ファイアーエムブレム 聖痕の覚醒   作:ヒアデス

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第31話 捕らわれのカーシャ

「ありがとうございます司教様」

「いえいえ、カーシャ様にミラ様とドーマ様のご加護があらんことを」

 礼を言うカーシャにバレンシア教の司教を務める金髪の女性ティーナは神の加護を祈って退出する。

 ここは教会でも聖堂でもない。ヴァルム皇宮の客室だ。

 ノーヴァ教国から派遣されヴァルム帝国の大聖堂の長を務めるティーナは教誨師として捕虜となっているカーシャの教誨にあたっていた。

 無論これは異例の措置だ。カーシャ以外の囚人は客室など与えられないし、教誨に司教を招く真似などしない。

「本日の教誨が終わりました」

 扉の前に立ったティーナ司教がそう告げると扉が開く。

「お疲れ様です司教様。どうぞお気を付けて」

 扉を開けた金髪の女兵士は司教が退出し終わるまで扉の取っ手を離さない。ティーナが廊下を歩いていくのを見届けると女兵士はそのまま客室に入った。

 女兵士はカーシャのような天馬騎士と違い男が装着するものと変わらない鎧を装着している。

「失礼しますカーシャ様!」

「いいえ……お役目お疲れ様ですフェイスさん」

 カーシャが皇宮に連れていかれてから女兵士フェイスがカーシャの監視を務めていた。彼女はカーシャを捕虜ではなく客人として丁重に接している。

 

 

 

 

 

 皇帝に捕らわれてから皇宮に到着するまでカーシャは迷っていた。女が生きたまま捕まったら何をされるか容易に想像がつく。

 ジーンのあの強さを見れば戦況はあまりよくないのかもしれないが、カイルたちとアルバレア軍はいずれ皇宮まで攻めこむだろう。聡明なユーリ王子と何よりここまで来られたカイルたち仲間を信じている。だがそれまでに自分が処刑されずにいるか精神を保てるか保証がなかった。

 自分を助けようとするカイルたちには申し訳ないが拷問や凌辱を受けるくらいならここで自決した方がはるかにましだと思う。だがたとえ自決しようとしても自決用の短刀は皇帝に奪われてしまった。残った自殺の方法は舌を噛み切ることだ。だが鋭利な刃物と違い歯で舌を噛み切るのはかなりの労力がかかりその痛みは想像を絶するものに違いない。しかもすぐに治療されれば死ねない。

 そうやって逡巡している間にカーシャが兵士に連れていかれたのがこの客間だった。牢屋にしては豪華すぎる、そもそも宮殿内の牢とは地下にあるものではないのか?

 感触はあるが夢を見ているに違いない。そう思おうとしている間にも捕虜らしからぬ優遇は続く。カーシャに付けられた監視は女性で手荒な真似はしない。監視と言ってもほとんど客間の前を警備していてカーシャの生活を直接見張る真似はしない。

 さらに定期的に聖堂から司教が訪れてきて教誨としてカーシャを励ましてくれた。カーシャが信仰しているラーマン教ではなくバレンシア教の聖職者だが司教の属しているミラ派の教義はラーマン教のものと内容は変わらずすんなり受け入れられた。――現在のバレンシア教は神竜チキを崇めているため神竜の王だったナーガを奉じるラーマン教と変わらないのだろうか?――

 何よりほとんど部屋の中にいるだけの生活で接する唯一の話し相手を宗教が違うからと言って拒絶することが出来なかった。

 

 

 

 

 

 ここまで厚遇が続くとあの皇帝がカーシャにどんな感情を抱いているのか想像がつくのはカーシャが恋愛小説を読み過ぎているせいではないだろう。

 現に監視兵フェイスはティーナ司教を見送った後、いつもなら扉の前の警備に戻るのに今日は部屋に入りあることを告げようとしている。

「カーシャ様、今日の昼食ですが……皇帝陛下が一緒にどうかとの事ですが」

 とうとう痺れを切らしたか。

 いつも食事はメイドが客間まで運んで来るのにいよいよ皇帝から誘いを受けたらしい。

「……」

 受けるべきか考えるカーシャにフェイスはこう続けた。

「強制はしないとのことですので……断ることもできますが」

「行きます。案内してください」

 カーシャは誘いを受けることにした。反抗し続けるとそれだけ早くあの皇帝が自分を無理やりモノにしようとしかねないしあの悪ガキに聞きたいこともあった。

「かしこまりました。ただ……」

「何です?」

 言いあぐねたフェイスはカーシャに聞き返され言うことにする。

「その……ダイニングホールへ向かわれる前にお召し物を変えた方がよろしいのではと」

 カーシャはファルスへの反抗心から客間に備えられたドレスを着ずフェイスから彼女の服を借りていた。フェイスはヴァルム軍の士官で私服もみすぼらしいわけではなかったが皇帝と食事をとる貴人の服にはふさわしくないだろう。

「……駄目ですか?」

「陛下は気にされないと思いますが他の家臣の目もあります。……敵対している国の人間である私が言っていいのかわかりませんが、あなた様の主であるアカネイアの王子殿下の品性が疑われてしまいます」

「…………わかりました」

 カイルのことを出されカーシャはフェイスの忠告に渋々従った。

 

 

 

 

 

 ギィィィ!

「やっと来たか。もう来ないのかと思って始めているぞ」

 カーシャたちがダイニングホールにつく頃には皇帝ファルスは席につき葡萄をつまんでいた。

「陛下、カーシャ様、わたくしはこれで」

 カーシャを案内したフェイスは二人に一礼しホールから出ていく。その後ホールの扉を守っていた衛兵が二人がかりで扉を閉める。

 ファルスは食事を止めカーシャのドレスを見る。

「ほう、遅いと思っていたら着替えておったのか。なかなかよく似合っておる」

「それはどうも……果物お好きなんですね」

 ドレスを褒めたファルスに礼を返しながらも彼の前に並ぶ果物にカーシャはあっけにとられる。ファルスの印象から肉類を好むと思っていた。

「うむ、幼いころからこれはやめられぬ。……肉を取ればもっとがっしりした体形になるかもしれぬとは思うのだがな…あるいは逆に野菜を取ればそうなるのか?」

 ファルスはほんの少し考え始めるがそれでも果物はやめられないと結論付けてカーシャに席につくよう勧める。カーシャもその指示には大人しく従うことにする。

「……最初から私を捕まえるつもりだったんですか?」

 開口一番カーシャはあの戦いの目的を尋ねる。

 あの場所に皇帝が側近だけを連れて現れるのはどう考えてもおかしい。戦況を打開するために崖の敵を掃討したカーシャを捕まえる算段だったのではないか。

「うむ。……もっとも厄介な敵であるうぬを倒すのが優先だ。その時に生きておればむやみに殺さず捕らえて捕虜とする。おかしくあるまい」

 ファルスはあっさり肯定した。シューターを置いたりカーシャを敵兵として撃ち落とす指揮官としての判断を最優先としていたようだが。

 だが自分から戦争を仕掛けるような王に対して、捕らえることと殺すことのどちらが正しいのか議論するつもりはない。捕虜の扱いの話に乗らずカーシャは滝での戦いに話を変える。

 ヴァルム大陸には古から魔導書なしでも詠唱だけで魔法が使える術があると学んでいる。書物なしで魔法が使えたことには驚かない。だが

「驚きましたよ。剣の他に魔法が使えるなんて……」

「……聖帝アルムの妃の話を知っておるか?」

 苦虫を噛み潰したような表情でファルスはつぶやくように聞く。

「……はい。ユーリ王子にヴァルムとアルバレアの建国時の話を聞いて、その後書庫で聖王アルムと王妃アンテーゼの話も調べました」

 聖帝と呼ぶファルスに対抗するようにアルムを聖王と呼ぶカーシャの嫌味を気に留めずファルスは話を続ける。

「アンテーゼ妃も剣と魔法どちらも使えたらしい。……絵画通りの御姿なら髪の色も赤いのだろうな」

 ここでカーシャはファルスが機嫌を損ねた理由を悟る。

「皇帝……もしかしてあなたは自分がアンテーゼに似ていることに引け目を感じているのですか?」

「……」

 ファルスは押し黙る。無言で肯定しているようだ。

「人々を助けるために立ち上がり、アルムと争ってまで戦争を避けようとしたという話があるそうですね。…立派なお方じゃありませんか。私は個人的にアルムよりもアンテーゼを尊敬します」

「ほう。騎士のうぬならば強い英雄に憧れているものだと思っていたがな……うぬがそう言うのならアンテーゼを祖先に持つことを多少は誇りに思えるぞ。……だがヴァルムの皇家はアルムのように大陸を統一する覇王たれと言われ己と子を鍛えるのだ。我もアルムに憧れアルムに続かんと努力を続けてきた。その我がアンテーゼの方に似ているなどとても割り切れるものではない」

 カーシャには理解できない。功績を持つ立派な祖先が2人もいるのに片方に憧れるあまりもう片方に拒否感を持つなんて。

カーシャは天馬騎士だった経歴を持つ祖母がいた事以外は普通の平民だ。――その平民のカーシャがカイルの側付きになった時多くの反対意見があったものの平民なら次期国王であるカイルを操るような野心も抱けず、恋仲になったとしても愛妾で終わり外戚になることは無いと反対した者も意見を引っ込めたという――

 だがカーシャは厳しくも優しい両親と生意気だが心強く将来どこへ働きに出ても兵に志願しても立派にやっていけるだろう弟がいる。――その弟は以前マケドニアに帰ったときカイルを自分の恋人だと思って突っかかり、カイルは許してくれたものの微妙な雰囲気のまま別れてしまったので、従軍した場合王宮勤めになった時にカイルとうまくやっていけるか不安ではあるのだが――

 そんな家族は皆カーシャの誇りであり誰一人恥ずかしくて出せない者などいない。

 そこでカーシャはふと周りを見て気付く。食卓に着いているのは自分と皇帝だけで他には直立不動で待機している兵士と使用人しかいない。自分を客人とみているのかそれとも食卓での決まりでもあるのか皇帝やアルムに対して不敬なことを言っても声をあげたりもしない。

 皇帝は父親を亡くしているようだが、

「……あの、あなたのお母様やご兄弟はいらっしゃられないのですか?」

「我の実母は妾だ。顔も知らぬ。前の皇帝と正妃の間には子がいなくてな、我は妾腹ながら皇子として育った。そして皇帝が死ぬと他に皇子がいないため我が皇帝となった」

 アンテーゼに似ている話の時とは違って林檎を切りながら何でもないことのようにファルスは話す。

「無論反対する者はいた。妾を母に持ちアンテーゼの方に似ている皇子など新皇帝に不相応だとな。反対する縁戚の中には自分こそが皇帝だとのたまうものもいた。皆我が処刑した。正妃はその後自ら命を絶ったがな」

「……」

「腹の中では我が帝位についていることを不満に思っているものはまだまだいるだろう。だが大陸を統一し聖帝アルムの伝説を再現すればそやつらも我が皇帝だと認めざるを得なくなる。我がこの地の統一を目指す理由は納得したか?」

 思っていたよりも壮絶なファルスの半生に呆然としながらもカーシャはファルスの言葉の最後にはうなずけない。

「……あなたも過酷な思いをしてきたのはわかりました。…ですが関係のない民を巻き込み多くの人を犠牲にしてまで戦争をする理由にはなりません」

「ふむ……だがこの戦争が起きなくてもヴァルム以外の国が小競り合いを起こしそのたびに民は犠牲になっておるぞ。まさかこの大陸のすべての戦争がヴァルムと隣国だけのものだとは思っておらぬな?」

「! ……そ、それは」

 カーシャは戸惑う。アカネイア大陸はアカネイア連合王国という巨大すぎる国に統治され内乱や蛮族の侵入未遂が起こっても国と国の戦いとは無縁だった。カーシャには国と国が隣り合うだけで戦争が起きる可能性があることをまだ理解できていない。

「確かにこの戦争は我の身勝手によるものだ。だが他のすべての戦争も併合も為政者や貴族の身勝手によるものだ。それはうぬの大陸でも違いあるまい」

「うぅ……」

 カーシャは反論できない。フェリスもペレジアもアイネやユベンが建国や他の街との併合を宣言し成立したものだ。戦争とまではいかなくてもそこに民の意思はない。

「国が複数存在する限り戦争は起きる。そのたびに民は犠牲になる。だが国を一つに統一すれば国同士の戦はなくなる。あとは盗賊を抹殺し治安を保てばいい。今多くの民を巻き込んでも未来に生きるより多くの民を救うため、これはそのための戦いでもある…と言えばどうだ?」

「大勢を救うためだからと言ってそれより少ない人を死なせていい訳がありません!」

 動揺しながらもカーシャは必死に反論するが――

「ならばうぬらが今まで殺した敵は何だ? 主張が違えば殺してよいのか? 敵対するものは殺してよいのか? うぬらの国を救うために多かれ少なかれの敵を討つ。我のしていることと大した違いはあるとは思えん」

「ぅぅ……」

 カーシャはついにうなだれる。自分でも薄々気づいていた矛盾を次々と突かれた。

 この皇帝を論破する言葉がない。それどころか自分が殺めてきた命に対する罪悪感がわいてくる。これ以上この場にいたら泣き出してしまいそうだ。

「……今の主張に対する反論が見つからぬ…だが納得はできない。そうだな?」

「……」

 カーシャは黙ってうなずく。

「そうか。だがもう少し時間がたてば言い分も見つかるかもしれぬぞ。あるいはうぬが我に賛同する日も…」

「それまでカイル様やユーリ王子との戦いをやめてくれるんですか?」

 カーシャの言葉にファルスは首を横に振る。

「それは無理だろう。例え我がそのつもりになってもアルバレアの兵が納得しまい、互いに命を狙われたと思い合っていればな。何らかの形で決着をつける必要がある」

 そこでカーシャはハッとする。

「ユーリ様を狙ったのはやはり教団。……いやそれより皇帝、あなたも狙われて…しかも――」

「うむ、我も狙われた。兵はアルバレアの仕業だと思っているが。十中八九黒ローブ共だろう」

 ファルスはあっさり教団が仕組んだことだと認める。

「そんな……わかっていたならなぜ弁解しないんです? ユーリ様だって教団のことは気付いています。アカネイア諸国が加わるかもしれない状況で戦争するのはあなたにとって不利なのでは?」

「あの王子の反応とそれまでの調査でアカネイアからは調査団以外の兵はいないと推測した。東の海には増援が来ないか見張りのための船も派遣している。……それに何事もなければうぬは故郷に帰ってしまう。この大陸に留まらせるには戦争を起こすしかなかったのだ」

「…………はい?」

 カーシャは思わず聞き返す。ファルスは顔を赤らめ、そっぽを向くのをこらえて正面を向いたままでいる。

「……そこまでしてもうぬが欲しいと言うことだ。我の妻となれ! そうすれば捕虜ではなくなりよりよい待遇を与えてやれる」

「………………はは、冗談ですよね? 私はヴァルムと交戦しているアカネイアの人間で平民です。皇帝の妻って皇后様でしょう? なれるわけがない!」

 捕虜のはずの自分を厚遇してきたのはファルスが自分に好意を持っていたためだともう確信している。しかしまさか妃になれと言ってくるとは思わなかった。カーシャは引きつった笑いで流そうとする。

「平民だったか……そうか。では妾にせざるを得ないな。だがそれでもうぬが想像できるくらいのことは何でも叶えてやれるぞ」

「私がお金や物で妾になんかなると思うの!」

 金で関係を結ぶなど、まるで娼婦のようだ。カーシャは腹を立て声を荒げる。

「それだけではないぞ。我とうぬの間に子が産まれ、いずれ迎える正妃との間に子が産まれねば、うぬの子が次の皇帝だ。妾の子では我の時同様困難だろうがその子を我が鍛えてやる。事の次第ではうぬやその子がこの帝国を牛耳ることができるのかもしれぬのだぞ」

「だから、そんなもののために私があんたなんかのものになると思っているの!」

 権力を手に入れられる可能性が加わったところでさっきと意味は変わらない。

 ファルスはうなずかないカーシャにふと尋ねた。

「……もしや、心に決めた男がいるのか?」

「…………え!?」

 カーシャは戸惑う。ファルスに心に決めた男と言われて思い浮かぶのはカイルの顔だ。

 最初は同い年だからということで国王夫妻から押し付けられた能天気で頼りない王子でもう一人の弟のようなものだった。

 だがカイルはパレスの悲劇の後様々な苦難を乗り越え成長し、ナーガとの対面の時はどんなに苦労してギムレーを倒しても千年後には水の泡になるかもしれないと言われてもそれでもやり遂げるとナーガに宣言した。

 その時からカーシャの中でカイルの存在は大きくなっていた。それがなければ自分の下着姿を見て欲情しているかもしれない男と寝場所を共にすることなどできず一晩中寝ずの番をしていただろう。

「……それもあの王子か?」

「……」

 カーシャは答えない。が否定しないのがファルスの推測が正しい証拠だった。

「そうか。だがそれこそよく考えてみるがいい。アカネイアは一度壊滅したが復興を遂げた国だ。あやつはその国の王子だぞ。うぬは平民だと言ったな。あやつと添い遂げられてもうぬの扱いは妾だ」

「それは……」

 ファルスの言うことは正しい。想いに従ってカイルと結ばれても平民のカーシャは愛妾以上にはなれないだろう。

「妾の身でも我ならばこの大陸を統一してうぬにもっといい思いをさせてやれるかもしれん。どうだ?――」

 ゴンゴン!

 ファルスが追い打ちの言葉をかけている最中に扉を叩く音がした。

「ん?」

「陛下! お食事中失礼します。ご拝聴して頂きたいことが」

 扉の向こうから伝令の兵士らしき男の声がする。

「よいぞ。入るがいい」

「はっ! 失礼いたします」

 ギィィ!

 扉を守っている衛兵が二人がかりで扉を開ける。

「陛下! 失礼いたし……あっ!」

 兵士は皇帝と対面して食卓に着いているカーシャの姿に戸惑う。

「申し訳ありません。会食の邪魔を…」

「よい。許可したのは我だ。……カーシャ。返事は今度聞こう。そうだな。この戦の決着がついた後ならどうだ? それならうぬの考えも変わるかもしれん」

「……それは!」

 カーシャの想い人であるカイルが死んだらカイルと添い遂げることができない。そう言うことかと聞こうとした。

「ここからは軍の機密がある故退席願おう。食事は部屋まで運ばせる。気が向いたら摂るがよい」

 カーシャが聞くより早くファルスはカーシャの退席を命じる。抵抗してもほどなくフェイスがやって来てカーシャを客室まで連れていくだろう。

 カーシャは黙ってホールを後にししばらくの間扉の前でフェイスを待っていた。

 

 

 

 

 

 ドルマ城塞都市周囲。

 グォォォォン!

「ぎゃぁぁぁ!」

 ドルマの一部隊が王宮の外壁を出て敵軍に突撃し彼らはラグズたちに襲われる。

 今ドルマ軍とチャルロスの師団はドルマの城塞都市にこもりヴァルム帝国から援軍が来るまでイストリア軍と籠城戦をしている。

 両軍の数はほぼ同数。ドルマ軍は数を減らしたもののその差は城攻めを左右する3倍には至っていない。ならばイストリア軍がこの王宮に攻め込もうとすればするほど彼らはシューターや長弓・長距離魔法にさらされ消耗していくはず。だがそれに気づいたのかイストリア軍は動かず逆に彼らを弱腰と侮った部隊が突撃を試み返り討ちに遭う始末だった。。

 そうして今戦況は完全な膠着状態に陥っていた。

「なあ、本当にヴァルムは援軍を送ってくれるのか?」

「軍師のチャルロスを見捨てるような真似はしないと思うが……」

 城壁の上でイストリア軍を眺める見張りの兵はそんな話をしている。

 チャルロスの思惑とは逆に消耗しているのはドルマ軍の方だ。もしヴァルムが援軍を送ってこなければ物資が尽きてドルマが不利になってしまう。ドルマが滅びた後で疲弊したイストリアと戦い、大陸を統一する。ファルス皇帝が考えそうなことだった。

 それにシューターをかいくぐって都市に入る方法が本当にないとは限らない。

 その時彼らの下へ鳩が飛んでくる。兵士は鳩を注視した。

「何だ?……! 足に紙を張り付けているぞ」

「なんて書いてある?」

「……! 早く陛下に報告しないと。俺は王宮へ行ってくる。見張りは任せたぞ!」

 そう言って眼下のイストリア軍から逃れるように見張りの一人が城壁の内部へ駆けていく。

「あっ! ……くそ!イストリアの相手を押し付けられたか」

 残されたもう一人は怒りに任せてそう吐き捨てた。

 

 

 

 

 

 フェイス クラス:パラディン

 「覚醒」のフェルスの先祖。ヴァルム帝国軍士官。伝説の女騎士マチルダに憧れて実家の反対を押し切り軍に志願した。アルムを尊敬するファルスからは冷遇され戦の際は帝都の待機を命じられているがその才能はジーンを凌ぐかもしれないと言われている。

 

 ティーナ クラス:聖女

 バレンシア教の司教。現在はヴァルム帝都の大聖堂に派遣されている。

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