リハビリと思って許してクレメンス。
オリ設定・オリ展開。
嫌いな人は読み飛ばし!
アザゼル視点
「「……」」
名簿を見たときは「まさか」と思ったが。まさか本当に来るとはな。
いや、名を騙った後の危険性を考えれば、最初っから嘘って線はないってことくらい理解していたがよぉ。
まぁそれに関しては、今はいい。
問題は会談の場として用意されたこの建物だ。
建物自体は古くもなく新しくもないが、この部屋に設置された机や椅子は北欧神話群の主神である爺さんや、一応堕天使勢力のトップである俺というVIPを持て成す分には過不足ない代物ではある。
……場合によっては俺の分の椅子だけパイプ椅子とか段ボールとかも想定していたが、流石のオセ陣営も日本神話群を対象とした公式な使者を相手に礼を失するような真似はしなかったか。
もしこの場でそれをやられていたら、立場上文句の一つも言わなけりゃならんかったから、これに関しては正直助かったと思っている。思っているんだがよぉ。
「あの、ウィーネ……様とおっしゃいましたか?」
「なにか?」
会談の場として用意された部屋に入った俺と爺さんが、何とも言えない表情をしながらも無言を貫いていたことに違和感を感じていたであろう戦乙女が向こうの護衛に声を掛けた。
その声色にどこか謙るような気配を見せるのは、半神の戦乙女とはいえ、5大龍王最強と謳われたティアマットや邪龍最強と謳われたクロウ・クルワッハを従えているだけじゃねぇ、ただそこに居るだけで『殺ると決めたら必ず殺る』という雰囲気を醸し出す小龍姫の怖さを肌で感じているからだろう。
しかし相手がどれほど怖くとも、彼女も一勢力を率いる主神の側仕えだ。
どうしても指摘しなくてはならないことってのは存在する。
バラキエル? もう完全に置物だよ。
無理もねぇ。なんといっても、娘の姫島朱乃が連中と同じ悪魔勢力だ。
それもオセに敵視されている『英雄』の眷属だからな。
ここで下手な事したら「バラキエルの無礼は娘の罪」なんて言われて血祭りにされる可能性だってあるんだ。それに抗議しようものなら「内政干渉」を理由にしてオセと堕天使の間で戦争が勃発しかねん。
つくづく前回の作戦で穏健派の筆頭であるサーゼクスが再起不能になったのが痛い。
いや、アレがあったからこそ悪魔陣営も神野対策に本腰を入れた。と考えれば決して悪くはないんだ。
しかしオセを抑える楔が減ったってのも事実。
……つーかオセも神野対策をしてるんだよな? そういう意味では俺らとオセは目的を同じくする仲間だ。それなのに俺らとの戦争を求めるっておかしくね?
下手に迎合して神野に気取られるのを防ぐって意味合いも考えられるが、それにしては小龍姫が剣呑な雰囲気を隠しもしてねぇ。
あくまでリスクを分散しているだけであってコッチに期待していないって可能性もあるにはあるが、どうも不自然だ。
これは後で要確認、だな。
それはそれとして。
「あの、ですね。そのぉ」
「……なんでしょう?」
「ひっ!」
明らかに「サッサと言え」と圧迫してくる小龍姫の圧力に心が折れそうになっている戦乙女。
気持ちはわかるが。ここまで行ったらそのまま突っ切れ! むしろ突っ込め!
俺や爺さんから向けられる期待の眼差しを感じ取ったか、戦乙女は意を決した表情をして、ゆっくりと俺と爺さんの対面にあるモノを指差しながら言葉を紡ぐ。
「あの。ソレ、なんですか?」
((良く言ったッ!))
そうなんだよ。俺と爺さんが座っているのは、確かにVIPが座るのに相応しい椅子なのだが、問題は対面、つまり俺達と会談を行うであろう相手が座るであろう位置にあるモノだ。
「む? あぁ、北欧神話群の方には馴染みがないかもしれませんね。これは御簾と言います」
「ミス。ですか?」
「えぇ。日本神話群における貴人が座する場、ですね」
(知っとるわいッ!)
(知ってるよッ!)
「な、なるほど」
俺と爺さんの心の叫びは戦乙女には届かなかったようだ。まぁ、あんな風にさも当然に用意されているなら「そういう文化なのかも」って納得するのも理解できなくはねぇ。だが俺は騙されんぞ!
「いや、その御簾ってのは確かに貴人用だが、それは本来格上が格下と謁見する場合に使われるモンだよな?」
「え?」
日本の文化を知らなかったり勘違いしているなら誤魔化されたかもしれねぇがなぁ! これでもそれなりに調べてるんだよ!
「そうじゃな。儂もそう記憶しておる。つまり日本神話群は、儂らを格下として扱っとるのかのぉ?」
いくらこっちに非があるとはいえ、公式な会談でこんな真似をされて黙ってるわけにはいかねぇよ。
「ふむ。格下とか格上とかいう考えはありませんでしたね」
「ほう。そもそもの話、この場に来るのが日本神話群の天照大神殿ならまだしも、その代理でしかない神使であるならば儂を前にして顔を見せるのが礼儀じゃろう?」
「だな。急な会談を申し込んだことはこっちの非礼だが、だからって無条件にそっちの非礼を赦すわけじゃねぇぞ?」
俺らが知らねぇと思って精神的優位に立とうとしたか? 甘ぇよ。
向こうの鬼帝は礼儀にはめっぽう五月蠅い存在だ。たとえ身内だろうと、否、身内だからこそ対外的な無礼は許さねぇはず。それが自分の武力を背景にした無礼なら猶更だぜ。
強力な後ろ盾を得て墓穴を掘ったな。この外交的を失点は貸しとして、譲歩を迫ってやる。
そう考えていた時期が俺にもありました。
「いえ、格がどうこう以前に神使様は女性ですから」
「「は?」」
剣呑な(といっても外交上のブラフだが)空気を纏った爺さんや俺に対して、小龍姫はそう宣いやがった。
「日本の文化では貴人、それもお相手のいる女性はみだりに男性に顔を見せないのが礼儀なのですよ」
「「……」」
ちらりと鬼帝を見れば、奴は無言でうなずいた。つまり嘘ではないってことだ。
「さらにお二方の逸話を知れば、ねぇ?」
「「あぁ」」
小龍姫のいう言葉にバラキエルと戦乙女が声を揃えて理解を示しやがった!
いや、確かに俺は女が理由で堕天したし、オーディンの爺様も好色な逸話に事欠かねぇけどよ!
「そういうわけです。外交儀礼として考えれば私としても多少思うところがないわけではありませんが、女性である神使殿をあなた方の目に触れさせるのを控えたいというウィーネさんの意見も理解できます。そもそも今回の会談ではそちらの非礼が過ぎますしね。それと差し引きということを考えれば御簾くらいは問題無いと判断しました。というわけで、このままでいいですよね?」
「「……」」
「いいですよね?」
「「アッ、ハイ」」
「オーディンサマ( ゚Д゚)⁉」
鬼帝の圧力、というか『差し引き』という言葉の意味を理解した俺と爺さんは、承諾を求める声に一も二もなく頷いた。
そんな俺らに戦乙女がなんか言っているが、そんなの関係ねぇ!
御簾越し? 無礼? アホか!
『それはそれ』で折檻されるより、差し引きでゼロにした方が良いに決まってんだろうが!
「いや、引きはしますがゼロにはしませんよ」
「「なん……
「言ったでしょう? 今回のあなた方は非礼が過ぎる、と。今後の事もありますし、それなりのOHANASHIは覚悟して貰いますよ」
「「……はい」」
何をしたってこの鬼からは逃げられねぇ。
俺に出来るのは、せめてバラキエルを巻き添えにする程度だぜ。
「む? 何やら嫌な予感がする」
ほほう。暫く戦場を離れていた癖に良い勘してやがる。だが、ドMのお前ぇがいればさしもの鬼帝も気持ち悪がって逃げるかもしれねぇんだ。絶対に逃がさねぇぞッ!
上下関係? 当然意識しておりますが?
格付けって大事ですよね。
俺が上! お前が下だッ! ってお話。