「その笑顔が嫌いです」に評価を2個も頂いてめっちゃ嬉しいです!
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自己犠牲の精神などとうに捨てた。
「優しい優等生」という肩書きで、自分に虚構で塗り固めた仮面を被せた。
本当の俺って、何だっけ。
もう、思い出せない。
もう、何も感じない。
もう、それでいいんだ。
絶対に
そうだ、俺はもう氷川紗夜を信じない。裏切り者に与える慈愛などある筈が無い。常に冷徹でなければいけないのである。
氷川紗夜が例え今でも俺を信じていようと関係ない。
あの日俺を裏切った氷川紗夜は裏切り者であり、それをもう信じようとしない俺も氷川紗夜にとっては裏切り者なのだろう。
だから
なんだこの複雑な設定は。頭がおかしくなりそうだ。
…いや、もう既に狂っている。の方が正しいんだろうか。
もう、どうだっていいや。
狂気が
それが俺のやり方だから。
それが
ああ、もう戻れないところまできてしまったようだ。
俺はもうどうしようもなく
神様、見ていますか?
こんななめ腐った世界もそろそろ飽きてきたんじゃねぇか?
俺が
───氷川、紗夜。
☀☀☀☀☀☀☀☀☀☀
氷川紗夜による新入生の決意みたいな演説も終わり、長ったらしい校長の話もやっと今終わって退場する所である。
話こそ長かったものの、結構有意義な時間だったと思う。内容はためになったし…多分だけど。
そんなことよりも、だ。
まず作戦…作戦なのかも分からないが一応作戦ということにしておこう。
作戦を決行するにあたって、「氷川紗夜との接触」は最重要だろう。てかそれを実行しなきゃ何をしに来たんだって話になってしまう。
決行は放課後。初日だし授業もないから多少は楽なはずだ。
そう考えていると、帰りのSHRが始まるチャイムが鳴った。今まで煩いほど新しい友達と駄弁っていた人たちも一斉に席に着く。
そろそろまた
放課後。
煩かった連中も消え、先程とは打って変わって教室内は静寂に包まれる。教室内に残っているのは俺と…
─氷川紗夜だ。
ヒュー、ラッキー。計画通り、と言ったところか。
しかし、この状況は非常に嫌なあの日を思い出す。あの日と似たような状況で俺の復讐劇が始まるなんてとんだ皮肉じゃないか。
正直そんなことどうでもいいだろう。どちらにせよこちらにとっては早く忘れたい記憶なのだから。
この復讐劇が終わらない限り、忘れることなんてないだろうけどな。
なんて自分のことを考えているとついさっきまで黒板を綺麗にしていたはずの紗夜がスタスタとこちらに歩いてくるではないか。
「すいません、ここの教室の戸締りをしてから担任の先生のところへ行かなければならないので教室から出ていってもらえますか?
…苗字呼び、か。
何を悲傷しているのだろうか。もう今になって紗夜の事をどうこう考えたって仕方がない。あちらも距離を取りたいと言う事なのだろう。
ここは大人しく引き下がるとするか。紗夜に接触出来ただけでも十分である。十分だよな?
「分かったよ。
皮肉を込めてそう言い放ち、速やかに教室を去る。
今思えばここから、いや、もう既に始まっていたのかもしれない。
ここから
☀☀☀☀☀☀☀☀☀☀
紗夜と接触出来ただけで良かったとは言ったが、流石に予定より接触時間が少なかった。これは前言撤回もしたくなる。
…しかし、今帰っても暇潰しになるものはほとんどないし学校にいた方が楽しいまである。どうしたものか。
ふと教室を出て直ぐの廊下で立ち止まり、窓からグラウンドを展望する。
ここ花咲川学園が男女共学になったのは最近の事ということもあるのだろう。グラウンドを見た感じでも男子は見当たらない。…まあ当然だろうな。
確か今年入った男子は俺の親友2人も含めて指で数えられる程の人数だけだったはずだ。下心などと言うものは生憎持ち合わせていないから男性諸君はそこのところを理解してほしい。
何せこっちの『お目当て』は氷川紗夜しかいないんだからな。他の女になど更更興味ないし。
もうひとつ、近隣の高校である「羽丘学園」も共学になってこそはいるものの、羽丘だとそもそも紗夜がいないのでは本末転倒だし、「苦手な奴」も実はいたりする。…なんか寒気がしたな。気のせい、だよな?
思考して突っ立っていても仕方がない。今日の所はもう帰るとしよう。そう思い立ち、廊下を急ぎ足で降りていく。
それで終わればよかったんだがな。
「おねーちゃーん!?どーこーにーいーるーのー!!??」
嘘だろ…?なんで
とりあえずバレると面倒くさいのは目に見えているし、平然を装ってこの場を凌ぐことに専念しようか。
「あっ!ねえねえ君!おねーちゃん知らない!?」
「いや…初対面の人におねーちゃんとか言われても分からな「だって、私たち会ったことあるよね?」…え?」
いくらなんでもバレるの早すぎじゃないか…?昔会ったっきりだ。こちらの風貌も変わっている…少なくとも俺はそう思ってるからそうであって欲しいのだが。それ以前に相手が勘違いしてるって可能性もあるわけで···
「んー?
今度こそ前言撤回だ。完全に負け確定だ。あーくんなんてコイツにしか呼ばれたことはない。
「お久しぶりですね。
「ほーら!やっぱりあーくんじゃん!」
紗夜と混同してしまう可能性もあるので、日菜さんと読んでおくことにした。そう、コイツが俺の苦手な奴『氷川日菜』である。
日菜とは紗夜と同じくらい時を過ごしているが、いつまでたってもコイツに慣れることは絶対にないだろう。
宇宙人なのかと言いたくなる程のよく分からない言語。突飛過ぎる行動の数々など、挙げればキリがない。
話が逸れてしまった。閑話休題。
例え昔からの縁があっても仮面を被るのは止めない。他の人だけ態度を変えるというのはなんとなく嫌な感じがすると言うのもあるし、いつも被っていないと怪しまれても不思議ではない。
だから素はあまり出さない様にしているつもり。つもりである。
「で、おねーちゃん知らない?」
「氷川さんなら多分まだそこの教室にいますよ」
「むー…」
日菜は少し頬を膨らませている。
「…どうしたんですか?」
「なんで私のことは日菜なのにおねーちゃんは紗夜って呼ばないの?」
「そんなこと、どうだっていいじゃないですか」
少し怒気が込められた言い方をしてしまう。
「で、なんで羽丘の生徒であるあなたがここにいるんですか?」
この雰囲気のままだと少々いたたまれないので、話題を変えつつ最も気になっていたことを聞いてみる。
「おねーちゃんと一緒に帰ろうとしただけなんだけど新しい用事出来ちゃった♪」
「あなたにとって氷川さんは何なんですか」
「おねーちゃんはおねーちゃんだよ?…それよりもるんっ♪てくること見つけちゃっただけ!」
やはり俺にはコイツのことが理解できない。なんだよるんって。本当に宇宙人なのではないかと疑ってしまうのも仕方の無い事なのかもしれないと思ってしまった。
「あーくんも早く早く!こっち来て!」
「はぁ…」
ため息をつきながらしょうがなく日菜について行く。
☀☀☀☀☀☀☀☀☀☀
「ここらへんでいいかなー」
連れてかれたのは人気のないどこか分からない教室。階数的に2年の教室だろうか。
いや俺1年だぞ?特別教室とかならまだしも他の人が使う席に用事もなく座るのは…あ、はい座ります。
「ここでお話しようよ!」
「は?何言ってんすか。大体氷川さんのことは…」
「
「………」
コイツ…いや、まさかな。しらを切って平常運転で行くんだ。落ち着け星川天翔。
「さっきから何を言ってるんですか?何のことかさっぱり分からないんですが」
「んー…あーくんがおねーちゃんを恨んでて、その
「どこでその事を知った。今すぐ教えろ」
「やっぱりそっちの方がズガガーン!って感じであーくんっぽいよ」
「そんなこと聞いてねぇよ。早く答えろ」
そこまでバレているならもう日菜の前で仮面を被る必要はない。容赦なく質問を問いかける。
「
「…ちっ」
どうせ誰かから教えて貰ったとかではなく、天才の勘というやつなのだろう。全く、面倒臭いんだよ。これだから氷川日菜という人間は。
「なんであーくんはそんなことしようとするの?正直るんってこないよ」
「お前に何が分かるってんだよ。第三者が口出してんじゃねぇよ」
「ふーん…」
日菜はこちらに目を合わせず、スマホの画面を見つめて何か弄っている。
…そうだ、第三者が客観的に見てもこんな気持ち分かるはずないんだ。分かってたまるか。天才さんでもこればっかりは分からないだろうよ。
「じゃあさ、おねーちゃんと直接話してみる?」
「余計なお世話だ。さっさとアイツのとこ行ってこいよ」
「もう遅いよ♪」
そうやって日菜はスマホを画面を俺に見せてくる。そこには紗夜とのメールでのやり取りが映っていた。
『おねーちゃん!今花咲川の2年生の教室にいるよ!』
『なんで勝手に入ってきてるんですか!』
『話があるって人がいるから来て欲しいなー』
『それが終わったら帰ってください』
『はーい!』
なんだこれは。今からここに紗夜が来るってことか?
「てことでおねーちゃん来るからよろしくー!」
「勝手なことすんじゃねぇよ」
「あーくん、怖くないよ」
「…見栄張ってんじゃねぇ」
「じゃあなんで
「黙れ」
「はーい♪」
つくづく勘のいいヤツだ。俺だって好きで知人に威圧を掛けたい訳じゃない。昔みたいに仲良くやりたい気持ちさえある。
もちろん
けど、もうダメなんだ。そんな想いもいずれ憎悪で忘れる。
そうやって幾つもの想いが消えてきた。いや、消してきた。
元に戻るには時が遅すぎた。
昔みたいに遊ぶには時が経ちすぎた。
もう手遅れなんだよ。
尤も、一番手遅れなのは俺なのだが。
「じゃあ教卓の方に隠れてるからよろしく〜!」
「おいちょっと待っ「どうかしたんですか?星川さん」…いや、なんでもないです」
即座に仮面を被り直す。流石紗夜とでも言うべきか、日菜がメールをしてから数分でこちらに来てしまった。
と言っても話すことがない。あのクソ天才野郎が呼び出して来たんだから…
「こちらも忙しいのですが…」
「あっ…その…すいません」
「いえ、そういうつもりで言った訳ではありませんので。…そういえば、私に似た別の学校の服装をした人を見ませんでしたか?」
「あっ…えっと…」
『教卓にいる』というのは少々、というか大分まずいだろう。
おい今教卓ガタッって言ったぞ何してる氷川。
…とりあえず誤魔化すことにする。
「会いましたけど…すぐにどっかに行っちゃいました」
「そうですか…」
いや待てよ…?
俺は先の会話で一つの疑念を抱く。
どう考えたっておかしい。
どうして紗夜は
いや、そもそも日菜とは紗夜ほど話したことはないし…それも当然なのか?
などと考えていると明らかに「早くして下さい」と言いたげな顔をした紗夜が視界の片隅に見えた。適当な事でも早く言った方が良さそうだ。
「あの…」
「何ですか?」
「いじめってどう思いますか?」
「…はい?」
無意識。本当に無意識に出た言葉だが、この状況においては大正解だったかもしれない。
さっきの違和感を確かめるための思い切った質問。…しかしまぁ反応は当然の結果だ。
知っているヤツだとしても突然こんなこと言われたらこんな反応をしてもおかしくはない。むしろ引かれる可能性だってある。
「いじめ…ですか」
「…はい」
しかし、氷川紗夜は違った。俺を真正面からその翡翠色の瞳で見つめる。そして口を開く。
…なんだそのどこまでも見透かされてそうな瞳は。
「何故いじめが起きているのか…私には到底理解できません」
俺の質問に丁寧にぽつぽつと答える。
「しかし次期風紀委員を目指す身として…氷川紗夜としてせめてこの学校で起きているいじめだけでも止めたいとは思いますね」
しかし、
「…私には昔、親友がいたんです」
「…ッ!?」
こいつは俺を見てない。真正面から見つめているのは俺じゃない。
もちろん目は合っている。こいつは《何を見てる》?
見ているところが違う…というか。まどろっこしい。
「その親友はいじめを受けていたんですが、止めたくても止められなくて…それが悔しかったんです」
明らかに俺のことだ。
本人の前で話すって一体こいつは何を考えているんだ…?
お前も俺の事を全部知ってる、なんて言わないよな。
「けど…皮肉、なんでしょうかね。何故そうなったのかも分かりませんが…その時のことは鮮明に思い出せるのに
「…氷川さん」
「何ですか?」
「まだ会って間もない男にそこまで話すのは、良くないと思いますよ」
嘘…だろ?
そんなバカなことあるわけない。
「星川さん、なんで泣いてるんですか…?」
あれ…?なんで俺泣いてんだろ。
「ありがとうございます…話は終わったので帰ってもいいですよ」
「いや、何故泣いているのかを…」
「あなたには関係ないでしょう!?」
「…ッ」
「お願いします…もう帰ってください」
紗夜は教室から出ていく。
あぁ…あの日みたいだな。
今日という日は皮肉の連鎖で繋がっている。本当に最悪だ。
「…分かってくれた?」
日菜が教卓から出てくる。
「いや…何がなんだかわかんねぇよ」
「あのね」
日菜は口許をゆっくりと開き、呟く。
「おねーちゃんね、
「…は?」
日菜のその言葉に俺は唖然するしかなかった。
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