ファイアーエムブレム 聖痕の覚醒   作:ヒアデス

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第20話 フェリア首脳会談

 アカネイア大陸で中心に近いフェリア王宮(旧オレルアン宮殿)。

 王宮の会議室の円卓には王宮の主である氷の王にしてフェリア王国統一王アイネ、砂の王ザンザ、草原の民代表ザガットに加えアカネイア王国王子カイル、ペレジア王国執政ジェルドといった大陸諸国の首脳と一軍に匹敵するアイク傭兵団の団長アイク、参謀セネリオそして外交上の規約について助言を行うためのオブザーバーとしてアカネイア臨時政府(ワーレン)の法律顧問マリアンヌが集まっていた。

 アイクは窮屈な貴族だったころを思い出すと言って参加を渋っていたが「会議の決定を知らなかったと言って勝手なことをされては困る」とマリアンヌに言われ、セネリオからも有事の際の策を練るのに都合がいいと言われセネリオも参加することを条件に会議に参席した。

 その席でカイルは、

「ここまでがガルダ跡で起こったことだ」

「……」

 カイルは会議が始まってすぐにガルダ跡の地層頂上で起きたことを皆に打ち明けた。

「確かに巨竜…そのギムレーが海の向こうヴァルム方面で目撃したという漁師の話は聞いている……だが他のことはにわかには信じられんな」

 アイネは開口一番に疑いの目を向けてくる。

「神と会話し聖痕の力を引き出すか……」

 ジェルドもアイネに同意のようだ。ザガットの顔も渋い。

「カーシャも一緒だったんだってな。カーシャも同じことを言うなら信じてもいい」

 その中でザンザはカイルに好意的なようだ。賛同する理由がカーシャでなければカイルも素直にザンザに感謝しただろう。

「ギムレーから落ちた時同様夢でも見ていたんじゃありませんの。まぐわっていれば二人とも同じ夢を見ることもあるかもしれませんわ」

 マリアンヌはカイルを疑うばかりかこともあろうに同衾の疑惑までかけてくる。

「な! い、いや夢じゃないし、カーシャとま、まぐわってなんかいない」

「では翌日になって二人とも寝不足で帰ってきたのはどういうことですの?」

「そ、それは……あまりのことに寝付けなかっただけだ」

 あの日の夜はカイルもカーシャもかなりの時間眠れなかった。

 カイルはナーガのことが頭に強く焼き付いていたためというのは事実だったが、下着姿のカーシャを思い出し興奮したためにすぐに眠ることが出来なかったのも事実だ。

 カーシャもナーガ以上に、欲情したカイルが夜這いを仕掛けてくるのではないかと思って警戒し、カイルより長く一人の夜を過ごした。

 だが決して体を重ねてなどいない。

「いや、これから大きな戦いになることだし英気を養うことは大切だ。王子たちを責めているわけじゃない」

 ジェルドはそう言うがカイルたちの貞操を信じてはくれない。何よりナーガのことを夢だと思ったままでいる。そんな中思わぬところから助け船が入った。

「信じてもいいと思います」

「俺もだ」

 セネリオとアイクだ。

「今の話を信じられるというのかね?」

 ザガットは案の定セネリオたちに水をむける。

「はい、カイルとカーシャの関係はともかく、ナーガあるいは精霊みたいなのが現れてカイルと話したことは」

 セネリオの後にアイクが続く。

「ナーガって奴は創造神としてアスタテューヌの名を出したそうだな。あれは俺たちの大陸で信仰されている世界を創造した女神だ」

「正確にはほとんどの人が信仰しているのは女神アスタルテと呼ばれている女神アスタテューヌの半身です。その人たちはアスタテューヌと言う名さえ知らない」

 そう説明するアイクとセネリオにマリアンヌは問いかけた。

「その女神アスタテューヌのことをカイル王子かカーシャさんに話したことは?」

「ないな。ギムレーやペレジアのことで手一杯で俺たちの昔話を話してる場合じゃなかった」

「僕とは僕の額の痣について話しただけですね。なんでも母君も額に痣……聖痕があったから興味を持ったとか、それ以外は何も」

 マリアンヌは更に問いかける。

「他の団員の皆様は?」

「ほとんどのテリウス人同様アスタテューヌの名前も知らないはずです。今の団員は一人だったころの女神の名前を知ったあの戦いの後に新天地を求めて加入したラグズですから」

「アイネ様、お二人は確かにフェリアに来ていましたの?」

 マリアンヌは質問をアイネに変えて聞いてくる。

「ああ、王宮に留まってはいないがフェリア市街の近くで訓練していたり、野盗を倒しに出ていたようだ。報告も上がっている」

 アイネの言葉にマリアンヌは顎に手を当て、

「それならばお二人の言葉は立派な証言になりますわね。この大陸でこのお二人しか知らないこととギムレーの居場所をカイル様とカーシャさんはあの地層の頂上で知ってしまった。お二人がフェリアで過ごしている頃に、それにアカネイアからでは大陸の西の目撃情報など入ってきませんわ。何より私たちは神の存在を否定する術を持たない。カイル様を信じてもよいかと」

 打って変わって擁護派に回るマリアンヌに各国の王はうなる。

「まだ信じられぬ思いだが……。ギムレーを追うためにヴァルム大陸を調べてみた方がいいというのは賛成だ。それにアカネイア大陸でファルシオンを直す方法は見つかっていない。ヴァルムの技術に期待してみるのも一手だ」

 最初にジェルドが賛意を示した。

「俺は最初からカーシャを信じると言っている」

「王子にギムレーを倒す力が宿っているか…過信するのは危険だがあの竜を倒す方法は見つからず、それにすがるしかない」

 次にザンザ、ザガットが賛成する。だが

「しかし、最後のギムレーを倒しても千年後に蘇るというのは信じたくないな」

 アイネの言葉に一同は口を閉ざし、しばらくして

「それだけは僕も間違いであってほしいと思っています」

 カイルはそう言った。だが続けて、

「ならばなおさらギムレーは今倒さなければいけません! ギムレーを倒した後僕らの子孫に奴は千年後に蘇るかもしれないと言い聞かせ、彼らが怠惰に堕落しないよう戒めましょう」

「そして千年後、ギムレーは復活せず無用な心配をさせたと我々は恨まれる。それが最高の結果だな」

 カイルの言葉にアイネはそう付け足し笑った。

「よし、ギムレーの情報とファルシオンを修復する術を求めてヴァルム大陸へ向かう! 皆異存はないな?」

 アイネの動議に全員がうなづき賛同した。

「それで皆様方、まさか今すぐヴァルムへ行くとおっしゃりませんわよね? 異国の軍が許可も取らずぞろぞろとヴァルムの地に足を踏み入れれば侵略だと思われますわよ」

 そこへ早速マリアンヌは各国の首脳をたしなめた。

「まずは使者を派遣して許可を取れと?」

 ジェルドはそう尋ね返す。

「ええ、時間はかかると思いますがヴァルムに点在する諸国全ての国に入国と調査の許可を取ってから調査団を送り込む以外に手はないかと」

「でもその間にギムレーが現れヴァルムを滅ぼすかアカネイア大陸に戻ってくるかもしれんぞ」

 マリアンヌの返答に対してザガットは懸念を抱く。

「ギムレーとラーズ教団の行動は読めません。可能性の範囲です。ですが無断で軍が大陸に侵入すれば確実にヴァルムすべての国と戦争になりますわよ」

 断言するマリアンヌに首脳たちは沈黙する。そこへ――

「俺たちはヴァルムの国に入国してはいけないのか?」

 アイクが進み出てきた。

「いえ、今話しているのは国同士の関係においてですから個人で国を行き来するなら自由ですわね。追放されない限りは……あなたまさか?」

「あんたたちが使者を送り込んで交渉している間に俺たち傭兵団でヴァルム大陸へ渡り、そこを見てくる」

「馬鹿をおっしゃい! あなたたちがアカネイアの手の人間でヴァルムを調べていたと知られたらどうしますの? あなたたちはアカネイアの密偵として追われ、アカネイア諸国は賠償を迫られるか戦争を起こす口実にされますわ!」

「俺たちはヴァルムが新天地になりうるか見て回るだけだ。そこで教団が非道を働けば止めに入る。アカネイアのためじゃない」

「屁理屈ですわ! あなたたちは一傭兵団で処理していい勢力じゃない。ギムレーに立ち向かうための主力ですのよ」

「ヴァルム軍に捕まったり教団に倒されるようではどのみちギムレーは倒せん」

「それもそうだな」

 二人の口論を制したのはアイネだった。

「法律顧問殿の言うことが正しいのだろうが時間をかけていられないのも確かだ。またあのブレスがこの大陸を襲えば今度こそ大陸は滅ぶぞ」

 アイネの言葉にさすがのマリアンヌも表情を落とす。

「こうしよう。我々は顧問殿の提言通りヴァルム各国に使者を出し入国及び調査を乞う。傭兵団は勝手にどこにでも行け。ヴァルムへ行こうがやめてフェリアで訓練に明け暮れてもいい。ただし傭兵団がヴァルム軍に捕まっても我々は一切関知しない。助けに行くのも禁ずる」

「ああ、それでかまわない」

「傭兵団はアカネイアのどの国とも関係ないと? そんな言い訳はヴァルムに通用しませんわよ」

「ではヴァルム諸国すべてではなく一国の許可を取るのならどうだろう?」

 彼らのやり取りに入り込んで発言したのはカイルだった。

「ほう?」

「その国へ送り込む使者を護衛するための部隊に傭兵団を組み込むのは問題ないはずだ」

「まあ……護衛なら文句を言われるはずはありませんわよね」

「その国の許可をもらえれば少数の軍なら調査隊として派遣できるはずだ。後は順次他の国からも許可を取っていけばいい」

「うまく許可をもらえればいいのですけど、取れなかった場合は?」

「その時は交渉を続ける。その間も調査隊は許可を得られた国を調査していけばいい」

「その方が送り込んだアイクたちを放任させておくよりましか」

「それで? どの国から許可を取るつもりだ?」

 アイネが結論付けるとザガットがそう聞いてきた。

「この大陸から近い国は二つだ。北西のドルマ王国、真西のイストリア王国このどちらかから入るしかないだろう。南西にはノーヴァ教国があるがあそこは島国で大陸から離れている。調査のために声はかけておくが他国への通行という点では他の二国を優先した方がいいだろう」

 ヴァルムと交易してきたグルニアの重鎮だったジェルドが答える。

「ではこの三国に使者を送ろう。傭兵団を入れるならドルマ、イストリアのどちらかか、アイクお前はどちらに行きたい?」

「イストリアがいいと思います。大陸の中心なら北と南どこから許可が取れても行くことができますから」

 アイネに聞かれたアイクにセネリオがそう助言する。

「ああ、俺もそう思っていた。イストリアに行かせてくれ」

 その助言にアイクはすぐにうなずきアイネに頼んだ。

「そうか。ジェルド、グルニアの後継国家のペレジアがこの大陸でもっともイストリアに顔がきくだろう。お前に使者を送ってもらう予定だがアイク傭兵団を加えてくれるか?」

「ユルゲン様に勝った蒼炎の勇者に加わってもらえるなら願ってもない話だ。断る理由はない」

「蒼炎の勇者? なぜあの異名をお前たちが知っている?」

 テリウスでそう呼ばれていたもののアカネイア大陸に渡ってからは封じていたはずの異名にアイクが反応する。

「ララベルさんの仕業ですね。事あるごとに蒼炎の勇者アイクの噂を立てて、ユルゲン皇子を倒した後にその噂が急速に広まったんでしょう」

「……」

 セネリオの推察に得心がいったのかアイクが不機嫌そうに黙り込む。そんなアイクに椅子から立ち上がったカイルが声をかけた。

「アイク、先にヴァルムへ行ってくれ。イストリアの許可が取れ次第僕もそこに行くつもりだ」

「お前は一国の王子だが簡単に行けるものなのか?」

「言っただろう。ファルシオンを受け継いだ僕にはギムレーを倒す役目がある。ギムレーがそこにいるなら遅かれ早かれ僕はヴァルム大陸へ行かねばならない。それならできるだけ早く向かって向こうに慣れておいた方がいい」

「わかった。待っているぞ」

 そう言ってからアイクとカイルは固く握手した。

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