ファイアーエムブレム 聖痕の覚醒   作:ヒアデス

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冒頭で剣の鍛冶の工程について書いてありますが日本刀の鍛錬を参考にしたものでそれすらあっているか自信がありません。ですのであまり真に受けないでください。


第25話 最後通牒

 アルバレア宮殿での戦いから1週間後。

 チキの牙から工具を作りファルシオンの修復が終わるまでの間、カイルたちの部隊もチキとキットもアルバレア宮殿に留まっているが修復はなかなかはかどっていないそうだ。何しろ硬すぎて普通の鍛冶で用いる槌を受け付けないファルシオンの修復にはチキの牙が用いられ、その牙もファルシオン同様加工が不可能で槌などに変えることが出来ず牙を熱した剣の破片に叩きつける方法をとるしかなかった。ナーガはどうやって牙を剣の形にしたんだろう?

 なお 捕縛したティベリウスは厳しく尋問――拷問も含む――したが彼からはラーズ神への信仰心から教皇についてきただけで、彼に呼び出されてからこの宮殿でカーシャに捕らえられるまで一切の記憶がないとの事だった。

 そんな中ヴァルム帝国――アルバレア家は帝国と認めずヴァルムとしか呼んでいない――からある書状が届きカイルたちが招集された。

「ヴァルムからの書状ですか」

「ええ、この要求を飲めば戦争はしないという最後通牒ですね。ヴァルム大陸すべてが帝国の固有の領土であり勝手に王を称する者はこれを認め皇帝に臣従しろと、まあバレンシア王国の始祖アルムを勝手に初代皇帝に祭り上げるヴァルムの歴史観を我が家が受け入れられるはずがないのですが」

「アルバレア王家はアルム1世と王妃アンテーゼの第2王子を高祖に持つ家系です。第2王子殿下は大陸と王国の名をヴァルムに改称する兄君にご不満を持ち、諸侯としてソフィアの旧王宮周囲を統治しながら反抗の時を窺いアルバレア王国の礎を築いたのです。その末であるアルバレア王家が自称皇帝に尾を振るなど考えられません」

 ユーリの説明をヴィオールが補足する。

「なるほど、だから建国以来第1王子が建国したヴァルムとは険悪だったんですね」

 カイルの言葉にヴィオールとユーリはうなずく。だが話には続きがあるらしい。

「それもありますが和解が不可能だと言われるくらい悪化したのは数年前からですね」

「え?」

 ヴィオールの話に首をかしげるカイルにユーリはわけを話す。

「数年前にヴァルムの侵略を受け、戦の末期に私がヴァルムの先王を討ち取ったのですよ」

「ええ?」

 仰天するカイルにユーリは誇らしく胸を張るが、

「その後休戦となり戦後処理の為に父とファルス王子で会談を行ったのですが、その時に向こうの歴史認識の誤りを指摘して差し上げようとしたら王子と口論になってしまったそうで、それ以来向こうからは睨まれっぱなしです。父も後悔していましたよ」

 父がしたこととはいえヴァルムと外交関係が悪化したのはさすがにまずいと思っていたのか一転してうなだれる。

「まあ、ファルス殿から見れば父の仇ですからね。父君との会談の件がなくても同じようなことになった気がしますし、国を守るため最善を尽くされたかと」

 カイルの助け舟にユーリは首を振る。

「いいえ、ファルスは私が父を殺したことに関しては恨んでいないと思いますよ。父は弱いから死んだ。あの小童ならそう考えそうです」

「……ファルス殿はそこまで力に固執する方なのですか?」

 これ以上は慰めようがないと判断しカイルは話題を変えた。

「はい。彼は建国者同様聖王アルムを崇敬していますから、彼にとっては大陸再統一も支配欲を満たすためではなくアルムと同じ偉業を成すことでかの王を超えるためのものでしょう」

「聖王か……」「聖王ね……」

 古の王アルムの二つ名である聖王という単語が出た途端カイルとカーシャがおもわずつぶやく。

「何か?」

「「いいえ何でも!」」

 怪訝に思ったユーリの問いかけを二人は何でもないと手を振る。

 カイルは聖王と呼ばれた人物の話を何度も聞かされた。ただしアルムの事ではなくユグドラル大陸の英雄セリスの事だが。もちろん話したのは彼の母ユリナだ。

 またカイルだけではなくカーシャも一度ユリナからセリスの話を聞いたことがある。

 訓練が終わった後同期の見習い兵とともに訓練場の近くを通りがかったユリナからお茶会に誘われた時にカーシャを始め兵士たちはセリスの話を聞かされた。

 何度も聞かされたカイルと違って、カーシャたちがユグドラルやセリスの話を聞いたのはこの1回だけなのだが。

「ゴホン! 失礼しました。通牒の内容は諸国すべての王への要望にみえるのですがファルス殿は同じ内容の書状をアルバレア以外の国にも?」

 カイルは咳ばらいをし、ユーリに話の続きを促す。

「送っているとみていいでしょう。ヴァルム軍はヴァルム以外に存在する4国を相手にできるほどの軍を整備したという情報が届いています」

「マジかよ……」

 呆然とつぶやくルッツに頷いた後ユーリはカイルに聞く。

「ところでカイル殿、このバレンシア大陸にある国の分布図は把握していますか?」

「あっ、はい! 大陸の中西部のここアルバレア王国、中東部のイストリア王国、南西のソンシン王国、北東のドルマ王国そして北西のヴァルムてい……ヴァルムですよね」

「それと大陸から離れた南東のノーヴァ教国ですね」

 カイルが挙げた国に加えノーヴァの人間であるキットが付け足す。カイルとキットの答えはあっておりユーリはうなずく。

「ええ、ただ大陸から離れているうえに自衛用の騎士修道会しか持たないノーヴァは外していいでしょう。先ほども言ったようにファルスの目的は略奪ではなくアルムを超える名誉です。司祭たちを虐殺しても名誉にはならない」

「それに我がノーヴァは第1王子様と決別し王宮を離れたアンテーゼ様の終の棲家でもあります。ファルス様にアンテーゼ様への敬愛があるならばそこを害するようなことはしない……と思いたいですね」

 ノーヴァは侵略対象から外すだろうというユーリの推測にキットは同意する。

「カイル殿、ヴァルムは4国と戦えるだけの力を持っています。ではヴァルムはこのまま他の4国と一気に戦おうとすると思いますか?」

「思いません」

 カイルは即答する。ユーリもうなずく。

「ええ、兵を鍛えてから戦に臨む。歴代ヴァルムにも同じようなことを考える王はいたはず、ですが大陸はバラバラです。そもそも複数の国と戦うほど難しい戦争もありません。国にはそれぞれ資源や地形、国力に応じた戦術、戦略があり、それらと同時に戦うということは複数の戦略に対応しなければならないということ……それも戦況が刻一刻と変化する中でです」

「……」

「ならばファルスの代になって以前の王にはできないことができるようになった。……例えばドルマと取引し同盟を結ぶことに成功したとか」

「……でしょうね」

「南西のソンシンの規模は小国…というより国とは名ばかりの村ですが、しかしソンシン独自の兵種と妖狐はヴァルムにとっても厄介なはずです。ビャクヤという国だったころより弱体化しているらしいとはいえリョウヤ殿も凄腕の剣士です。……ただヴァルムから遠い上、山や森に囲まれて行き来が困難です。通牒と布告が送付されるのもかなり後になるでしょう。ソンシンとヴァルムが戦うのはずっと後です」

 カイルは黙ってユーリの説明を聞く。

「つまり本当にドルマがヴァルムに抱きこまれていたら2国対2国の構図がしばらく続くということです。いやファルスはソンシンが参戦する前にアルバレアとイストリアを降伏させるつもりでしょう。そうなれば村1つのソンシンは戦う手間も取らずに併合できます。リョウヤ殿も無意味な犠牲を生むより降伏を選ぶでしょう」

「ドルマ王はヴァルムに投降するような方なのですか?」

「先にドルマ王国について説明しましょう。ドルマはドーマ教の総本山だった地にバレンシア教ミラ派という身分を得たミラ教徒が入り込み、対立の末に最高司祭の仲介でミラ派の身分が確立されミラ神殿が建設されました。その神殿を中心に作られた国がドルマ王国です。……国名に関してはドーマ派に配慮したんでしょうね」

「! …………」

「ユーリ様! ミラ派を侵略者のように言わないでください。我々の先達は生贄の儀を行っていたドーマ教に支配されていた人々を助けるために北東の地へ赴いたのです」

 ユーリの説明にキットがかみつきチキが彼女をなだめた。そんな彼らを横にカイルは何かを察した。

「これは失礼。……ゴホン! そのような経緯からドルマの王も民同様熱心な信者でしてね。ファルスは神々を軽視していますが否定してはいません。信心深い民の生活を守り皇帝の臣下という形でなら王の地位も保証する。こう言われたら滅ぼされるのを防ぐためにヴァルムと手を結ぶのも無理はないと思います……カイル殿?」

 ユーリが推察を話しても上の空でしばらく押し黙るカイルにユーリは訝しがりながらカイルの反応をうかがった。

「…………あっ! 申し訳ありません。つい考えにふけって」

 カイルは我に返り慌てて謝罪する。

「いえ、よいのです。貴殿にとってもこの大陸の状況は切実な問題でしょうから。ところでカイル殿、アカネイア諸国の動きはどうなっています? 戦争の気配を察してどちらかに与しようとしているとか」

「申し訳ありません。私はイストリアの調査許可を得てすぐに大陸を渡ってきたので、アカネイアは戦争に参加するどころではないでしょうけど、フェリアとペレジアがどう動くかまでは」

 ユーリの問いにカイルは肩をすくめる。ユーリは3つ数えるほどの間をあけてカイルに切り出す。

「そうですか。……カイル王子、一つお願いがあります」

「何でしょう?」

「私はヴァルム帝国とアルバレア王国との戦争を中止させるために皇帝と会談を行おうと思っています。そこで、あなたにはアカネイア王国の国王代理として仲介に立っていただきたい」

 ユーリはカイルに仲介を頼んだ。ヴァルムに対して認めていなかった帝国という国号と皇帝という称号を用い、いざとなればファルスを皇帝だと認める覚悟を示してまで、

だからと言ってアルムを聖王として崇めるアルバレア家が皇帝を自称するファルスに臣下の礼を取ることはできないだろうし、できたとしても長年衝突してきたファルスがこれを素直に信じるとは思えないが。

「……私でお役に立てるでしょうか?」

 ユーリはゆっくりうなずく。

「先ほども言ったように現在ヴァルム側と反ヴァルム側はソンシンが参戦するまでヴァルム優勢の2対2です。ですがアカネイア大陸の国が加わればこの状況は大きく覆ります。もちろん大陸を隔てている以上そう簡単にはいかないでしょうが可能性がないわけではない。アカネイアの王子が戦争をやめてくれとファルスに訴えれば彼も無視はできません」

「……」

「戦争が起これば調査どころではなくなる。ですが戦争を止めればヴァルムやドルマを調査できるようになる可能性も生まれる。……どうでしょう? あなたの大陸を救うためにもなると思うのですが」

「……」

 カイルはしばらく考える。もし仲介に失敗すればヴァルム大陸の戦争にアカネイア諸国を巻き込む恐れもある。だが今まで教団がイストリアやアルバレアで見つからず、ユーリが襲撃直後に報告した通り教団が皇帝に接触したなら教団はヴァルム帝国とドルマ王国のどちらかに潜んでいる可能性が極めて高い。

 今のままではこの2国を調べることはできないが、だからと言って戦争が終わるまで待っては彼らを取り逃がすだろう。

 それだけならまだしも各国の疲弊に乗じてアカネイア大陸のようにヴァルム大陸をも滅ぼそうとする危険も大きい。

 カイルは考えに考え抜いて告げた。

「ユーリ王子このお話…………謹んでお受けいたします」

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