ファイアーエムブレム 聖痕の覚醒   作:ヒアデス

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 某ゲームの開戦シーンを真似したくて各国の兵の数を設定していますが本編にはおそらく反映されません。
 兵の数の決め方はヴァルム大陸の人口を1000万人と仮定して(紋章の謎時代のアカネイア大陸の人口の10倍)それをソンシン・ノーヴァ以外の4国で割って各国250万人ずつ。そしてヴァルム帝国の軍人の数を人口の30%、それ以外の国の軍人が各国人口の15%であとはそちらから適度に割り振っています。またアカネイア大陸の監視に割いてる艦隊千人は端数として切り捨ててください。


第28話 第一次ヴァルム大戦 開戦

 開戦日 ドルマ王宮玉座の間。

「そなたの提言通りの布陣を整ったそうだ」

「感謝いたします。ザイン陛下」

 高齢のドルマ王ザインの言伝に紫髪の醜い容姿の男が感謝の言葉を述べる。男はひざまずいているように見えるが膝が汚れるのを気にして膝を少し上げるという器用な真似をしている。

 そんな男の姿勢にザインは顔をわずかにしかめる。もういっそ立っていろと言ってやりたいがそれ以上に彼を不快にさせたのは――

「皇帝陛下もザイン様に感謝しておりますわ。戦勝の暁にはぜひ皇宮までお越しくださいな。精一杯おもてなしいたします」

 男の女言葉じみた話し方だった。彼は精神が女性というわけではなく同性愛者でもない。

 ヴァルムの名門貴族に生まれ女教師から丁寧な言葉を学ぶうちにいつの間にか女言葉に寄った話し方を覚えてしまった、肉体的にも精神的にもれっきとした男である。祖国には妻と子もいる。せめて容姿が整っていれば普通に付き合える者もいるのかもしれないが、あいにく彼の容姿はかなり醜い。

 ヴァルム帝国の伯爵にして皇帝付きだった軍師チャルロス。

 見た目とは裏腹の策士でその頭脳でファルスの側近に推薦されるまでのし上がったが、ファルスは彼を視界に入れたがらず、かと言って有能な臣下を個人的な感情で降格させるわけにはいかずドルマに派遣された。

 彼一人を派遣したのではドルマ王を怒らせ同盟が成らない恐れもあったため、当初はもう一人使者を派遣していたがドルマがヴァルムに歯向かえないと知ると使者を呼び戻しチャルロスとその部下だけ残してしまった。

 無論チャルロスを残したのは彼ならばドルマとほぼ同数のイストリアに勝てる見込みがあると思っての判断なのだが、ファルスはこの判断を下すときザインに心の中で詫びた。ザインを戦後に皇宮に招いているのは本当の事である。

「それではまずは湿地帯の前方に軍を展開して、敵軍と衝突したらすぐに後退してくださいな。そうすれば敵軍は沼地に足を取られわたくしたちに抵抗できなくなりますわ。オーホッホッホ!!」

「……ご苦労だった。下がって休むがよい」

 チャルロスの高笑いに耳を塞ぎたい衝動を必死にこらえてザインは彼をねぎらう。相手がヴァルムでなければこんな男はすぐに追い返すのだが精強な軍の質を更にあげた今のヴァルムに逆らう気は起こせなかった。

 

 

 

 

 

 

 ヴァルム帝国軍:ヴァルム平野戦線

 総兵力 30万

 

 アルバレア・アカネイア王国連合軍:ソフィアの森北部 西部第一防衛ライン

 総兵力 28万

 

 ドルマ王国軍、ヴァルム帝国チャルロス師団:湿地帯南部方面戦線

 総兵力 39万

 

 イストリア王国軍、アイク傭兵団 ミラ神殿北部:東部第一防衛ライン

 総兵力 37万5050

 

 ヴァルム帝国海軍:西ヴァルム海経由戦線

 総兵力 15万

 

 アルバレア王国海軍:西ヴァルム海防衛ライン

 総兵力 10万

 

 ヴァルム帝国海軍:東ヴァルム海無人島 アカネイア監視艦隊

 総兵力 1000

 

 ヴァルム帝国軍:本国待機

 総兵力 28万5000

 

 反ヴァルム連合 支援勢力

 フェリア王国軍・ペレジア王国軍、アカネイア王国臨時魔道軍:アカネイア大陸

 総兵力 100万

 

 ソンシン軍:ラムの村

 総兵力 100

 

 中立勢力

 ノーヴァ騎士修道会:ノーヴァ島

 総兵力 500

 

 不明勢力

 ラーズ教団・ギムレー:???

 総人数 ???+1体

 

 ヴァルム帝国軍の指揮官はファルス。

 アルバレア王国軍の指揮官はユーリ。

 彼らはそれぞれの陣地の奥の天幕から大軍の前に姿を現し正午を待つ。

 ヴァルム平原にてファルスがつぶやく。

「刻限だ。始めるとしよう」

 ソフィアの森北にてユーリが側近に命ずる。

「戦闘準備。アルバレア全軍の指揮を私が行う」

 太陽と時計の針が一日で最も高い位置に上がる。

 正午とともにファルスが全軍に命令を下す。

「アルバレアへの攻撃を開始! 全師団、進軍・制圧を開始せよ!」

 正午とともにユーリが全軍に命令を下す。

「ヴァルムからの防衛を始める! 全部隊、迎撃・遊撃・封鎖を開始せよ!」

 

 

 

 

 

 ギィン! ガキィン! ガン!

「はぁ!」「ぐわ!」「ぎゃぁ!」

 ヴァルム平原とドルマ湿地帯で戦闘が始まる。

 ヴァルム平原。

 ヒュン! ヒュン! ヒュン!

「ぐぁ」「うぐぅ」「ぎゃ」

 ヴィオールが放った3本の矢が敵兵3人の眉間に刺さる。が一人は避けた。

「この!」

 ブォン!

「ぐぉ!」

「公爵、ご無事ですか!」

 ヴィオールについていた騎士が剣で敵兵を斬り捨てる。

「ああ、偽帝の兵とはいえ曲がりなりにも騎士か。よく訓練されている」

 

「はぁっ!」

 キィン! キィン!

 ルッツが数撃与えて敵兵を倒す。

「くそっ! 屍や山賊なんかと違いすぎだろ」

 

「う、兎? く、来るなー!」

 ズガン!

「なめるな!」

 グサ!

 敵の槍がベルモットに刺さる。幸いかすっただけだ。

「ぐっ、この」

 ガン!

「ぐぇ!」

 ベルモットは人間形態に戻ることなく次の敵を探す。

「味方が倒されてもひるまず向かってくる。これが軍隊か」

 

「やぁぁぁぁ!」

 ブンブンブン!

「え? …ギャア」

 グシャァ!

 頭上の掛け声に上を見上げた敵兵は突然刺さった槍に当惑し、痛みを感じる間もなく絶命する。

「天馬? くそ、弓兵はいないか!」

 グサ!

「ぐぁ」

「くそ、兵卒が命令ばかりしてるから…だぁ」

 ヒュン

 兵が放った矢をカーシャはひらりとかわす。

「やぁ!」

「ぐぁ」

 シャァ!

 一通り敵を掃討するとカーシャは天馬を空高く飛ばし戦場を見回す。

「この一帯を指揮してるのは……あいつね」

 ブォォ!

「右翼が開いているぞ。お前たちはそこへ向かえ! 天馬騎士が調子づいてるようだ。弓隊は一斉に奴を仕留めろ」

「誰を仕留めるですって?」

 指揮を執っていたバロンは突然割ってきた声に部下の一人だと思って振り向く。弓矢が飛んできても兜と鎧で身を守っている自分には無縁だと思っていた。

 ズガン!

「ぐぇ」

 そんなバロンの鎧の継ぎ目にカーシャは槍を入れる。

「この……小娘が!」

 ヒョイ!

 ヒュン! 

 カーシャはバロンに一月入れて反撃をよけた後、敵部隊から離れる。

「く……追え追え!」

 ゴォォ!

 そこにアルバレアの魔道兵が放ったアローがバロンを貫く。

「うぐ……むね…ん…」

 魔道兵の近くには敵兵はおらず彼は思わずつぶやく。

「重騎士に挑む天馬騎士か。バレンシア大陸にはめったにいないぞ」

 無理もない。天馬騎士は武装した重騎士に有効な攻撃を与えにくい。継ぎ目を狙ったとしても手足を突くぐらいで命を奪うのは難しいだろう。

 しかもまわりには弓兵も何人かいた。重騎士に軽傷を与えるためだけにこんなリスクを負うものはいない……はずだった。

 ともあれ指揮官が戦死したことでこのあたりの指揮系統は混乱し戦況は幾分かアルバレアの有利となった。

 

 

 

 

 

 

 ドルマ湿地帯。

「よし、後退だ。」

 ヴァルムの軍師に命じられた通りドルマ兵が後退を始める。自分たちが沼に踏み込まないように。

 ガン!

「え?」「なんだこれ? 進めねえ!」

 後退しようとした兵士たちの多くが動きを止められた。まるで見えない壁があるように。

「放てぇぇぇ!」

 ヒュン! ブォン! ゴォォ!

 セネリオの指示でドルマ兵に矢と魔法が放たれる。

「がぁぁあ」

「く、こうなった破れかぶれだ…突撃!」

 逃げ場を失った敵兵はイストリア軍に突撃を仕掛けるが元々一当てしたら逃げるつもりで少数しか最前線に配備されておらず、勝ち目などあるはずがなかった。その上

「ラ、ライオン?」

「グワァァ!」

 ズガン!

 「ギャァ」

 彼らの前に予想だにしていない生物…獅子と狼が現れた。ラグズたちの勢いと力に敵兵はなすすべなく倒れる。

「はっ!」

 ブォン! ザン!

「ぐぁ」

 ラグズにも勝る勢いでアイクは敵兵を瞬く間に薙ぎ払っていく。

「光の結界を時間差で発動できるようになれば便利だと思って改造したのですが、むしろ反則ですね」

 チャルロスの沼地を利用した策はあっさりセネリオに見抜かれ、開戦前に仕掛けた「光の結界」で逆に退路を断たれる手によって破られる。

 沼を迂回して奥にいる部隊も壊滅させ湿地帯の戦闘はイストリア軍とアイク傭兵団の大勝に終わった。

 

 

 

 

 

「次は歩兵部隊を左翼に、右翼には魔道部隊を送った方がいいな。ユーリ王子に伝えてくれ」

 カイルはアルバレアの陣地に設置された専用の天幕で部隊に指示を送っていた。

 今までは自ら先頭に参加していたがこれは戦争だ。指揮官は後方や陣地で指揮に専念するべきだ。

 カイルもユーリ同様天幕で自軍の兵に指示を出し時にはアルバレア軍に助力を求めた。

 指揮は思っていたよりはるかに過酷な仕事だった。しかしわずか5000の兵しか連れて来ていないアカネイア軍への指示など平地にいる27万5000の兵に指示を出しているユーリに比べたらずいぶん軽いものだろう。もちろんあちらは副官を何人もはさんでいるだろうが

 カーシャたちは自らの身を危険にさらして戦っている。なのに自分はここで自分だけがつらいかのような顔で命令ばかりしている。

 カイルは自分への憤りをごまかすかのように指示に没頭していた。

 

 

 

 

 

 ヴァルム平野奥地の陣地の天幕内。

「報告します。平野に展開していた一軍は敵の猛攻に耐えきれず撤退。後続の手配をしているところです」

 兵士は怖れながらもファルスに劣勢に陥っている報告をする。兵の不安をよそにファルスは眉一つ動かさず尋ねる。

「そうか。敵軍より若干多い数を送り込んだのだが、こちらに多く損害を与えた者の話は聞いているか?」

「そ、そうですね。アルバレアも精兵揃いですが……報告の中に気になることが」

「話せ」

「巨大な兎が戦場に現れて我が軍を襲っているとか」

 兵の報告にファルスは1週間前に会ったカイルの家臣を思い出す。

(あの兎娘か! アカネイアにいるという半獣…実在していたとはな)

「そうか。そやつはアルバレアによって我が軍を襲うように訓練されているのだろう。他には?」

 ヴァルム大陸にはタグエルやラグズを知るものはほとんどいない。兵士には敵に調教された猛獣だと言っておいた方が早かった。

「並外れた動きをする天馬騎士ですね。無数の弓矢を躱したり、重騎士に攻撃を仕掛けてきたり、とにかく動きが読めずこちらの指揮官の一人を討たれたとのことです……うっ」

 ファルスはわずかに目を見開く。兵士は兵のふがいなさに怒りを覚えているのだと思いひるむ。

「その天馬騎士の特徴は?」

「はっ…えっと」

 想定していない質問に兵は報告書を取り出し答える。

「……赤い髪で……髪型までは記録されてません。一般の天馬騎士と武装は変わりませんね」

「ほう」(あの王子の情婦ならば戦闘には出してこないはず。その手の関係はなしか)

「以上です。申し訳ありませんこれ以上は情報が…」

「よいご苦労だった。ジーンを呼んでくれ。それが済めば休んでよい」

「ははっ!」

 一通りの戦況とカーシャらしき天馬騎士の話を聞き終えたファルスは兵士にジーンを呼ぶように命じる。

「お呼びでしょうか陛下」

 天幕の側で控え兵士から話を聞いたジーンが天幕の中に入ってくる。

「この後の戦だがな、戦線を下げようと思う」

 戦況が不利に傾いている以上、開けた平野より地の利を生かせる場所まで撤退する。追い詰められているように見えるが今は最善の判断だ。ジーンは賛成する。

「陛下のご判断、私は賛成いたします。それでどのあたりまで下げましょうか?」

 ジーンの問いにファルスはしばらく考えていった。

「滝だ。帝都と他の街を隔てるヴァルムの滝まで後退する」

「思い切りましたね。万が一のことがあれば、帝都まで攻め込まれますが?」

「次の戦には我も出る。我が戦死すれば降伏すればよい。ヴァルムを併合できればユーリもそれ以上の狼藉は働くまい。ただし負けるつもりはない。だから我とともにうぬも出ろ」

「はっ、ありがたき幸せ! それでこの奥の街の住人には避難命令を出しましょうか?」

 ファルスから下された出陣命令をジーンは平伏して承服し、懸念だった街の処遇を尋ねる。

「必要ない。さっき言った通りユーリが略奪などを好まぬのはうぬも知っておろう。それでも略奪にあうならそやつは奪われる天命だっただけの事。我が我が兵に略奪を禁止していないことも知っておろう? まあ進軍に遅れが出ない程度だがな」

「……」

 冷酷なファルスの宣告にジーンは黙る。この主は力の示した者には寛大だが無力な者には冷淡だった。例外だと思ったのは一目惚れしたらしいアカネイアの天馬騎士だが、彼女も今回の戦で大立ち回りをしたらしい。

 外見だけではなく無意識のうちに天馬騎士の強さを感じ取ったのだろうか。

「さて側近を呼びつけるか後退と戦の準備だ」

「お供いたします」

 そう言ってファルスは立ち上がり天幕の外に出てジーンも続く。

 ヴァルムの滝を戦場に選んだのも、自身とジーンの出陣を決めたのも何か別の狙いがあるらしい。覇道からはそれた狙いが。

 

 

 

 

 

 チャルロス クラス:賢者

 「覚醒」のエクセライの先祖。ヴァルム帝国軍師。現在はドルマ王国に派遣されている。策謀に優れているが一度策を思いついたらその策に執着する欠点がある。妻と息子がおり女言葉は息子にも移っている。

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