あー怖かった……。
とりあえずベッドのことは後で考えよう。漫画みたいにいつの間にか直ってないかなぁ。あるわけないけど。
てか、やっぱりあのパワー……桁違いだよな。
あれが自分に向けられたら……。
その先を考えないように俺はかぶりを振った。
いや、何考えてんだ俺は。
霜月さんの何を考えているかわからない表情を浮かべながら、自分の考えかけたことをきっぱり否定した。
「あの、ご主人様……」
「…………」
「ご、ご主人様?」
「うわぁ!びっくりしたぁ……」
どうやら考え事に耽っているうちに、霜月さんから呼ばれていたらしい。
その目はやたらおどおどしていた。
「あの……怒って、ますか?」
「…………」
「ご、ご主人様……」
「怒ってないと言えば嘘になる。でも、Gが出たなら……仕方ないか」
「はい、仕方ないです」
「おい」
「わ、私、今からベッド直してきます」
「え?そんなスキルあんの?」
「いえ、なんかできそうな気がしますので……」
「やめて、不安だから!次は部屋が壊れちゃう!」
「は、はい……」
まったく、何を考えているのか……。反省はしているんだろうが。
二人して台所に戻ると、夢野さんがこちらを見た。
「あ、戻ってきた。どうだったの?」
「……まあ、大丈夫だった。何でもない」
「その割には疲れきった顔してるけど……」
「ははっ、いつもこんな感じだし……」
「そ、そう、じゃああえて聞かないことにしとくわ」
「……いい匂いがします」
「確かに」
どうやら二階でドタバタしているうちに、意外と時間が経ったらしい。夢野さんは料理を作り終えていた。
カレーのいい匂いが鼻腔をくすぐり、食欲を刺激してくる。
「ドタバタしてるうちに作っちゃった」
「うん、ごめん」
「いいわよ。作りたいっていったの私だし」
「じゃあ、皿に盛るくらいは俺がやるよ」
「ありがと」
「……よろしくお願いします」
おい、メイドさんよ。そこはとりあえず形だけでも「私がやります」とか言わないんかい。いや、いいんだけどね。
さっさと皿にカレーライスを載せ、テーブルに並べると、自然と三人同時に「いただきます」と手を合わせる。
そして、カレーを一口頬張ると……
「……うまい」
「……美味しいです」
自分で作ったやつより明らかにうまい。何だ、これ。夢野さんにこんな特技があったなんて……!
霜月さんも料理は上手だが、驚きで目を丸くしていた。
さらに彼女はぽつりと呟いた。
「ラ、ラ、ライバル出現……私のポジションが……」
「いや、別に稲本家のメイド目指してないから」
真っ先にそこかよ。安心しろ、こんな唯一無二のメイドいないから。
一人で勝手に震える霜月さんを、夢野さんは呆れた目で見ていた。