デート・ア・ライブ 狂三リビルド   作:いかじゅん

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Gジ〇ネに魂を惹かれた人間は戻って来れなくなりそうです。1ミリも作業進んでませんたすけて




第九十四話『変革(ビルド)した世界』

「ん……」

 

 目が覚める。目を開く。小さく声を漏らして、士道はベッドの上で心身共に起床した。とはいえ、あまり寝起きが強い方でもないので寝返りを打とうと身体を捻る。

 

「……うん?」

 

 そこで止まる。片腕が、何かに引っ張られている。正確には、手のひらを強く握られている。はて、妹がイタズラでもしているのだろうかとノロノロと半身をベッドから離して……。

 

「………………………………は?」

 

 たっぷり、十秒。寝起きで低血圧な思考には、十秒付き合うだけでも相当な力を必要とした。別に十秒間高速化したわけではなく、十秒間鈍足化しているようなものだが。

 黒玉の髪。閉じられた瞼、揃えられた睫毛。高級な肖像画を思わせる、寝顔。ここまで言えば、もはや見間違えようはずもない。そもそも、士道が彼女を見間違えるはずがないのだが。

 

 時崎狂三が、眠っていた。士道のベッドにもたれ掛かるように突っ伏して、士道の手を離さないまま。これが〈ラタトスク〉製のギャルゲーだったなら、この眠り姫を相手に選択肢の三つは出てくるはずだが、これは士道が見ている現実。そうはいかない。

 

「……………………なんで?」

 

 仮に、一夜の過ちが起こったとかそういう事なら、士道のこの発言は男として最低最悪のものになるのだが、そういったことでは恐らくない。あったら、尚更狂三がベッドに突っ伏して寝ている理由に説明がつかない。

 というか、昨夜の記憶が抜け落ちている。それどころか、今日が何月何日何曜日なのかもわからない。記憶の曖昧さに首を捻り、空いた手を顎に当てながら考えていると。

 

「ん……」

 

 聞こえた声に肩を揺らす。どうにも、恐ろしいくらいに艶かしいというか、品がありながらオブラートに包んでも刺激的なそれは、今は酷く緊張感を煽るものだった。

 超高級な陶芸品をも超える美しい瞼が開かれていき、両の眼が覚める。宝石の紅と、刻む黄金。二つの瞳が起き上がり、士道と視界を共有した。

 

「あ……お、おはよう、狂三」

 

「……?」

 

 物凄くぎこちない機械のような動きで手を上げ、朝の挨拶をする。我ながら不自然すぎるとは思うが、この状況でこうならない方がありえないだろうと思う。

 狂三は、寝ぼけ眼でほんの少し小首を傾げ――――――亜音速もかくや、という速度で目を見開き、バッと手を大きく振り上げ、士道の頬一直線に振り下ろした。

 

「ちょ、ま――――――」

 

 すまんとか、ごめんとか、言う暇もない。狂三に手を上げられるほど、ド畜生なことをしてしまったのかと愕然としながら、士道は咄嗟に目を瞑って迫り来る張り手に覚悟を決めた。

 

「……?」

 

 が、いつまで経っても衝撃は襲ってこない。不思議に思い、恐る恐る目を開けたところで……狂三の手のひらが、優しく士道の頬に触れた。

 

 

「……生きて、る」

 

「――――――ぁ」

 

 

 その表情は、俯いていて見えない。しかし、壊れ物を触るような震える手つきと、震えた声に――――――士道はようやく、状況を正しく理解できた。

 身体に異常はない。そして、目の前には狂三がいる。士道は、もう五年前の時代にはいない。

 

「……帰って、来れたのか」

 

 この時代に、無事に、戻ってきた。あの必滅の光が士道を呑み込んで、その後どうなったのか……士道の他人事のような呟きに、狂三が顔を上げて睨みつけんばかりの視線で声を張り上げた。

 

「っ、士道さんッ!!」

 

「はい!?」

 

 普段が普段なので、その声量に驚きを隠せず返事とも呼べない返事で士道は姿勢を正す。それほどの勢いというか、あ、これは逆らえないという雰囲気があった。

 

 

「あれほど、あれほど……警告したではありませんの……っ。過去で何かあれば、どうなるかわからない……絶対に、……っ、偶然、こちらに引き戻されたから良かったものの……一歩、間違えていたら……」

 

「狂三……もしかして、泣いて……?」

 

「泣いてなどいませんわッ!!」

 

「はいすいません!!」

 

 

 余計な口を挟むと、今度こそ張り手が直撃しそうな勢いだった。

 やはり、あの瞬間に士道は五年前から戻されたのだ。あまりにドンピシャなタイミングに、本当に偶然なのかと疑いたくもなかったが、それを誰かに聞くことも出来ない。そんな事より、目の前の少女の方が余程大切だった。

 

 

「わかっていますわ、わかっていますわ。あなた様を送り出したのは、わたくし。あなた様に世界を変えて欲しいと願ったのも、わたくし。けれど、けれど、……!! お願い……っ!!」

 

 

 震えている。

 

 

「士道さんの命を、その全てを奪う権利を持つのは……世界で、時崎狂三だけなのですわ。だから、だから――――――わたくし以外の手で、死なないで」

 

 

 誰よりも気丈な、誰よりも優しい、誰よりも気高い狂三が、身体を震わせて訴えている。

 その矛盾を生み出したのは、士道だ。狂ってしまった愛を生み出したのは、士道だ――――――その愛を、愛おしいと思うのもまた、五河士道だ。

 

 

「……俺、こういうやつなんだ。むちゃくちゃ自分勝手で、好きな女の子に悲しい思いをさせる。きっと、これからも。けど……」

 

「っ……」

 

「約束するよ。もし俺が死ぬ時は、絶対に――――――お前の手で殺されるって」

 

 

 勝手な人間だ。助けたいから助けて、そのために心配してくれる女の子を泣かせて。保証もできない約束をして――――――狂った男は、好いた女の手を取るのだ。

 そうして、狂三は仕方なしに、笑った。

 

「……ああ、ああ。勝手な人。無鉄砲でお節介で、でも……」

 

「――――――そんな俺が好き、だろ?」

 

「ええ。喰べてしまいたいくらいに(・・・・・・・・・・・・)、ですわ」

 

 唇の端を上げ、お互いに笑みを返す。いつも通りの、変わり映えがないはずなのに、心から欲しくなるやり取り。

 そこまでのやり取りをして、士道はようやく一番初めに感じた疑問を口にした。

 

「……そう言えば、今日は何日なんだ?」

 

「十一月八日。あの(・・)折紙さんが街を破壊した、翌日ですわ」

 

「ッ!!」

 

 街を破壊した、までの時点で士道はカーテンを開けて窓を放つ――――――変わらない、街並み。

 破壊された街も、粉々に砕かれたビルも……殺された、人も。何もない。何もなくなった。あるのは、いつもと変わらぬ平和な光景。それを取り戻すために、士道は五年前へ飛んだ。つまり――――――

 

 

「世界を、変えられたんだな」

 

「……ええ。世界は、変えられる(・・・・・)のですわ」

 

 

 その一言に、果たしてどれだけの想いが込められていたのか。士道には及びも想像つかない、強い思いがあるのだろう。

 〝なかったこと〟にする。それが狂三の目的で、同時に士道が皆を救うために必要なものだった。その力になれたのは光栄だし、士道も皆を救えたのだと安堵で身体から力が抜けそうになる。

 恐らく、変わった世界で士道はいつも通りの生活をしているのだろう。だから、昨日の記憶がなかろうとベッドで眠っていた……のだ、が。

 

「……じゃあ、なんで狂三は俺の部屋で寝てたんだ?」

 

 単純な疑問である。世界を変えた結果が、破壊から変わった日常であるならば、狂三が寝ていることに尚更疑問を感じてしまう。しかも、狂三は以前の世界を覚えている(・・・・・)。士道と同じなら、この現象に解決はないように思えたが……。

 

「あ、いえ……それは……」

 

「それは?」

 

「安心、してしまって……」

 

「……安心?」

 

 繋がりが読めず、首を傾げて言葉をオウム返しする士道に、狂三は何かが恥ずかしいのか顔を赤く染め、目を伏せてぽつぽつと声を発した。

 

 

「……世界が変わったことは、知覚できたのですわ。ですが、士道さんの安否がわからず、移動中に最低限のことだけを把握してこの部屋に来て……そしたら、あなた様が平然と寝ていらっしゃるものですから、その……気が、抜けてしまいましたの」

 

「……つま、り」

 

「恥ずかしながら……」

 

 

 安心して、眠ってしまった、と。

 

 冷静に考えれば、当たり前の話ではある。狂三は精霊ではあるが、その思考や精神的な負担などは人間のそれと変わりない。無論、彼女の強靭な精神力は常人を遥かに凌駕するものだが、ここ数日間、狂三にかかっていた精神的な負担というものは相当であったはすだ。

 そんな中、帰ってきた士道の姿を見て、思わず傍で眠ってしまった。よく見れば、相当急いで駆けつけたのだろう。髪も乱れているし、服も少し着崩れが見られる。完璧淑女の狂三が、である。

 

 

「狂三」

 

「は、はい」

 

 

 士道を見て、安心を覚えた。そして、眠ってしまった。そう――――――警戒心の強い狂三が、士道の前でなら眠ってもいい(・・・・・・・・・・・・・)と思ってくれているのだ。

 肩を掴んで、顔を真っ赤にした狂三を正面から見る。それによって、トマトのように熟した赤が更に熱を帯びる。そんな狂三に言いたい言葉は、一つしかなかった。

 

 

「――――キスしていいか?」

 

「え、ぁ。は――――――ダメに決まっていますわ!?」

 

 

 そう思ってしまうのも、無理はないんじゃないかなぁ。五河。

 

 至極真面目な顔で、この可愛らしい淑女なお嬢様のキスが欲しいと思うのは、男として真っ当な欲望だと主張したい。

 

 

「おにーちゃん。朝だぞー起きろー――――――」

 

『……あ』

 

 

 ガチャン、ゴン。開け放たれたドアが、運動力を保持したまま、壁に激突する。士道たちの前には、白いリボンでフリーズした琴里。琴里の前には、乱れた服装で士道に両肩を掴まれている狂三(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

「待て、琴里。これは誤解――――――」

 

 

 でもないな。と思考した時には、神速で黒リボンに付け替えた琴里の跳躍と、丸見えになったパンツと、驚いた狂三の顔が士道の視界に捉えられた。

 

 

「――――――己の罪を数えろ性欲大魔神がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

 まあ、捉えられたからと言って、その高速平行跳躍直線キックを避けられるはずもないのだが。

 

 平和な朝に、家が揺れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「いてて……」

 

「どうしたシドー。どこか痛むのか?」

 

「ああいや、何でもない。ちょっと寝違えちまってな」

 

 まさか、朝から封印に関係もなく友人に手を出そうとして、妹に制裁を受けましたとは正直に言えるわけもなく。士道は教室の席に座った際に感じた身体の痛みを笑って誤魔化した。

 我ながら何とも正気を失っていたなぁ、と。少し遠い目にもなる。この〈灼爛殲鬼(カマエル)〉の再生が発動しない絶妙なダメージコントロールは、無事士道に理性という名の正気を取り戻させてくれた。成長したな、我が妹よ。何様のつもりなんだお前はという感想を抱きながら、左隣の席を見る。

 

 まだ、折紙は来ない。

 

「むう……」

 

「ん、どうかしたか、十香」

 

「ぬ……何となくなのだが、なんだか物足りないというか……不思議な感じがしてな」

 

「……物足りない?」

 

 難しげな表情を作る十香に首を捻る。一体、何が物足りないのだろうか。今朝渡した弁当の中身は、士道の記憶にない士道(・・・・・・・・・・)が約束したものとは違っていたが、満足気な笑顔を見せてくれていた。それに、なんだかそういった事ではないように思えたのだ。

 しかし、深く考え答えてやるより早く始業のチャイムが鳴り響いた。程なく担任のタマちゃん先生が教室に現れ生徒の出席を取り始める――――――折紙は、来ない。

 

 そうして。

 

 

「はい。殿町くんは出席、と……じゃあ次は、中原さーん?」

 

「――――――え?」

 

 

 男女混合の出席番号順。士道の友人、『殿町宏人』の次は『鳶一折紙』でなければならないはずだ。なのに、それが、ない。

 

 もう――――――気づいているのだろう?

 

 見て見ぬふりをして、士道は立ち上がった。

 

「あ、あの……」

 

「あれ、先生何か間違えましたかぁ?」

 

「先生――――――折紙は、どうしたんですか?」

 

 震える身体で、喉を震わせて、問いかける。士道の頭の中に、逃避(・・)としてあるのは、以前の世界のように折紙が転校したという知らせだ。それも、最悪ではあるが士道の思考に根付きながらも目を逸らしてきたものよりはマシだった。

 

 ああ、けれど。

 

 

「――――折紙……さん? それって(・・・・)一体どなたですか(・・・・・・・・)?」

 

 

 本当に、知らない。首を傾げて、士道の発言に心の底から(・・・・・)疑問を感じている。

 突然立ち上がり、誰も知らない名前(・・・・・・・・)を口にした士道に、クラスメイトたちは怪訝な反応を示している。誰一人、例外はない。

 

 誰も、鳶一折紙を、知らないのだ。

 

「……すみません、先生。俺の勘違いです。続けてください」

 

 身体から力が抜けて、それだけを言い残して士道は席に身を委ねた。

 

 ――――――気づいていた。世界を変える(・・・・・・)事の、その意味を。

 

 事象は線で繋がっている。因果は〝原因〟と〝結果〟で繋がっている。それをたった一人で(・・・・・・)、思いのままに全てを変えることなど出来ない。士道が成したことは、相応の結末をもたらした。その結果――――――士道と折紙の縁は、切られたというだけの話だ。

 当たり前だ。士道が生み出した縁は折紙の両親の生存。なら、元にあった士道と折紙が出逢っていた(・・・・・・・・・・・・)という事実までも〝なかったこと〟になっていなければならない。

 正しいのだろう。両親は助かり、折紙は精霊を憎むこともなく、どこかで平和に暮らしている。一体、なんの不都合がある。ハッピーエンドだ。これ以上を望んでは、神様とやらから痛いしっぺ返しを喰らってしまいかねない。

 

「……シドー?」

 

「ん……なんだ、十香」

 

「それは……どうしたのだ。やはり、どこか痛むのか……?」

 

「え……?」

 

 十香に心配を含んだ声で問われて、士道は初めて、自分が泣いている(・・・・・・・・)ことに気づいた。

 涙は、いつぶりだろうか。そうだ、彼女が――――――万由里が、記憶の中に消えてしまった時以来だ。

 あの時のように、受け止めてくれるあの子は傍にいない。袖で拭い、大丈夫だと十香に返事を返してやれば、眉を下げて心配そうな顔は変わらないが追求はされなかった。

 

 ……何が理由かは、わからない――――――わけではなかった。

 

 一つは、折紙のこと。折紙が幸せに暮らしているなら、それでいい。だが、彼女から預かったもの(・・・・・・・・・・)を、士道はまだ返せていない。一度でいい、それ(・・)を見てみたかったのかもしれない。

 

 もう一つは、簡単なことだ。頭のどこかで、折紙との縁が切れたことに気づいていた(・・・・・・)。その理由は、口に出すことさえ恐ろしかった〝可能性〟。

 ずっと、考えていた。それでいて、恐れていた。世界は、変えられる(・・・・・)。士道自らが実証してみせたそれは、狂三が望んでいた理論だ。

 

 だからもう、時崎狂三は止まらない。

 

 彼女はそれ(・・)を手にした時、必ず〝なかったこと〟にする。士道が頷けば、狂三が手に入れられるもの。士道の涙の意味にある、もう一つの感情は――――――恐怖(・・)

 

 

「……それでも、俺は……」

 

 

 狂三を救いたいと、願っている。同じくらい、狂三の願いが叶えば良いと、思っている。想いは矛盾しない。だが、答えは矛盾している。

 何を知り、何を〝なかったこと〟にしようとしているのか。わからないまま、士道は確信に近い考えを抱いていた。

 

 こんなにも呆気なく、折紙との繋がりは消えた。ならば、ああ、だとするなら――――――愛しい少女との繋がりまで、きっと消えてしまうのだろう(・・・・・・・・・・)

 

 それが酷く恐ろしくて。それが酷く悲しくて――――――それを知っていながら前へ進もうとする狂三が、酷く愛おしかった。

 

 

 

 然して、少年は真実へと歩みを進める。だが、答え(・・)は、果てなく遠いものだった。

 

 

 




距離は近づいているのに、答えからは遠ざかっている。さぁて、勝負の行方も少しつづ見えてきそうです。ナチュラルに二人の関係性が歪にぶっ壊れてきてる気がする。この主人公封印関係なしに要求し始めましたよ、今更ですけど。

Gジェ〇にどハマりし過ぎて全く作業できてませんHAHAHA。いや笑い事じゃねぇ。ストックマジで減ってきたら投稿3日に戻して何とかします…感想や評価をくださると私がG〇ェネから帰還する気がします(媚び売るんダム)
感想、評価、お気に入りなどなどお待ちしておりますー。次回をお楽しみに!!
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