とある師弟のD×D   作:カツヲ武士

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戦火に巻き込まれぬよう避難していた
英雄に対し忍び寄る赤い影!

その声は「このまま隠れてて良いのか?」
「それでもお前は英雄なのか?」と英雄
を戦場と言う名の地獄に誘おうとする!

ソレは何を狙っているかはわからない。
だが英雄を地獄に誘う声に対し、英雄を
己の主君と定めた狼が、その主君を守る
ため高らかに吠えるッ!



オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


84話

ーー兵藤一誠視点ーー

 

「部長!やっぱり俺、納得できませんッ!」

 

神殿の隠し部屋に避難している中、俺は

部長に詰め寄っていた。

 

「イッセー・・・」

 

部長も納得してるわけじゃない。だけど

邪魔するなって言われて、ソレを正しいと

認めてしまってるからこそ動けないんだ!

 

「イッセー君の気持ちは分かりますわ。

だけど私たちが下手に動いたせいで、逆に

アーシアさんが危険に晒されてしまうかも

しれないのですよ?」

 

朱乃さんは俺にそう言って、俺を

落ち着かせようとしてくれるが、

そもそもアザゼルが言ったことが

信用できねぇんだよッ!

 

「大体、アーシアを保護したって言い

ますけど、誰が保護したって言うんですか?!」

 

あの時はその場の流れで何も言えなかった

けど、おかしいだろ?!

 

「・・・確かに。総督殿は朱乃に言われる

までアーシアが攫われたことは知らなかった。

それなのにアーシアがすでに保護されてると

断言したのは何故かしら?」

 

そう、それだよ!

 

部長は俺の言いたいことを理解してくれた

ようで、その考えを口に出す。

 

「言われてみれば不自然ですわね。さらに

ディオドラ・アスタロトに攫われてから

保護するまでの時間が短すぎます」

 

朱乃さんもその不自然さに気づいたみたいだ!

 

「・・・普通に考えたら嘘よね?」

 

朱乃さんに確認を取る部長。

 

「そうですわね。コレはリアスを戦場

から退場させるための嘘でしょう」

 

そうか、やっぱり嘘だったのかっ!

 

アーシアを助けるとか言いながら、

実際は見捨てようとしてたんだな?!

 

アザゼルの言葉を信じた自分の馬鹿さ

加減にイライラする!

 

「だ、だけど外が戦場なのは事実ですぅ。

リアス部長の安全を最優先したと考えれば

アザゼル先生の判断が間違ってるとは

言い切れませんよぉ」

 

弱々しくも意見を言ってくるギャスパー。

 

確かに部長のことを最優先すれば

そうなるんだろうさ。

 

だけどなぁっ!

 

「なら最初から嘘なんか吐かないで

そう言えばいいのよっ!」

 

部長は自分が馬鹿にされたような気分に

なっているのだろう。

眦を上げて立ち上がる!

 

「で、ソレを言われてたらお嬢は素直に避難をしてたか?」

 

そんな部長に対してルー・ガルーさんが落ち着き

払って部長に意見する。

 

「そ、それは・・・」

 

部長もそれについては自信がないのだろう。

 

俺でもわかる、その場合に部長は絶対にアーシア

を助けるために行動してたってな!

 

「それに勘違いするなよ女王。俺たちが守る

べきはお嬢の眷属ではない。お嬢だ。

アーシア・アルジェントが攫われたのは我らの

油断が原因。その後の総督殿が嘘を吐いていた

としても、ソレを責めるのは筋違いだ。

わかるか?今、俺たちは戦場にいるのだぞ?

誰かを救助する余裕などないし、眷属として

お嬢の命を最優先で守らねばならんのだ。

二重遭難して全滅するなど笑えんぞ」

 

ルー・ガルーさんの言葉を聞き黙って

しまった朱乃さん。だけど今のは

聞き逃せねぇ!

 

「それは、アーシアを見捨てろってことか?!」

 

俺が叫べば、ルー・ガルーさんは俺の方を向き。

 

「ならばこの状況でお嬢を戦場に連れて出すか?

ソコでお嬢が殺されたらどうするつもりだ?

向こうの狙いはお嬢なんだぞ?」

 

ぶ、部長が殺される・・・

 

そう考えれば、俺が納得できないからって

理由でココから出ようとする行為がどれだけ

危険なことかがわかる。

 

だけどアーシアを見捨てることも出来ねぇよっ!

 

「そもそも総督殿が言った言葉が嘘とも限らん」

 

「・・・ソレはどういうことかしら?」

 

部長も自分が死んでも良い!とは言えない。

 

何故なら部長が死ぬってことは他の

眷属全員が死んでるってことだからだ。

 

そして俺が絶対に守る!とも言えねぇ。

だってそう誓ったはずのアーシアを

目の前で攫われてしまったから。

 

だから、部長はなんとかなる方法を

考えているんだろうけど、その為の

情報が足りないんだ。

 

だから今はどんな情報でも欲しいって

感じなんだろうけど、こんな時にも冷静な

ルー・ガルーさんが俺たちを本当に仲間

だと思ってるのかどうかが不安になるぜ。

 

「お嬢、もしもの話だが、あの場で

アーシア・アルジェントが攫われて

なければどうなっていた?」

 

そんな例え話をしてくるけど・・・

もしもあそこで攫われてなかったら?

 

「あっ!」

 

朱乃さんが声を上げた。

えっと、どうなるんです?

 

部長も朱乃さんの意見を聞こうと目を向ける。

 

「・・・悪魔たちの一斉砲撃で殺されるか、

アーシアさんを守るために誰かが身代わりに

なって死んでいた可能性が高いです」

 

「「あっ!」」

 

ソレを聞いて俺と部長も声を上げる。

 

ダメージなら癒せるけど、あの場でアレ

だけの悪魔から一斉攻撃を受けたら、

治療する前に消し飛んでる可能性が高い。

 

アーシアの運動神経じゃ回避とかも難しい。

 

ソレはアーシアだけじゃなくギャスパーも

一緒だけど、ギャスパーはなんだかんだで

高い魔力が有るし強力な神器が有るから、

なんとかなる可能性は高いんだよな。

 

だけどアーシアは無理だ。回避も防御も

出来ねぇ。他の誰かが守る必要がある。

 

ソレを考えれば、あそこでアーシアが

攫われたのは良い事だったってことになっちまう。

 

「じゃ、じゃあディオドラはアーシアを守る

ためにあそこから連れ出したと言うの?!」

 

部長も同じ結論に至ったのだろう。

愕然とした表情でルー・ガルーさんを見る。

 

「可能性の話だがな。先ほど総督殿も今回の

件はアジュカ・ベルゼブブ様が情報を持って

いたと言っていただろう。

そしてアスタロト家はベルゼブブ様の実家。

ソレを考えれば、すでに保護していると言う

言葉と、引き上げるのに多少の手間がかかる

という言葉も繋がってくる」

 

な、なるほど。最初からディオドラは魔王様の

命令で動いてた可能性が有るってのか?!

 

「で、でもソレはおかしいでしょ!

それならディオドラが私たちを挑発

する理由が無いじゃない!」

 

そ、そうだよな?それなら最初からそのことを

俺たちに言えば、それだけで済む話だろ?

 

「こうしてテロリストを釣る為には、お嬢と

彼は敵対していた方が都合が良いのだろう。

何せ俺たちは『英雄』として連中を釣る餌だ。

だがお嬢に演技なんかできないだろう?

それにあそこで下手にディオドラがスパイだと

知られれば、ディオドラもアーシアも命を

狙われることになる。

更に言えば・・・彼は神殿に来いと言った」

 

え、演技はともかく、そうだな。

 

確かに神殿に来いって言ってたぜ!

 

だからこそ俺たちはアソコを爺さんに任せてここに来たんだからな!

 

「おかしいだろう?千を超える上級や

中級の悪魔に囲まれた俺たちが、どう

やってあそこから神殿に到達できる?

ディオドラとて最初は囲まれた俺たちに

「一方的な粛清」と言っていた。

ソレが次の瞬間に「神殿に来い」だぞ?

矛盾どころの話ではない」

 

「「「確かに」」」

 

俺を除く三人が頷く。

 

えっと・・・つまり?

 

「つまり、今はディオドラがアーシアを

保護してるのよ。粛清する相手は私たち

ではなくて、向こうの旧魔王派の連中。

そしてこの戦場で一番安全なのが神殿の

中にあるココや、神殿の奥ということね」

 

部長の言葉が耳に入るが、理解が出来ない。

 

い、いや、だって、そんなの。

 

「なるほど彼がスパイと考えるなら総督が

言ったことは嘘ではなくなるし、バレない

限りはアーシアさんは無事です。

下手に我々が向かって不自然さが出てしまえば

アーシアさんも我々も危険に晒される」

 

朱乃さんもディオドラがスパイ。つまり

こっちの味方って考えに納得しつつある

 

「い、言われてみれば、アーシアさんが

攫われたとき、ディオドラさんは先輩の

ギフトで増幅された副部長の攻撃を見て

「アーシアさんが死ぬだろ」って言って

相殺してました・・・」

 

た、確かにそうだ!

 

あの時は何も考えて無かったけど、下手したら

アーシアが巻き添えになってたんだよな。

 

「落ち着けば分かることだ。だからお嬢。

今は勝手な判断で外に出るべきじゃない。

最低でも総督殿と連絡をとってからに

するべきだろうよ」

 

ルー・ガルーさんはそう言って、また

壁に背を預けて入口付近を見ている。

 

そうか、アレは格好をつけてたんじゃなく、

侵入者が来ないかどうか見張ってたんだ。

 

あの人が俺たちを仲間だと思ってない?

とんでもねぇ。あの人は常に最善の

行動を取って俺たちを守ってたんだ!

 

それにアーシアが無事な可能性が高い

なら俺たちがすべきは、部長を守ることだ!

 

俺はギャスパーと頷き合い、部長を守る

ためにどうすれば良いかを朱乃さんや

部長を交えて話し合うことにした。

 

 

 

(はぁ・・・所詮は憶測だというのに、よくも

まぁ簡単に信じられるものだ。

とりあえず。ヤツが敵で有ってもあの様子なら

何回かヤられるだけだろ?死にはしないだろう

から、あとは魔王様や総督殿に任せておこう)

 

 

 

 

 

 

 

ん?今ルー・ガルーさんが何か言ったような?

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーーアザゼル視点ーー

 

 

とりあえず俺の敵はこの小僧のようだな。

 

敵の幹部である以上容赦はしねぇ。

情報はすでに有るから生かす理由もねぇしな。

 

つーか、さっさと殺してオーフィスの

脚を止めねぇと、最悪VIPルームに居る

連中全員が殺されることになる。

 

つまり・・・さっさと殺すッ!

 

「一瞬で終わらせるぞ」

 

俺はファブニールの宝玉を取り出し、例の短剣を構える。

 

「行くぞ小僧!禁手化ッ!」

 

次の瞬間、俺は金色の全身鎧に包まれていた。

その姿を見て満足げに頷くクルゼレイ。

 

バカが、仇だと言うなら隙を見せずに殺しに

くれば良いものを。

 

中途半端な保身と中途半端な誇りが

キサマらの勝機を完全に無くしてる

ことに何故気付かんのだ。

 

態々指摘する気もねぇ。

 

だが、さっさと終わらせようとする俺の隣に魔法陣が現れやがった。

 

また邪魔者か?と思ってその紋章を見れば

・・・そうか、お前が出てきたか。

 

転移陣から現れたのは紅髪の魔王。サーゼクス・ルシファー。

 

「サーゼクス、何故出てきた?」

 

お前は元々向こうのVIPの護衛だろうが。

 

「今回、私は妹を政治の世界に巻き込んで

しまった。さらにいつもアザゼルに任せ

きりでは悪魔としての体裁も保てないだろう?」

 

まぁ、ソレはそうだ。

 

悪魔のクーデターだってのに堕天使の俺が

その幹部を片付けるってのもおかしな話。

 

普通に考えれば堕天使に対するヘイトが

溜まるからな。

 

前回のカテレアは俺の左腕を奪ったって

言うのが有ったからアレだが、今回は

瞬殺する予定だったし。

 

「サーゼクスッ!忌々しき偽りの存在ッ!」

 

サーゼクスを見て激高するクルゼレイ。

だがお前はカテレアの仇討ちをしに

来たんじゃなかったのか?

 

さっき申し込まれた決闘はどうなる?

ココで不意打ちされたら死んでるぞ?

 

所詮は碌な戦を知らねぇ小僧だ。

そう思うと溜息が出るぜ。

 

あ~とりあえず禁手解除しとくか。

 

全身鎧を解除した俺は、茶番となることが

確定したサーゼクスとクルゼレイの会話に耳を傾けた。

 

「貴様がッ貴様さえいなければッ!」

 

いや、アジュカはどうした?

 

実際、旧魔王派を打倒したのはサーゼクスとアジュカだろ?

 

まぁセラフォルーやファルビウムも活躍したわけだが・・・

 

「クルゼレイ。矛を下げてはくれないだろうか?

今なら話し合いの場も用意も出来る。

前魔王の血筋のモノたちを辺境に隔離した

ことは、まさしく愚行だったと反省している」

 

オセの演説で言われたからなぁ。

滅ぼすか懐柔するかをハッキリするべきだったんだ。

 

政治の実権を持ってなかったと言うのも

あるだろうが、それ以前にお前らは勝者

として中途半端過ぎたんだよ。

 

「ふざけないでもらおう!天使や堕天使と

手を結ぶ貴様に悪魔を語る資格などない!」

 

だからこんなヤツが出てくるんだ。

 

「お前らの中にも天使や堕天使は居るだろ?

さらに人間や他の神話群の連中も」

 

鏡で自分を見ろ。そういう意味を込めて

皮肉を言ってみるが、こう言う奴には

無意味ってのが定番だが・・・

 

「はっ!我々は連中を利用しているのだ!

自らの名で立つことも出来ん!直接貴様や

ミカエルに意見を言うことも出来ぬ雑魚

に何ができる?!相互理解?和平?不要だ!

連中は我々が支配することで正しく天使や

堕天使足り得るのだ!」

 

おぉ。思ったよりまともな反論に驚いたぜ。

しかし確かにソレはあるよな。

 

コソコソと技術の漏洩とかするくらいなら、まず俺に文句言えよって話だ。

 

教会の連中も、天使に文句は言えなくても

教会内部では随分と議論してるしな。

 

ソレを考えればウチは随分とセコイ。

 

俺らにとっては情報と技術の流出は

痛いが、それだけでは力を前提とした

連中の中では出世なんざ出来ん。

 

そりゃコイツ等に利用されて終わるぜ。

 

連中に味方する俺の部下たちの情けなさに溜息が出そうになる。

 

そんな俺とは別の意味で、サーゼクスは

悲しい目をしている。

 

同じ悪魔でもココまで価値観が違えば

交渉なんかできねぇよ。

 

わかりきったことでも、どうしても

止められないのだろう。

 

「クルゼレイ。私は悪魔という種を守りたい

だけだ。民を守らねば種は繁栄しない。

甘いと言われてもいい。

私は未来ある子供たちを導く。

今の冥界に戦争は必要ないのだ」

 

サーゼクスが語った道は、悪魔のために戦争が

必要と判断するオセとは一線を画した考え方。

 

王としてはわからないでもないが、はっきり言って悪魔としては異常だ。

 

だからこそ普通の悪魔であるクルゼレイには届かない。

 

「甘いッ!なにより稚拙な理由だッ!ソレが

悪魔の本懐だとでも思っているのか?!

悪魔は人の魂を奪い、地獄へ誘い、神と天使

を滅する存在だ!」

 

これだけ聞けば向こうが言ってることが

正しく聞こえるのが不思議だぜ。

 

「魔王とは、ルシファーとは全てを滅する

悪魔の王!その名を名乗りながら何故隣の

堕天使に矛を向けんのだ!

ソレが悪魔への背信行為となぜわからん!」

 

敵意を漲らせるクルゼレイに悲しい目を

向けるサーゼクス。

 

これが現魔王と旧魔王の子孫の最後の話し合いとなった。

 

クルゼレイから目を逸らし、オーフィスへと

向けたサーゼクスはオーフィスへと問いかける。

 

「オーフィス。貴殿との交渉も無駄なのだろうか?」

 

それに対するオーフィスの返答は

 

「我の蛇を飲み誓いを立てることだ。

もう一つ、冥界周囲に存在する次元の狭間の

所有権。ソレを全てもらう」

 

服従と冥界の閉鎖か。中々シビアだが考えようによっては悪くない。

 

閉鎖したあとでオーフィスの許可を取り、

回廊のようなモノで直通させる方法を

生み出せば、次元の狭間で静寂を貪る

オーフィスに迷惑をかけることなく外に

出れるだろうし、そもそも種の保存と

言うなら鎖国は悪い選択ではない。

 

外敵からの侵攻もオーフィスが防ぐ事に

なるから、特に問題ないだろう。

 

蛇を飲んだ場合でも、そこのクルゼレイのように、絶対服従というわけでもないようだしな。

 

少しの間考える俺とは違い、サーゼクスは

その条件を飲めないと判断したようだ。

 

天を仰ぎ瞑目し、次に目を開けたとき・・・

ソコには冷たい意思を持つ魔王が居た。

 

ソレを確認したクルゼレイは距離を取り

両手に魔力の塊を溜めていく。

 

つーかよぉ。その敵の準備を律儀に待つのって

のはどうなんだ?悪魔貴族の嗜みなのか?

 

俺の疑問を他所に、向こうは完全に戦闘状態となった。

 

「・・・ん?」

 

クルゼレイとサーゼクスを見ていたオーフィスが、急に戸惑ったような、困惑したような声を上げた。

 

「そうだ!それでいい!その方がわかりやすいのだよサーゼクスぅ!」

 

オーフィスの態度に疑問を覚えたが、すぐ近くで

生じる魔力の衝突に備えることを優先する。

 

そもそもクルゼレイは最初からこうする

予定だったんだ。

だからこそ話し合いなんか最初から無意味。

 

ソレを知っていながらも、語りたかった

のかもしれんな。

自分の想いを、冥界にかける想いを。

 

サーゼクスは右手を突き出し、ソレを上に向ける。

 

そこに集まるのはサーゼクスを象徴する消滅の魔力。

 

「クルゼレイ。私は魔王として、今の冥界に敵対するモノを排除する」

 

「貴様がッ!魔王をッ!語るなぁぁッ!」

 

サーゼクスの宣誓に対し、怒りと共に

掃射される無数の魔弾。

 

数は多いが、一発一発は俺が禁手化を

する前の段階の攻撃力より低い。

 

つまり3等から4等程度だ。

これではサーゼクスに通じない。

 

俺はそう確信したし、ソレは眼前で証明されていく。

 

ガォンッ!ギュンッ!

 

サーゼクスの撃ち出した小型の魔力弾は

クルゼレイが放つ魔弾を消滅させ、その

威力を保ったまま奴を葬り去ろうと

向かっていく。

 

ソレを障壁を張って防ごうとするも、障壁

ごと削られ、慌てて回避に回るクルゼレイ。

 

その中の一つがクルゼレイの口の中に入っていった。

 

その後すぐにドウッ!と言う音と共にクルゼレイの腹が一瞬膨らみ、その魔力が急激に下がっていく。

 

俺はソレを見てサーゼクスのやったことを理解し、そして驚愕した。

 

そりゃそうだろう?何せコイツは、クルゼレイの

体内に有ったオーフィスの蛇を打ち消しやがったんだ!

 

「殲滅の魔弾。腹に入っていたオーフィスの

蛇を消滅させてもらった。

コレで絶大な魔力はもう使えないだろう」

 

ボソリと呟くサーゼクス。その事実に

恐れ慄くクルゼレイ。

 

いとも簡単にパワーアップの源を消滅

させられたことで、先程まで余裕を

見せていたクルゼレイの表情には明確な

焦りと怯えが見える。

 

コレがサーゼクスが使う消滅の魔力か。

 

初めて本物を見るが・・・なるほど。

かなり厄介な代物だ。大きさは小さいが

その威力は絶大。さらにピンポイントで

狙ったモノを消滅させる技術は見事の一言。

 

完全に自分の魔力をコントロールしてやがるぜ。

 

・・・だが、腹の中の蛇を消すくらいなら、

頭を飛ばせば終わってたんじゃね?

 

そう思うが、きっとアレだ。

体内に入った蛇を消せるかどうかの実験だろう。

 

・・・ん?しかしソレが当たり前に出来たって

ことは、コイツはオーフィスの蛇を取り込んだ

場合、その蛇が体内のどこに行くかとか、蛇が

どんな形で相手を強化をしているのかってのを

理解してるってことだよな?

 

ぶっつけ本番にしては確信があったみたいだし。

 

どこでどうやって実験したかは気になるが、

ソレ以前に、蛇を消せるなら別にオーフィスの

出した条件を飲んでも問題ないのでは?

 

コイツの趣味?いやしかし・・・

 

疑問が疑問を生む中、向こうは終幕を

迎えようとしていた。

 

「おのれ!貴様と言いヴァーリと言い、

何故ルシファーはこうも恵まれた力を

持っているのに我らと相容れないのだっ!」

 

そうか、やはりヴァーリはこいつ等と

相容れないか。

 

一応他の勢力にはヴァーリがルシファーの

血を引くものだと説明してるし、今は

連中の誘いに乗ったフリをして二重スパイ

をしているってことになってるからな。

 

こいつ等と下手に仲良くしてて、守りに来なくて良かったぜ。

 

どうやら元気そうだし。一安心ってとこだな。

 

俺は胸を撫で下ろすが、向こうは

そういうわけにもいかん。

 

最後の力を振り絞ろうとしたクルゼレイの

腹をサーゼクスの魔力が貫通する。

 

致命傷だ。

 

「な、なぜ・・・本物が偽物に負けねばならないッ!!」

 

血涙を流しながらも未だ手に魔力を

込めようとするクルゼレイに対し、

サーゼクスは瞑目し、手を横にゆっくりと薙ぐ。

 

その瞬間、宙を飛び回る無数の滅びの

魔力がクルゼレイに向かい、そして

消滅させた・・・かに思えた。

 

だがっ!

 

『ソレはねぇ。君が弱いからだよぉ』

 

バクンと言う音とともに姿を消したクルゼレイ。

 

そしてクルゼレイが居た場所には、サーゼクス

の消滅の魔力すら打ち消した、黒い修道服の

ようなモノを来た長身のモノが・・・

 

「神野ぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

その醜悪なモノを認識したと同時に、俺は

光の槍をソレに投げつけていた!

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

ソレは醜悪だった。

 

『いけないなぁサーゼクスくぅん。殺すなら

しっかりと相手を見ないと駄目じゃないかぁ。

そもそもなんで即死させずに苦しめるんだい?』

 

アザゼルの攻撃を無視して、ソレはサーゼクスに語りかける。

 

ソレは醜悪だった。

 

体は黒く、目は赤く。髪は金。その姿に

オーフィスまでもが眉を顰める。

 

ソレは醜悪だった。

 

声を聞けば怖気が走る。あれだけ偽善者だの

甘いと罵倒されても怒りを見せなかった

サーゼクスでさえ、声を聞くだけで思わず

攻撃を仕掛けてしまいそうになる程に。

 

ソレは醜悪だった。

 

空気を腐らせ、大地を腐らせ、天を腐らせる。

 

ソレは醜悪だった。

 

その腕には腕と足と腹を失ったクルゼレイが、

未だに苦しみに悶えながらも生きていた。

 

腹に空いた穴に蟲を入れられ、されど死ねず、

蟲によって体内を喰われる痛みと恐怖に

先ほどとは違う意味での血涙を流し、慟哭していた。

 

ソレは醜悪だった。

 

全てを愚弄し、全てを嘲笑い、全てを腐らせる。

 

ソレはまさしく真なる悪魔。

 

「神野ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

三者の前に現れた、三大勢力を滅ぼさんとする悪意の具現者。

 

『やぁアザゼルくぅん。相変わらず元気そうで何よりだねぇ』

 

ソレは第八等指定廃神・蝿声厭魅(さばえのえんみ)

 

 

 

ここに地獄が顕現した。

 




英雄が出ると思った諸君。残念だったな!
英雄は常識の檻の中に入ったのさ!

ちなみに原作では「死ね、さっさと死ね」
の後に神殿に来いと言うディオドラ君。

大丈夫か?

常識に囚われた英雄なんか 毒にも薬にもならないんだよってお話

クルゼレイ死んでない!(予告通り)

偽ロリが転移出来なくてシャルバが転移できる理由は次回ですな。


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