ファイアーエムブレム 聖痕の覚醒   作:ヒアデス

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第35話 ヴァルム一の騎士

 グォン!

 カイルたちと合流したルッツとベルモットは皇宮の西側の壁を破壊を始める。ルッツは斧でベルモットは体当たりで。

 皇宮の門の前には当然多くの兵が守りを固めているだろう。アルバレア軍とソンシン軍の多くの兵を城下町に残している以上当然、門への正面突破は作戦から外れる。

 ただし元々人が脱出できるくらいの傷がついている東側の壁も避けた方がいい。

 そこはカーシャたちが脱出に使った場所であり、カーシャの脱走を知っている皇帝も脱出経路を検討し東壁の傷に気が付いているはずだ。

 カーシャからカイルに壁の傷を報告されそこから侵入してくると踏んで逆に兵を集めて待ち構えている可能性が大きい。

 そこであえて無傷の東壁を主にベルモットの体当たりの威力で破壊して侵入することにしたのだが……。

「来たな。アルバレアの手勢め」

「城下町の制圧が終わらぬうちに闇討ちとは……背後から陛下を暗殺しようとしただけはある」

 かなりの数のヴァルム兵が待ち構えていた。東壁だけでなく西壁にも迎撃用の兵を割いていたらしい。

 カイルが率いているのはルッツやベルモットを含めてもアカネイアの一軍なのだが彼らにはアルバレア兵と見分けがつかないらしい。ソンシンぐらい他国と文化が違っていれば一目瞭然なのだろうが、

「ベルモット化身を解かずこのまま頼む! 今までの戦いを潜り抜けた諸君ならこの程度敵ではないはずだ。各員奮闘せよ!」

 オオオオオ!

 カイルの号令でアカネイア軍はヴァルム兵と交戦を始める。

 

 

 

 

 

「もうすぐ主戦場だ。カーシャ、チェイニー殿いつでも剣を抜けるようにしておけ」

「はい!」「おう」

 フェイスの合図でカーシャとチェイニーは手を剣にかける。

 戦闘が行われている市街中央に彼女たちが到着したころにはすでに。

「はっ!」

「ぐぅ」

 ギィン!

 ジーンとリョウヤが鍔迫り合いを繰り広げていた。戦っているのは二人だけではなく、

「はっ!」

 ビュ!ドガ!

「ぐぁ」

 タクマの放つ矢がジーン配下の騎士の額を射抜く。

「えい!」

 ビュ!ギィン!

「なめるな女」

 スモモもジーンの部下に弓を射かけるがすんでのところで弾かれてしまう。

 だがそこへ

 ドガ!ドゴ!ギン!

「ぐぇ」「ぐぁ」「ぐぬ!……」

「ちっ……一人仕留められなかったか」

 ヴィオールの放つ三本矢が他の二人の騎士を巻き込んで放たれる。ただし二人は倒したが一人は兜に阻まれて傷を与えたもののまだ戦えるようだ。

 ソンシン軍とヴィオール公率いるアルバレア軍がジーンの部隊と戦っている。

 だがやはり先ほどまで弓矢が飛んでいたためかナノハ率いる天馬武者隊は後詰に配置されているようだ。

 そんな主戦場に到着すると同時にフェイスは同行している二人に言う。

「二人とも馬から降りてくれ。ここからは各自の判断で動こう」

「はっ…はい」「え〜」

 ギロ!

「いっちょやってやるか!」

 残念そうな様子を隠さないチェイニーをフェイスは一睨みすると彼は居住まいを正した。

 二人はフェイスの馬から降りるがその直後フェイスはカーシャを見て言う。

「カーシャ、お前は戦わなくていいとカイル殿からも言われている。お前を送って行ってからでもいいのだが」

「いえ! みんなが戦っているのに私だけ休んでいられません。……せめてギムレーを倒すまでは」

(ギムレーを倒すまでは……ねぇ)

 カーシャが最後につぶやいた言葉にチェイニーはその真意を察するが口には出さない。

「そうか。では頼むぞ二人とも……はぁ!」

 掛け声を上げるとフェイスはジーンの下へ馬を走らせた。ヴァルムの士官同士二人には因縁があるのだろう。

「……ぅぅ」

 未だ戦闘に積極的になれないカーシャにチェイニーは話しかける。

「カーシャ、フェイスも言ったがお前は陣に戻っていいんだぜ。……人間同士の戦いはおそらくこれが最後だろう。教皇って奴はもう人間だと考えない方がよさそうだし」

「やります。でなきゃカイル様に合わせる顔がありません」

「そうかい」

 チェイニーは嘆息すると早速変身する。

 今回は長髪の紫の装束を身にまとった剣士で行くようだ。

「いくぞ!」

「はいっ!」

 

 

 

 

 

「はぁ!」

 ザン!

「「ぐああ」」

 アイクの一振りで7人の司祭が吹き飛ぶ。二人は直接斬られて残りは斬撃の際に生じた衝撃波で。

「おらぁ」

 ズガン!

「ぎゃあああ!」

 オルンやウーゼルを始めとしたラグズたちの突進で他の司祭たちも瞬く間に数を減らしていく。

 魔法系は物理攻撃に弱い。その上不意を突かれた状態では反撃する間もなく、アイクやラグズといった強靭な戦士たちが相手では頭でっかちな暗黒司祭では歯が立たなかった。暗黒騎士たちにも傭兵団には手が出せず突入と同時に彼らは全滅した。

 唯一同じ魔道士で同じ土俵に立てそうなのは賢者セネリオだけなのだが、

『きせきのかぜよ! さけ! しっぷうのごとく! レクスカリバー』

 ゴォォ!

「ガガガ……」

 自らの器ではないとして返上しながらも大賢者の称号を得たことがありその後も更なる研鑽を積んだ彼と魔道を異教徒への武器として邪悪に装飾することに傾倒していた暗黒司祭たちでは相手にならない。

 もうここが教団の本拠地で間違いない。

 ヴァルム帝国と戦いながら制圧した町や村には彼らの本拠地らしき施設はないとカイルから報告を受けていた。

 そのためアイクたちは武器を捨てるでもなく抵抗してくる教団員を生け捕りにしようとせず一切の容赦をしない。

「地上は制圧した。上もしくは地下に通じる通路を探せ」

「おう!」

 アイクの指示で団員たちは別の階に通じる出入り口を探す。

 ギィ!

「ここだ! この部屋に下への階段がある」

 一人の団員が地下への階段を見つけ叫ぶ。

「行きましょう! ……団長。教皇は以前と違いなぜか攻撃が通じにくくなっているみたいです。ご注意を」

「ああ」

 セネリオの忠告を受けてアイクはの教会堂に何人か見張りに残し、残りの団員を率いてアイクたちは地下へと下る。

 

 

 

 

 

「やあああ!」

 ギィン!

「ぐっ」

 カーシャが敵の騎士から槍を払い落とし、攻撃を続ける。

 ズガン!

「ぐぁっ」

 たまらず敵はうずくまる。

「これでとどめ…」

 ヒュ。

 だがカーシャはこれ以上敵に剣を突き出せない。

「ぅぅ……駄目、私には」

「……そこだ」

 グサ!

「きゃぁぁ」

 とどめを刺すのをためらうカーシャを見て好機と見た敵は槍を振るいカーシャに繰り出す。

 槍はカーシャを一閃し、今度はカーシャが膝をつく。

「死ねぇぇ女!」

「ぐ……」

 敵兵がカーシャにとどめを刺そうとし、カーシャは目をつむる。

「ぎゃぁぁ」

 だが絶命したのは敵の方だった。どこかから放たれた矢が敵の額を射抜いたのだ。

「大丈夫ですか? 『かのもののふじょうをはらいたまえ 夏祭』」

 矢を射た当人であるスモモはカーシャに駆け寄り夏祭の祓串を振るう。

「……ありがとうございます。えっと…」

 復帰したばかりのカーシャは巫女の名前を知らず、彼女の知る司祭にも見えないため何と呼んでいいのか言い淀む。

「スモモです。あなたはまだ調子が良くないようです。ここは本陣に戻ってはどうでしょう。」

「で……でも」

 シュ!

 そんな彼女たちを狙って矢が飛んでくる。

 キィン! ザシュ!「ぎゃあ」

 カーシャたちに向けられた矢は別の矢に撃ち落とされ射手も続けて放たれた矢に撃墜される。

「敵も倒せない状態じゃ足手まといだから引っ込んでろと言ってるんだよ!」

 彼女たちを助けた弓将タクマはカーシャをそう叱咤する。

「…………」

 カーシャはタクマに何も言い返せず悔しさのあまり唇をかみしめる。そんな時、

「危ない!」

 シュ!

 カーシャはタクマに飛びかかる。

「いきなり何を……!」

 先ほどの仕返しかと文句を言おうとしたタクマが先ほどまでいたところには矢が刺さっていた。

「……すまない。僕としたことが」

「い、いえ……お怪我はありませんか?」

「ああ大丈夫だ。君に助けられた」

 礼を言ってもばつの悪いままのタクマは。

「さっきは悪かったよ。まぁ、戦えなくてもそれなりにできることはあるかな。……じゃあ、物陰に隠れて矢が飛んでこないか見ててくれ。僕はともかくスモモが狙われたら危ない」

「タクマさんったら私だって……あ、いえそうですね。お願いします」

 馬鹿にされたと思ってタクマに文句を言おうとしたスモモは彼の意図に気付きカーシャに背中を任せる。

「は……はい。わかりました」

 二人に気を使われているのはわかっているが、敵を殺せと言われるよりはマシなのでカーシャは了承する。

 カーシャの内心は申し訳なさと悔しさでいっぱいだった。

  

 

 

 

 

「はぁ!」

 ギィン!

 ジーンとフェイスの槍が交差するが衝撃のあまりフェイスは槍を落としそうになる。

「……ぐぅ。さすがジーン将軍、一筋縄ではいきませんね」

「何、君も以前の訓練より腕を上げた。皇帝に背いてしまったのは残念だがこうして槍を交えられると考えると悪くない」

「そこだ!」

 ジーンがフェイスを称賛している時を隙だとみてリョウヤは刀を振るうが、

「ふっ!」

 ギィン!

 ジーンは警戒を緩めず槍を振るってリョウヤの刀を薙ぎ払った。

「はあ!」

 ヒュヒュヒュ!

 ヴィオールもジーンに三本の矢を射かけるも。

 カカカン。

 ジーンが槍を円状に槍を振り回すだけですべて落とされてしまう。

「どうした。ソンシンの武者とはその程度なのか?」

 ジーンは彼らの攻撃を流しそんな言葉をかけて余裕を見せる。

「……ぐっ、伝承で聞く暗夜王国の第一王子のような強さだな。隙がない」

 リョウヤは刀を構えながらそうこぼす。

「そろそろ勝負を急がせてもらうぞ。万が一こちらの皇帝陛下が討たれる前にユーリ王子を討ちこの戦を終わらせねば」

 ジーンが槍を構え直し決着をつけようとする。

「皇帝の心配をしている場合かい?」

 ギィン!

「……ぐぅ…新手か!」

 そこへ長髪の剣士の姿をしたチェイニーが加わる。

(三すくみの相性は悪いはずなんだけどバーツの姿じゃカミュもどきの騎士に勝てる気がしないんだよね)

 内心でそう思いながらチェイニーは剣を構える。

 1000年前に活躍した剣士ナバールの姿に加え能力まで模したチェイニーはアルバレア陣営の中では最強の男だった。

「はあ!」

 変身の対象となった剣士と同じ掛け声でチェイニーはジーンに斬りかかる。

「ふっ」

 ギィン!

 カァン!

 ザシュ!

「ぐぬ」

 チェイニーの一閃がジーンを刻む。

「はっ」

 グシュ!

「ぐぁ……このっ」

 ジーンの槍もチェイニーを一突きし再び鍔迫り合いに入る。

 そこへリョウヤとフェイスも加わる。

「はあ!」「ふん!」

 ギィン!ドヒュ!

 ヴィオールはこの状況では味方に当てかねないとみてジーンの部下や街に潜伏している敵兵を撃って回っているようで彼は加わらない。

「そこだ!」

 ドシャ!

「ぐああ」「ぐぉぉ」「きゃっ」

 しばらく優勢だったチェイニーとリョウヤとフェイスはジーンの振るう槍に散らされフェイスは落馬し地に横たえる。チェイニーも傷が大きく剣士の変身が解ける。リョウヤも深手を負ったようで立ち上がるのも苦だ。

「まずはお前たちだ」

 ジーンはフェイスは倒れたとみてリョウヤとチェイニーに狙いを定める。ヴァルム騎士だったフェイスは捕らえて命だけは助ける気なのかもしれない。

「くそっ!もう破れかぶれか」「こうなれば黒騎士も奈落の共に」

 チェイニーとリョウヤは差し違える覚悟を固める。だがジーン相手にうまくいくか?

「はああああ!」

 ドヒュ!

 ヒィイィンン!

「何?」

 突然馬が悲鳴を上げジーンを揺らす。

 馬には槍が突き刺さっていた。気を失ったと思っていたフェイスがついた槍が!

「ぐ……フェイスを侮っていたか」

 スタ!

 ヒイイン!

 ジーンは地に降り立ち、馬はどこかへと駆けていく。ジーンは槍をしまい剣を出す。フェイスも立ち上がり剣を構える。

「はあ!」

「やっ」

 ガアン! ギィン!

 ジーン・リョウヤ・フェイスは刀剣を持って三度鍔迫り合いとなる。

(今のジーンなら竜になれば倒せるんだろうが……いや、どっちみち竜石がないと無理か。俺はもう竜に戻る気はない。まぁ様子を見てみるか)

しばらく変身が出来なくなったチェイニーは自分は足手まといと判断し、下がることにした。弓矢を警戒する注意力は残っている。

「せい!」「やああ!」

「ふんっ」

 ギィン ガン!

「甘い!」

「ぐぁ」「ぐぉ」

 ジーンが剣を一振りし、リョウヤとフェイスを蹴散らす。が二人はすぐに立ち上がった。リョウヤが最後までとっておいた切り札として白夜の時代から伝わる奥義の構えをとる

「流星! ……はぁぁぁ」

 ギィンギィンギィン!

 リョウヤが繰り出す剣技を3撃ジーンは凌ぐ。

 ザシュ!

 だが4撃目は大きく入る。

「ぐぉぉ」

「今だ! はあああ!」

 リョウヤが5撃目に向けて大きく刀を振り上げる。だがそれが仇となった。

 ギィン!

 リョウヤが刀を振り上げる一瞬の間にジーンは刀の軌道を読み槍で刀を防ぐ

「しまっ…」

「はああ」

 グァン!

「…………見事…だ」

 最後の一撃を通したのはジーンでもリョウヤでもなかった。

「はあ……はあ……」

 リョウヤがジーンに「流星」を繰り出している間に気迫を貯め、ジーンがそれらを防いでいる間にジーンに肉薄し「月光」の一撃を放ったフェイスだった。

「……やっとジーン将軍に勝てた。……けど複数がかりでは勝ったとはいえないな」

 見たところまだ息があるようだ。

「……! すぐに拘束するぞ。気が付いた途端立ち上がりかねん」

 リョウヤは慌てて縄を取り出しジーンを縛り上げる。

 他の敵の掃討も終わり、主戦場だった城下町の戦いは終わった。

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