ファイアーエムブレム 聖痕の覚醒   作:ヒアデス

36 / 61
第36話 赤い人魂

「貴様ら! どうやってこの場所を?」

 地下の祭壇でたたずんでいたラーズ教皇クラウディウスはこの場所に駆け込んできたアイクたちを見て驚愕する。

「そんなことはどうでもいいでしょう」

「ああ、あんたの問いに答える義理はない。降伏するか、抵抗するか。聞いているのはこっちだ」

 アイクはクラウディウスにかつて神剣と呼ばれたラグネルをむける。

「もちろんこうだ『やみよ ぬりつぶせ!! ゲーティア』」

 クラウディウスが詠唱を唱えると凄まじく凝縮された闇がアイクを襲う。

「アイク下がって! ……おおお」

 セネリオはアイクを押しのけ自ら闇に飲まれる。

 ギュォォォ!

 だがセネリオの手に数個の斑点を残すだけで闇は消滅していった。

「馬鹿な! 賢者とは言えゲーティアをはねのけるだと」

 驚くクラウディウスにアイクは説明する。

「セネリオはかつて大賢者の称号を持っていたことがある。その称号を返したとはいえ普通の賢者とは違うと言うことだろう。……で、そろそろ降伏する気になったか?」

「……なんだ? 私の攻撃を防いだだけで勝った気になっているのか? 馬鹿め。ならその小僧以外を殺せば済むこと『ゲーティア』」

 またクラウディウスは詠唱を唱えるがアイクは闇の出現場所を読み後ろに飛ぶ。闇はしばらく現れるが飲みこむものがなく存在するだけだ。

「はぁ」

 アイクは闇を避けクラウディウスに斬りかかる。

 ギィィン!

 しかしクラウディウスが突きだした腕は鋼のように固く、傷一つつかなかった。

「ギムレーから何らかの恩恵を受けているわけですか。なら……『きせきのかぜよ! さけ! しっぷうのごとく! レクスカリバー』」

 ビュォォ!

「フン……」

 勢いよく吹きすさぶかまいたちの暴風にもクラウディウスは平然と立っている。

「魔法も効かないのですか……まるで竜鱗族ですね。どちらにも対応できるところは黒竜に近い」

「くそ! かかれー!」

 苦戦するアイクたちを見てラグズたちが獣の姿になり一斉にかかる。

 ガン! ギィン! ゴン!

「温いわ!」

 ブォォォ!

「ぐわぁ」

 ラグズたちの攻撃を受けてもクラウディウスは傷一つつかず、逆にクラウディウスの振るった手から生じた闇に蹴散らされ、大傷を負う。中にはもう死んだ者もいる。

「くそ、おい! 大丈夫か?」

「俺は無事だ。くそ! むやみに奴に近づくな」

 なんとかこらえたウーゼルは仲間に下がるよう指示する。

「くそ……出し惜しみしている場合じゃないな……はぁ!」

 ギィィィ、ギン!

 アイクの一撃がクラウディウスに降りかかる。さすがに万が一のことを考えてかクラウディウスは手を突き出し防御することを忘れない。

「ぐぬ…さっきよりは重いな」

 ギィン!

「ふぅん、今の私にかゆみを与えたのは褒めてやろう。褒美だ!」

 ブォォ!

「ぐぅぅ」

 二撃目を受けてかすり傷を負いながらもクラウディウスは反撃し、アイクを闇が襲った。アイクは歯を食いしばり耐える。

「団長の「天空」でも傷つかないのかよ」

 思わずオルンはぼやく。

「……皆さん下がって!」

 セネリオの指示でアイクたちはクラウディウスから離れ距離を取る。ラグズ団員の中で幹部でもあるオルンとウーゼルは化身の源泉となる力を温存するためひとまず人の形態に戻った。

「クク。逃げるのなら構わんぞ。その間に私もここから離脱するだけだ」

 クラウディウスはアイクたちが背を向けた後でクライネを呼び転移でここから逃げるつもりに違いない。そうなればアイクたちなどギムレーを使って大陸ごと焼き払える。

今そうしないのはアイクたちと相対している状態でクライネを呼び出せば彼女を殺されてしまう危険があるからだろう。

 アイクもセネリオもそのことに気付いているから逃げ出すつもりは毛頭なかった。だがセネリオはこわばった表情のままうなる。

「打つ手がありませんね。オルンいい手はありますか?」

 セネリオだけではクラウディウスを倒す方法を思いつかないのかオルンにも意見を仰ぐ。

「俺が思いつくわけねえだろう」

「今は僕にも思いつきませんね。ウーゼルは?」

「悪い。団長の力でも参謀の魔法でも通用しない相手をどうやって倒すかなんてさっぱりだ」

 続けて聞かれたウーゼルも首を横に振った。

「団長は?」

 アイクは黙って首を振る。全員いい手を思いつかずうなだれる。そんな空気に痺れを切らしたのか――

「なら破れかぶれで奴の喉元を食いちぎるまでよ!」

 オルンが狼形態になりクラウディウスに飛びかかる。

「オルン!」

 セネリオが叫ぶ。

「馬鹿め『ゲーティア』」

「ぐぅ」

 クラウディウスが闇を放つ中オルンは闇を耐え抜きながら、

「オオオオオ……がぁぁぁ」

 ギィン! グラ。

 オルンがクラウディウスの腕に牙を突き立てるも彼の腕には傷一つない。その代りクラウディウスの視界が揺れる。

「? ……眩暈か、これしきで」

 オルンが攻撃の際にはなった「威風」でクラウディウスは眩暈を起こす。その隙を逃すまいとセネリオが詠唱を始める。

『きせきのかぜよ! さけ! しっぷうのごとく! レクスカリバー』

「懲りん奴だ」

 ビュォォオ!

 だがセネリオの起こした風は先ほどより大きい。室内だと言うのになぜかその風は陽光を受けたように輝きを帯びていた。

「な……ぐぁぁぁ」

 「陽光」を帯びたレクスカリバーは今度こそクラウディウスを斬り刻む。

「グアアアアア!」

 そこへ獅子に化身したウーゼルが襲い掛かる。

 ボキュゴリィィィ!

「ぎゃああああ!」

 クラウディウスの腕にウーゼルが噛み付きようやく彼の腕を引きちぎる。

「この畜生風情がぁぁ」

 グォォォ!

 クラウディウスが反撃しようとするもウーゼルが吼えた途端彼の「咆哮」に身をすくめ思わず動きを止める。

「まさか……先ほどの順番は……」

 身動きを止めた己自身を心の中で罵倒しながらクラウディウスはようやく気付く。

 彼らが攻撃する前のセネリオが意見を募るやり取り。あれはあらかじめ決めたサインだ。

 セネリオの「打つ手がない」という言葉でそれは始まる。

 それからセネリオに声をかけられたものから攻撃を始め、彼が一度言葉を切り自分について話したとき、彼自身が攻撃を行う。その後も彼に声をかけられたものが続く。いずれも奥義を出しながら全力で!

 つまりウーゼルまで攻撃を行った今、彼に続くのは……。

「はああああああ!」

 右腕を失ったクラウディウスにアイクが迫る。

 グサ!

「おおお」

 剣がクラウディウスに刺さる。

「ああああああ!」

「ぎゃあああああ!」

 クラウディウスのどてっ腹に刺さった剣はアイクの気迫を受けて青く輝き、彼の胴体を真っ二つにするくらいの勢いで振り回される。

「そ……そんな……私は神の力を……得たはずでは……私は……自らが神となり……世界に……君臨」

 致命傷を受けて長い断末魔を残しクラウディウスは息絶えた。それを見届けた途端にラグズたちは脱力し人の形態に戻る。

「はあはあ……手間取ったな……だがまだ終わってない。念のためギムレーを探してそれからヴァルムへ」

「アイク! みんな! 下がって!」

 指示を出そうとしたアイクの言葉を遮ってセネリオが叫ぶ。

「……?」

 だがアイクたちは言う通り今立っている地点から数歩下がったものの指示の意味が解らず首をかしげている。

「……セネリオ。一体どうしたんだ?」

「…………アイクたちにはあれが見えていないんですか!」

 今セネリオの視界には赤い人型のものが浮かび上がっている。それはクラウディウスの屍から立ち上った。

《情けない奴め。獣数匹と魔道士の小僧に殺されるとは……まあいい。こいつは用済みなうえギムレーを抑えようとする点では邪魔者でもあった》

 それだけ言うと赤い人魂は上へあがっていく。それは天井を貫き、そのまま昇っていった。

「……」

「おい参謀さんよ! 勝利の余韻を邪魔しやがって。一体何だっていうんだ?」

 そうとは知らないウーゼルはウーゼルはセネリオを怒鳴る。アイクはウーゼルを抑える。

「待てウーゼル。もう俺たちの邪魔をする奴はいない。それぐらいで目くじら立てるな。」

「……悪かったよ。悪いな参謀熱くなってつい」

 ウーゼルも言い過ぎたと思ってそこまで行ってばつが悪そうに死んだ仲間を抱えて踵を返し階段へ向かう。もうこの祭壇から出たいのだろう。オルンたち他のラグズもある者は同じように死骸を抱えてウーゼルに続く。

 そんな中アイクはウーゼルに続かずセネリオの方を見て尋ねる。

「セネリオ……お前にはいったい何が見えたんだ?」

「……アイク……あなたにも見えなかったんですか?」

「……俺には何も見えなかったな……ひょっとすれば魔道士のお前にしか見えないものかもしれん……それで何が見えた?」

「赤い人魂が……全体が赤くてよく見えませんでしたが若い男のようで服装も粗末な物でした。蛮族が着る物のような……」

「赤い人魂……なるほど確かにそう言う霊魂のようなものは魔道士の方がよく見えるのかもしれん」

 セネリオの肩は震えている。彼の右肩の方にアイクは自身の手を置き落ち着かせる。

「なあにどうってことない。霊魂なら俺たちには斬れないかもしれんが、奴が見えるお前の魔法ならその人魂を倒せるかもしれん……だからまずはお前がしっかりしてくれ。出ないと団は方針一つ立てられん」

 セネリオは落ち着きを取り戻し、気を引き締める。

「すみません……では団長、外へ出ましょう。もうイストリアもドルマもかなりの数の軍を送り込んだと思いますが、それでもヴァルム帝国はてこずる相手かもしれません。教団を片付けた以上僕たちも向かいましょう」

「ああ……行くぞ次の戦場へ!」

 そうして寺院跡を出て翌日、アイク傭兵団もイストリア・ドルマ軍に続きヴァルムへ向かうべくドルマ港へ向かう。

 

 

 

 

 

 ガルバザン クラス:ゴースト

 1900年前のゾーア族の部族長。カーリュオンとユトナに敗れ肉体と暗黒竜の力を失い魂だけとなったがその怨念は1000年前にグエンカオスを、現在はクラウディウスに取り憑き彼らの憎しみや欲望につけ込んで操り、ギムレーとともに世界のすべてを破壊しようと目論む今作の黒幕。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。