「じーー……」
ご主人様が料理をしています。クラスメートの……野さんと一緒に。
ただそれだけの事なのですが、つい目で追ってしまいます。
どうやら私は意外と心配性なのかもしれません。まあ、ご主人様の事ですし、うっかり砂糖と塩を間違えたり、鍋を爆発させたり、とにかくギャグ漫画ばりの失敗をするかもしれませんし……あ、ゲームの続きしなきゃ。
「稲本君、そこの野菜取って」
「はいよ」
「味見お願い」
「ん」
「…………」
中々の連携です。……野さんはご主人様に最低限の指示しか出さず、目一杯自分の料理上手をアピールしています。目的は何でしょうか。
……………………はっ!まさかこの家のメイドになろうとしてる!?
こ、これは由々しき事態。……野さんにそんな目的があろうとは!
しかし、この家のメイドはこの私!残念ながら譲るつもりはありません。
「……なんかアホな事考えてる気がする」
「私は名前を忘れられてる気がするわ。一応言っておくけど、夢野だからね」
「ご主人様、夢野様……あー、掃除をしてきます」
「何でこのタイミング!?いや、別にいいだけどさ!」
「…………」
驚くご主人様と無表情でこちらを見ている夢野さんに頭を下げ、私はとりあえずご主人様の部屋を掃除することにした。
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「霜月さん、一体どうしたんだ?まあ、掃除してくれるのはありがたいけど」
「……ねえ、私もメイド服着ようか?」
「何で!?いや、別にいいよ!これ以上メイドいてもリアクションに困るし」
「……あっそ」
何故か不満げな夢野さんに首を傾げると、二階からガタンっと大きな物音が聞こえてきた。
「な、何?」
「わからん。ちょっと見てくる!」
どうせ霜月さんが、何かに躓いて転んだんだろう。
そう思いながらも、つい早足で自室まで向かうと、そこには……
「ご、ごめんなさい……」
「…………」
霜月さんは、開口一番謝ってくる。
彼女の前には、真っ二つになった俺のベッドがある。
……落ち着け。俺は何か見間違いをしているのかもしれない。
俺はかぶりを振って、もう一度確認してみた。
だが、当たり前のように目の前の光景は変わらない。
……落ち着け。落ち着け、俺。とりあえず事実確認をしようじゃないか。
「どうしてこうなったのか聞こうか?」
「……Gを見かけたもので」
「…………」
「…………」
まだ季節は春だというのに、木枯らしが吹いたような沈黙が、二人の間を支配した。
そしてこの時、俺は頭の片隅で、本能的な恐怖を感じていた。