とある師弟のD×D   作:カツヲ武士

84 / 103
総督と無限接触ッ!

どうなるアザゼル!どうするアザゼル!

そして無双するオーディンに魔の手が迫る!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばしッ!




83話

ーーアザゼル視点ーー

 

まさかいきなりオーフィスと邂逅するとはな。

 

神殿に向かい飛んでいた時、ファブニールの

宝玉が淡く輝き、このフィールドの隅っこ

の方に反応を示していたんだ。

 

その反応に胸騒ぎを覚えた俺は、こうしてココに

飛んできたのだが・・・

 

そこにいたのは一人の少女。

 

腰まである黒い髪に、黒いワンピースを着て、

細い四肢を覗かせている。

 

見た目は少女だが、隠しきれない不気味な

オーラがコイツの正体が無限の龍神である

と教えてくる。

 

少女は端正な顔つきだが、無表情で神殿の

方をじっと見ていた。

 

「・・・お前自身が出張って来るとはな」

 

その少女に向かい俺がそう言えば、神殿を

向いていたオーフィスは俺に視線を移し、薄く笑う。

 

「アザゼル。久しい」

 

久しい?こいつに時間の概念なんかあったか?

それに笑う?なんだ?俺の知ってるオーフィス

とは随分違うが・・・

 

「前は老人の姿だったが、今回は黒髪少女ってか?

何があったかは知らんが・・・何を考えている?」

 

コレが俺の知るオーフィスなら、何も考えず、

ただソコに在る存在なんだが、今のコイツは

自身の渇望を持ち、ソレを叶えようとする意思

を持っている。

 

ならばココにも何かしらの意味が有って

現れたんだろう。

 

「シャルバ・ベルゼブブからの依頼。我の

邪魔をするオーディンを殺しに来た」

 

「・・・?!」

 

最悪だっ!確かに今の俺たちはコイツの

邪魔をする存在。

 

そしてこのフィールドに於いて、連中の

狙いを妨害出来る唯一の存在でもある。

 

シャルバとやらは何一つ嘘を吐いていないし、

説得や交渉が出来る相手じゃねぇ!

 

それにココでオーディンの爺さんが

殺されたら、結界の解析や神野に対抗

するための研究が滞ってしまう!

 

その上、北欧神話が混乱するってか。

 

そもそも襲撃があることを前提にして

いたから、オーディンを殺されても俺たち

の勢力としては問題ないかもしれんが、

それに納得できない連中だって居るだろう。

 

その結果は、統率が取れない北欧神話群の

内乱と、俺たち三大勢力への敵対。

 

クソッ!小僧め!自分が勝った後どう

なるか考えもしねぇってか?

 

それとも敵対者はオーフィスに殺させるか?

どちらにせよ厄介な策を思いつきやがってっ!

 

「さすがに見逃せねぇな・・・ココでお前を倒せば世界は平和になるかね?」

 

どう考えても勝てねぇ。ソレはわかってる。

だがなんとかしねぇとダメだ。

 

最善は時間を稼いでる内にオーディンの

爺さんが結界の解析を終えて逃げてくれる

ことだが・・・そもそも時間を稼ぐのもキツイ相手。

 

さて、どうする。頭の中を全力で回転させて

対策を考えていくが、どう考えても答えがでない。

 

「無理。アザゼルでは我を倒せない」

 

侮蔑でもなく、嘲笑でもない。当たり前のことを当たり前に告げるオーフィス。

 

確かにそうだ。だがココでこいつを止める

ことが出来れば、禍の団に対して

大ダメージを与えることが出来るんだよな。

 

そうなれば神野の狙いを一つ潰すことが出来るだろう。

 

いやまて。

 

「なぁオーフィス。お前、オーディンを殺しに来たんだよな?」

 

「然り」

 

俺が確認を取れば、オーフィスは特に異論も挟まずに肯定する。

 

「じゃあ何でここにいる?何故今すぐに

オーディンの側に行って殺さない?」

 

おかしいだろ?コイツは嬲るだの警戒すると

いうことはない。

 

殺すと決めたならさっさと殺す。そういう存在だ。

 

それなのにこんなフィールドの隅っこで

何してんだ?

 

「・・・我が転移してきたのがココだった。

そしてオーディンの近くに転移できない。

さらに言えばこの空間内で転移が出来ない

ようになっている」

 

オーフィスの言葉に俺は驚愕した。

 

あのオーフィスの行動を阻害するほどの

結界を造れるモノが禍の団に居るだと?!

 

驚く俺を尻目に、オーフィスは続ける。

 

「とは言えこの程度なら問題ない。ここから

殺そうと思ったらアザゼルが来た」

 

ぜ、絶妙のタイミングってわけかよ!

自分がココに来たタイミングが如何に

神がかっていたかを知り、人知れず

冷や汗を流す。

 

しかしアレだな。

 

オーディンの爺さんを殺す前に、こうして

俺と会話をする程度の情緒があるのなら、

このまま会話で時間稼ぎが出来るかもしれねぇな。

 

俺の思考が戦闘から時間稼ぎにシフト

したとき、オーフィスの真横に魔法陣が

出現し、何者かが転移してくる。

 

オーフィスは真横に現れたモノに特に何も

感じていないようで、転移してくる者の

邪魔をしようとはしない。

 

つまり禍の団の一員ってわけだ。

 

そして転移してきたのは一人の貴族服を来た男。

 

そいつは俺に一礼し、不敵に笑んだ。

・・・目は笑ってねぇがな。

 

「お初にお目にかかる。俺は真の魔王の

血を引く者。クルゼレイ・アスモデウス。

禍の団の真の魔王派として、堕天使総督

である貴殿に決闘を申し込む!」

 

あぁ、コイツがアスモデウスの子孫。

 

クーデターの首謀者の一人がこうして態々

俺の目の前に出てきてくれたというわけか。

 

俺は頭をポリポリと掻きながら、呟く。

 

「旧魔王派のアスモデウスか。ベルゼブブはどうした?」

 

カテレアは俺が葬った。ルシファーはヴァーリ

とそのオヤジにジジイ。

 

なら残りはベルゼブブだろう。そう思い

尋ねたんだが・・・

 

オーフィスにオーディンを殺すよう依頼した

シャルバ・ベルゼブブ。

こう言う奴が潜んでるのが一番危険なんだよ。

 

確認するや否やドンッと言う音と共に魔力を纏うアスモデウスの子孫。

 

オーラがどす黒い。つまりすでに

オーフィスの蛇を飲み込んでいるってことか。

 

敵の目の前でドーピングするような

阿呆ではないと言うことらしいな。

 

「旧ではない!真なる魔王の血族だ!

アザゼルよカテレア・レヴィアタンの

仇を討たせてもらうっ!楽には殺さんぞッ!」

 

あぁん?コイツ、カテレアの男か何かか?

小僧の情事なんざどーでも良いが、今回の

首謀者の一人を殺せるならソレで良い。

 

問題はオーフィスだが・・・

 

「オーフィス!アザゼルは俺に任せて

もらうッ!貴様はオーディンを殺せッ!」

 

その声を受けて神殿の方向に手を向ける

オーフィス。

 

ちっ!さすがにココまで離れた距離からの

狙撃なんか受けたら、オーディンの爺さん

がやべぇぞ!

 

さらに攻撃するのがオーフィスとなればなおさらだ!

 

何とかして止めねぇとっ!

だがオーフィスの説得は不可能。

 

ならば狙いは仮にでも手綱を握る目の前の小僧だ!

 

「まてクルゼレイ・アスモデウス。そもそも

このフィールドはオーフィスの攻撃に耐えれる

強度があるのか?オーフィスが殺意を込めて

放つ攻撃の余波はどれほどだ?それに俺たちは耐えられるのか?」

 

情けねぇ話だが、多少の距離があった

ところでオーフィスの攻撃は周囲一体を

灰燼と化す攻撃力が有るだろう。

 

いや、フィールドごと消し去る可能性が高い。

 

その可能性を示唆すれば、保身に長けた小僧なら恐らく・・・

 

「・・・ちっ!確かにその心配はあるか。

オーフィス、俺がアザゼルを殺すまで

攻撃は保留だ。

その後でフィールドごと殺せばいい」

 

オーフィスとすれば結果的に爺さんを

殺せればソレで良いのだろう。

 

クルゼレイの言葉に対し、特に何を

言うでもなく頷き、神殿に向けていた

手を静かに下ろした。

 

これでよし。爺さん!さっさと結界を解析して逃げろよ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー???視点ーー

 

 

「・・・グングニル」

 

何度目かの投擲を行えば、オーディンの

放った百発百中の槍は確かに目標を消滅

させていた。

 

進行方向には槍の軌跡が残り、その槍が

放られた先に居た悪魔は消えている。

 

数十で足りないならと、百人近くで

纏まり、防御シールドを張ったが、

それすら貫かれた。

 

英雄を殺すための場に、突如として現れた

オーディン。ソレを討ち取って名を揚げようと

して、その周囲を囲んでいた千に近い悪魔たち。

 

すでにその数は半分以下となっていた。

 

彼らは自分たちが挑んだ北欧神話の

主神の強大さをまざまざと見せ付けられ

ることになり、その士気はもはや完全に

崩壊していると言ってもいいだろう。

 

なにせ攻撃を加えれば魔法で相殺され、

逆に反撃を喰らって殺されるのだ。

 

殺そうと思えば全滅させることも可能な

オーディンが、何故こんな胡乱な手を

取っているのか。

 

リーダー格の悪魔は、オーディンの狙いが

自分たちの士気の崩壊にあると目星を付けた。

 

自分たちが攻撃をすれば反撃を受けて殺される。

 

ソレを確信してしまえば、オーディンに

攻撃を仕掛けることが出来る悪魔は居なくなるだろう。

 

そうやって心を折ることで自分たちを

降伏させて実績とする。

 

ソレを以て今後の統治を楽にしようという

のが、オーディンをこの場に差し向けた

サーゼクスの狙いなのだろう。

 

敵の狙いに気付き思わず歯噛みするが、

ソレを知ったところで彼らにはどうする

こともできないと言う現実に突き当たる。

 

何故なら目の前の神が強すぎるからだ。

 

恐らく自分たちが掲げるシャルバ達よりも。

 

いや、もしかしたら自分たちの最終目的である

サーゼクスよりも強いのかもしれない。

 

準備不足で挑んで良い相手では無かった。

 

指揮官の悪魔はそう後悔する。

 

だが・・・彼らにはまだ一つ希望がある。

そう、今回禍の団が用意した、例の罠だ。

 

アレが発動すればこのフィールド内の

()に甚大なダメージが与えられる!

 

そうなれば北欧神話の主神と言えども

ひとたまりもない。

 

だからこそ我々はアレが発動するまで

時間を稼ぐことにするのだ。

 

今のオーディンはこちらから攻撃しない

限り反撃してこない。

 

ならば我々はオーディンを抑え込めていると言えるだろう!

 

乾坤一擲の戦でソレだけの偉業を成した

となれば、作戦成功時に自分に齎される

であろう報酬は如何程のモノか。

 

第一目標である英雄は逃がしたが、ソレを

補って余り有る戦功ではないか。

 

黙っているだけでソレが転がり込んで

来ると言うなら悪いことではない。

 

そう考えて、部下や協力者に距離を取り

散開するよう指示を出そうとしたが・・・

 

「いい加減にせい」

 

自分を含めたオーディンの周囲に散開していた

全ての悪魔が、彼によって放たれた極大の光に

包まれ・・・ソコで悪魔の意識は途絶えた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーオーディン視点ーー

 

 

舐めた真似をしてくれる・・・

 

儂の放ったグングニルは確かに地を抉り、

進行方向に居た悪魔たちの障壁を貫いていた。

 

じゃが誰一人とて殺してはおらぬ。

 

殺す前に転移させられていたのじゃ。

いや、コレは転移と言うよりは悪魔どもの

ゲームのシステムにあるリタイアに近い。

 

ともかく、儂ですら解析出来ていないこの

結界の中で、転移を可能にする者が儂を

観察しておったのじゃ。

 

故に放った全方位への攻撃魔術。

 

中級だろうが上級だろうが、儂にしたら

等しくゴミよ。

 

ただ転移の技術を見定めるために

小刻みに攻撃していただけに過ぎん。

 

「ほほう。流石は北欧神話の主神殿。

見事な魔術ですな」

 

誰ひとり居なくなった空間にそう言って

現れたのは、黒い軍服のような服を着た

目つきの鋭い黒髪の男。

 

知的でありながら確かな力を感じるその

姿は、戦う前から一廉の存在であることを

確信させるには十分な存在。

 

しかも儂の前に立つと言うのに恐怖心の

欠片も見られぬ。

 

さもありなん。こやつは儂の攻撃を観察し、

ソレから悪魔共を避難させることが出来る

存在なのだから。

 

「見たところ悪魔のようじゃが・・・貴様も

旧魔王派とやらの悪魔か?」

 

だとすれば間違いなく幹部。

 

サーゼクスの小僧に匹敵する悪魔が敵に

居るとは聞いとらんが・・・

 

「まさか。私は彼らとは違います。

どちらかといえば現魔王派でしょうね」

 

肩をすくめる様子には儂と戦おうと

する気配がない。

 

いや、いきなり豹変する可能性もあるから

簡単には判断できんのじゃがな。

 

「ならば何故アヤツらを避難させた?

旧魔王派はテロリストぞ?ソレを

守るなら貴様とて同罪ではないか」

 

先だって、大王派とか抜かす、旧魔王派では

なくともテロリストを支援したとして

滅ぼされた家があると聞く。

それと同じ扱いを受けることになるじゃろう。

 

そう聞けば

 

「然り。故に私は彼らを避難させたので

はなく捕らえたのですよ。

なにせタダでさえ数が少ない悪魔の中で、

多少主義主張が違うからと殲滅されては

種の保存が出来ません。

それに彼らは所詮兵士です。心が折れ、主が

居なくなれば民に戻すことも可能でしょう?」

 

・・・言ってることはわかる。

 

悪魔の数についての問題は深刻らしいし、

テロリストもそのような扱いなら労役を

課すという形で助命もできる。

 

それに情報を収集すると言う意味もあるのだろう。

 

「更に北欧神話の主神であるオーディン様に

何かが有れば外交問題です。

サーゼクス・ルシファー様がオーディン様に

依頼を出したのは知っておりますが、流石に

胡乱ではないかと思いましてね。

悪魔の内乱に北欧神話の主神殿を関わらせる

だけでも恐れ多いのに、その上『英雄』の

保護のために同胞を殺させるなどありえません」

 

うむ。言ってることは完全にこの悪魔が正しい。

 

貸し借り以前の問題じゃ。

 

まぁ儂としては、この「入ることは

出来ても出ることが出来ぬ」という

結界に興味が有ったから依頼を受けたがの。

 

本来ならば拒否して外で高みの見物をしておるわ。

 

「言いたいことはわかった。お主の言う

通りじゃろう。

しかしじゃな。儂はお主の様な者が居るとは

聞いとらんぞ?」

 

そもそもコヤツが居れば儂に依頼を出す

までもなく連中は救えたじゃろ?

 

それに態々儂のグングニルに隠れて悪魔を

避難させた理由の説明にもならん。

 

「あぁ、今回は魔王様方が自分でケリを

つけたいとか言ってましてね。

私には今回の作戦への参加命令は出されて

いないのですよ。

・・・こうして来賓の方々の手を煩わせて

いる時点でダメだという事に気付いていない

のが問題ではありますが、今までの傀儡から

脱却し、少しずつ自らの足で前に進もうと

しているのを見ればソレもまたシカタナイと思えます」

 

・・・保護者かの?

 

「では今まで隠れとった理由は?」

 

「オーディン様の攻撃の解析と観察ですね」

 

ほっ!臆面もなく言い放ちおったわ!

 

策士で有りながら爽やかさすら感じ

させるのは、行動に対するこやつなり

の芯が有るからか。

 

ある意味でロキに近い存在。

 

人間なら間違いなく勇者と言えるじゃろう。

面白い悪魔も居たもんじゃ。

 

じゃが今はこの悪魔よりも先に確認

せねばならんことがある。

 

「聞くが、お主らはすでにこの結界の

解析を終えたと見て良いのかの?」

 

そうでなければ転移で避難させることなど

出来んからのぉ。

 

「ん?あぁ、オーディン様はまだ結界の

核となる部分を見ていないようですな。

アレを見ればこの程度の結界など直ぐに

解析出来ますよ」

 

やはりそうか。

 

結界の中から結界を解析するよりも、結界を

構築している核を確認出来れば解析も容易い

と言うのは当然の話。

 

ならばその核とやらに案内してもらおうとするが・・・

 

「本来ならオーディン様にもお見せしたい

所ですが、残念ながら貴殿にはここより

退出していただきます」

 

「なんじゃと?!」

 

その核を確認し、術式を解析しようとした

儂に対しその悪魔がそう言い放ちおった!

 

知識の独占か!?この儂を相手に?!

 

これだけの強固な結界を造れる術式を解析

すれば、北欧神話としても十分な利益となる。

 

それゆえに悪魔としてもこの技術の漏洩を

防ぐというのはわかるが、目の前に馳走を

置かれてお預けを喰らうような真似を

させる気はないし、こうして儂を派遣して

おきながらそのようなことをしてくるなら

正式に抗議することも辞さんぞ!

 

殺気を込めて悪魔を見やるも、その悪魔は

苦笑いをするだけ。

 

「知識に貪欲なのはわかります。今回の

ご無礼の補填として術式をそちらに提供

するのも構いません」

 

ん?儂を追い出すのは知識の独占ではないというのか?

 

その言葉を聞き殺気を収め、首を傾げる

儂をみて更に苦笑いを深める悪魔。

 

「困った爺さんだ」と言わんばかりの

態度にイラつきを覚えるが・・・

 

「オーディン様が狙われております。

向こうに居るヤツを感じませんか?」

 

そう言って神殿とは別方向を指差す悪魔。

言われてそちらに遠見の術をかければ、

フィールドの端に居るのはアザゼルの小僧と

ソレと対峙する見知らぬ悪魔。

 

そして・・・

 

「オーフィスじゃと?!」

 

黒い服を着た少女の姿をしたモノが、

こちらをじっと観察しておった!

 

奴の視線は儂に固定されていて、狙われていると言うのも嘘では無いだろう。

 

あの距離からの狙撃、いや、オーフィスに

したら距離など関係ない。

 

フィールドごと破壊するような一撃が

見舞われるところじゃったという事か?!

 

「おわかり頂けましたか?旧魔王派が

玉砕覚悟でオーディン様を狙って居れば

すでに貴殿のお命はありません」

 

連中が己の命を惜しんでオーフィスに

攻撃をさせていないと言う事か・・・

 

その隙に避難しろというのは正しい。

 

「じゃがのぉ。さっさとココから退避した

ところで、儂がオーフィスに狙われて

おるのは変わらんじゃろ?

追跡されたらどうせよと言うんじゃ?」

 

「悪魔に関係ないところで勝手に死ね」と

言うなら態々先程のような外交問題云々は

言わんじゃろ。

 

何かしら算段があるはずじゃ。

むしろなかったら死ぬ。

 

「現在オーフィスが貴殿を狙うのは、

旧魔王派がそう依頼したからでしょう。

それらはココで全滅しますので」

 

なるほど、依頼人がいなくなれば殺し屋も

その刃を下げるか。

さらにオーフィスには拘りや仇討ちと

言う発想もないじゃろうしのぉ。

 

「ふむ。なるほどのぉ。では世話になるとしようかの」

 

ココで下手に抵抗してもオーフィスに殺されるだけじゃ。

 

それならさっさと避難するわい。

 

その上で後ほどサーゼクスを通じてコヤツ

から報酬を取り立てる方がマシじゃろうて。

 

「ご決断に感謝を。では元のVIPルームに

転送致します。

周辺の掃除は終わっているのでご安心を」

 

・・・手際の良いことじゃのぉ。

転移の魔法陣の上に立ち、コヤツの

構築する術式を観る。

 

ふむ、核に干渉して鍵を開けるタイプか。

コレはコヤツが言うとおり、核を見れば

直ぐに解析出来るのぉ。

 

自分が神殿に行くべきだったと後悔

するも、後ほど術式がもらえると言う

ならと思い直し、ぐっと抑える。

 

「あぁ、そうじゃ、お主の名を聞いとらんかったの」

 

こやつは最初からある程度の礼儀を

守っておったが、名を名乗ることは

無かった。

 

まぁ魔王の配下である悪魔が、主君の

許可なく儂に名を売るような真似は

できまいよ。

 

それ故に、名を聞かれるまでは一人の

悪魔として接すると言うのは当然の礼儀。

 

じゃがその当然の礼儀のわかる悪魔と

言うのは珍しい。

 

報酬の取り立てに必要と言うのもあるが

その名を聞いておこうと思ったんじゃ。

 

「オーディン様に名乗るのも烏滸がましい。

ただの悪魔で結構・・・とは言えませんな。

オセ。リシュヴァーユ・オセと申します」

 

オセ。そうかコヤツが・・・

 

様々な噂を聞くが、所詮は悪魔の貴族の

一人と捨て置いたが、なかなかどうして。

 

人間の解釈では儂が聖書の陣営によって

貶められた姿とも言われておるが・・・

 

「うむ。そう言われれば儂の若い頃に似ておる!」

 

転移の光と不思議な満足感に包まれて儂は

その場を脱することとなった。

 

しかし転移の直前、儂の褒め言葉を受けて

奴が微妙な顔をしたのは気のせいに違いあるまい!

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーー???視点ーー

 

 

『いやはや。あのオーディンですら騙す

なんてねぇ。やっぱり主は凄いねぇ』

 

半ば感嘆、半ば呆れの感情でソレは言う。

 

「まぁそういう能力だからな。あとは任せた」

 

『了解了解』

 

その言葉と同時に黒い軍服を着た、

先ほどオセと名乗った悪魔は蟲によって喰い尽くされた。

 

・・・つい先程まで「主」と呼んだ相手を

喰らったと言うのに、その残骸に目もくれず

ソレはアザゼルらの方を向く。

 

『さぁお仕事お仕事っと』

 

にたぁと言う擬音が聞こえてきそうな

醜悪な笑顔を浮かべて、ソレは消えた。

 

そこに残ったのは数匹の蟲と、オセとは似ても似つかない悪魔の残骸であった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「部長!やっぱり俺、納得できませんッ!」

 

「イッセー・・・」

 

 

 




この時のオーフィスってロリっつーか
普通の少女なんすよねぇ。

笑うし、受け答えもするし。
帰り際「楽しくなるぞ」とか言うし。

兵藤家に来た時、何故あそこまで退化したのか・・・

オーディンに迫る(悪)魔の(救いの)手

まだ彼は殺さない模様。


ーー次回予告ーー

お願い!死なないでアザゼルッ!あなたが
ココで倒れたら冥界はどうなるの?!
英雄は誰が教育するの?!
アジュカの胃はまだ残ってるッ!
ココで耐えれば神野に勝てるんだからッ!(え?)

次回、クルゼレイ死す! デュエル・スタンバイ!ってお話

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告