ファイアーエムブレム 聖痕の覚醒   作:ヒアデス

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第45話 終わりと始まり

 アカネイア軍の陣から他国の王を送り出して数刻後、日が昇り切る頃に陣を畳み終わり船を停泊させている地点に戻るとそこには各国の王が雁首そろえて待っていた。

 先ほどの集まりに居合わせていないフェリアの氷の王アイネ、ヴァルム皇帝ファルスやアルバレア王子ユーリも一緒だ。

「我らに隠れてこそこそと何をやっていたのだ?」

 開口一番にファルスはカイルに突っかかってくる。カイルは隠し立てせず堂々と言ってやることにした。

 他国はともかく自国ではファイアーエムブレムは国宝として飾るのだ。光以外のオーブが欠けているなどすぐにわかる。

「大戦やギムレーを乗り越えた国同士これからも協力していこうと約束し、我が国から贈り物をしたんですよ……この盾にはまっていた宝玉をね!」

 そう言ってカイルは先ほどまで封印の盾と呼ばれるものだったファイアーエムブレムを掲げて見せる。もうすでに上部にあるもの以外のオーブは抜かれ4つの空洞が空いている。

「ほぉ……アカネイアの国宝の装飾品を他国にな……ふん、その玉を我が国に渡さなかったのはあれか? もう我が国とは国交など結ばんという意味か? 我は別に構わんが」

「いやそういう意味では――」

 ファルスの言いがかりにカイルはたじたじとなるがそこへユーリが割って入る。

「まあまあ二人とも……カイル殿、気にしないでください。ファルスはカーシャ殿に会える機会だった会合に呼ばれなくて機嫌が悪いだけなんです。ファルスもそうやって意地を張っていると本当に国交を断絶されてしまいますよ。カーシャ殿への思いを断ち切るために必要な二人の挙式を見届けることもできなくなってしまいます」

「な…何を言っておるか。あんな小娘などもう興味はないわ!」

「へえ、そうですか……それはよかったです。私の方はしっかり断る前に逃げ出してしまったりして皇帝陛下を傷つけてしまったのではないかと気が気ではありませんでしたから」

 強がりにしても酷いファルスの言い方にカーシャは青筋を立てながらひきつった笑みで声をかける。

「カ、カーシャ、これはだな……」

 ファルスは気を悪くしたカーシャに怖気づき思わず言い訳をしようとする。

「いえいえいいんですよ。こんな小娘に皇帝ともあろう方が本気になるはずありませんよね。私は母国に帰りますから陛下は皇后としてふさわしいお方とどうぞご幸せに……ね、カイル様!」

「……ぁ! カ、カーシャ!」

 カーシャはファルスに見せびらかすようにカイルと腕を組みファルスから顔をそむけた。それからしばらくしてカーシャはカイルの腕をほどき後ろに下がる。

 ファルスはごまかすように咳払いをしてカイルの方を向いた。

「すまぬ。見苦しいところを見せたな。……宝玉のことはただの冗談だ。我には不要な物……大方シスターの腕で眠りこけている巫女と関係があることなのだろう」

 ファルスはキットに抱かれて眠っているチキを見やる。

 それに対してカイルもキットも今は何も言えなかった。

「まあよい。貴国と我が国の国交についてだがな。……我が国にも利益のある交易なら望むところ。欲しいものがあれば言うがいい。格別の値で分けてやる」

「ははは……その時はどうかお願いします」

 カイルは左手を差し出す。ファルスも左手を返し握手を交わした。

「これでアカネイアとヴァルムは一件落着ですね。アルバレアとヴァルムも早くそうなりたいものです。ひとまず束の間の友好を祝って私たちも……」

 ユーリはそう言ってファルスに右手を差し出してきた。

「……我もたいがい人のことは言えぬがユーリよ。平和を願っているならうぬもさりげなく喧嘩を売ってくるのはやめたらどうだ」

「おや? 何のことです?」

 ユーリはとぼけて右手を差し出したままでいる。ファルスが怪我をして右手が使えないのは当然ユーリも知っている。

 結局この二人が握手を交わすことは無かった。

 そんな彼らの様子を見てリョウヤは苦笑し、アイネとザンザの方に向き直る。

「ひとまずこれでヴァルム大戦は終わったな。大陸規模の戦争などもう起きなければいいが……アイネ、ザンザ。貴国らには本当に助けられた。復興に必要なものがあれば何でも言ってくれ。今回だけでなく我々白夜は過去にも風や氷の部族から受けた恩がある。我々にできることは何でもするつもりだ」

 そんなことを言うリョウヤをアイネがたしなめる。

「おいおい、気軽に何でもと言うものじゃない。これが国家間の条約の場だったら付け入り放題だぞ。もう私たちもお前も1国の王だ。発言には気を付けた方がいい」

「王か。……俺は別に村長や里長でもいいと思ってるんだがな」

 リョウヤは決まりが悪そうに頭をかく。アイネはそんなリョウヤに対して首を横に振った。

「いいや! ソンシンはもっと大きくなるさ。そしてあんたはヴァルムやアルバレアとためを張るくらいの大物になる。間違いない!」

「そうか? 全く想像がつかないんだが」

 まだかぶりを振るリョウヤにザンザも言ってやる。

「いやいや、アルバレアはヴァルムと千年前からの歴史についていがみ合ってると言うじゃないか。平和を保つには奴らの争いを仲裁する者が必要だ。それはイストリアでもドルマでもない。アルムの肩書や大陸の名にこだわりのないあんたらソンシン人が適任だ」

「ふむ……確かに俺たちにとってはアルムが王だろうが皇帝だろうが、大陸がバレンシアかヴァルムかはどっちでもいいことだな。確かに両国の間に立てるのは俺たちくらいかもしれん」

 二人に畳みかけられリョウヤはついに納得する。

「そういうことだ。アカネイア大陸復興に必要な物資の貿易のためにもあいつらをうまく取り持ってくれ。交易に関しても適正な価格ならちゃんと払う。それならお互い問題ないだろう」

「ああ、お互いこれから頑張っていこう!」

 そう言ってからリョウヤはアイネと握手を交わし、その後ザンザとも握手した。

 

 

 

 

 

 各国の王が友好的な関係を約束している中、彼らと離れたところである集団が別れの挨拶をしていた。

「団長、今まで世話になったな。新天地を探したいっていうラグズのはぐれ者の酔狂によく付き合ってくれたぜ」

 ラグズ団員を代表して部隊長の一人ウーゼルがアイクに礼を述べる。

「本当に行くのか? 教団を壊滅させてギムレー討伐に貢献したとなればラグズを見直すアカネイア人もヴァルム人も出るかもしれない。なんならそろそろテリウス大陸に戻ってもいいんじゃないか。スクリミル王もニケ女王も一度絶縁状を出されたからって根に持つような王じゃないだろう」

 テリウス大陸に戻る。

 その言葉にセネリオは顔を伏せ、ウーゼルは難しい顔になる。

「うーむ……まずアカネイアやヴァルムに残るってのはないな。テリウスのベオク同様そう簡単に変わるものじゃない。むしろ今までラグズやタグエルを知らなかった分、排他意識は強いんじゃないかと思う……だからテリウスに戻るのはありかもしれねえな。やっとの思いでアカネイア大陸に来たのにギムレーなんてのが出て来て多くの犠牲が出たんじゃあ帰郷を希望する奴らも出てくるだろう」

 ウーゼルの話にセネリオは複雑な表情を見せ、セネリオの様子に気付かずウーゼルは話を続ける。

「ここは頭を冷やしてテリウスに帰り王に頭を下げるのが現実的……だが俺は別の地を見てみたいんだ。ベオクがいるかいないかは関係なく!」

 ウーゼルに続いてもう一人の部隊長オルンが言う。

「俺もだ! 大昔テリウス以外の大陸は女神が起こした大洪水ですべて沈んだと聞いていた。現に今でもテリウスの他に無事な大陸は存在しないというのが定説なんだ……でも俺たちはテリウス以外の沈んでいない大陸を見つけた。それどころかアカネイアの民もヴァルムの民も大洪水なんて知らなかったぐらいだ。そんな地が他にもあるのか、そこにベオクはいるのかラグズはいるのか。俺も見てみたい」

 興奮気味に話す二人にアイクは得心する。好奇心という意味では強いものを求めるアイクも同じような理由でテリウスを離れる気になった。

「そうか……わかった。気を付けてな。ただテリウスはお前たちの故郷だと言うことは忘れないでくれ。帰りたくなればあの王たちなら絶対聞き入れてくれる」

「覚えておく。団長たちも気が向いたらテリウスに帰って家族やクリミアの女王に顔を見せてやるといい。元気でな!」

 息巻くウーゼルの横でオルンはぼそりとつぶやいた。

「さて……コイたち妖狐は俺たちについてくるのか。それとも……」

 

 

 

 

 

 こうして第一次ヴァルム大戦とギムレーとの戦いは終わりアカネイア大陸の民は東に、ヴァルム大陸の民は西へと船を進める。

 アイク傭兵団もヴァルムの民同様ヴァルム大陸まで戻り、その1月後にアイク傭兵団は解散しアイクとセネリオ、専属商人ララベルはヴァルム大陸に残り、他の団員たちは他のラグズ移民と合流する。移民たちのある者たちはアカネイア大陸に築いた住処に戻り、ある者たちは故郷であるテリウス大陸に戻り、ある者たちはまだ見ぬ地を求めいずこの方角の海へ繰り出した。

 彼ら移民の中にラグズに近い種族タグエルの一種妖狐がいるのかは定かではない。ただし兎の民はどこにもいかず東の大陸を終の棲家としたことは確かだ。

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