私、榊原 陽奈はPSM部の部室にあるソファに座り、暁君が淹れてくれたお茶を飲んでいた
ここ、元社会科教室だったこの教室は広く、私達が使うスペースは主に半分程度だ。積み上げられていた椅子や机、粗大ゴミは皆で協力して撤去した
PSM部に入って………いや、正しくは天野君に出会ってからかもしれない。今まで友達………って言っても人間のだけど、友達が椎乃ぐらいしかいなかった私に、一気に友達が増えた。椎乃と友達になった理由も、同じあまり友達がいない同士だったからかもしれない。いや、私よりは多いかな………
天野君に出会ってからは、その友達の暁君、赤崎君、七瀬君と言った風に友達が増えた。男の友達は初めてだったので嬉しい
「覚悟はいいか八幡、サトシ。俺はできてる」
「いいぜナナ。俺もできてる」
「お前らの曲がっちまった道、俺が正してやるよ……!」
そんな私の男友達(一名除く)は、部室の残った半分のスペースで向かい合っていた
その手にそれぞれ、こんにゃく畑、ポッキー、プリッツを持って
「…………?」
私は目の前の状況に、首を傾げることしか出来なかった
「はぁ……」
目の前に座ってる椎乃が、背中越しに聞こえる声を聞いてか溜息を吐いた
「……天野君遅いね」
「そうね……」
額を押さえてる椎乃に取り敢えず声を掛ける。最近疲れてるのかな?この部活、始まって以来誰も来てないけど
「こんにゃく畑の良さをわからん貴様らには少しお灸を据える必要がある」
「喉に詰まらせたらどうすんだぁテメェ!」
「お年寄りや赤ちゃんに優しくなって出直してこい!!」
暁君に誘われて入ったこの部活、来た依頼を解決していくなんて結構面白そうな活動内容だ。未だに依頼は来ていないけど、椎乃もいるし、友達と一緒だからつまらないとは思わない。椎乃とはよく話をするし、天野君にはブラッシングの極意を学んだりする。暁君のお茶はおいしいし、赤崎君は家からお菓子を定期的に持って来てくれる。七瀬君とはチョロネコがコマタナと仲が良いから話もする
悪くない、と言うか楽しい
「プリッツのサラダこそが至高じゃないか!塩分補給出来るし!」
「ポッキーのなり損ないに用はない。と言うか、スティック系なんぞ論外だ!加えてる時に転んで、喉にガッ!ってなったらどうする!?」
「塩分補給したいなら岩塩でも舐めてろ!」
「なんだと!?」
最近は学校が毎日楽しく感じる。これが噂に聞くリア充ってやつなのかな?
学校から帰っては家にいる皆に一日起きたことを報告するのが日課になった
「ポッキーこそがお菓子の王様だ!見ろ、このスティックに付いたチョコを!!スティックとチョコ、両方の味を楽しめるポッキーこそが全てなんだよ!!」
「そんなのトッポだって変わらないだろう!」
「そうだ!それに大して違いがわからないじゃないか!!」
「トッポ軍の葉月はこの前の宿泊研修で我々の軍門に下った!」
「「なにぃ!?」」
「え?」
「ダメ、椎乃」
椎乃が反応してあの中に入って行きそうになったから取り敢えず引き止めるために肩を掴む
知り合ったばかりの椎乃はクールな感じだったのに、最近ではこっちが本当なのか天野君を心配して叱ったり、天野君達と一緒に赤崎君をからかったりするのをよく見る。友達のそう言った姿を見ることができて嬉しい反面、やっぱり出会ったばかりの私じゃそこまで引き出すことが出来なかったと少し残念に思う。聞けば天野君と暁君とは幼馴染らしいし、仕方ないことなのかもしれないけど
「「「あぁ〜ん?」」」
メンチ切りあってる三人を他所に椎乃を座らせる。椎乃の膝の上にチョロネコを移動させて立たないように保険をかけておこう
椎乃のトゲピーは…………あ、寝てる
「こうなったら仕方ない。くらえ、プリッツの力を!!」
「必殺、《神はポッキーの上にお菓子を作らず》!!」
「こんにゃく畑でこんにゃくとーれーたー!にゃっくにゃく!!」
………………
「アブソル。《かまいたち》」
私はボールを取り出して放りながら呟く
ボールに手を置いた時から勘付いていたのか、アブソルは既に風を纏っていた
ビュオゥ!!
「「「のわあぁぁ!?」」」
アブソルの放った風の刃は三人の間を通らせ、向こう側でお互いに相殺しあって消える
「…………食べ物を粗末にしちゃ、ダメ」
「「「は、はい」」」
うん、止まったようで良かった
「うぃー、お待たせぃ」
「お邪魔するわよー」
俺は後ろに自称スーパー生徒会長を引き連れて部室の中に入る。生徒会長の自己紹介の後、返答に困った俺はなんとか誤魔化してここまで来た。いや、ホントスーパー生徒会長とか………ねぇ?
「遅かったわね、葉月…………千歳さん!?」
「………….あ、生徒会長」
「なんで生徒会長!?」
おぉ、流石生徒会長。きちんと認知されてる。三人は生徒会長の姿を見て驚きの声を………いや、榊原さんはあげてないな
「久しぶり椎乃ちゃん。元気?」
「はい」
生徒会長と椎乃は本当に知り合いみたいだ
俺は二人が会話に花を咲かせるのを見た後、ベンチに座る
…………ん?そう言えば、ハッチーとナナが静かだな
「ハッチー、ナナ。お前らなんで静か………」
俺は二人の姿を見た瞬間、言葉が出なくなった
「「……………!」」
ガン見してたんだよ。会長を、二人が
確かに見た目は美少女だ。だからハッチーがガン見するのはまだわか………いや、お前確かロリコンだったよな?会長は発育良い方だぞ
んでもってナナ。お前もしかして一目惚れとかそんなんだったりするの?え?マジで?なんでそんなにガン見しちゃってんの?
「お、おいお前ら、どうs「「会長!!」」おぉう!?」
二人は大声を出しながらいきなり立ち上がりやがった。なんだなんだ?!
「か、烏山会長!な、ななななんでまたこんな辺鄙な所に!?」
「バカ八幡!まずは頭を下げろ!こんにちは会長!!」
「そ、そうか!こんにちは会長!!」
会長に詰め寄り早口に言いながら二人は手を前に出しながらガバッ!と頭を下げる
「「ファンです!握手してください!!」
…………はぁ?
「え、えぇと………」
流石の会長もこれには困ったようだ。椎乃や榊原さんに目で救援を送っている
「お前ら落ち着けって、どうした?いきなり」
「ナナも珍しいな。アイドル………じゃねえけど、そう言ったもんに興味無さそうに見えるのに」
進展しそうにないから俺とサトシが助けに入った
「「バカかお前ら!?」」
うぉう、なんだよ
「烏山 千歳先輩!青西中学校出身のスーパー生徒会長!」
まずナナが俺に詰め寄ってそう説明する
あれ?青西中学校って言えば、確かナナとハッチーの出身中学校だったか
「しかも!」
ハッチーはサトシに詰め寄って大声をあげる
「入学当初の成績は普通科であるにも関わらず1位!勉強、バトル、コンテストにおいて右に出る者は無しとまで言われ、この高校では今までの生徒の記録を全て塗り替えた張本人!!完璧超人とされ、容姿も素晴らしいことから七輪花のリーダー的存在でもあるんだぞ!!人柄も良く、先輩が中学に在学していた当時の生徒達はほぼ全てファンなんだ!そして………!」
ハッチーは息を吸うために一泊置く
「現アビノ都市北区の中で、最強の高校生だ!!」
……………なに?
「それ、本当?」
榊原さんが目を見開いている。結構レアな姿を見たな………
「本当よ。そこまで知っててもらえてたなんて、嬉しいわ」
会長はドヤ顔しながら扇子を開く。そこには北区最強と書かれていた
…………あの扇子、欲しいな。自由な文字を出すことが出来んのかな?
「し、知ってるも何も、俺達青チュー出身ですから!」
「そうなの?校長先生はお変わりなかった?」
「元気に頭を光らせてました!」
いや、それどういうことだよ……
しかし、北区最強ねぇ?
「ふーん……」
俺は観察するように会長を見る。確かに強いのはわかる。独特の雰囲気ってのがわかるんだ
だけど、北区最強………?ユキの方が強いような気がしてきたが………まあ、バトルしてみるまでわからないし
「どうしたの?あ、もしかしておねーさんに見惚れちゃってる?」
寝言は寝て言ってくれ
「葉月……」
「なに椎乃」
ちょ、目が怖いよ?
「北区最強………か」
サトシがボールを手に持ちゆっくりと立ち上がる
「是非ともバトルしてみたいな」
えー、なにこいつ。急にどうしたの?バトル漫画みたいな雰囲気出ちゃってるよ
「ア、アホ!!いくらサトシでも勝てるわけねぇって!」
「やめておけ。瞬殺とはいかなくても、負けは見えている」
サトシの実力は知ってるだろうに、二人がこう言うってことは相当なんだな
「私は良いわよ?バトルのレクチャーしてあげる」
向こうも向こうでやる気なのか。ニヤリと不敵に笑ってボールを取り出す
「………それなら、私も」
「陽奈!?やめときなさいよ……」
今度は榊原さんまでもが立ち上がった。やっぱり戦闘狂なのか……?まあ、ユキより重度ではないだろうけど
あれはやばいね。事ある毎にバトルしよバトルしよと引っ付いてくるから。その分コンテストとかは苦手なんだけどな
「ふふ、なんなら二人一緒にでm『ピカッ』アイタッ!?」
『!?』
カッコつけながら何か言おうとした会長の頭に何かが飛来した
「イタタタタ………もう、誰!?」
会長が後ろを振り向くのと一緒に俺達も会長の後ろに目をやる
『ピカッチュ』
そこには眼鏡を掛けたピカチュウがいた
因みに言っておくがライデンじゃない。何故ならライデンは部室の端の方でエレキと遊んでるのが視界に入ってるからだ。あぁ、今日も可愛いなぁお前ら
「ウ、ウツホ!?なんでここに」
会長がたじろぐ。ウツホと呼ばれたピカチュウは眼鏡をクイッと上げた後、会長に飛び乗って
『チュウ!』
電撃を発した
「あばばばばばば!」
「「か、会長!!」」
ハッチーとナナが声を揃える。なんか、お前ら会長のお付きの人みたいだぞ
『ピカチュウ。ピカピカッチュウ』
「わ、わかってるわよ。きちんと用事を済ませるってば………….というわけで、バトルはまた今度でもいい?」
ウツホと何やら会話して起き上がり、空いてる椅子に座る会長。用事ってなんのことだか知らないが、よく電撃受けて平気でいられるな。手加減されてたのかな?
「あ、はい。今お茶淹れます」
「…………」
会長が座ったので立っていた二人も座り、ナナとハッチーもいそいそと俺の横に並んで座る
用事………ね。恐らく生徒会関連のことだろうか?もしかしてこの部活、正式に受理されてないとか………?いや、教師からここの部室を使っていいって言われてんだし、それはないか
………あ!もしかして、勝手に許可なく掲示板とかにポスター貼って回ったからかな。やっべ、面倒なことになったぜ
「用事って言っても、多分今週の金曜日には担任から言われると思うんだけどね」
担任から言われる?お前の部、勝手にポスター貼ってんじゃねえよ、って感じに?しかも金曜か………なに、それまでに剥がしとけってことですか
「実はね、君達PSM部には頼みたいことがあって来たの」
頼みたい………こと
ってことは、初依頼!?
「いぇっふぅぅぅぅぅ!!人間からの初依頼、来とぅああああぁぁぁぁぁ!!」
俺は立ち上がって空に向かって大声で叫んだ
いやぁ〜、マジで嬉しい!もう、やばいくらい嬉しい!しかも最初の生徒の客が生徒会長だとは、これうまくいけば一躍有名な部活になるんじゃあないの!?
「お話をお聞きしましょう」
「い、意外と現金なのね」
「お茶どうぞ」
「ありがと」
「それで、依頼内容とは?」
取り敢えず立ったままもあれなので座って依頼内容を聞く
「来週の木曜日から春の選抜大会が行われるのは知ってるわよね」
「あの、北区の中央バトルアリーナでやるやつですか?当然先輩も出るんですよね!」
「えぇ、勿論」
春の選抜大会かぁ〜
春の選抜大会と言うのは北区の中央にある、アビノ北中央バトルアリーナと言われる場所で行われる大きい大会だ。北なのか中央なのかどっちかにして欲しい。アリーナの面積自体は大きいんだけどな
北区にある総勢25校の高校から選抜された20人の生徒がそこで四日間に渡り団体戦をする。アリーナに向かうのは20人の選ばれた生徒だけでなく、サポート要因……つまり、身の回りの用意をしたりする人達のことだな。その人達がだいたい10人程、引率の教師が5人くらいだったか
大会はシングルバトル、ダブルバトル、マルチバトル、トリプルバトルと言う風に部門ごとに分かれている
シングル、ダブル、トリプルバトルは3人ずつ、マルチバトルは6人ずつ。そして控えが5人。一組分しか控えがいない辺り、人数はもう少し検討した方がいいんじゃないかと思う。まぁ、恐らく足りない場合があればサポート要因から引き抜くんだろうけど
恐らく、今回の依頼はサポート要因になれって感じか?
「あなた達にはそのサポート要因として加わって欲しいの」
やっぱりか
「ですが会長。それは会長の一存で決められることなんですか?」
ナナが疑問に思ったのか会長に聞く。確かに、これは生徒会でなく教師側が決めることだろう
「サポート要因は参加を募るのよ。毎年希望者は少ないから、漏れることなく参加出来るはず。ま、人数が多くても私がちょちょいとすれば問題無いけどね」
それありなのか?まあ、依頼が出来なくなっても困るからいいんだけどな
「わかりました。その依頼受けましょう」
「そう言ってくれると思ってたわ」
会長はニッコリと笑ってそう言った
「俺達PSM部のメンバーは全力で選抜メンバーのサポートをさせていただきます」
……………と言っても
「多分、そこに座ってるサトシは選抜選ばれるでしょうけどね」
俺はサトシを指差してそう言った
「確か春の選抜って、3年からは上位10人が、2年からは上位7人、残り1年の上位だったと思いますけど。だとしたらそいつ3位なんで、多分選ばれるんですよ」
「あら、よく知ってるわね。調べたの?」
「姉さんが選抜出たことがあったんです。そん時に教えてもらいました」
てか、そうじゃなきゃなんのための順位だよ
「そうよ。選抜メンバー発表の3日前までの順位上位者が選ばれるの。出たいなら人は下剋上を狙うでしょうね」
「だってよサトシ」
「上等だよ」
それで負けたら笑えるぞ。………いや、まずないか、そんなこと。でも俺が下剋上仕掛けたらどうなるかな〜?しないんですけどね!
「と言うわけで、サポート要因にはサトシを除く俺達5人が入ります」
「わかったわ。依頼を引き受けてくれてどうもありがとう」
いえいえ、そんな
「あ、そうだ」
俺はとあることを思い付き立ち上がる
「?どうした葉月」
「いや、実はさ……あった」
鞄の中からカメラを取り出す
「俺達の部活はさ、人との繋がりを大切にしましょーってのもあるんだよね。だから依頼を受けたら、依頼を遂行する人はその依頼人と一緒に写真を撮る。そしてアルバムに入れることも活動の一つとしてやってるんだ」
三脚を取り出して組み立て、カメラを置いてタイマーをセット!
「へぇ、良いことだと思うわ」
「………写真、か。友達と写るの初めてかも」
会長に褒められ、榊原さんのちょっと悲しい真実を知ってしまった
………まあいい
「ほれ、急いで並んで並んで!依頼人の会長は真ん中で」
いつもは依頼が終わってからするんだけど、偶にはいいよな
俺が急かすと皆立ち上がり、それぞれ並び始める。遊んでいたライデンとエレキは、それぞれ俺とハッチーの頭に乗り、ウツホは会長の腕の中へ。椎乃のトゲピーを連れて来たチョロネコは榊原さんの肩に乗った
『はい、チーズ!』
カシャッ、と言う音が鳴る。撮れたみたいだ
カメラの元に皆で寄って撮れた写真を見てみる
「お、いい感じに撮れてんじゃん!ははっ、ナナお前珍しく半目じゃないのな!」
「うるさい。そう言うお前だって偶に変顔じゃないか」
「椎乃ちゃん、若干俯いてない?」
「そうですか?」
「榊原さん、こういう時はピースだぜ。ピース」
「…………こう?」
「そーそー!」
その後、十数分間写真で盛り上がった
「それじゃ、よろしくね天野君」
PSM部の部室の前、俺達は会長を送り出す
「任せてください会長。なんたって生徒からの初依頼だ、頑張りますよ」
「期待してるわ」
そう言って会長は、生徒会室かな?俺達に背を向けて歩き出した
その後ろ姿に手を振る
俺は知る由もなかった。まさか、春の選抜大会があんなことになるなんて
葉「さて、今回も久しぶりだぜこのコーナー?ゲストはこいつだ!」
武「……久しぶりだな」
葉「俺の幼馴染の一人、真田 武ことタケだ。現在はアビノ都市北区の中では一番頭の良い高校、アビノ高校ってとこに通ってる。うちはアビノ北高校だから、少しややこしいな」
武「好きな食べ物はこんにゃく料理ならなんでも。趣味はネットサーフィンだ。現在中1の弟がいて、家族4人暮らしている」
葉「最近高校どうよ。やっぱ頭良い場所だから大変なんじゃないか?」
武「そうだな………だが予習復習を欠かさなければ着いていけないレベルじゃない」
葉「マジか……そう言えばタケ、来週の木曜から選抜だけどタケは出んのか?」
武「いや、俺は今4位でな。サポート要因に回ろうと思ってる」
葉「タケが4位?お前、ポケモンどいつ連れて行ってんだよ。………まあいいや、やっぱユキは1位か?」
武「文句無しの1位だな。最近下剋上を多く受けるらしいが、全て笑いながら捻り潰してる」
葉「容易に想像出来るのがまた怖い………」
武「お前の方はどうなんだ?」
葉「ん?……あぁ、生徒会長直々にサポート要因になってくれと頼まれてな。サトシは選抜に選ばれるだろうから、他のメンバーと一緒にサポート要因に回るつもりだよ」
武「………そうか、PSM部を復活させたんだったな」
葉「ああ。ま、アリーナで見かけたら声掛けてくれ」
武「わかった」
葉「それじゃあ今回はこの辺で」
武「またな」
葉「バイバーイ!」