内気なメイドはヒミツだらけ   作:ローリング・ビートル

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登校

 まさかこんな事になるとは……。

 俺は、いつもの通学路をメイドさんと並んで歩いている。

 どうなってんだ、今日は……尋常じゃない。ていうか、これ異世界じゃない?俺、異世界転移したんじゃないの?

 

「えっと、霜月さん……ここ、どこだっけ?」

「……と、東京ですけど……」

「あー、ですよね……」

「どうかしましたか、ご主人様?……あ、あの、頭は大丈夫ですか?」

「…………」

 

 今、すごく失礼な事を言われたような……き、気のせいだよな。

 霜月さんは、やたらおどおどしながら、こちらを気遣わしげに見てくる。

 まあ、せっかくだし彼女について色々聞いてみるか。彼女は俺について色々聞いてるらしいが、こっちは何も聞かされていない。改めて、彼女自身について聞いてみることにしよう。

 

「あの、霜月さんはどこに住んでるんですか?」

「……ご、ご主人様と、同じ家です」

「えっと、そうじゃなくて……ウチに来る前はどこで……」

「あの……秘密、です」

「そっか」

 

 なら仕方ない。

 ただ、できれば「禁則事項です」と言って欲しかった。この気持ち、理解してくれる人はどのくらいいるだろうか。

 まあいい。次の質問に移ろう。

 

「学年は?」

「は、はい……ご主人様と同じ学年、同じクラスです……」

「クラスまでわかってるんですか?」

「はい……お父様がそのように取り計らってくれました」

「……そうですか?」

 

 父さんにそんな力があるのだろうか?家では母さんに絶対服従の契約をしてるんじゃないかと思えるくらいに従順だけど。

 いや、それより他に聞くことは……

 

「あー……何て言うか、家族からは何も言われなかったんですか?その、年頃の男子のいる家で住み込みで働くとか……」

「……申し訳ございません。秘密です」

「そっか。ならいいです」

 

 あまり個人的なことは聞かないほうがいいのかもしれない。

 

「えっと……じゃあ、今さらだけど……制服は?」

「私はメイドですので……」

「…………」

 

 もう何も言うまい。

 

 *******

 

 学校が近くなるにつれ、人通りは多くなる。人通りが多くなるということは、人目も気になりだす。

 現在、俺の隣を歩くメイドさんに周りからの視線が集中していた。

 しかも、本人が堂々としているのならともかく、すっごい恥ずかしそうに身を捩っているから、見てて居たたまれない。

 

「霜月さん……やっぱり着替えた方が……」

「わ、私は…メイド、ですから……うぅ……」

 

 何故そこまでメイド服にこだわる……てか、そろそろ俺も並んで歩くの恥ずかしいんだけど。

 そこで、ふと周りの会話が耳に入ってくる。

 

「おい、アイツ……」

「あんな可愛い子に無理矢理メイド服着せて歩かせるとか……」

「一体どんな鬼畜なのかしら」

 

 あ、あれ?何故か冷たい視線が刺さってくるんですけど……。

 俺、むしろ優しさを見せたんですけど!

 しかも、霜月さんはさりげなく半歩ほど俺から距離をとりやがった。おい。

 

「ご主人様、鬼畜なんですか?」

「えっ?初めてハキハキ喋る言葉がそれなんですか?かなりショックなんだけど……」

「も、申し訳ございません!つい……」

「あの子……あんなに謝ってる」

「かわいそう……」

 

 やばい。

 このメイドさんの話し方からして、本当に俺が無理矢理この服装を強要しているように見えている。じょ、冗談じゃねえよ……!

 とにかく少しでも嫌な視線から逃れる為(無理だけど)、無言で気持ち速めに歩く。夢なら覚めてくれよ、マジで。

 

 *******

 

「わぁぁ……」

 

 ガリガリHPを削られながら校舎に入ると、霜月さんは「わくわくむもんだぁ♪」と言いたげな表情で、キョロキョロと視線を動かす。まるで幼い子供みたいで微笑ましい。

 すると、廊下の角から一際熱い視線を感じる。

 

「ね、ねぇねぇ……あ、あれ!……ふふっ」

「おうっ、……か、可愛い!」

 

 あれは確か……校内でも有名なオタクカップル。確か名前は発条太一と村瀬ユリ……どちらもそれなりにルックスはいいのに、目が血走っていて、ちっとも爽やかじゃない。てか、朝っぱらから羨ましいな。オタクに恋は難しいんじゃなかったのかよ。

 リア充に対する嫉妬心に苛まれていると、霜月さんが袖を揺らしてきた。

 

「ご、ご主人様……これが学校なのですね。何だか不思議です」

「あれ?学校通うの……初めてなんですか?」

「っ!?」

 

 彼女は俺の質問に対し、自分の口を両手で覆い、何かを飲み込んだ。

 その何かが気になったものの、とりあえず聞いてはいけない気がして、俺はそのまま歩き続けた。

 

「ふぅ……」

「霜月さん?」

 

 呼びかけると、当たり前のように彼女もすぐに後を追ってきた…………周りの驚きの視線を集めながら。父さん、母さん。勘弁してくれ。

 

 

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