けものフレンズR ・君と歩く道・   作:yatagesi

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クリーンセンターを出発し、カラカルとともに旅をするともえ達。
途中深い霧包まれラモリさんも機能停止、それでも霧の中を進むと現れる不思議な建物。
そこは美術館、黒い服をまとったアードウルフの縄張りだった。
機嫌がいいという彼女の案内で収蔵品を見せてもらうことに、絵や写真、ポスター、彫刻、どれも見たことないものばかり。
そんな中で、カラカルのなくした記憶が見つかる、セルリアンに奪われていた、大切な記憶が。
アードウルフに見送られ、美術館を後にする、そしてカラカルも記憶を取り戻してここでお別れ、ともえ達はへいげんへ、カラカルは改めてセーバルの元へと歩みを進めた。


第8話 せんろ

森を抜け、平原へと入ったともえ達、草原の中を突き抜ける道を進んでいく。

 

ともえ「む~」

イエイヌ「ともえさん、仕方ないですよ」

ロードランナー「こればっかしはどうしようもないぜ」

ラモリ「キゲンヲナオセ」

 

膨れっ面でバイクを走らせるともえ。

側車のイエイヌ、ロードランナー、ラモリが声をかけても変わらない、と言うのも。

 

ともえ「だって、平原に入ってからフレンズちゃん一人も見てないんだよ!」

イエイヌ「珍しいことじゃないんですよ」

ロードランナー「道も違うし、いつもであるくわけじゃねぇし」

ラモリ「フレンズゴトニ行動範囲、時間ハ異ナルシナ」

 

フレンズが好きなともえにとって、静な平原は退屈だった。

新たな出会いもわくわくもない一本道を耐えれるほどに大人ではないのだ。

 

ともえ「ラモリさん、この近くに面白いのない?」

ラモリ「ナイナ」

ともえ「けち」

イエイヌ「ともえさん」

ロードランナー「今のは無茶ぶりだろ」

ともえ「だって」

イエイヌ「そのうち、誰か出てきますよ」

 

不機嫌なともえをイエイヌとロードランナーが宥めつつ、バイクは進んでいく。

背の高い草が一面に広がり、風が走る姿が見える。

後はフレンズがいれば最高なのに、何処にもいなかった。

 

ともえ「早くフレンズちゃんに会いたい」

イエイヌ「そうは言っても」

ロードランナー「セルリアンもいるしな」

 

このまま何もないかとバイクを走らせていると、草原に切れ目が見えてきた。

 

ともえ「あれ、なんだろってきゃぁ!」

イエイヌ「うわぁ!」

ロードランナー「なんだ!?」

ラモリ「ナニカニ乗リ上ゲタミタイダネ」

 

バイクを止めて確認すると、そこには石とも木ともちがう、どっちかと言うと石よりの棒が二本並んでいた。

 

ともえ「ラモリさん、これは?」

ラモリ「コレハ線路ダネ、セーバルコレクションノ機関車ガ走ル道ダヨ」

イエイヌ「あのおっきいやつが」

ロードランナー「この上を」

 

セーバルコレクションの機関車は凄く大きく、この上を走り回る姿は、イエイヌとロードランナーには想像できなかった。

一方、ともえのテンションは上がっていた。

 

ともえ「ねぇ、この線路、どこに向かってるの?」

ラモリ「サバンナチホーダネ」

ともえ「決めた、ここを走る!」

イエイヌ「ともえさん、そんないきなり」

ロードランナー「走れるのか?」

ともえ「イエイヌちゃん、ゴマちゃん、この先にワクワクが待ってる気がするの、さぁ、行くよ!」

ラモリ「走ル列車ハ無イハズダヨ」

 

ともえはバイクを線路に侵入させると、アクセルをふかして加速する。

砂利道い木材が埋まっていて走り心地はあまりよくないが、ともえのテンションは上がる一方であった。

 

ともえ「たっのっしー!」

イエイヌ「ともえさん!速度出しすぎです!」

ロードランナー「め、めちゃくちゃ揺れてるじゃねぇか!」

ラモリ「線路ハバイクデ走ル場所ジャナイカラナ」

 

速度を上げていくともえ、バイクは上下左右に激しく揺れて、イエイヌとロードランナー、ラモリは飛ばされないように必死である。

 

ともえ「あたしは風、風になるの!」

イエイヌ「何言ってるかわかりません!」

 

もはやテンションがとんでもないところまで上がったともえ、だがバイクの方はそうでもなかったらしい。

急に速度が落ちていくと、止まってしまった。

 

ともえ「あ、あれ?」

イエイヌ「止まっちゃいましたね」

ロードランナー「や、やっと終わった」

ラモリ「接続不良ダネ、再充電ガ必要カモ」

ともえ「直すのは時間がかかる?」

ラモリ「ソレナリニハ」

 

線路の上で立ち往生、何も来ないとはいえともえのテンションは下がり、イエイヌとロードランナーは少しほっとしている。

ラモリはすぐに点検を始めるが、ともえのテンションは落ちていく。

 

ともえ「つまんない」

イエイヌ「我慢してください」

ロードランナー「無茶な走りをするからだぜ」

ともえ「だって」

イエイヌ「・・・!」

 

イエイヌの耳が少し動くと、何かに気がつき来た道を振り返る。

 

ともえ「イエイヌちゃん、どうしたの?」

イエイヌ「何かが来てます」

ロードランナー「セルリアンか?」

イエイヌ「いえ、セルリアンの匂いはしません」

ラモリ「サンドスターローノ濃度モ低イ」

ともえ「じゃあ、なにが?」

 

何かが近づいてくる、それに身構えるともえ達。

少しすると、遠くから何かが近づいてきた。

 

ともえ「あれって、フレンズちゃん?」

イエイヌ「みたいですね」

ラモリ「トリアエズ、バイクヲ移動サセルヨ」

ともえ「そ、それもそうだね」

 

皆でバイクを線路から降ろす、やってきたのは薄グレーの髪をポニーテールでまとめ、おでこを出して、どこか制服のような服を着たフレンズ。

彼女あバイクよりも大きな箱を引っ張っていた。

 

フレンズ「あら、そちらの皆さん、どうしました?」

ともえ「あ、あたしはともえ、こっちはイエイヌちゃんとゴマちゃん、ラモリさん、えっと、あなたは?」

フレンズ「私はロバ、フレンズ車軌道の引き手をしてるの」

ともえ「フレンズ軌道?」

イエイヌ「聞いたことないです」

ロードランナー「俺もだぜ」

ラモリ「該当ナシ」

 

ロバの言うフレンズ車軌道が何かわからなかったが、彼女が引っ張ってるものに似たものを見たことをともえが思い出した。

 

ともえ「あれ? ロバちゃんの引っ張ってるのって、セーバルさんのコレクションにあった客車に似てない?」

イエイヌ「そういえば、短いですけど、後ろつながってる変な屋根のやつはジャガーさんの船にも似てる気が」

ロードランナー「えっと、重そうだな」

ロバ「これは客車、後ろのは貨車、フレンズ車軌道はフレンズが客車や貨車をひっぱる鉄道なんですよ」

ともえ「へー、力もちなんだ」

ロバ「えっへん!」

 

自慢気に胸を張るロバ、ともえは図鑑を取り出し確認すると、たしかにロバはそうした力仕事が得意と書いてあった。

 

ロバ「ところで、皆さん、何か困ってるでしょ」

ともえ「え、うん、じつは」

イエイヌ「旅の途中でバイクが動かなくなって」

ロードランナー「なぁ、その貨車ってのに、乗せてもらってもいいか?」

ロバ「バイクなら、皆さんは客車の方に」

ともえ「いいの?」

ロバ「頼られるのはうれしいので」

ラモリ「僕ハバイクノ修理ガルカラ貨車ニ乗ルヨ」

ロバ「では、急いでください」

 

ロバにも手伝ってもらい、貨車にバイクとラモリさんを乗せると、ともえ達は客車に移動する。

よく見ればこの客車、バスの後ろを向かい合わせに二つつないだものらしい、入り口はバスの展望デッキ。

車内に入ると、ネットがかけられた箱の中に、フレンズが二人座っていた。

一人はグレーのワンピース風水着に手足にカバー、手には牙のようなものが上下二段にくっついた鎌を持つ、薄いグレーの髪を持つフレンズ。

二人目は不思議な色合いのネックウォーマーとリストバンドをして、グレーのカーディガンにダークグレーの半そでワイシャツ、白いライン入りのスカートをはいた、グレーのロングヘア―のフレンズ。

二人の前が開いていたので、ともえたちは向かい合う形で座る。

 

フレンズ「おや、私たち以外にもお客さんが」

フレンズ2「ほえ、団体さんだね」

ともえ「はじめまして、えっと、あたしはともえ」

イエイヌ「イエイヌです」

ロードランナー「ロードランナー様だ」

フレンズ2「私はカワラバト、こちらはセイウチ」

セイウチ「お見知りおきを」

 

カワラバト、そして彼女にもたれるセイウチ。

ともえは無断でスケッチしようとしてイエイヌに止められる。

 

ロバ「座席につかれましたね、発車します」

 

ロバの掛け声のあと、車両がゆっくりと動き出す。

重たい車両を一人で引っ張ってるので遅いが、歩くよりは早い。

 

ともえ「すごい、ロバちゃん一人で動いてるなんて」

イエイヌ「これが鉄道なんですね」

ロードランナー「遅いけど悪く無いな」

セイウチ「歩かなくていいので楽ですわ」

カワラバト「セイウチはもっと運動した方がいいよ」

 

ともえ達は始めての鉄道に興奮しているが、セイウチ達、とくにセイウチはまったりしていた。

 

ともえ「これ、どこまでいくのかな?」

セイウチ「湖畔のはし、砂漠の入り口あたりまでだそうでしてよ」

ともえ「そうなの?」

カワラバト「ロバが言ってたから、私達も始めてだし」

イエイヌ「私達もですよ」

ロードランナー「でもよ、飛べるヤツが乗るのも珍しいな」

カワラバト「セイウチが重いから、この島に来るまでめたいへんで」

 

そこまで言ってカワラバトは何かに気がつきはっとする、ともえがどうしたのか訪ねる前に、変わりにセイウチが話始める。

 

セイウチ「私達はこの島の外から来ましたの」

ともえ「外って、どのあたり?」

イエイヌ「ゴコクですか?」

セイウチ「名前まではしりませんの、パークで通じておりましたし」

ロードランナー「まぁ、そうだよな」

ともえ「どうやってここまで?」

セイウチ「泳ぎと、カワラバトさんに捕まって」

ともえ「・・・」

イエイヌ「・・・」

ロードランナー「・・・」

カワラバト「うん、ありがとう」

 

憐みの目線を向けられてることに気が付いたカワラバトは感謝する、セイウチは相変わらずもたれかかっている。

 

セイウチ「今日は、この列車で湖畔まで」

カワラバト「楽ちんだよ」

ともえ「私達は砂漠まで・・・かな」

イエイヌ「見て回るんですから、そうですね」

ロードランナー「砂漠を超えたジャングルはフレンズもいっぱいいるしな」

ともえ「楽しみ!」

セイウチ「砂漠・・・」

カワラバト「ほよ、運べないよ」

 

新たなフレンズとの出合いの可能性にワクワクするともえ、砂漠越えをしないと告げるカワラバト。

そうして話をしていると、列車は止まってしまった。

 

ともえ「どうかしましたか?」

ロバ「行き違いがあるの、うん、来てますね」

 

ロバの視線の先を見ると、確かに誰か来ていた。

ロバも動き出すと左に列車が動く、よく見ると反対側にも線路がある、ともえはスケッチブックを用意する。

 

ロバ「ヒラコテリウムさん、お待たせしましたか?」

ヒラコテリウム「いえ、わたくしも先ほどついたところです」

 

ともえ「お、お嬢様が増えた」

イエイヌ「でも、セイウチさんと違いますね」

ロードランナー「比べちゃダメだろ」

セイウチ「・・・」

カワラバト「ほよ、ラブ&ピースだよ、今のセイウチに怒る資格はないよ」

セイウチ「ひどいですわね」

 

白いフリル付きの白い長そでシャツと茶色のロングスカートに身を包み、ロングヘア―が風に揺れるヒラコテリウムは、しぐさの一つ一つからお嬢様オーラを醸し出す。

一方でセイウチは、口調はお嬢様だが、ぐーたらで、オーラは無い。

 

ヒラコテリウム「この先でセルリアンが目撃されていますから、お気を付けくださいませ、モウコノウマ様もターパン様も島長様からの仕事で近くにおりませんし」

ロバ「それくらいなら大丈夫、はい、交換」

ヒラコテリウム「では、くれぐれも、無理はなさらないでください、ロバ様には夢もあるのですし」

ロバ「わかってる、それじゃあ、出発!」

 

布がまいてある枝を交換したのち、ヒラコテリウムに見送られ、ロバは出発する。

少しすると、ともえが気になったことを尋ねる。

 

ともえ「ねぇロバちゃん、さっきヒラコテリウムちゃんが言ってた夢って?」

ロバ「ん? そうねぇ、このパークに鉄道を復活させることかな」

イエイヌ「鉄道を、ですか?」

ロバ「うん!」

 

力強い返事の後、ロバは夢を語り始めた。

 

ロバ「パークってジャパリまんをボスが配ってるけど、雨でダメになったり、持ってくる途中で誰かに取られたりすると、どうしても早い者勝ちになっちゃう時があるの」

ロードランナー「普段降らないのに大雨が来るとそうだな」

ともえ「そうなの?」

イエイヌ「そうかもしれません」

ロードランナー「そっか、お前らはそういう経験ねぇのか」

セイウチ「寝て次を待つのは」

カワラバト「待てるのは普段から動かないセイウチぐらいだよ」

ロバ「なんとかできないかなっていろいろ調べてたら、図書館で鉄道のほうがあって、そこに昔の長の集まりで、鉄道ができて食べ物がいっぱいあるところから少ないところに運んでいけるから万歳したって、それがパークにもあれば、ジャパリまんの取り合いもなくせるかなって」

 

謎の施設にいたともえとずっと家にいたイエイヌは実感がわかないが、ロードランナーは違った。

確かに何度かボスがジャパリまんを運ぶ姿は見ている、籠一杯のジャパリまん、小雨程度ならいいが、強い雨でうまくしのげないと、確かに大変なことになりそうだ。

 

ロバ「今はモウコノウマさん、ヒラコテリウムさん、ヤーパンさんとこうやって人が残した線路の一部を使ってますけど、いづれは残りの部分と、機関車も見つけて復活させたいなと」

ともえ「そうなんだ」

イエイヌ「壮大ですね」

ロードランナー「というか、動かせるのか?」

ロバ「そ、そこは気合で」

セイウチ「不安ですわね」

カワラバト「セイウチがそれを言うの?」

セイウチ「なんのことでしょうか」

 

ロバの語る壮大な夢、叶うかどうかわからないが、こうして一部を復活させたのだからかなえてほしい。

ともえ達がそう思っていた、その時であった。

 

ロバ「・・・! お客様は車内で隠れていてください、セルリアンです」

ともえ「さっき言ってた」

イエイヌ「なら、私も」

ロバ「だめです、ここにいてください!」

セイウチ「さすがロバ、頑固ですわね」

 

ロバはそれだけ言うと列車を止めてセルリアンのいる方へ走って行ってしまった。

 

イエイヌ「追いかけないと」

ロードランナー「そうだな」

ともえ「あたしも」

イエイヌ&ロードランナー「「ともえさんはお留守番!」」

ともえ「でも」

セイウチ「一緒に待ちましょう、いっても怒られて、蹴られるかも」

イエイヌ「まさかそんな」

ロードランナー「というか、おまえ、そんなでかいの持ってるなら戦えよ」

セイウチ「ロバは頑固なんです、ヒトのことわざに「ロバのように頑固」とあるくらいでしてよ」

イエイヌ「そんなこと言ってる場合・・・って、ともえさん!」

ともえ「先行くよ!」

イエイヌ「あぁもう!」

ロードランナー「少しはまてっての」

 

ともえがいちばんにぬけだし、イエイヌとロードランナーが追いかける。

ロバの向かったほうへ行くと、そこには身を低くして草の陰に身をひそめるロバがいた。

 

ともえ「ロバちゃん」

ロバ「お客様、なんで来たんですか、客車へ戻ってください!」

ともえ「あたし、ロバちゃんが心配で」

ロバ「戻ってください!」

イエイヌ「ロバさん!」

ロードランナー「やっと追いついたぜ」

ロバ「皆さん、まったく!」

 

ロバの視線の先には、ずんぐりむっくりした蜘蛛のようなセルリアンがいた。

そいつはあたりを見回しながら、少しずつ前に進んでいた。

 

ロバ「線路に向かってる、止めないと」

ともえ「これで注意を」

イエイヌ「目覚まし時計ですね」

ロードランナー「そいつはうるさいからな」

 

ともえが目覚まし時計を準備していると風が吹いて草が揺れる、するとセルリアンは顔の下から何かを撃ち始める。

それを見てともえは目覚ましをしまった、あれに目覚ましを投げても壊さるだけと判断しからだ。

 

ロバ「ですから、客車に戻ってください!」

ともえ「ロバちゃん!」

 

ロバは飛び出すとセルリアンへと向かっていく、セルリアンも顔をロバへと向けるが、それよりも早く彼女の体当たりが決まり、吹き飛ばされる。

 

ロバ「これなら!」

イエイヌ「ゴマさん、私達も!」

ロードランナー「おうよ!」

 

イエイヌとロードランナーも飛び出し、起き上がろうとするセルリアンに攻撃を加えるが、手ごたえがない。

ひっかき傷を与えても、すぐに治ってしまう。

 

イエイヌ「こいつ、見た目より硬い!」

ロードランナー「石を潰すしかないようだぜ」

ロバ「お二人とも下がってください!」

イエイヌ「この状態では無理です!」

 

ロバはセルリアンを前にしてもイエイヌ達に戻るように伝える、本当に頑固であった。

イエイヌ達もセルリアンが目の前にいるのでは下がるわけにもいかない。

そうしていると、セルリアンが3人の目の前から消えた、いや、消えたのではない。

 

ロードランナー「まずい、離れろ!」

イエイヌ「はい!」

ロバ「くぅ!」

 

空中に飛び上がり、そのまま重力したがって落下してきたセルリアン、ロードランナーは空へ飛びあがり、イエイヌとロバはすぐに離れることで押しつぶされはしなかったが、その衝撃で吹き飛ばされ、地面を転がる。

イエイヌはすぐに起き上がるが、ロバと離れてしまった、そしてロバはまだ起き上がっていなかった。

 

イエイヌ「ロバさん!」

ロバ「いたた、このくらいで」

 

ロバは地面にたたきつけられたらしく、起き上がるのが遅かった、その間にセルリアンは迫っていた。

セルリアンが前足を振り上げる、そこに飛び出したのは。

 

ともえ「ロバちゃんを、やらせない!」

ロバ「お客様!」

イエイヌ「ともえさん!」

 

ロバの前に飛び出したともえ、両手を広げ盾になろうとする、イエイヌも走るが、それよりもセルリアンの前足が振り下ろされるほうが早い。

 

ともえ「ぜったいに、ぜったいに、傷つけさせない!」

イエイヌ「ともえさん、逃げて!」

ロードランナー「くそっ!間に合わねぇ!」

 

セルリアンの一撃が、ともえの目前まで迫った、その時だった。

 

イエイヌ「え!?」

ロードランナー「なんだよ、ありゃ!」

 

ともえの体から光、それもサンドスターの光があふれたかと思うと、それが広がり、セルリアンの前足を押し返す。

突然の光景に、イエイヌもロードランナーも動きを止める。

 

ともえ「傷つけるなら、離れろぉ!」

ロバ「これって」

 

ともえが叫ぶと、ひかりはさらに強くなり、セルリアンの表面が削れていく。

そうしていくと、後ろの一番むっくりしたところから、石が姿を見せた。

 

ロードランナー「! いまだ!」

 

ロードランナーは降下するとその勢いが乗ったキックを石へと放つ、ひびが入り、砕け散ると、セルリアンも砕け散った。

イエイヌはすぐにともえとロバのもとに駆け寄る。

 

イエイヌ「ともえさん、ロバさん、大丈夫ですか!?」

ともえ「う、うん、大丈夫、でも、これ・・・何?」

イエイヌ「わからないでやったんですか!?」

ともえ「うん」

ロバ「・・・」

 

ともえもこれが何かわからないが、落ち着いてくると光も収まり、サンドスターへと戻ると、胸元へと吸い込まれていった。

 

ロバ「胸元に」

ともえ「あ、これのおかげかな?」

イエイヌ「浄炎の羽根」

 

ともえが胸元からそれを取り出すと、まだ光を放っていた。

それも収まると、ロードランナーが下りてきた。

 

ロードランナー「おまえ、何無茶してんだよ、危なかったんだぞ!」

ともえ「ご、ごめん、でも、じっとしてられなくて」

イエイヌ「そうですよ、今回はラモリさんもいないんですし!」

ロバ「それを言うなら皆さん客車に・・・あら?」

ともえ「あれ、雨?」

イエイヌ「でも、晴れてますよ?」

ロードランナー「珍しいこともあるんだな」

 

張れているにもかかわらず、急に雨が降り出した、小雨であるが不思議であった。

ともえ達が見とれている間に、ロバは毛皮についた土を払って立ち上がる。

 

ロバ「そうですか・・・皆さん、客車までお戻りください、運転を再開します」

ともえ「は、はい」

イエイヌ「帰ったらお説教ですよ」

ロードランナー「ちゃんと聞くんだぞ」

イエイヌ「う、うん」

 

ともえ達が列車に戻ると、そのままお説教が始まった、イエイヌはすごく心配したし、ともえも無謀だったので当然である。

 

イエイヌ「ともえさんはヒトなんですから、無茶しないでください!」

ともえ「はい、ごめんなさい」

ロードランナー「あのサンドスターはすごかったけど、よくわかんねぇし、頼れねぇからな」

 

セイウチ「ヒト・・・そう、あの子が」

カワラバト「降りてきてよかったね」

 

そしてお説教が終わるころ、列車はこはんちほーに到着した。

 

セイウチ「それでは、私達はここで」

カワラバト「ともえ達も気を付けてね」

 

ともえ「セイウチちゃんとカワラバトちゃんもね」

イエイヌ「またどこかでお会いしましょうね!」

ロードランナー「元気でやれよー!」

 

動き出した列車から見送るともえ達、少しすると荷物伝いにラモリが客車までやってきた。

 

ともえ「ラモリさん、バイクはどうなりました?」

ラモリ「バッチリダヨ、接続ガ緩ンデ安全装置ガ作動シタダケダヨ」

イエイヌ「じゃあ、まだ動かせるんですね」

ラモリ「放電モナカッタカラネ、スグニ動カセルヨ」

ロードランナー「なら、砂漠の一口までついたら、再開だな」

ロバ「あの、よろしいでしょうか?」

 

バイクが治り、これからの予定を立てていると、ロバに声を掛けられる。

何事かと、ともえ達は前に集まる。

 

ともえ「どうしたの?」

ロバ「実は、皆さん、とくにともえさんに会いたいという方がおられまして」

イエイヌ「へ? いつの間に?」

ロバ「つい先ほどです、そこまでお連れしたいのですが」

ともえ「私はいいけど、皆は?」

イエイヌ「いいと思いますけど」

ロードランナー「まぁ、行く当てもないしなぁ」

ラモリ「トモエガ決メル事ダヨ」

ともえ「じゃあロバちゃん、そこまで案内してくれる?」

ロバ「はい、では、もうしばらくご乗車ください」

 

そういってロバはそのまま進むと、こはんちほーの中ほどで列車を止めた。

外を見れば、線路がまっすぐに続いているように見える。

ロバは客車の下から棒を取り出すと、線路の横で棒をつついたり、回したりする。

すると大きな音がして、さっきまで一本道の線路から、右へと延びる分岐が現れた。

 

ともえ「え、いまのって、魔法?」

ロバ「その類だと思います、普段は隠していますから」

ともえ「隠す?」

イエイヌ「何のために?」

ロードランナー「大丈夫なんだろうな」

ラモリ「該当路線、ナシ」

ロバ「大丈夫です、さぁ、出発しますよ」

 

ロバは列車を分岐の方へと向かって引っ張て行く、この先に何があるのか、だれが待っているのか、ともえ達はまだ知らなかった。

この線路の先に、ともえとイエイヌにとって、大事な過去があることを。





ーー
ーーー

くりげ「あ、船から連絡来たよ、二人から連絡が来たって」
しろげ「通信機を持っていましたのね」
あおかげ「まったく、心配させて」
くりげ「それと・・・ともえを見かけたって!」
しろげ「なんと!」
あおかげ「それで、ともえはどこに?」
くりげ「ちょっと待ってね、今こっちにつないでもらうから」

あおかげ「よりにもよって、あそこか」
しろげ「あそこは、厄介ですわね、ラッキービーストも近づけませんし、全容がわかりませんわ」
くりげ「でも、入っていったんだから、どうにかなるんじゃない?」
あおかげ「そうだな、だがもしもに備えよう、衛星から隠しきる相手だ、そんなことができるフレンズは限られてる」
しろげ「協力者が欲しいですわね」
くりげ「うん、とりあえずこはんちほーまで行くけど、誰かいないかな」
あおかげ「都合よくいないだろ」
くりげ「じゃあ、知ってそうな子に、を、おーい、そこの猫科のフレンズさーん!」
しろげ「おまちなさい、いきなり声をかけるのは」

ーーー
ーー

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