とある師弟のD×D   作:カツヲ武士

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102話

――アザゼル視点

 

結局日本神話群から派遣された神使との会談は、その内容とは裏腹にあっさりと終わった。

 

本来予定されていたであろう鬼帝のOHANASHIも、向こうの神使が「解析などが終わってからにした方が良いと思いますよ?」と言ってくれたので、とりあえずは後回しだ。

 

その後に聞こえてきた「ここで全治半年とか言われても困りますしねぇ」なんて言葉は……知らねぇな。少なくとも俺は関係ねぇし! 

 

問題は神野の存在と、爺さんが訪日した目的である術式について、だ。

 

「で、どう思う?」

 

「うむ。真実かどうかはわからんが、嘘は吐いていなかったように思えるのぉ」

 

「……そうか」

 

思えば爺さんは最初っから『堕天使の命と引き換える程度の術式で神野に通用するのか?』ってことを疑っていたんだよな。

 

だからこそ日本神話群の連中が術式の解析及び再現を妨害しないことに疑問を覚えたんだが、向こうの返答は単純にして明快。

 

『妨害する価値がないから妨害しない』と来たもんだ。

 

神野にすら通用する術式についての扱いが軽すぎる。そう思った俺は、爺さん同様にコカビエルが命を懸けてまで使用した術式の効果に疑いをもつところだったが、それは俺の早とちりだった。

 

「確かに向こうの言い分もわかる。費用対効果が悪いのは事実じゃし、一度でも他の陣営に術式の効果が知られてしまえば、簡単に対処されてしまうからのぉ」

 

「……そうだな」

 

神使曰く『堕天使さんの幹部がその命を削る術式を使って神野さんの分体を退ける。その効果は確かに素晴らしいとは思いますよ? ですが、それで稼げる時間は如何ほどでしょうか? 一人で数ヶ月だとして、こかびえるさんと同等の力をもつ幹部さんは何人いますか? そもそも術式の効果を知った上で堕天使さんの幹部が放つ攻撃を真正面から受ける神なんて神野さんくらいしかいませんよね? それに対処法だっていくらでもありますし? 結論を言わせていただければ、アナタ方が術式を研究し完成させたとしても脅威足り得ません。私たちはそう判断しております』だからな。

 

対処法として挙げられた方法も『攻撃を受ける前に潰す』なんて基本的なことから『使い魔なりなんなりを投げつける』なんて簡単な方法までなんでもござれだ。

 

そりゃまともに喰らうのは無限に分体を生成できる神野くらいだろうよ。

 

それに俺は思い違いをしていた。

 

神野も言っていたことだが、そもそも『理』とは、術者が思い描く世界。つまり権能を具現化する行為だ。

 

コカビエルはオセが用意した魔法陣や詠唱を利用することで『一撃必殺』の理を纏うことに成功したが、それはコカビエル本人が持つ権能とはまったくの別物。

 

己のもつ権能とは別のモノを纏ったが故に、コカビエルの体は術式に耐えることができずに自壊することになった。

 

通信で神野が言っていた『一撃しか持たない』ってのはこのことだったんだな。

 

一回使うごとに使用者が死ぬ。さらにそれで得られるのは数か月って短い期間だけというなら確かに費用対効果は最悪だ。

 

……何が最悪かって、それでも俺たちが神野を撃退するにはこの術式に頼るしかねぇってことなんだよな。

 

でもって問題はそれだけじゃねぇ。

 

「これから爺さんはどうするよ?」

 

俺からすればこの術式は「使用すれば自壊するような術式」と聞こえが悪い術式ではあるが、相打ちの神話と呼ばれる北欧神話群との相性は悪くないように思える。しかしそれもこれもあくまで俺の感想だ。

 

これは下手に研究を進めた結果、最終戦争が早まる、もしくはその規模が拡大したり、逆に縮小する可能性もある術式だからな。主神という立場を考慮すれば研究を躊躇するのが普通だろうよ。

 

爺さんが退いてしまった場合研究速度が落ちることになるのは明白だ。だからこそ俺の立場で考えれば何とかして研究を続行して欲しいと思う。だがこればっかりはな。

 

そう思って聞いてみたんだが、俺の心配は杞憂に終わった。

 

「確かに費用対効果は悪い。じゃが神野を退ける術式の研究は無駄にはならん」

 

「じ、じゃあ研究を続けるってのか?」

 

「無論じゃ。そもそも儂が未知の術式を前にして退くわけがなかろうが」

 

「お、おう。そうだな」

 

そうだよな! この爺さんは知識欲を満たすために片目を捧げたり、槍に刺されながら首を吊ったりする変態だもんな! そりゃ諦めねぇよな!

 

「……なにやら貶されている気がしないでもないが、まぁ良いわい。第一、ここで諦めたら丸損じゃしな」

 

「丸損? あぁ、確かにそうなるか」

 

「うむ」

 

ロキを説得して日本まで来たってのに手ぶらで帰ったら主神としての威厳も無くなるし、後から鬼帝に折檻されることが確定しているもんな。(それも全治半年以上)

そこまでして得るもんがねぇとか、そりゃ丸損以外のなにもんでもねぇわな。

 

「それに例の術式自体はまだ未完成のものなんじゃろ?」

 

「あぁ。そう聞いている」

 

シロネ・オセが言うには、だがな。いや、そこは疑ってもしょうがねぇけどよ。

 

「未完成であれだけの効果が得られるのであれば、完成させればより高い効果も見込めよう?」

 

「それは……そうかもな」

 

考えてみりゃあの術式は未完成のくせにコカビエルが神野の分体を破壊できた術式なんだよな。

 

何を以て未完成なんだ? 射程距離か、それとも術者の安全性か? もしかしたら……

 

「気付いたようじゃな?」

 

「あぁ」

 

最大の欠点である費用対効果。これを改善できる可能性もある、か。

 

「今のところじゃが、儂としては威力を多少落としてでも継続して使用できるように改善することができれば良い。そう考えておる」

 

「なるほど」

 

威力よりも術者の命ってわけだな。当たり前と言えば当たり前の話だ。

 

「威力を調節できるようになれば連射もできるかもしれんし、なによりこのままでもいざというときに相打ちに持ち込むこともできるもんな。少し考えただけで他の神話群との戦いで有利に立てる可能性が高い技術なんだ。そりゃ研究を止めるわけにはいかんわな」

 

「そういうことじゃな。しかも敵に使われた際の対応の研究にもなる」

 

「だな」

 

俺は打倒神野のため。爺さんは北欧神話のため。少なくとも現時点ではお互いの利害がぶつかることはない。

 

しかしそれだと……

 

「未完成の術式に警戒しないのはわかる。しかし完成させた場合は日本神話群にとって脅威になると思うんだが、その辺どう思う?」

 

結局はここに突き当たる。確かに堕天使があの術式を纏ったところで、スサノオとかが出てきたら術式を当てる前に潰されるだろうよ。だけど北欧神話群の神が改良された術式を纏ったらどうする気だ?

 

日本神話群がそこまで考えていないってんなら話は簡単だ。だがそこまで愚かな連中じゃねぇよな?

 

「おそらくじゃが」

 

「なんだ?」

 

「儂らに告げていない対処法があるんじゃろうて」

 

「なに?」

 

いや、それならあの余裕にも説明がつく。

 

少なくとも『理』については向こうの方が詳しいんだからな。詳細を聞ければよかったんだが、日本神話群と俺たちの間には何の繋がりもねぇからな。

 

向こうが何か欲しがっているならまだしも、何もない状態で一方的に技術提供を求めるわけにはいかねぇし、求めたところで断られるのがオチだ。

 

土地を借りることに成功していた悪魔陣営なら繋がりはあっただろうが、英雄様が犯した度重なるやらかしのせいで今や完全に敵視されているみたいだし。

 

まぁオセに関してはそれなりに信用しているみたいだが、そのオセは魔王や俺たちと疎遠……つーか敵対しているようなもんだからなぁ。

 

いや、この場合は魔王や俺たちと敵対しているからこそ信頼されているって考えた方がいいのか? 

 

あの阿呆どもは本当に……。な、何にせよ(俺は)説教を免れたし、術式の解析の許可を得た。それに京都へ行って妖怪と交渉の席に着く許可も貰えたんだ。決して悪い結果じゃねぇ。

 

研究のあとに爺さんがどうなるかはしらねぇが、それはそれだ。

 

「……絶対に逃がさんぞ」

 

爺さんが何ぞ言っているが、聞こえねぇなぁ! 俺は俺のやるべきことをやるぜ!

 

 





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