俺は、暗闇の中で目を覚ます
「………………ん……ここは、何処だ?てか暗ぇ」
確か俺は食堂に居た筈なんだが……………………あっ
「そういや、部活の話になって………それで…………そうだよ、気絶したんじゃん」
うわー、自分で言ってて結構軽いなおい
「ってことは、ここはさしずめ夢の中ってか」
夢の中にしちゃあ暗すぎるかもしれんな
「………………ちゃんと、伝えられたよな。朝月さん……………いや、椎乃に」
きっと伝えられた筈だ、まあ取り敢えず
「前へと進んでみましょうか」
そして俺は歩き出す、暗闇の中を
コツ、コツ、コツ、コツ……………ピタッ
「………………なんも起きねえ、何もねえ」
いったい何なんだこの空間は、どこまで行っても闇、闇、闇。まるで閉じ込められた気分だぜ
しかし、何もねえんなら早く俺の体よ、起きてくれませんかね?これじゃあ流石に退屈すぎる
「はぁ…………ここで俺が起きるのを待つしかねえか」
俺は腰を下ろす、だが腰を床に下ろそうとした瞬間………俺は浮遊感に襲われた
「おわっ!なんだ!?…………もしかしてこれ、落ちてる!?」
下から感じるこの感じ、間違いない………俺は落ちている!!
「おわぁぁぁぁ!!そ、そうだ!クウラ!!……………っているわけねえじゃん!!」
そんなことをしてる間にも俺はどんどん落下していってることだろう
そして急に回りがブワッ!となった。それと同時に回りが明るくなる
「………………ふぇ?」
………なんつう間抜けな声をあげてしまったんだろう。だがそれもしょうがないと思う
だって俺が暗闇から落下してきて、放りだされた場所は………………
「のおおぉぉぉぉぉ!?」
真っ青な空の上だったんだから
「いや、呑気なこと考えてる場合じゃねえ!!どうすんだこの状況!?これホントに夢だよね、なんでこんなにリアルなの!?」
やばいやばいやばいやばい!!とてもやばい!浮遊感ぱねぇっす、これもう夢なんかじゃなく現実っす!誰か助けてお願いなんでも言うこと聞くからぁぁぁぁ!?
『ピジョーッ!』ガシッ
「のわぁ!?」
な、何かに掴まれた!?………………ってピジョットじゃねえか
「もしかして助けてくれてる?」
俺がピジョットに問いかけるとピジョットは俺を一瞥してゆっくりと降下して行った
そして地面へと降り立つ
「ありがとな、ピジョット………………ここは、どこだと思う?ピジョットよ」
ピジョットから降りた俺は回りを見渡す。どこか見た事のある場所のような気がするが…………
てかピジョットに聞いてもわかるわけねえわな
俺はピジョットに方に向く
「……………………あれ?いない」
だがピジョットの姿はなかった
……………おかしいな、羽音とか何も聞こえなかったんだけどな。もしかしてあのピジョットは忍者か?だとしたら凄いな
まあいい、少し探索してみよう
「……………………しかし、この街、なんか懐かしい感じが………………んあ?あの空き地」
俺は街を歩いていると横に空き地を見つけた
「ここは…………『なあ、今から噂の森に行ってみようぜ!』…………!?」
急に俺の中に流れてくる声
「近づいたら駄目って先生言ってたじゃない。やめた方がいいわ」
今度は頭の中ではなく横の空き地から声が聞こえる。空き地を見ると五人の男の子と一人の女の子の計六人が仲良く喋っていた
……………俺はあの子供達に見覚えがある
間違いない、あれは…………
「えぇ〜、いいじゃんか別に。そんじょそこらの奴に負けることなんてあり得ねえっての。椎乃だって知ってるだろ?」
「それはそうだけど……………。ねえ、新をどうにかしてよ葉月」
葉月、そして椎乃と新。確かにそう呼ばれている
……………やっぱり、この子達は小さい頃の俺達なんだ
そしてここは俺達が昔、よく集まった空き地か。全然気づかなかったな、まあそれもしょうがないか、ここらは俺達が中学に上がる前に工事されて色々変わっちまったからな
どうやら俺の姿は見えてないみたいだ
………………多分これは小学六年生くらいの頃だな。丁度四年前………………
「………………ハッ、とんだ夢だぜ」
この日の夢を見ることになるなんざ、今日はなんていう厄日だ?
「噂って、すんげえ強くて危険なポケモンが出るってやつだろ?う〜ん、まあ椎乃の言うことが正しいと思うな。諦めろ新」
「えぇ〜、葉月はいっつも椎乃の味方だよなぁ。なあなあ、タケだって正体確かめたいよな!」
…………………小鳥遊 新《たかなし あらた》。一番元気のある奴だ、テンションの高さならハッチーにだって引けを取らない俺達のムードメーカー、小学校に入学したての時に、体育の時間ドッヂボールで何故か勝負になり、その末できた俺の幼馴染だ。あれは熱い戦いだった
「…………話を振らないでくれ。俺も森に行くのは反対だ、最近では警察が見回ってるらしいぞ」
こいつは真田 武《さなだ たけし》。新と仲良くなった次の日に新が連れてきてから仲良くなった。いつも静かで少し恥ずかしがり屋な部分がある。だがしっかりしてるところはしてるので新の抑制係みたいなもんだ。新とは家も近く、よくポケモンバトルもするらしい。良き友であり良きライバルってやつだ
「でも俺も気になるな。ユキはどう思う?」
暁 聡《あかつき さとし》。今俺と一緒の学校に通ってるサトシだ
「う〜ん、僕も少し気になるかな。そのポケモンと戦ってみたいしね、この人数なんだし負けはしないと思うよ」
名塚 優希《なづか ゆき》。見た目は中性的だが男、比較的大人しい性格の奴だ、こいつは俺と新の勝負を見て面白そうな奴らだ、と思ったサトシが一緒に連れて来た。大人しいと言えば大人しいんだが、どこか戦闘狂なところがあるんだよな…………
「……………はぁ、サトシとユキまで」
朝月 椎乃《あさづき しいの》。こいつも今俺と同じ学校に通ってる椎乃のことだ。実は一番目の幼馴染みは椎乃だったりする
「あぁ〜、見事に意見が分かれちまったな」
そしてこいつが俺こと天野 葉月《あまの はづき》。俺達六人はバトルの腕も凄かった
……………そう、この頃の俺はバトルが嫌いじゃなかったんだ
俺には姉さんが一人いる、名前は天野 皐月《あまの さつき》。俺の姉さんは今は都市の端っこの方で育て屋をやってはいるが、かつては凄腕のトレーナーだった
学校では常に首席、大会では毎回優勝とはいかなかったが優秀な成績を残していた
俺はそんな姉さんに憧れて、バトルの修行を始めたのが7歳の頃。その時に既に姉さんは中学生だった
そして俺の両親も元エリートトレーナー、二人とも何度も大会で優勝をしている実力者だ
毎晩毎晩修行した。学校から帰って皆と遊んだその後、姉さんの指導の元修行を続けていた
だから俺は六人の中で一番バトルが強かった。皆も俺とのバトルを経てどんどん強くなってったんだ
それも学校では回りに敵う者がいなくなる程
「あの頃の俺は輝いてたんだろうなぁ…………」
…………でも、四年前のある日、その事件は起こった
「ん〜、やっぱ少しくらいならいいかな。行こうぜ!」
………………いや、起こしてしまったの方が正しいかもしれない
「ちょ、葉月!「さっすが葉月!早速行こうぜ!!」…………はぁ、もう」
新が聞くや否や走り出す
「あ、……………ったく。待てよ新!一人で行くな!」
「楽しくなってきたなぁ♪相手は強いのかな?」
「行ってみればわかるさ!」
続いてタケとユキ、サトシも走り出した
「さっ、俺達も行こうぜ?椎乃。置いて行かれちまう」
「もう…………どうなっても知らないわよ」
そして小さい頃の俺と椎乃も後に続いた
「……………………」
正直言って、行きたくない
そう思った俺の視界は暗転し、視界が戻った時には………………森の中にいた
「……………………チッ、どうしても俺に見せてえようだな」
くそが、そう俺は悪態をつく
視界が変わり、目の前に見えているのは、暗闇と戦う俺達
「くっそ、なんだよこいつ!"かえんほうしゃ"!!」
「"えんまく"!!」
「"ラスターカノン"!!」
バクフーン、シードラ、タテトプスが技を繰り出す。だが敵には当たっているのかさえわからない
「っ!姿が見えない………!ぐあっ!」
暗闇の放つ黒い塊をへラクロスが受け、ユキと同時に吹き飛ばされた。黒い塊はユキとへラクロスを覆う。そしてそれが解けると、ユキとへラクロスは気絶するように眠ってしまった
「ユキ!!…………これは、眠らせてる!?」
ユキへ駆け寄ったサトシはそのことに気付く
「眠らせる技なら…………ワタッコ、"なやみのタネ"だ!」
サトシは自分のポケモンに命令を出した
だが応答がない
「ワタッコ?…………!既に、眠らされて………わぁっ!」
サトシに黒い塊が放たれ、サトシも眠ってしまう
「サトシ!…………うわぁ!?」
「タケ!!くっ、スティール、"ドリルライナー"!!」
新がドリュウズに命令を出す
ドリュウズは回転しながら暗闇へと突っ込んでいった
そしてその衝撃で敵の纏ってる暗闇が払われる
後になって調べたことだが、暗闇から姿を現したそのポケモンの名前
それは、ダークライというらしい
「な……んだ、こいつ。見たことないぞこんな奴!」
新が叫ぶ、俺達は全てのポケモンを知ってるわけじゃない。まだ未知のポケモンだって沢山いる
学校の授業で出たこともなければ話に聞いたこともない、そんなポケモンを知ってるなんて無理がある
『…………………』
ダークライは無言で新に手をかざす
「新!!」
「新ぁ!逃げろォォォ!!」
二人は新へと叫ぶ、だが二人の叫びは虚しく、新には黒い塊が放たれた
そしてダークライは、次はお前らだと言わんばかりにこちらへ寄ってくる
「来るなぁ!!バーン、"きあいだま"!!」
バクフーンの放った"きあいだま"はダークライへと直撃する
……………大分効いているらしい。ダークライは距離をとった
「椎乃は下がっとけ…………」
「う………うん」
どうやら俺は椎乃を後ろに下がらせるようだ
「"かえんほうしゃ"!!」
俺の指示でバクフーンは"かえんほうしゃ"を放つ
ダークライはそれを影に入ることで避けた
「影に入った!?くそっ、何処だ!?」
完全に落ち着きをなくしている俺、辺りを必死に探すが見つからない
「キャア!」
椎乃の悲鳴が聞こえる。俺が慌てて後ろを振り向いた
そこには椎乃に迫るダークライ、シードラは既に眠らされていた
『…………………』
ダークライはゆっくりと椎乃に迫る
「おおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」
だがその間にバクフーンと共に俺が入り込んだ
バクフーンは至近距離から炎を繰り出すがダークライの"悪の波動"によって防がれ、吹き飛ばされた
「バーン!……………!まずい、椎乃!!」
ダークライが俺に狙いを定めて黒い塊を放つが俺は椎乃を抱え間一髪で躱した
「うわぁぁぁ!」
だが衝撃波によって吹き飛ばされる
だが直ぐに態勢を立て直し、森の奥へと逃げ込んだ
『…………………』
「葉月ぃ……………」
「大丈夫、大丈夫だ椎乃。俺が守るから」
椎乃の頭を撫で、俺は残りの手持ちポケモンを全て出した
そして一斉に向かわせる………………だが
『…………………!!』
ダークライを中心に闇が俺の手持ち達を襲った
「そ…………んな……」
力なく倒れるポケモン達
「いやぁぁ……………」
俺の後ろで泣きじゃくる椎乃
…………もう為す術がない、終わりだ
そう思った
『…………………』
ダークライは無言で俺達を見つめる
そして俺達にトドメをさそうとしたのか、手をかざした瞬間……………ダークライは炎に包まれた
『バァァァァァァァァクァァァァァ!!』
バクフーンの"ほのおのうず"だった
「バーン!…………………バーン?」
何やらバーンの様子がおかしい
『バァァァァァァァァ、ァァァァァァァ!!』
「暴走……………してる?」
そう、バクフーンが暴走し始めたんだ。バクフーンの特性はもうか、体力が少なくなった時になる、所謂パワーアップ
それだけならまだ良かった。俺のバクフーンは、とても才能の溢れるポケモンだった。突出して凄かったのは潜在能力だ
俺のバクフーンはもうか状態になると他のバクフーンよりも強く炎タイプの技の威力が底上げされる。バクフーンはそれに耐え切れず、暴走してしまうことが多々あったんだ
「落ち着け、バーン!『ァァァァァァァァ!!』
ダークライへと"かえんほうしゃ"を放つ
悪の波動でガードしようとしたみたいだが、炎の威力が強すぎて防ぎきれなかったようだ
『ァァァ!』
間髪入れずに炎を叩き込むバクフーン。どんどんダークライを追い詰めていく
『…………………!』
炎に耐え切れなくなったのかダークライは影の中へ逃げ込んだ
『ァァァ!?……………バァァァァァァァァ!!!!』
標的を見失ったバクフーンは無差別に攻撃を開始した
『ァァァァ!!ァァァァ!!ァァァァ!!ァァァァァァァ!!!!』
「やめろ!バーン!!このままじゃ森が焼けてなくなるぞ!!」
『バァァァァァァァ!!』
「キャァァァァァ!」
「椎乃!!」
椎乃の真横を炎が通り過ぎる
『バァァァァァ!バァァァァァ!バァッ!?』
『…………………!!!!』
木の影から姿を現したダークライが暴走するバクフーンに最大の一撃をくらわす
『ァァ………………(ドサッ』
バクフーンは体力が尽きたのか、力なく倒れた
『……………………』
ダークライはバクフーンを少し見つめる。そして葉月を一瞥し、何処かへ飛んでいった
ダークライが飛んでいった後、警察が駆け付けて救出してくれた
家に帰ると親からひどく叱られ、姉さんには拳骨をもらった
………………それだけで、すんだのなら、どれだけ良かっただろうか
俺は、新、タケ、サトシ、ユキが目を覚ました後、あの時は家で寝ていたライデンを連れて椎乃の様子を見に行った
ダークライが飛び去った後、椎乃は気絶していたんだ
「椎乃ー、入るぞ?」
「どうぞ」
俺は椎乃の部屋へ入る。椎乃はベッドから体を起こした
「体調は大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
大丈夫、そう言われて俺は微笑む
するとライデンが椎乃の膝下に飛び乗った……………その時だ
「ひっ…………」
「椎乃?」
『ピィカ?』
椎乃の様子が明らかにおかしかった
「いや……………やめて、来ないで!」
『ピカッ!』
椎乃はベッドから飛び出て部屋の隅へ逃げるように移動する
そして膝を抱えた
「お、おい。どうしたんだよ椎乃」
『ピィカ』
ライデンが椎乃に近づく、すると椎乃はまた短い悲鳴をあげた
「恐い……………来ないで、いやぁぁぁぁ!」
椎乃は泣きながらライデンを拒絶する
その後、椎乃の泣き声を聞き、両親が部屋にやってきた
……………………ポケモン恐怖症、椎乃はそれになっていた
「いったい何で……………あの、ポケモンのせいだ」
本当にそうか?
「そうに決まってる」
自分でわかってるんじゃないのか?
「あいつ以外に何があるんだよ」
違う、あいつじゃない
「っ……………………くそぉ、くそぉ…………」
椎乃をあんな風にさせてしまったのは、俺のバーンだ
暴走したバーンが放ったかえんほうしゃが椎乃の横を通り過ぎた時、椎乃の顔は恐怖に歪んでいた
俺のせいだ
そもそも俺が行こうだなんて言わなければ良かったんだ
俺のポケモンは強くなりすぎてた。おやの俺が気付かない程に
そして相手との力量を見誤った、本当なら戦うことをせずに直ぐに逃げるべきだったんだ
「強さが俺を、俺達を………」
ならば強さなんてもういらない
これからはポケモンバトルは避けよう
これからはポケモン達をこよなく愛そう
もう、あんなことは繰り返さない
俺はあの日、そう誓ったんだ
感想待ってます!