『下校時刻になりました。校内に残っている生徒は速やかに下校してください』
下校時刻を知らせる放送が鳴り響く
「今日も一日お疲れさーん」
「お疲れー」
俺達の部活は基本、依頼が入っていないのなら、下校時刻になったら解散といった形をとっている。と言っても、依頼なんぞ今日来たので初めてなのだからそんなこと一度もなんだけどな
各自湯呑みを片付けて棚へ。会長が帰ってからはやっぱり依頼なんぞ来ず、ゆったりだらりと過ごすしかなかった
「帰ろっか、チョロネコ」
『ナウ』
チョロネコを肩に乗せ、手早く帰りの準備を済ませた榊原さんが、最初に部室を出る
「そうだナナ、帰りに寄りたいとこあんだけど一緒に行かねぇ?」
「わかった。飲食店だった場合お前の奢りだからな」
その次にハッチーとナナが話しながら部室を出て、俺と椎乃、サトシが残された
「私達も行きましょう」
「おう。…………しっかし、なかなか依頼が来ないもんだなぁ」
自分の分の湯呑みを棚に戻した俺はライデンを頭に乗せ呟いた
どうやったら依頼が来るんだ?中学の時は初日から二件程依頼が来てた気がするんだがなぁ………ポスターも貼ったし
「ま、名前からして胡散臭いからな」
「お前が言ってどうする、お前が…………まさか、お前ずっとそんなこと思ってたのか!?」
「やべ………」
な、なんて奴だ………!今までそんなこと思ってやがったのかこいつ!
確かにね?ちょっとパクリっぽいとは思ってたよ?いや、てかパクリみたいなもんだけどさ。でも、他の名前にするとなるとポランティア部しか思いつかねぇもんだもんよ
…………いや、まあいい。俺に、そしてこの学校にはまだ椎乃がいる!
「し、椎乃はそんなこと思ってないよな?」
「…………私は中学の時省られてたからどうとも言えないわね」
「ぐはっ!」
こ、心が!心に、刃がシュビッ、と………!
「冗談よ」
「いや、冗談になってねぇから………俺の心どんどん抉られてってから」
マジで反省してんだからさぁ………
「いや、でも無視してばっかじゃなかったんだよ?ちゃんと見守ったりしてたんだからね?言ってやれサトシィ!」
「あれは中学二年生の秋頃だったか…………」
「語り始めてんじゃないわよ」
まあまあ、聞いてなって
「椎乃が帰り道、今時では珍しいナンパ野郎が現れた。ナンパする相手は勿論椎乃だ。椎乃はその時、軽くあしらってそのまま帰宅した」
「そんなことあった?」
「あー、あん時か」
うんうん、俺がカッコよかった時の話だな。確か
「若気の至りだったんだろうなぁ………中学で不良デビューでもしたんだろう。だけど、相手が悪かった………」
サトシは大きな身振り手振りを加える。何故か最後は額に手を置いてはぁ、と溜息を吐いたが………なにカッコつけてんだこいつ
「偶々…………そう、きっと偶々なんだ。偶々椎乃を見ていた葉月のエルレイド………ナイトがそれを見た葉月にそれを知らせ、それを知った葉月は………」
「俺は………?(ワクワク」
「俺達幼馴染みズを総動員させ、その不良をボコボコにして椎乃に近付かせないようにした挙句、椎乃の護衛を増やした」
そう、そうなんだよ!
「えぇ………」
え、なんで引いてんの?
「てか、サトシ。俺のナイトは偶々じゃないぞ、椎乃の護衛をさせてたんだよ。最近は外してるけど」
「だろうと思ったよ」
「カミングアウト連発されても困るんだけど………」
困るって言われてもな………心配なのは心配だったんだし、しょうがないと思うんだけど
「それに俺だけじゃなくて、タケやユキも付けてたはずだぞ」
「気にし過ぎだ、って俺は言ったんだけどな」
でもお兄さん心配だよ
「ま、お前のこと大切に思ってるってことだ」
「な……!なにいきなり言ってるのよ。馬鹿なこと言ってないで、早く帰るわよ」
ふふ、わかるぞ椎乃。照れてるんだな?長年幼馴染みやってる俺にはわかる。あれは照れ隠しだ
「照れんなよぉ椎乃」
「照れてない。自意識過剰はやめなさい」
「自意識過剰言うなし。なぁ、ライデン?」
『ピカ?』
あ、聞いてなかったのね。うん、なんとなくわかってた
どれ、あんまり話してばっかだと荒島ティーチャーが来て怒られても嫌だし、帰るかね
三人で部室を出て、鍵を掛けて下駄箱へ。靴に履き替える直前、俺はさっきまで考えていた問題が片付いていないことに気付きハッ!となる。思い出話に花を咲かせ過ぎた
「なぁ、二人とも。さっきの話に戻るけど、依頼が来るのにはどうすりゃあ良いと思う?」
「依頼なら来たじゃないか」
「来たっつってもなぁ………今すぐクリア出来るわけじゃねえし」
「中学の時と同じやり方で良いんじゃない?」
「中学の時はなぁ………なんか、創設してから次の日に依頼が来たからさ。そっから広まって行ったもんだから」
まあ毎日依頼が来ていたわけじゃないんだけどな。それに中学生ってなんか………な?高校生より慎重じゃないというか、中学生を経て高校生に成長するというか。好奇心旺盛と言うか?面白そうなことがあったらやってみてー!って思うじゃん。そんな感じも相まって依頼が来てたと思うんだよな。高校生は、何かこう………もうちょい慎重になる人が多いと思う
それに今日依頼は来たが、その依頼をクリアして、そしてその依頼主にうちの評判を広めて貰おうと言うのがこっち側の考えだ。俺達部員がいくら頑張って人を呼び寄せても限度ってもんがある。第三者からの意見ってのは大事なもんだぜ
「まあ、選抜が終われば会長がうちの噂を流してくれるだろ。てか、そう頼もう。そうすれば依頼も来るようになるさ」
「そうね。それまではゆっくりお茶でもしてればいいじゃない」
「俺は依頼を受けてぇの〜。じゃなきゃ楽しくねぇだろ?それに依頼受けなきゃこの部活の意味がねぇ」
この部活はそういう部活なんだから
「面白いから人助け、って言うのもな」
「人だけじゃなくポケモンもな」
まあ、来ないもんはしょうがないのかもな
「葉月ー、サトシー、朝月さん!じゃあなー!」
「また明日ー」
校門を出るとハッチーとナナが自転車で前を通り抜けた。そうか、そう言えばあいつら自転車で登校してたっけな
二人の挨拶に俺達もそれぞれ手を振ったりなどして答える
「うっし、帰りはなんかおやつでも買って帰るか。うちに寄って帰れよ、ついでに晩飯も食ってけ」
「いや、俺は今日帰って書類書かなきゃダメだから。また明日な」
「私も、今日はちょっと用事があるから」
「マジか〜…………ん?書類、ってなんだ?」
「手持ちの入れ替えの申請だよ。今週あたりから下剋上を多く申し込まれそうなんでな。負ける気もないし、選抜に参加させるポケモンももう決めたから、そいつらをな」
あー、成る程。学年3位、実質1位は大変だな
「椎乃の用事ってのは?」
「大したことじゃないわ」
「ふぅん………」
まあいいか
「あ、私はここで」
暫く歩いているといつも別れる場所とは違う道を椎乃が歩き出した
「ん?椎乃の家はまだ向こうだろ?」
「行きたい場所があるのよ。それじゃ、また明日」
「「また明日」」
椎乃が手を振って俺達と別れる。足元にチョコチョコ着いて来ていたトゲピーを拾い上げ歩き出した。わざわざ俺達を誘わないところを見ると一人で行きたい場所なんだろう。無理に着いて行く必要は無いな
……………そう言えば
「なぁ、サトシ」
「ん?」
「椎乃のトゲピーってよ、いつ進化するんだ?」
「……………進化のタイミングなんてポケモンやトレーナーの意志に寄るところが多いだろう。お前がライデンをライチュウに進化させないように、椎乃もトゲピーを進化させたくないんだろ。かわらずの石だってあるんだからな」
いや、まあ確かにそうなんだけど
「そういうわけじゃなくてさ、トゲピーって進化条件特殊じゃん?ていうか、未だに詳しくはわかってないだろ?」
トゲピーは進化するとトゲチックになることが発見されている。そしてそのトゲチックにひかりの石と言う道具を持たせてあげると、石の内部に存在するエネルギーがトゲチックに反応し、トゲチックはトゲキッスに進化する。ここまでは現在発見されているんだ
「確かに、トゲチックからトゲキッスに進化させる方法は明確になってるのに、トゲピーからトゲチックに進化させる方法は曖昧だよな」
「そうなんだよ。昔っから研究されてはいるんだけど、進化方法は明確になってない。一部の人間は住んでいる環境に寄るとか言ってっけど…………その別、トレーナーとの間にある何かがキーになってるんじゃないかと言ってる人もいる」
その間にある何かってのが、トレーナーとポケモンが心の底からリンクした時起こるあの現象。トレーナーの気のようなものをポケモンに上乗せするあの現象。それがポケモンに影響を及ぼし、内部に滞在し続けたエネルギーが進化する為のエネルギーへと変える
多分、そんな感じだと俺は思ってるんだけど…………
「そうなると、野生のトゲチックってどうなるんだ?」
「信頼関係にも寄るんじゃないか、って言う研究者もいるんだろ?一番有力なのはこの説みたいだし…………確かに、そうなると野生のトゲチックはどうやって進化したんだろうなぁ」
「だよな、まさかトゲチックのままで生まれてきたとか?」
いや、流石にそれはないない。マリルやカビゴンの例は聞いたことあるけど、トゲチックは前例がないからな
「てか、トゲチックって野生いるのか?」
「そりゃあどっかにはいるんだろうよ」
少なくとも聞いたことはないな
「けど、急にどうしたんだ?」
「いや………椎乃は本当にトゲピーを進化させたくないのかなーって」
「そう感じるのか?」
ん〜…………感じるって言うか
「よくわかんないけど、まあそんな感じかなぁ」
「一番付き合いの長い葉月が言うんならそうなのかもな」
「いや〜、でもわかんねぇぞ。同じ人間じゃねぇんだから、完全にわかってるわけじゃねえし」
小さい頃からの付き合いってもな、わからないことはわからん
「ん、それじゃあ俺はここで」
「あぁ、また明日」
サトシと手を振って別れる。俺も自宅へ向かって頭の上のライデンと戯れながら帰る
「…………悩みがあるんなら、相談してくれても良いんだけどなぁ」
ま、それも都合が良すぎる話だな
『ピィ、カチュゥ………』
「やっぱりここは良いわね」
葉月達と別れた私は、夕陽のよく見える丘の上に来ていた。そこに立つ一本の大きな木、その根本にカバンから取り出したビニールシートを敷いて座る
ここは昔、両親と一緒によく葉月と来ていた場所だ。小学校に上がってからは他のメンバーもここに連れて来て、空き地で遊んだ後はここで夕陽を見るといった風な毎日だった
夏なんかは暑い中、アイス片手にここまで来たものだ
「あんまり遠くまで行っちゃ駄目よ」
目を離すとすぐどこかに行ってしまいそうなトゲピーに注意をし、こちらへ手招く
トゲピーを膝に乗せて撫でる
「いつになったら………」
いつになったら、私のトゲピーは進化するんだろう
トゲピーを手持ちに加えてから4年と半年が過ぎた。その間に私のシードラは、皆の協力のお陰でキングドラになった。リオルはルカリオに進化した
トゲピー自体が進化を拒んでるわけじゃない。そうだとしたら私は進化させようとは思わない。トゲピーも望んでいることだから、だから進化させようと思う
リオルもトゲピーと同じで進化方法が明確じゃないのにも関わらずきちんと進化した。だったらその違いって何よ。一番有力な説では信頼関係って言われてるけど…………トゲピーと信頼関係が築けていないとは思えない
「強く、なりたいのに」
『ピ?』
「……なんでもない」
トゲピーが進化しないのは、まだその時期じゃないからかもしれない
例えそうだとしても今の現状が、お前はまだ弱いと私に語りかけているようだった
「葉月に、皆に追い付かないと………!」
一人だけ仲間外れって、辛いのよ
葉「はいこんにちは、葉月だぜ!さて、今回のゲストは………」
優「イェッフゥゥゥゥゥ!!まだ本編には出てないけど、皆のユキだよぉぉ!!…………こんな感じ?掴みOK?」
葉「いんや俺に言われても。てことで、今回のゲストはユキこと名塚 優希だ。タケと同じ学校に………って、これは前も紹介したな」
優「さぁ、バトルを「しーなーい」
葉「ほら、自己紹介」
優「僕の扱い雑だなぁ………まあいいや、自己紹介するから後でバトルね」
葉「しねぇって言ってんだろ」
優「僕の名前は………名前はいいね。タケと同じ学校に通ってる15歳独身だよ。好きな食べ物ラーメン、嫌いな食べ物は………特に無いね。あったっけ?」
葉「お前はコロコロ変わるじゃん?今は無いんじゃね」
優「さっすが幼馴染みだねぇ。ってことで無いわ!バトルが三度の飯より大好きさ!バトルって良いよねぇ、魂と魂のぶつかり合いって感じでさ。全力でぶつかり合ってこそのバトル!学校にガチメンバー連れて行かない皆はどうかしてると思うね」
葉「組み合わせと相性で変わるからな、あとコンディション」
優「よく言うよ。葉月は殆ど古参メンバーはお姉さんに預けてるくせにさ」
葉「うっせー」
優「どうすんのー?そんなんだと愛想尽かされちゃうよ〜?」
葉「そ、それはそれでキツイな………」
優「早目に向かいに行ってあげな。椎乃と仲直りしたんならね」
葉「あー……もー、なんでお前はデリケートな部分にずかずか入ってくるからなぁ」
優「それが僕クオリティってやつ?」
葉「OKOK、わかった。わかったから脱線しまくってる自己紹介へと戻ってくれ」
優「っても後は家族構成ぐらいじゃん?僕は一人っ子だよ、父さん母さんと僕の三人家族さ。昔から妹が欲しいと思ってたんだけどねぇ〜。椎乃がいるから。椎乃は僕らの妹だからねー。ね?」
葉「そこは俺達の共通認識だぜ!」
優「そうだよねー!んでもって、話が全然関係無い方向に向かっちゃってるよねー!」
葉「お前が言うんじゃねえよ!」
優「そんなことよりバトルがしたいです」
葉「したくないです」
優「したいです!!」
葉「後でサトシとのバトル取り付けてやっから我慢しやがれ!」
優「OK!!じゃあ僕サトシの所行ってくるね!」
葉「あ、ちょ待っ!…………相変わらずの戦闘狂め。それじゃバイバーイ」