「ふぁ〜あぁ……」
『チャァ〜………』
朝の日差しと共にオニスズメやボッポの鳴き声が窓から入ってくる。俺とライデンはベッドの上で大きい欠伸を漏らす。今日もライデンは可愛いなぁおい
「おはよー」
二階からリビングに降りて我がポケモン達に朝の挨拶をする。すると元気の良い返事が聞こえ、数匹が俺の胸の中に飛び込んできた。全く、やっぱりお前ら可愛いぜ!
ソファに座って集中してニュースを見ているナイトの頭をポンポン、と叩いた後、キッチンにいるサーナの元へ向かい同じように頭を叩いてやる。そして朝食を受け取って着席。もうすぐしたら椎乃が来る時間だろうか?何にしても今日も飯がうまい
「いただきます」
ニュースをBGMに、ゆっくりと朝飯に手を付ける
『ニュースです。昨夜、何者かの手によってアビノ都市ポケモン委員会本部からメガリングが二つ盗まれました』
「……………なに?」
聞こえた内容に耳を疑った。思わずご飯粒を口に運んでいた箸を止め、テレビへと視線を移す
ピーンポーン♪
詳しい詳細を知ろうとしたところに丁度インターホンが鳴った。俺はテレビに視線を固定しながらも玄関へ向かい、ドアを開ける
「おはよう、葉月」
「おはよう」
「あぁ、おはよう椎乃、サトシ。…………二人とも、ちょっとこっち来て」
インターホンを鳴らした主はもはやわかりきっていたが椎乃だった。今日は珍しく後ろにサトシもいる
軽く挨拶を交わした後、二人を急いで家に招き入れる。二人とも何を急いでるのかわからないような顔をしているが、俺としてはニュースの内容を早く見たいので我慢してほしい
『では、次のニュースです。………今大人気の青チャオ君が、来週行われる選抜大会の会場に訪れるようです』
マジか…………いや、そうじゃなくて。もう終わっちまったのかよ、メガリングが盗まれたってのに世間は興味をあんま持ってないみたいだな
まぁそれも仕方ないのかもな。メガリングやメガストーンも量産の目処が立っていると言っても、使うのは主にプロトレーナーや上位にいる高校生以上の学生のみ。しかも大会じゃ使用禁止だからな。例外として持ってる人はいるらしいが、それ以外の人達にとっては特定のポケモンがただパワーアップするだけの代物だ。ただまぁ、そのパワーアップの度合いがシャレにならんのだが
「どうしたんだ?葉月」
「いや、さっきニュースでやってたんだけどさ。昨夜、ポケモン委員会本部からメガリングが盗まれたんだってよ、それも二つ。もしかしたらテロリストの仕業かもしれない」
「メガリングが?…………というか、なんで二つだけなのよ」
そう、そこが疑問なんだよな。ポケモン委員会本部とか言っても警備なんて複数人で掛かれば大したもんでもないだろうし
「二つだけしか必要なかったとか?」
「二つだけ、ね…………なんにせよ、嫌な予感がするぜ」
しかも来週には選抜大会が控えてやがる。このタイミングでメガリングが盗み出されたってことはもしかしたら、もしかするかもしれねぇ。杞憂であることを願うが………
一学生である俺にも考え付くことだ。ポケモン委員会側も、他の学校の教員達やその他団体も勘付いてはいるだろうし、俺が心配することでもないか。選抜大会は東西南北と四ヶ所で行われるが………どこに行くかわからない上に、選抜大会当日には大勢の学生や教員が集まる
いくらテロリストがメガリングを保持していようが、大きなパニックになって学生が使い物にならなくなったりしなけりゃあ十分制圧できるだろ。うん、何も心配することなし!教員だけでも事足りるかもしれないしな!
「例えその嫌な予感が当たってたとしても、私達には何も出来ないわよ」
「確かに、テロリストが相手なんて危ないからな。こういうのは大人に任せておくに限る」
…………う〜ん、実力未知数の相手だから何とも言えない
「まあでも、もしものことがあった場合すぐに逃げるんだぞ?椎乃」
「なんで私だけなのよ」
「お兄さん心配で心配で………なあ?サトシ」
「ああ、心配だな」
「私の方が心配になってくるわよ……」
なにを心配なことがあろうか。いざとなればサトシとかが蹴散らしてくれるし
俺はまだ残っていた朝食を手早く片付ける。学校の準備は既に終えている。俺は用意ができる人間なのだ
さて、そろそろ行こうかね
「おはよ~っすお三方」
「既に三人が一緒に登校している姿も見慣れたな」
教室に着くといつもの二人から挨拶をもらう。取り敢えずナナにだけ挨拶をした後にハッチーへ質問を投げかける
「よお、ニュース見たかよ?メガリングが盗まれたってよ」
「ねぇ、その前に俺に挨拶は?ねぇ」
「そうだよな~。ほんっと、ざるだよなセキュリティ」
「おかしい、会話が何一つとして噛み合ってないぞ!?」
「おハロー」
「お、おはy「榊原さん」
「おはよう」
「俺じゃねえのかよ!?」
朝から元気良く俺には突っかかって来るハッチー。どこからそんな元気が出てくるのか…………あ、俺がそうさせてるのか。はっ!俺がいれば世界中の皆が元気になるとしたら………!?いや、流石にそれはないな
てかハッチーうるさい。唾散ってる
「はいはいおハロー」
「お前は俺をからかわなきゃ気が済ねぇのか………!」
いや、そうでもない
ハッチーをゆるりといなしながら自分の机に鞄を置く。他の面々も机に鞄を置いて一時限目の用意を始める。さて、今日の提出課題は………
「あれ、今日の提出課題なんだっけか………」
「数学のプリントよ」
「あぁ、ありがと。そういや………あったあった」
………ん?今、誰だ?救いの声は確か横から聞こえたはずだ。だが確か、俺の横の席と言えば…………
俺は数学プリントを取り出しながら声の主の方へ顔を向ける。そこにはやはりと言うべきか、なんと言うべきか
席に着き、カバーの付いた本を読んでいる、雪のような白い髪を持つ彼女。そう、日ノ丘さんだ
「えと………ありがとう?」
「…………なんで疑問文なのかしら」
「いやぁ、意外なもので」
「教えてもらった人に対しての態度じゃないわね。天野君、一度常識を学び直してくることをお勧めするわ。あ、そうそう、突然だけどそこから飛び降りてもらってもいいかしら」
「やべぇよ、俺の中で一番常識語って欲しくない人に言われちゃったよ。しかも言った本人が間髪入れずに常識とは逸脱したことを言っちゃってるよ!」
「冗談よ。そこら辺に植えてある木のように気にしないで…………木だけに」
「くだらねぇよ!」
それに俺は偶に木とか観察するよ?よくタネボーとかいるからね。他にも鳥ポケモンとか、沢山。イトマルやレディバもいるところにはいる
「く………日ノ丘さんと話すとペースが乱されるぜ」
「大変だなぁ、お前も」
「サトシ………他人事のように言うなよ」
「他人事だろ」
「だが幼馴染だ」
「だからどうした」
くそっ!なんて奴だ、幼馴染を見捨てるなんて幼馴染のすることじゃねぇ!俺だってサトシが同じ立場だったら見捨てるけど。いや、だって……ねぇ?実際そんなもんだぜ
「おー、席着けよー」
プリントを教卓へ出し終えると同時に一時限目の担任教師、萩原 誡《はぎわら かい》先生が教室に入ってくる。見た目は若いが、実年齢は40を過ぎているという見た目詐欺な人だ。荒島先生とはこの学校の二大教師を務める、この学校で最強の先生の一角…………らしいというのがハッチーからの情報である。さっきから俺に聞こえるように呟いてこちらをチラチラと見てきてるのがウザい
てか、一時限目は古文か………朝っぱらから重いぜぇ
「あぁ、そうだ。今日のニュース見た奴は知ってるかもしれんが、メガリングが盗まれたらしいな。全く、委員会のセキュリティもざるだよな」
あんたもやっぱそう思うか
「誰が盗んだのかわからんが、外に遊びに行く時は気を付けとけよー。もしかしたら事件に巻き込まれるかもしれないからな」
大丈夫、そんな時はサトシがなんとかするから(他人任せ)
「んじゃ、授業始めるぞ。俺が言ったことしっかり暗記してきたかー?赤崎、言ってみろ」
えっと、確か助動詞を暗記して来いとか言ってたっけか。ハッチーが暗記してるはずねぇー
「上右下下下下左上下右上左左右です」
「お前は何を暗記してきたんだ」
やれやれ、やっぱりな…………
目の前でボケるハッチーの頭をぶっ叩いてから、肘をついて窓から空を見上げる。ポッポやオニスズメの大群を見ながら授業を聞き流す体制に入る
「今日も俺達って平和だぜ………」
そう小さく呟いた
そして時は流れ、選抜大会が始まる
きっと、これから起こる出来事を俺は………俺達は忘れることはないだろう
高校でのイベントだから、と言うわけではなく。もっと、違う意味で
俺達がその出来事へ身を投じるまであと…………
葉「ハローハロー!さて、次回からいよいよ選抜大会が始まるってことで、このコーナーは少しの間だけリニューアルするぜ!そして、次回から!新章スタート!第1話からここまでは第1章、次回からは第2章が始まるんだぜ!
その名前は〜…………!」
『第2章:春の選抜大会動乱編』
葉「お楽しみに!あ、今回このコーナーはお休みね。リニューアルの準備中でございます」