短いけどシカタナイネ!
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アザゼル視点
「ご納得頂けたようですのでご挨拶を。私、此度天照大神様の代理として罷り越しました、サンジョウノと申します。以後お見知りおき……はできませんが、よろしくお願い致します」
「……確かに見知りおけんわな。まぁそれはもう良いわ。北欧神話群で主神を務めておるオーディンじゃ」
「……見れねぇもんな。堕天使総督のアザゼルだ。よろしく頼む」
なんやかんやで御簾越しでの会談を認めたあと、いつから居たのかわからねぇが向こうの神使が意外な程に丁寧な挨拶をしてきたんで、俺も爺さんもやや面くらいながらも挨拶を返す。
「ご挨拶は確かに。それで、早速なんですが」
「「???」」
「此度御二方が、いえ、あざぜる様は悪魔勢力に貸している町で役職を得ているようですので正式には違いますかね? ではえっと、おーでぃん様が急な来日をした上で、会談を申し込まれました目的をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「あぁ、気になるか。まぁそうじゃろうのぉ」
向こうが何を言うかと思えばそれか。そりゃ向こうにしてみたらいきなり他国の国家元首が来たようなもんだからな。そりゃ気になるだろうさ。
普通なら世間話とかに紛れて探るんだろうが、ここまでストレートにくるとはな。日本神話群としては下手に探り合いをする手間よりもさっさと話を進めたいって感じか?
(さて、どう返答したもんかねぇ)
まさか『馬鹿正直にコカビエルが使った術式の解析をしに来た』とは言えねぇわな。かと言って用も無いのに緊急来日ってのも違和感がありまくりだ。だからと言って嘘なんて吐いた日にゃ鬼帝によるOHANASHIがOSHIOKIになるんだろ? どうしようもねぇな。ま、聞かれたのは俺じゃねぇし。頑張れ爺さん。
「基本的には、観光と視察。じゃな」
「ふむぅ。観光はわかりますけど、神話群の主神が急な来日をする理由にはなりませんよね? では主な目的は視察となるのでしょうか?」
「さよう」
「ふーむ。では、その視察とは、何を視察するおつもりですか?」
「それは、あれじゃよ。お主ら日本神話群が悪魔勢力に貸してある土地の運用状況を視察したいと思っておるんじゃ。アザゼルの小僧はその案内役兼お目付け役でもあるのぉ」
「ほほー」
「そもそも儂らには他の勢力に土地を貸すという概念がなかったもんでのぉ。それをやった場合、その土地がどうなるのか気になってしょうがなかったんじゃよ。しかしその土地を借りた勢力というのが、各陣営に嫌われとる聖書の陣営、それも悪魔勢力じゃろ?」
「なるほどなるほど」
「わかったかの? 下手に時間をかければ悪魔どもは隠蔽工作をするじゃろ? それをさせないためにこうして急ぎできたんじゃよ。結果として根回しや準備が足りず、其の方らに迷惑をかけることになったことについては、このとおり。謝罪しよう。無論この場だけでなく後日正式に謝罪させてもらうつもりじゃ」
「それはそれは。そういうことでしたかぁ」
ほほう。流石は智謀を売りにする爺さんだ。前々から考えていたんだろうが、確かに嘘は吐いてねぇ。御簾越しのせいで向こうの顔色はわからねぇが、声色からは理解を示しているような感じがする。
「それで、視察の結果如何によっては儂らにも土地を貸してもらえぬかどうか交渉を行いたくてのぉ。そう思って今回こうして会談の場を設えて貰った。というわけじゃ」
「ふむぅ。それが神話群の主神様が行うことなのでしょうか? と考えればどうにも微妙なところではありますが、それがそちら流の誠意の示し方であると言うのなら、私の一存では簡単に否定もできませんねぇ」
「そ、そうじゃろ?」
そりゃまぁ。誰がどう見ても軽率なのは事実だから、そこが違和感といわれると、爺さんもキツいところだよな。実際戦乙女なんかさっきからずっと目がアレだし。
しかし主神であるオーディンに頭を下げられた上で交渉の段取りを組まれては、主神の代理でしかない神使としても疑いはあれど頷かざるを得ねぇわな。それに、後から何かしらの文句が来たとしても、こっちの主目的はあくまでコカビエルが使った術式の解析だ。それさえやった後なら別にどんな文句がこようと関係ない。…‥もっと言えば、鬼帝が睨みを効かせている今、この時を乗り切れるならそれでいいんだ。
俺らはこの会談が終わったら堂々と解析と調査をして帰ればいい。
「なるほど。それではおーでぃん様の誠意にお応えする形でお伝え致しますが……」
そんなことを考えていた俺に、サンジョウノを名乗った神使は言葉を紡ぐ。
「現在日本神話群といたしましては、今後他勢力への土地の貸出を控えることを決めております。勿論現在悪魔陣営に貸し出しを行っている土地も、契約更新は認めず、現在の貸し出し期間が終わり次第、即時帰国をしていただく予定となっております。そういった事情ですので、おーでぃん様のご要望にお応えすることはできかねます」
何? 土地の貸出を止める、だと?
「ほう。アザゼルはそのことは知っておったか?」
「……初耳だな」
いやマジで。
「だが理由は見当がつく」
「英雄、か?」
「あぁ」
それしかねーだろ。
「そうですねぇ。元々日本神話群の中にも聖書の陣営の方々のやりかたには不満の声がありましたし、土地の貸出にも異論はあったのです。それは前任の方が真摯に対応して下さって頂いたお陰で一応なんとか鎮まっていたのですが、その方の後任としてきたのがあの方々でしょう?」
「だな」
無能のリアス・グレモリーと阿呆のソーナ・シトリーってな。
無能はともかくとしても、誰がどう見ても優秀だったセラフォルーの妹が、なんで『阿呆』なんて言われていたのか気になって少し調べたんだが、どうもアレがまともになったのはここ最近のことらしいんだよな。それまでは無能に匹敵するほどの無策。いや、眷属が無名だった分、無能よりも悪いという評判だったらしい。
当然そんな阿呆に領地の維持なんざできるハズもなく。結局無能と同じで学校生活を満喫してたんだとか。
そりゃ怒られるわ。
「普通の悪魔貴族の方ならまだしも、あの方々は魔王と呼ばれる方々のご令妹でしょう? しかも前任の方に無理を言って代わってもらったとか。そうなりますと、我々から見てこの人事は『魔王がわざと杜撰な管理しかできない未熟者を差し向けてきた』ということになります」
「だろうな」
実際はサーゼクスとセラフォルー、そして両方の家族が甘やかした結果生じた暴走だが、相手からすればそうなるわな。
「その結果が、はぐれ悪魔による一般人の殺害。堕天使による不法侵入と一般人の殺害。悪魔となった赤龍帝を宿した少年による自然破壊。教会から聖剣を持ち出してきたこかびえるさんと教会勢力、悪魔勢力の争い。学校での悪魔・天使・堕天使・禍の団に所属する方々による戦争行為と、簡単に言っても色々とやりたい放題なんですよ? 今年だけでこの周辺地域がどれだけ霊的に荒れたのかお分かりですか? あざぜる様は他人事ではありませんよ?」
「お、おう」
かなり、というか赤龍帝の自然破壊以外の全部に堕天使が絡んでるからな。神野云々は向こうに関係ねぇし。というか、神野が現界した理由を考えれば他勢力からすれば自業自得でしかねぇ。つまるところ、日本神話群としては悪魔勢力だけでなく三大勢力全部の印象が悪いってことだろうよ。
で、他の勢力に土地を貸した結果がこれなんだから、日本神話群の中ではもう他の勢力に土地を貸す気はなくなったって話だろ? 納得だよ。
「はぁ。阿呆どもが。貴様らが自滅するのは勝手じゃが、儂らにまで迷惑をかけるでないわ」
「……返す言葉もねぇよ」
爺さんとしては「北欧神話は関係ないじゃないか」と言いたいところだろうが、そもそも他の勢力に土地を貸すってのが異例で異常なんだ。その結果がマイナスしかなかったってんなら、それが一つのケースであろうとも日本神話群が土地の貸出を控えるようになる理由としては十分な説得力を持つ。
もしもこの上で土地の貸出を望むなら、自分らの土地を貸すくらいの担保が必要になるだろう。しかし日本神話群以上に閉鎖的な北欧神話群にはその選択肢はねぇ。ならば爺さんにはこれ以上の交渉はできない。
「貴様らが周囲に迷惑をかけて回るのは今更のことじゃし、それで迷惑を被った日本神話群の者に文句を言うわけにもいかん、か。……まったく、これだから聖書の陣営はダメなんじゃよ」
土地の賃貸についてはこの場を誤魔化すためのでっちあげと思ったが、どうやらそれだけではなかったらしい。まぁそれも”あわよくば”って感じだったのだろうが、それさえも完全否定されたことで爺さんは明らかに面白くなさそうな目を向けてきた。
堕天使は関係ねぇ! とは言えん。
しかし、だ。これで会談が終わりだと考えればどうだ?
結果としてロキは来なかった。
これ以上問題がないなら折檻もねぇ。
諸々の事情を勘案した結果、俺は内心で『勝ったッ! 第七巻、完!』と喝采をあげていた。
『この場は解散して、一回家帰ってビール飲んで寝るぜ!』
そう考えていた俺だったが、御簾越しに向き合っている相手はそこまで甘い存在ではなかった。
「では今回御二方は、以前こかびえるさんがとある学校で神野さんに使った『神を殺せる術式』の解析はしない。ということでよろしいのでしょうか?」
「「……」」
Oh バレてーら。
散々言い訳させた上で止めを刺すスタイル。
悔い改めて♂ってお話