霧島悠斗は勇者?である   作:sーk

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お待たせしました!
今回で丸亀城の戦いは終わりです!!


暴走

 悠斗は星屑に喰らい付いた。

 その光景を見たものはいない。いや、ただ二人は見ていた。

 

「ふっふっふ、更に力を求めて喰らい付いたか。これは面白い事になりそうだの」

 

 見ているのは神。天の神。

 何処からか分からない所から悠斗の行動を見ていた。

 

「しかしそれでは理性が持たんだろ。やはり人とは馬鹿なのだろうか……」

 

 少しは残念そうにはしているが、その口は笑っていた。それもそのはず、形は違えど、天の神が望んでいるのは悠斗が何処まであの力を使えるか試していた。

 

「まあ、しばらくは見といてやろう」

 

 

 

 そしてもう一人はというと……

 

「そんな……! なんで……!?」

 

 杏だ。

 丸亀城の上から全体を見つつ、一人で融合を止めに向かった悠斗の方をチラリと見た瞬間に、悠斗は星屑を喰らっていた。

 

「っ!」

 

 すぐさま誰かに向かわせようにもこちらも五人でやっとの状態のため、杏は動くことが出来なかった。

 

(悠斗さん……!!)

 

 

 

 

 

 

 頭痛が酷い。身体中から内側から爆発するように熱い。思考は纏まらず、呑まれていく。

 

「グゥッ……! ァァ!! ガアァァァァァァッッッッッ!!!」

 

 鎧が剥がれていき、悠斗の背中が見える。

 その背中にあった白い模様は広がっていき、やがて全身を覆う。

 頭はは出ているが、今までよりも大きめに纏われた腕や脚。しかもそれはより禍々しい気配を漂わせている。

 

「ゥゥゥゥ……!!」

 

 融合の下は進んでいく悠斗に星屑は邪魔はさせないという感じで迫ってくる。

 しかし……

 

「──ー!!!!」

 

 声とは言えない叫びを上げながら悠斗はその拳を振るう。それだけで十、二十。それ以上の星屑を消滅させる。

 そう。死んだではなく消滅したのだ。

 今までは悠斗にも意識があった。しかし今回のは今までとは話が違う。完全に星屑に呑まれ、ただ破壊をしている。

 それ故に強い。

 

「!!」

 

 しかし星屑にも多少は知能がある。

 全方位からの同時突撃。

 確実に悠斗を殺すために突撃してきた。

 

「……、…………」

 

 何かを呟くと鎧が変化する。

 手には若葉の生太刀に似た刀を持ち、居合の構えを取る。

 そして抜刀。

 過去最速とも言える速さで周りの星屑が粉々になる。すぐに走り出すと進化体は完成間近になっている。

 しかし焦っているのか、進化よりも悠斗の方に星屑を多く送ってるようにも見える。

 

「アアアァァア!!!」

 

 叫びながら剣を振るう。しかし数には勝てない。

 気がつけば肩や足には噛まれた後もあり、身体には擦り傷や砂が沢山付いていた。それでも悠斗に止まる意志は無い。

 ついには進化体の下へたどり着いた。

 不意に声が樹海に響く。

 

「悠斗!!」

「ゆう君!!」

「平気か!?」

「助けるわ!」

「悠斗さん!!」

 

 若葉達が悠斗の下に追いついた。

 周りを見ると進化体も星屑もここだけに集まっていた。

 しかし……

 

「ホントに……悠斗なのか?」

 

 若葉の言葉はその場の全員の気持ちを表していた。

 事前に杏から聞いてはいたが半信半疑の状態でいた。しかし現状を見れば納得するしか無い。

 刹那。

 

「避けろ!!」

「避けて!!」

 

 若葉と友奈が同時に叫ぶ。

 全員が離れると、その場所に悠斗が落ちてきた。

 

「きゃっ!」

「うわぁっ!」

「くっ!」

 

 ゆったりと立ち上がる悠斗。

 その目に光は無く、何処か虚空を見ているようにも見えた。

 

「おい悠斗!! タマ達よりもあいつだろ!!」

「タマっち先輩待って!! 今話しかけたら……」

 

 案の定悠斗は球子に向かって突撃してくる。

 

「球子!!」

「タマちゃん!!」

 

 駆けつけようとするが、先程避ける時に全員が離れたのですぐには行けなかった。

 

「タマだっていつまでもバカじゃないんだ!!」

 

 そう言うと球子は進化体の方に走り、悠斗を誘導していく。

 だが速さが圧倒的に違う。

 今の悠斗は精霊を使った球子よりも速く強い。少しの差なんてものは無いに等しい。

 ならば何をすれば平気か。

 

「若葉──!!!」

「ああ!!」

 

 既に動き出していた若葉が『義経』を使った状態で、音速を超える速さで球子を掻っ攫う。

 そのまま進化体に向かって。

 

「く、ら、えぇぇぇぇ!!!!」」

 

 動かせる右腕を上手く使い、その楯をぶん投げる。

 炎を燃やして回る。進化体の群れに当たると一気に燃え広がる。

 追い討ちのように悠斗も突撃。

 焼け野原のように燃え上がる中、悠斗は一人で星屑を殲滅し尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

 星屑が消え、敵は全て居なくなった筈なのに樹海は解けない。しかし理由はわかる。

 

「止めるぞ」

「ああ」

「はいっ」

「うん」

「ええ」

 

 悠斗は着々と進んいる。若葉達勇者を狙って。

 

「まずは気絶させましょう。それが無理なら最悪……」

「私と千景は注意を引く。友奈と球子が頼りだ」

「分かってるよ。ゆう君は絶対助けるから」

「タマもだ。あいつはいつも通りでいいんだからな」

 

 一歩間違えれば悠斗が死ぬ。

 球子だっていつも通りお気楽ではいられない。

 そして駆け出しは同時。

 

「行くぞ千景!!」

「分かってるわよっ!!」

「!!」

 

 若葉が右、千景が左から同時に攻めると、悠斗の刀が変わり、2種類の盾となった。

 

「こんな素早く!?」

「なら……!」

 

 リーチの長さと『七人御先』の数を利用して鎌を様々な角度で攻める。上、下、斜め。その場で回り、勢いをつけて鎌をぶつける。

 それでも悠斗の反応速度と本能的な動きには意味を成さない。

 

「くぅ……! なんで!?」

「アアッ!!」

「っあ!」

 

 盾のままで千景に体当たりする。すかさず他の千景がカバーに入るが、その瞬間、他六体の千景が吹き飛んだ。

 

「ゆう君! そこまでだよ!!」

 

 残った千景一人にトドメを刺そうとした悠斗の前に、若葉と友奈が立ち塞がる。

 

「そろそろ戻らないか? 戻ってみんなで楽しいことやらないか?」

「そうだよ! みんなでまたうどん食べよ? だから……」

 

 ズドンッ!! 

 二人の間を何かが通り過ぎる。しかも後ろでは樹海の根に穴が空いていた。

 悠斗は既に盾から鉤爪へと変化させている。

 

「ッ!」

「あくまで言葉は無しか……」

 

 二人は説得を諦めて戦闘態勢を取る。

 瞬間、その辺りの空気が揺れた。

 

「オオォォ!!」

「ハァァァッ!!」

「アアアァァア!!」

 

 刀と拳と鉤爪が交わる。

 数秒間でいくつもの攻撃が行き交う。友奈がワンツーのリズムで牽制し、利き手の右を放つ。それを下がって避けると背後には若葉が『義経』で移動して既に構えており、防御が間に合わず、咄嗟に右手を捨てた。

 すかさず左の鉤爪を下から上がるが、若葉の返しに抑えられる。その隙に友奈は『一目連』の暴風を使いながら悠斗を飛ばす。

 

「グゥッ!」

「もう休んでくれ悠斗」

 

 そこへ球子が入り込み『輪入道』の炎を纏った楯で体当たりする。

 

「ゴフッ!!」

「お願い……」

 

 七人の千景が鎌の背で上に飛ばす。

 

「後で解除しますから」

 

 空中に投げ出された悠斗に杏の『雪女郎』の冷気が四肢を凍らす。

 動けなくなった悠斗はそのまま落ちることしか出来なかった。

 

「ァァ……」

 

 完全に動けない悠斗の周りに若葉達が集まる。

 

「すまない……」

 

 若葉が峰打ちで悠斗を気絶させようとした瞬間、突如声が聞こえる。それも全員聞いたことのある声が。

 

 

 〝それではつまらぬぞ〟

 

 

「「「「「!!」」」」」

 

 全員に鳥肌を立たせるような存在感のある声。杏は恐怖に怯えて崩れ落ちる。

 

 

 〝あまりにもそれではつまらぬ。せっかく手に入れた力を全開出来ぬとは面白くない〟

 

 

「まさか……」

 

 

 〝そう。天の神である。本来ならもうちょい大人しくするが、流石に面白くないからの。余興を増やしてやろう〟

 

 

 何処かでニヤリと笑う天の神。

 次の瞬間に少し地面が揺れる。それに悠斗の上から何かぎ降っている。

 

「雪……?」

 

 それは一見すればただの雪。それに杏達に害は無かった。

 だが。

 

「ガッ……! ガァッ!!」

「悠斗!?」

「ちょっと……! 何が!?」

 

 苦しみ始める悠斗に声をかけ続ける若葉達。そんな中で声をかけずに、顔を青ざめている杏の姿があった。

 

「まさか……そんな事って……」

 

 天の神の声は聞こえないが、杏の予想は当たっているだろう。

 それは……

 

 

 活性化

 

 

 悠斗の中にあるバーテックスである部分を活性化させ、侵食を進める。このままいけば悠斗の自我は完全に消えるだろう。

 

(そんな事は……そんな事は絶対にさせない!! だって……悠斗さんは……!!)

 

 これで治るなんて考えていない。それでも多少の意識があるうちにコレだけは絶対にしないと思った。

 気がつけば立ち上がり、近づいていた。

 未だに苦しむ悠斗の周りにいる若葉達を押し切って悠斗の横に座る。

 そして……

 

「んっ……」

『……………………』

 

 杏は悠斗の唇に自分の唇を合わせた。

 当然他の勇者達は固まっていた。

 そして杏が唇を離すと……

 

「ぷはっ」

『えぇぇえええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!』

 

 絶叫。いや発狂と言ってもおかしく無かった。

 そして当の悠斗は苦しんでいたのが嘘のように落ち着き始めていた。雪も止み始め、樹海も解けようとしていた。

 しかし、解けるまで当然杏に休みは無かった。

 

「あ、あああああんず!? おまっ!? ちょっ!?」

「アンちゃん!? それは……!?」

「い、伊予島さん……なんて大胆な……」

「杏が……」

「うわぁ!! ちょっとお、押さないでぇええ!!」

 

 樹海の解ける光は呑まれ、現実に戻っても杏は質問責めに会い、更にはひなたにまでその事が伝わり、ひなたからもしばらくは解放されなかった。

 因みに悠斗は寝ている状態で放置されている。

 

 




暴走の解決法が雑だったらすいません。完全にそろそろ恋愛にも発達させたいと思いまして……
今回も読んでいただきありがとうございます!!

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