もしもハクの初期レベルが50、レベルキャップが100だったら   作:縦ロール兵装

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2000文字ちょいの文章量でお気に入り61件、感想3件だと?!
評価も8人にしてもらったし、これは次を書かねば!

すまない、また2000文字ちょいなんだ……
そんだけしか文章量ないのに、2週間以上も掛かってしまったんだ……
本当に、すまない……


いいえ、ケフィアです

 降り積もる雪に隠された山道を、男が歩いていた。

 素足のままふらつき歩くその姿は幽鬼のようで。

 何も映していない瞳が、男が正気にない事を示している。

 頼りのない歩みは遅く、それでも無意のまま進む男の目の前に。

 ふと、木々が途切れたその先に、広大な雪景色が飛び込んで来た。

 連なる山々は白く。

 静まり返る木々が雪を繁らせ。

 気紛れに吹いた風が、白銀を纏って大地を駆ける。

 人の手が入らない、自然そのままの悠久の景色。

 それらを見下ろせる丘の上で、ようやく男は立ち止まった。

 

「……」

 

 何か、感じ入るものがあったのか。

 言葉もなく、ただ眼下の景色を眺める男。

 瞬き一つ。

 

「……ぁ、え? 寒っ?!」

 

 目の前の光景に対する理解よりも先に、寒さによる痛みに腕を抱える。

 ようやく意識を取り戻したのか、体を震わせながら辺りを見回して一言。

 

「ここ、どこだ……? なんで自分はこんなところに……っ!」

 

 肌を刺す冷たさと、理解不能な現状。混乱の極みに陥った男は、だからこそ次の行動が遅れた。

 音が、聞こえた。

 男の後ろから、まるで硬質な鋼同士を擦り会わせたような、不快な音が。

 

「なんだーー?」

 

 男が振り返った先に、ソレは居た。

 一言で言うならば、赤色の甲殻を纏った百足。

 厚さだけでも男の背丈を超える巨体を起こし、口の横から伸びる金色の牙を向けるその姿に、男は反射的に身を屈めた。

 直後、男の真上を百足の身体が通過する。

 男は百足が飛んでいった方を見る。着地し、こちらへ振り返った百足と目が合う。

 

「待て、待て待て待て! なんだこいつ!?」

 

 叫んだ直後、悪寒。

 どうすればいいのかわからないまま横っ飛び。再び襲いかかってきた百足の身体を間一髪のところで避け、そして男はそのまま丘の下まで転げ落ちた。

 幸いな事に雪がクッションになり、男は痛みもなく立ち上がる。

 

「あいつは……!」

 

 振り返り見上げると、当然のように此方に狙いを定める百足の姿。

 

(冗談じゃないっ!)

 

 逃げる為に走り出す。眼前にある森ならば隠れる場所があるかもしれないと、

 その一歩目。

 男は『飛んだ』

 

 

 

「ーーは?!」

 

 

 

 そう、錯覚するほどの大跳躍。

 男にしては長めの髪が風に靡き、数瞬前に遠くに感じた木々の間へと着地する。

 

(なんだ今の……いや、今はそれどころじゃない)

 

 混乱は一瞬。迫る百足の気配を感じ、振り返ることなく駆け出す。

 一歩。音が遠くなる。

 二歩。音が聞こえなくなる。

 三歩。気配が感じられなくなる。

 人間の身体能力じゃないだろ、と未だ人間のつもりの男はひとりごちる。

 

(でも、この調子なら)

 

 疲労感は皆無。後ろを振り返っても百足の姿は木々に紛れて殆ど見えない。

 逃げ切れる、と。

 そう確信し、長い滞空時間を経て着地する。

 

 

 

 足元の雪、その下にあるはずの地面が、無かった。

 

 

 

「はーー」

 

 

 

 一瞬で上へと消える景色。残ったのは全てを呑み込まんとする暗闇だけ。

 元々空いていた洞窟の天井部分を雪が覆い隠していて、運悪く男がそこに着地してしまったのだ。

 特にこの季節、周辺に住むヒトの死因の多くを自然の落とし穴が占めるなど、男が知るよしもない。

 

 ただ、男の生物としての感覚だけが、その先にある死を知覚した。

 

 

 

(なんで、自分がこんな目に)

 

 

 

 暗闇の中、地面に立つ感覚にすらも縋れない男は。

 

 

 

(訳の分からないまま、化け物に襲われて)

 

 

 

 願うように、祈るように。

 

 

 

(こんな、暗闇の中でーー)

 

 

 

 救いの手を必死で掴むかのように、叫ぶ。

 

 

 

「死んで、たまるかっ!」

 

 

 

 意志が、孔を、穿った。

 目には見えない孔から力が溢れだし、男の身体を満たす。それは人の身に余る困難に打ち克つ為、天が与える力。

 それは運命に抗う力、それは宿命に立ち向かう力。

 即ち天命の楔。

 

「ーーぐぅっ!」

 

 直後に衝撃。

 男の身体が着地点にあったスライム状の物体を、百を越えるまでに粉々にし吹き飛ばす。

 痛みは、ない。傷もない。

 いくら男が人外に至るまでの強化を受けたとしても、受身も取らないままあの速度で落下すれば捻挫は免れなかっただろう。

 それを無傷で乗り切れたのは天が与えた力が男の身体を強化したからだ。

 

「なんとか、なったか」

 

 溜め息一つ。雪が落ちる音が、静かに洞窟内に反響する。どうやら男は洞窟の天井に空いた穴に運悪く飛び込んでしまったようだ。

 男は周囲を見渡してから、自らが落ちてきた天井を見上げる。

 巨大百足と、目があった。

 

「ーーいい加減しつこいぞ!」

 

 叫び、逃げ出す。

 進路上にあった鍾乳石を数本まとめて蹴り砕きながら駆ける。

 視界が悪く、鍾乳石を角砂糖を砕くように壊して進む男に対して、百足は夜目が効くのか的確に男を追跡する。先程のように容易に振り切れるような差は、無かった。

 

(厳しいか……? いや、だとしても諦めるわけにはいかん)

 

 内心の弱気を振り払おうと気合いを入れ直す男。意識を内に向けた一瞬に、男の目の前に生き物の気配が現れる。

 

「ボロギギリ?! 目を閉じて!」

 

 言われるがままに目を閉じ、鍾乳石に足を取られスッ転ぶ男。同時に凄まじい光量が洞窟を照らし、ボロギギリと呼ばれた百足の視界を奪う。

 

「走って!」

 

 立ち上がった瞬間に手を引かれ、再び駆ける男。

 暗闇でスライディングを決め込んだ衝撃からようやく立ち直った男を確認するかのように、男の手を引く者が振り返った。

 フードから覗くのは、未だ幼さを残すものの、整った顔立ちの女性。

 

(ーー女?)

 

 その瞬間、男は前屈みになりスピードが急激に落ちる。

 

「ちょっと、大丈夫かな?!」

 

「問題ない!」

 

 

『 天 命 の 楔 』

 

 男の身体を力が満たす。

 その力を使い、膝から上をなるべく使わないまま手を引く女の速度に追い付く。

 所謂、十傑集走りである。

 

「なにその走り方?! しかも速いし!」

 

「気にするな!」

 

「無茶言わないで欲しいかな!」

 

 二人揃って、異なる十傑集走りをしながら洞窟を出る。

 ボロギギリの追跡を警戒し、洞窟から離れて十分程走り続け、男は雪の上に腰を下ろす。

 

「ごめんなさい、かな!」

 

 そんな男に、フードの女は頭を下げる。

 頭を下げられる覚えはなく、逆に謝りたいくらいな男は目を白黒させた。

 

「い、一体何のーー」

 

 

 

「で、でも仕方なかったかな! 貴方が熱い、水……って呻くから! あ、お、男の……あ、アレが! 凄く熱いのはカルラお母様から聞いてたし、冷ましてあげようと思っただけかな! そしたら、あんな白いのが……て、天井まで……臭いも凄いし!」

 

 

 

「ま、まてまて! 色々聞きたいことはあるが、その前に!」

 

 熱が十分に冷めた事を確認した上で、男は立ち上がる。

 

「自分と会った事があるのか? 悪いが、その……自分の認識では、初対面なんだが」

 

 

 

 

 

「……えっ?」




ナニに水を掛けたんですかねぇ……

ちなみに、二人の十傑集走りの違い
クオン:腰から上を固定して太股を大きく動かす
ハク(勃):腰から上を固定して太股を殆ど動かさないで膝から下を主に動かす
これで気にするなと言われても……


今回はネタだけで押しきれなかったです。流石にこのシーンでギャグのみは無理でした。
ボロギギリに飛び乗ったハクがタタリに特攻かけるシーンとか酔った勢いで書いてみたけど、ボツになりました(残当)
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