ガチャ!
「ふぁ?」
扉が開く音で少女は目を覚ます。
「子供? ……こんな時間まで寝てたのか」
扉を開け入ってきたのは男だった。長い青髪を流した細身だが筋肉質な強そうな男。
「ふぁぁぁ!」
「悪い起こしちまったか。でももう昼だぞ」
男はあくびを出している少女の額に手を当てる。
「病気で寝てたわけでもなさそうだな……そろそろ起きないと生活の規則が崩れちまうぞ。さあ起きるんだ」
「何をしておる!」
赤い服を着た老人が慌てて部屋に来る。
「チキ! ……起こしてしまったのか」
「俺がファルシオンを使えるようにする儀式が終わるまでの間この神殿を探検してたんだ。まさかまだ寝てる子供がいると思わなくて」
「……この子のことはわしに任せておけ。それよりメディウスが解放軍にとどめを刺そうとしておるぞ」
老人の報告に男はうろたえる。
「なんだって! アルテミスは無事か?」
「今は大丈夫じゃ。じゃがもう時間がない。もうそなたがファルシオンを使えるようにしてあるが徒歩でアリティアに戻っても間に合わぬだろう。わしがワープで送ってやろう」
老人は男に剣を差し出し助力を申し出た。
「頼む……じゃあチビスケまたな」
『かのものをわがのぞむちに メガスワープ』
男は少女に手を振り、老人の詠唱で転送されていく。
老人は振り向き少女に近づく。
「……」
少女はぼおっと老人を見返す。、
『ながきときをねむるがいい メガススリープ』
少女はたちまち睡魔に襲われ眠りにつく。
眠る直前老人はつぶやいた。
「すまぬ」
「……ふぁ」
神殿の一室で少女チキは目を覚ます。
コンコン。
「失礼します」
そう言ってから世話係のシスターが入ってくる。
「巫女様、お目覚めのじか……あら? お目覚めだったのですね」
いつもは起こされない限り眠り続ける巫女の自発的な目覚めに赤毛のシスターは軽く驚く。口には出さなかったが顔には珍しいと書いてある。
「うん……ふぁ~」
眠気が取れていないのか無意識にあくびが出る。
「ではお顔をお洗いください。食事の準備はできていますので」
「うん。すぐやるー」
チキは洗い場に向かう。最初はシスターが顔を洗うなどのことまで補助しようとしたがチキの方から自分でやると言ったのだ。シスターも譲ろうとはしなかったが「自分が同じようなことをされそうになったらどう感じる?」とチキに言われて引き下がることにしたのだ。チキはふいに立ち止まりシスターに尋ねる。
「キット、今日出発するんだよね?」
「ええ、食事が終わって巫女様の準備がお済みになったらすぐに、アルバレア王宮には3日後に到着する予定です。……おやめになりますか?」
チキは首を横に振って否定した。
「じゃあ早く済ませないと、じゃあまたね」
「食事だけはゆっくり摂ってもらいますからね」
シスターの忠告を背にチキは部屋を出て洗い場に向かう。
すれ違う別のシスターや修道士のあいさつを受けそれに答えながら通路を歩いている途中、チキはさっきまで見ていた夢を思い出す。
(そうだ。バヌトゥのおじいちゃまに連れ出される前にガトー様以外の人と会ったことがあったっけ……髪の色がマルスのお兄ちゃんに似ていたから親戚の人かな? アリティアに来た時も会ったことないけど)
結局チキは洗い場に到着するまでにそれらしい人物の心当たりを思い出すことが出来なかった。
イストリア到着から2週間後。
ラーズ教団もギムレーも姿を見せず彼らの仕業らしい事件も起きず、調査や野盗退治などをこなしていくうちに時間だけが流れて行った。
そんな中、イストリアの西に位置するアルバレア王国から使者が来た。
アルバレアの王子と南のソンシン王国国王がカイルに会いたがっているとのことだ。それも……
アルバレア王宮(旧ソフィア王宮)
「キラキラして派手な部屋だな」
「あの…カイル様、本当に私たちがついてきていいんでしょうか?」
「相手方が連れてきてほしいと言ってるんだ。……ベルモットを」
会見までの時間、カイルたちは客室で待機していた。なおベルモットは前回のごろつきの件で人前で肌を見せるとあのような輩が迫ると学び、戦闘以外は外套を羽織っている。
「大丈夫かよ? 自国での行動を許可する代わりにタグエルを殺して見せろとか言われないだろうな?」
「そう言われたらさすがに断る」
ルッツの疑念にカイルは毅然と答える。
「だけどアルバレアの公爵にベルモットたちを助けてもらった以上礼を言わないといけない。公爵がラグズのことを知っていてベルモットをラグズだと思って助けてくれたのならいいけど……」
「カイル王子とお連れの皆様。お待たせしました。我が主とソンシン王の準備が整ってございます」
そう話してる間に侍従がカイルたちを呼びにやってきた。
「あっ、はい! 伺います」
「ではご案内します。こちらに」
そうしてカイルたちは侍従に案内され円卓の間に入る。
中には長めの金髪をサイドに結んだ男と長い黒髪で見たことがない形の白い鎧を着ている男とその後ろに青髪のスカーフを首元に巻いた男と変わった服装に外套で顔を隠した男が椅子に腰掛けてカイルたちを待っていた。
更にその奥には赤い装束を着た長い緑色の髪の少女が座っていた。その後ろにはシスターが立ったまま待機している。
「え? お兄ちゃん!」
少女はカイルを見るなり立ち上がりカイルの元に近寄ってきた。
「カイルお前。妹がいたのか?」
「そんなはずないわよ。いたら私が知らないはずないじゃない」
ルッツとカーシャがそんなことを言い合っているが少女は意に介さない。
「あ……あの?」
少女はカイルの顔をしばらく見つめると一歩下がる。
「あ、ごめんなさい。昔の知り合いと間違えたみたいです」
「い、いえお気になさらず」
謝る少女にシスターが近づいてくる。
「主が失礼いたしました。さあ巫女様、お席に」
「う、うん」
少女はシスターに背を押されて席に戻っていく。
その少女の耳はよく見ると普通の人間より長く尖っていた。
(あの耳……まさか、でもこの大陸にもいたのか?)
少女の正体について考え込むカイルに金髪の男が話しかけてきた。
「お初にお目にかかります。カイル王子、アルバレア王国の王子ユーリです。病床の父に代わりご挨拶させていただきます」
アルバレア王子ユーリが胸に手を当てながら頭を下げカイルに挨拶する。
「ソンシン王国の国王ということになっているリョウヤだ。王というより村長に近い。あまり堅苦しくしなくていいぞ」
白い鎧を着たソンシン王リョウヤが腕を組んだまま名乗る。
「アカネイア王国の王子カイルです。このたびはお招きいただきありがとうございます」
カイルもまた胸に手を当て頭を下げ挨拶する。アカネイアという言葉に少女は反応を示すが今度は何もしてこなかった。
「いえいえお越しいただいて感謝します。……巫女様、どうぞ」
ユーリに促され、チキが立ち上がる。
「初めまして、「神竜の巫女」チキです。今日えっと……カイル王子をここにお招きするようにユーリ王子にお願いしたのは私です。遠いところまで来てくださりありがとうございます」
シスターの耳打ちを受けながらチキが挨拶する。
「えっ巫女……殿がこの会談を?」
「ノーヴァ教国で巫女様のお世話をしています。シスターキットと申します」
チキに続いてシスターも自己紹介を終える。
「初めましてカイル王子、陛下から公爵としてヴィオール領を任せられています」
青髪のスカーフの男が頭を下げ挨拶する。
「あなたが……カーシャとベルモットを助けてくれてありがとうございます」
「いえいえ、貴族として当然のことをしたまでです」
カイルの礼をヴィオールは手を振って謙遜する。
「それと……」
ユーリがもう一人を紹介するべきか言いよどんでいると、
「僕のことよりベルモットという兎のタグエルを連れてきてくれたかい?」
「あ……ええと?」
向こうの外套の男に言われカイルはいまだベルモットを彼らの前に出していいか迷う。
「……いいよ。いざとなりゃ逃げればいいさ」
ベルモットは自ら進み出て外套を外す。
「タグエルのベルモットだ」
ベルモットが姿を見せるとユーリたちが若干驚く。
「え? ……えっ?」
チキは知らされていなかったらしくベルモットの耳とタグエルという言葉に戸惑う。
「……そうか、生き残っていたのか」
外套の男はそうつぶやくとすぐに外套を外した。
「あっ! ……」
ベルモット以外のカイルたちは思わず驚きの声をあげた。ベルモットは相手の正体に察しがついていたようだ。
男の耳は狐の形をしていた。髪と耳は薄茶色をしている。
「僕は「妖狐」のコイ。今はこの大陸の南西に住んでいる」
コイが言い終えるとヴィオールが進み出てくる。
「ユーリ王子がリョウヤ様と会見する時に私も王子のお付きとして同伴していたのですが、その時に勝手ながらカイル王子の来訪をご報告させていただきました。カーシャ殿たちと会った時のことも……申し訳ありません」
「いえ、異国から少数とはいえ軍が入り込んで来れば不審がるのは当然です」
「その際、ベルモット殿の事も話しましてね、あの時は兎耳を装飾品だと思っていたのですが、リョウヤ様はそのことをかなり気にされてましてね」
「その後王子とベルモットをソンシンに招待しようとしたんだが、巫女殿がユーリ王子にカイル王子と話があるから会合を開いてほしいと頼んできたそうでな。俺たちも参加させてもらうことにした」
ヴィオールの説明にリョウヤが補足を入れる。
「そうだったんですか」
チキが主催した会談になぜソンシン王と妖狐が居合わせたかについては得心がいった。
カーシャとルッツの紹介も済ませる。そこでチキがおそるおそる切り出した。
「カイル王子、あの……私は人ではありません。アカネイアから来た竜です」
「ええ?」
「何だと!」
カーシャたちだけでなくリョウヤたちからも驚きの声が上がる。ユーリとキットは肩をすくめて見守る。
カイルも薄々そんな予感はしていたが彼もどう見ても10代半ばにしか見えない少女が竜を名乗ることに驚きを隠せない。
「もう二千年は生きてます。起きていたのは千年位だけど…」
「……」
千年でも途方もない時間だ。一同は絶句する。
「カイル王子、ファルシオンが壊れちゃったんでしょう?」
「え……なぜそれを?」
話していないのになぜ知っている? カイルがそう思って聞き返すと。
「おかあ……ナーガが夢に現れてこう言ったの。ファルシオンが砕けてしまったから私の牙でファルシオンを修復できる工具を作れって」
ナーガが夢に。カイルが生死の境をさまよっている時と全く同じだった。
「牙? そんなもの巫女殿からどうやって……まさか」
思い当たるフシがあることに気付いたカイルにチキはうなずく。
「竜に変身した私の牙を切り出して工具にするの。ファルシオンの刃を加工できるぐらいの硬度を持つ物質は私の牙ぐらいだから」
「牙を……そんなことして巫女殿は大丈夫なんですか?」
心配するカイルにチキは手を振る。
「大丈夫、刃を加工するくらいちょっとの量で済むから」
「……」
変身したチキは相当大きくなるらしい。カイルたちは絶句する。ギムレーには負けるだろうが。
「ユーリ王子には工具が出来た後刃を加工できる鍛冶屋さんを探してほしいんだけど、できます?」
「ええ、それぐらいお安い御用です」
ワーレン同様、アルバレア王国にも腕に覚えのある鍛冶屋があるらしい。すでに候補を定めたのかユーリは快諾する。
「それでカイル、封印の盾は? マルスが持っていたはずだけど」
「それは……ファイアーエムブレムのことでしょうか?」
「ええ」
当然のことのようにチキは肯定する。
「客室の荷物袋の中にあります」
客室の方を向いてカイルは言った。
「そう、なくさないようにね。盾もそうだけど盾にはめてあるオーブが1つでもなくなったら封印の力がなくなっちゃう」
「封印?」
「うん。竜の祭壇っていうマケドニアの遺跡の地下に眠る地竜を封印しておくには封印の盾にはまるオーブ5つの力を維持しておかなくてはいけないの。盾というより台座と言った方がいいのかもしれない」
「台座……」
「それにギムレーっていう竜はナーガでも完全に滅ぼすことはできないから、ファルシオン同様ギムレーを封印するには盾がきっと必要になる。今度は絶対に壊されないで」
チキの念押しにカイルは強くうなずく。チキは話し終えたらしくしばらく場は静まり返った。
「……巫女の話は終わったようだな。俺たちの番とさせてもらおう。まず君たちはタグエルと行動を共にしているがどういう関係だ」
「……仲間です。竜と教団を倒すために彼女に協力してもらっています」
鋭い眼をむけるリョウヤにカイルは毅然とした態度で答える。
「この人の言ってることは本当かベルモット?」
カイルとリョウヤを横にコイはベルモットに聞く。
「本当だ。私が縄もつけられずにこいつらに服従させられるタマに見えるか?」
コイは肩をすくめて否定して見せた。なおもリョウヤはカイルの目を見続ける。
「本当だと誓えるか?」
「はい!」
カイルはきっぱり答え、カーシャとルッツもうなずきを返す。
「そうか。ベルモットの他にもタグエルはいるのか?」
「ああ。人間に見つかって隷属させられていたけどカイルに助けてもらった」
リョウヤの問いにベルモットが答える。
「そうか、礼を言うカイル王子。妖狐と共存する俺たちにとってもタグエルの生き残りがいたのは喜ばしいことだ」
「いえ、僕は母や友人に言われた竜も獣に近い種族も人間と変わらないということをラグズやタグエルを知らない人たちに教えただけです」
チキは感心しリョウヤはラグズという名称に一瞬怪訝に思ったが、別の種族のことかもしれないと思い口に出さなかった。
「これからはコイたち妖狐とも接していくことになるかもしれない。なら話しておいた方がいいかもしれないな」
「……?」
「俺たちと妖狐の先祖は1600年前まで東の大陸で暮らしていた。白夜王国という国を建ててな」
「ええ!」
予想外の事実にカーシャたちは驚く。チキも驚きカーシャたちと一緒に声をあげた。カイルも声をあげないようこらえていたが衝撃は隠しきれない。
1600年前に点在していた都市国家は不毛な争いを繰り返し、そこにアドラ1世が現れ神から賜った三種の神器とファイアーエムブレムをもってそれらの威光を用いて彼らを仲裁し王とあがめられアカネイア聖王国を建国したと言われているからだ。まさか大陸を渡ってまでアカネイアを拒む国があったとは。
「なぜ……わざわざ海を渡ってこの大陸に?」
カイルの疑問にリョウヤはうなずき語り始める。
はるか昔、現在アカネイアと呼ばれている大陸の北東の地域では白夜王国と暗夜王国。そして二国の周辺にいくつか小国が存在した。
暗夜王国はその国の言葉や名称が理解できなかった頃の白夜が自分たちの国と対比して付けた俗称で正式な国名はもう歴史に残っていない。
二国は覇権をめぐり闘い、和解し束の間の平和を享受したが、いつしか神祖竜の血と神器が弱体化し衰退していった。
そんな時に現れたのがアドラという盗賊だった。彼は莫大な富といずこから手に入れたかつての神器に劣らぬ三種の武器、そして黒いオーブを持って軍隊のごとき盗賊団を率い、多くの国を滅ぼしていった。
アドラは残虐で滅ぼした国では虐殺、略奪の限りを尽くし暗夜も滅び、風・炎・氷の部族は文化を失い過酷な環境にもかかわらず最北部へ逃げて行った。
他の国やアドラたちと風習や文化の違う白夜は民族浄化の憂き目にあう危険が大きい。もし生き残っても動物並みの扱いを受けるだろう。そこで彼らは意を決して砂漠を渡り、海を越え西の大陸へ流れ着いた。
だがその地では大地母神ミラを崇拝するソフィア王国、戦神ドーマを奉じるリゲル帝国に二分され、神祖竜と仏を信仰する白夜の民は異端で迫害を受ける可能性が高くこれ以上海を渡る余力もない。彼らは西の大陸の山々とうっそうとした森林に囲まれた土地に隠れ里を築きひっそりと暮らしてきた。
だがルドルフ皇帝がミラを、アルムがドーマを封印して宗教面の迫害の心配が薄れ、解放戦争に白夜人の末裔が参戦し、バレンシア王国と無関係ではいられなくなった。
また過酷な山々で暮らす生活にも限界があり白夜人は森を切り開き小さな村を作り徐々に外と交流を持つようにした。
だがアルムが崩御した後世継ぎが突如国名を変えバレンシア教を軽視したことで多くの離反者が出てくるようになり、数世代後には国は割れ、隠れ里と近くにある村ラムはどこの国からも切り離された地となった。
どこにも属さないラムは山賊などに狙われた。そんな村を襲う山賊を白夜人が撃退し、村を守る代わりに自分たちを受け入れてほしいと持ち掛けた。その後白夜人とラムの村民は国を建てることになった。それが今のソンシン王国である。
「……」
リョウヤからこれまでの話を聞いたカイルたちは開いた口がふさがらなかった。
「すげえ壮大な話だったな」
ルッツは軽く言うものの表情は引きつっている。
だがカイルはソンシン建国までの歴史以上に信じられないことがあった。
「アカネイアの始祖が……盗賊? そんな……馬鹿な」
信じられない思いでつぶやくカイルにアドラのことを祖先からの記録でしか知らないリョウヤもかける言葉がない。だが――
「うん。本当の事だよ」
断言したのはチキの方だった。
「ガトー様……私と同じ竜から封印の盾に関することは聞いた。ラーマン神殿から盾を盗み、オーブだけは抜き取って売り払い、王様になった後ファイアーエムブレムと名付けて紋章にしたって」
「……」
「売り払ったって……その盗賊は黒いオーブを持っていたと聞くぞ。あれはいったい?」
カイルたちが閉口する中リョウヤは尋ねる。
「闇のオーブだね。それだけは手元に置いておいたんだって。相手の精神を支配して動けなくすることができるから、そして持ち主の悪い感情を増幅して悪人にしてしまうという。おじさ……ハーディンでもとんでもない暴君になるくらいだから盗賊になってたアドラって人は相当オーブに侵されたんだと思う」
「黒い……闇の……あれが?」
カイルはファイアーエムブレムにはめられたオーブを思い出す。
その中の黒いオーブには決して直に触れてはいけないと父からも夢に出てきたナーガからも言いつけられてきた。
回収したりエムブレムにはめたりする際どうしても触れなければならないときは布などを介して直接触れないようにしろとも。
「確かにアドラには誰にも攻撃が出来なかったと聞く。まるで動けなくなったように」
「ガトー様が闇のオーブをアドラが持ってることに気付いて、彼を倒してオーブを取り戻したのは建国から何十年も後、もうお世継ぎも成人して彼なしでも国を維持できたからこれ以上は干渉しなかったんだって」
「……」
「竜の牙で工具を作るだの、一番最初の王様は盗賊だのとんでもねえ話ばかり出て来たな」
ルッツの言葉にこの場にいる皆は口には出さないものの同意した。そこへ
ガチャ
「お、王子、た、大変です!」
「何事だ。会議中だぞ」
突然駆け込んだ兵士をヴィオールは叱りつける。
「し、城を死体が、骨が、」
ユーリたちは混乱している兵士の世迷いごとだと思ったようだがカイルたちには心当たりがあった。
「屍はどこから!」
「わ、わからない。突然城中に」
「僕たちは屍を倒してきます。ユーリ様たちはここに」
兵士から状況を聞き出したカイルはユーリにそう指示するが、
「待て王子! 俺も行こう。祖先に比べて弱くなったらしいが俺は神祖竜の末裔である前に武人だ。ここで隠れてなどいられない」
「僕も行くよ。妖狐の力を人間に見せつけてやる」
リョウヤとコイも戦う気だ。
「わかりました。ユーリ様とヴィオール公爵は巫女殿を守ってください」
「いいでしょう」「お任せを」
チキをユーリたちに任せ、カイルたちとリョウヤたちは城の中に入り込んだ屍と黒幕を倒しに向かっていった。
リョウヤ クラス:剣聖
「if」のリョウマの子孫。ソンシン王国国王。最近ラムを白夜の里と統合しソンシン王国の王となった。隠れ里の長の息子として育ったため王というより武人だという意識の方が強い。
コイ クラス:九尾の狐
「if」のニシキの子孫。ソンシンに住む妖狐の長。
ユーリ クラス:ゴールドナイト
アルバレア王国の王子。数年前まで猛将で名をはせたが今では武術から離れているため武を重視するヴァルム帝国では昼行燈と言われている。皇帝ファルスはそう呼ばないらしいが。
キット クラス:聖女
「覚醒」のセルジュの先祖。チェルシーの娘。ノーヴァ教国のシスターでチキの付き人