………………何よ』
たっぷり五秒は使ったと思われる間を置いて七罪は返事をした。まあ、断られなかっただけマシなのだろう。士道はそこから話の
『お前が俺に化けたり、みんなを消したりした、そもそもの理由だよ。一体なんであんな事したんだ?』
『…………ッ!! そんなの、あの時あんたが私の秘密を見たからに決まってるじゃない……!!』
『秘密……って』
『わッ、私の……
『は……?』
「は?」
「あら」
涙目になって叫ぶ七罪には悪いと思ったが、飛び出した言葉の衝撃度はなかなかのもので、三者三様とは行かず似たような反応をする。一番慌てたのは、間近で彼女の発言を聞いた士道だ。
『ちょ、ちょっと待ってくれよ。なんでその姿を見られたのが動機になるんだ!?』
『なんで……ですって……? ふッ、ふざけるのも大概にしてよッ! そんなの見ればわかるじゃない!! こッ、こんなみすぼらしい姿を見られて……平然としていられるわけないでしょ!? それとも何? それを私の口から言わせることが目的だったわけ!?』
『いや、そういう事じゃ……』
『最初に私とあんたが会ったとき、結構いい雰囲気だったわよねえ? 私のこと、綺麗って言ってくれたわよねえ? でもそれはなぜ? 私があの、お姉さんの姿だったからでしょ!? もし私が最初から今の姿だったら、あんたあんな反応した? しなかったわよねえ? 緊張なんかするわけないわよねえ? 何なら、話しかけられてもスルーしてたかもしれないわよねえ!?』
『そ、そんなこと……』
『あぁぁりぃぃぃまぁぁぁすぅぅぅぅぅ!! 現に……こっちの人達は、〝私〟が〝私〟のままじゃ、誰も相手にしてくれなかったんだから……』
酷くヒステリックで感情のままに叫び散らかしていた七罪だったが、最後だけは言葉の調子が寂しげなものに変わった気がして士道は眉を顰めた。同じように気づいた琴里、そして狂三は顎に手を当て七罪の考えを総括し始める。
「なるほど。自己に対する嫌悪感、コンプレックスが自分の姿を変えていた原因と。変身した七罪さんの人格変化は理想の自分の形の投影、という事でしょうか」
「参ったわね……霊力の封印を行えば能力は使えなくなる。今の七罪がそれに耐えられるとは思えないわ」
「これはまた、厄介なお方が舞い込んで来ましたわね」
「………………」
現在進行形でまず間違いなく、そしてこれからも更新し続けるめちゃくちゃ厄介な精霊が言うことか? と思ったが精霊の機嫌をわざわざ損ねるのは美味くないので黙っておくことにした。意外と主に容赦のない〈アンノウン〉辺りなら、容赦なしに突っ込んだのだろうな、と思うことも忘れずに。
だが、狂三の言う厄介というのは間違っていない。封印のためには七罪が自分自身を受け入れ、肯定してやらねばならないが……。
『と、とにかく落ち着こう!! ほら、大きく深呼吸して……』
『ヴェァァァァァァァァァァァァッ!!』
『あ』
士道が容姿を褒めた言葉を全てネガティブに受け止めた七罪が、ガリッと非常に痛そうな音を立てて顔を引っ掻いた。ちょうど、狂三と声を揃わせた相方の琴里の顔を同じ感じに。
数分後、顔に妹とお揃いの引っ掻き傷を作った士道がモニター室に帰還した。
「…………」
「だから気をつけろって言ったじゃない」
「野良猫さんでも、あそこまで警戒心が強い子は見た覚えがありませんわね」
「あ、やっぱ猫、好きなんだな」
「……琴里さん、七罪さんの精神状態は?」
例え話で口を滑らせた狂三が即座に話題を戻す。そんな隠す事じゃない気がするけどなぁ、と微笑む士道と強引に無視して早く話を進めろと視線だけで急かす狂三に呆れた表情を浮かべ、琴里は七罪の精神状態に目を通した。と、言っても結果は言うまでもない。
「多少の上下はあったけど、到底封印出来る状態じゃないわね」
「だよなぁ――――――けど」
「? 如何なさいましたの」
「あ、いや……」
強烈な自己否定。低い自己評価。そんなフレーズが頭に浮かぶと、士道にはどうにも直近でそんな話をした記憶がある気がした――――――気がした、で済ませて良い軽い記憶ではない。なぜならそれは、狂三が密接に関わっている人物によるものなのだから。
言うべきか、言わざるべきか。腕を組んで迷った士道だったが、狂三に言えない秘密など彼女からすれば簡単に推測が出来ようものだと思い、意を決して口を開いた。
「……〈アンノウン〉が、七罪と同じようなことを言ってたから、それを思い出したんだ」
「――――――あの子が?」
目を細めた狂三にああ、と声を返すと彼女
口元に手を当て考えに耽った。やはり、このことは知らなかったということか。
程度の差は幾らかあれど、自己否定という点では〈アンノウン〉と七罪は共通している。が、完全に一致しているかと言われれば恐らくそうではないと思う。その差をはっきりさせれば、見えてくるものがある気がした。
「……そうですの。まあ、あの子はわたくしにそういったことは仰らないでしょうし、士道さんが知っているのは納得ですわ」
「狂三……」
「気になさらないでくださいまし。あの子とは、元よりそういう関係ですのよ」
狂三にはきっと話さない。少女が言った話せないことの中には、少女自身の事柄に関しても重々含まれている。そういった意味で、あの子の気持ちを
狂三と少女は主と従者、共犯者であって
お互いを大切に想っているのに、踏み込む事が出来ない関係性――――――〈ナイトメア〉と〈アンノウン〉である限り、真に相容れることはない。
「……変わって欲しい。そう、想っていても頑なですわね。それもまた、是非もありませんわ」
「俺は、きっと変わっていけると思う。狂三があいつのこと、大事だって想ってるなら尚更さ」
「ええ、ええ。そうであると願いますわ……いえ、そうであるように努力するのがわたくしの役割なのでしょうね」
エゴなのかもしれない。だとしても士道はこのまま〈アンノウン〉を放って置くことは出来ない。そして――――――狂三が同じように想ってくれている限り希望はある。
「――――――さて、それでは話題の当事者にお話を訊いて、七罪さん攻略のヒントをいただきましょう」
「へ?」
「琴里さん、ここでお電話を使わせていただかせてもよろしくて?」
「まあ、その程度なら問題ないわよ」
「では失礼して」
トン、と狂三が床を蹴った瞬間、蟠っていた〝影〟が面積を増した。増した、と言ってもいつもに比べれば僅かばかりのそこから、ポーンと何かが飛び出してきた。驚く士道と琴里を後目に、狂三は特に表情を変えることもなくその
「どこぞのたぬき型ロボットみたいね……」
「猫だろ、猫。…………猫の、狂三か」
士道は猫耳を付けた狂三を脳内に特殊召喚!!
『にゃあ』
ちょっと鼻血が出そうになったので急遽封印処理を施した。
「……やべぇな」
「士道。自分の妄想でダメージ受けるのは止めなさい」
「何をご想像になられましたの……あの子に繋げますわよ」
琴里の冷たい声と狂三の呆れながらも恥ずかしそうな声を聞きながら、士道はテーブルの上にスピーカーモードで置かれた端末に近づいた。話は士道さんにお任せ致しますわ、と狂三が言ってから間を置かず、電話は目的の人物に連絡を繋げてくれた。
『――――――もしもし。何か御用ですか、我が女王』
「ん。俺だ、士道だ」
『……五河士道?』
ふむ、と少し考えるような声が聞こえてきたが、すぐに狂三が近くにいると判断したのだろう。慌てた様子もなく〈アンノウン〉は後を続けた。
『そうですか。では改めまして……私に何か御用ですか、五河士道』
「実はお前に……えーっと、相談したいことがあるんだ」
『……相談? わざわざ私にですか?』
「ああ。お前じゃなきゃダメでな……頼めないか?」
『……人選を間違えてるとしか思えませんし、私より狂三や五河琴里に頼むべきとは思いますが……他ならぬあなたの頼みなら、お引き受けいたしましょう』
「助かるよ。実は――――――」
これまでの経緯、七罪のこと、彼女の考え……その辺りを長くなりすぎない程度に説明していく。そう長くない時間で粗方話し終えた――――――
『……はぁ? 私と〈ウィッチ〉が似てる? バカ言わないでくださいよ』
のだが、いつになく低く辛辣な口調で返答が返って来て士道は電話越しで戦いた。少女が見せる珍しい喜怒哀楽の〝怒〟に近いものに、驚くなという方が難しかったかもしれない。
「……すまん、怒らせたか」
『当たり前です。私と比べられたら〈ウィッチ〉に失礼でしょう』
「怒る方向はそっちなのね……」
ボソッと呟いた琴里の声に、重ねがけて当たり前ですと少女は少し不機嫌な口調で言葉を続けた。
『大体、こんなこと私に相談せずとも答えはあなた達の中で出ているとは思いますが……まあ、受けたからには、私なりにお答えします。私と〈ウィッチ〉は確かに素顔を偽っています。けど、あの子は
「それは……」
『わかるでしょう? 〈ウィッチ〉が己を偽った理由は本当の自分が認められなかったから。裏を返せば、それは
七罪は生粋のネガティブ思考だ。しかし、変化した大人の七罪はそうではない。彼女の理想の自分……人に憧れを抱かれる、人の注目を浴びる事が出来る理想の七罪。つまり、そのような事をするというの事は、彼女はどうであれ
『……ま、変身したところでそれは〈ウィッチ〉であって〈ウィッチ〉ではない。人……精霊の心っていうのは、そんな形では満たされない。でも、本当の自分は誰も見てくれない。
「
『自分自身に対する拒絶。偽らなければならない自分に対する絶望。肯定されたかった彼女自身、気づかない間に
それが、私なんかとは違うんですよ。そう少女は締め括った。
カラに閉じこもった七罪は、しかし必要ないと切り捨てるのではなく認めて欲しい……そんな誰しもが望んで当然の想いを持ったまま、認められる自分を
『私からの予測は以上です。ですが私がどれだけ推し量ったところで、本心は彼女の中にしかありません。後は、この手のプロにお任せいたします。私が何か言うまでもなく、それなりに攻略法は思い浮かんでいるんでしょう?』
「……ああ、助かった。後は俺たちなりにあいつと向き合ってみる」
その欲求があるなら、七罪がどれだけ否定しようと彼女が本心で望んでいるものがあるのなら、士道が思いついた妙案が一つ――――――彼女を本当の意味で〝変身〟させてやればいい。
「てか、話だけ聞いてそこまでわかるってことは、やっぱお前と七罪は似て――――――」
『以上です。我が女王の世話は任せましたよ』
ブツン。と、士道が話終わる前に無作法に通信は打ち切られた。世話かけてるのは俺の方だと思うけど……という士道の呟きも当然の如く届いてはいなかっただろう。
「言うつもりなかったんだけど……やっぱめんどくさいわね、あなた達」
「〈ラタトスク〉の司令官様のお言葉とは思えませんわね」
心からの本心だと簡単に察する事が出来て、一緒くたにされた狂三はとても否定しづらそうな表情をしていた……言葉で面倒だと言っても、兄妹揃って見捨てる気はないのでしょうね、と
ちょっとこの主人公病気が悪化してる…猫耳狂三、それは最凶の兵器。
これでも幾らか原作からカットしてあるんですけど七罪のネガティブ言い回しが天才すぎて本当しゅごいってなります。どこまで再現出来るか………………いや頑張りますけど難しいですねこれ!? 個人的な感想としてはアニメのこの場面七罪再現度高くて好きです。あぁぁぁぁりぃぃぃぃますぅぅぅぅぅ!!とか特に。
解説の通り〈アンノウン〉の思考と七罪の思考は似て非なるものです。だからアンノウンも同一視されると怒ります、七罪に失礼的な意味で。うわめんどくさ…。
次回は少し幕間的なお話になるかも。狂三の話と、そんな彼女と似ているようで違う復讐鬼のお話。
感想、評価、お気に入りなどなどお待ちしておりますー。次回をお楽しみに!!