内気なメイドはヒミツだらけ   作:ローリング・ビートル

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メイドさん、張り合う

「じーー……」

 

 ご主人様が料理をしています。クラスメートの……野さんと一緒に。

 ただそれだけの事なのですが、つい目で追ってしまいます。

 どうやら私は意外と心配性なのかもしれません。まあ、ご主人様の事ですし、うっかり砂糖と塩を間違えたり、鍋を爆発させたり、とにかくギャグ漫画ばりの失敗をするかもしれませんし……あ、ゲームの続きしなきゃ。

 

「稲本君、そこの野菜取って」

「はいよ」

「味見お願い」

「ん」

「…………」

 

 中々の連携です。……野さんはご主人様に最低限の指示しか出さず、目一杯自分の料理上手をアピールしています。目的は何でしょうか。

 ……………………はっ!まさかこの家のメイドになろうとしてる!?

 こ、これは由々しき事態。……野さんにそんな目的があろうとは!

 しかし、この家のメイドはこの私!残念ながら譲るつもりはありません。

 

「……なんかアホな事考えてる気がする」

「私は名前を忘れられてる気がするわ。一応言っておくけど、夢野だからね」

「ご主人様、夢野様……あー、掃除をしてきます」

「何でこのタイミング!?いや、別にいいだけどさ!」

「…………」

 

 驚くご主人様と無表情でこちらを見ている夢野さんに頭を下げ、私はとりあえずご主人様の部屋を掃除することにした。

 

 *******

 

「霜月さん、一体どうしたんだ?まあ、掃除してくれるのはありがたいけど」

「……ねえ、私もメイド服着ようか?」

「何で!?いや、別にいいよ!これ以上メイドいてもリアクションに困るし」

「……あっそ」

 

 何故か不満げな夢野さんに首を傾げると、二階からガタンっと大きな物音が聞こえてきた。

 

「な、何?」

「わからん。ちょっと見てくる!」

 

 どうせ霜月さんが、何かに躓いて転んだんだろう。

 そう思いながらも、つい早足で自室まで向かうと、そこには……

 

「ご、ごめんなさい……」

「…………」

 

 霜月さんは、開口一番謝ってくる。

 彼女の前には、真っ二つになった俺のベッドがある。

 ……落ち着け。俺は何か見間違いをしているのかもしれない。

 俺はかぶりを振って、もう一度確認してみた。

 だが、当たり前のように目の前の光景は変わらない。

 ……落ち着け。落ち着け、俺。とりあえず事実確認をしようじゃないか。

 

「どうしてこうなったのか聞こうか?」

「……Gを見かけたもので」

「…………」

「…………」

 

 まだ季節は春だというのに、木枯らしが吹いたような沈黙が、二人の間を支配した。

 そしてこの時、俺は頭の片隅で、本能的な恐怖を感じていた。

 

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