霧島悠斗は勇者?である   作:sーk

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日常

 香川県、丸亀城

 

 かつては武将達が住み着いていた城だが、今は天からやってきた化物、バーテックスに唯一対抗できる勇者と巫女の拠点兼学校として使われている。

 勇者とは、バーテックスに対抗できる神樹様の力が込められてる武器、『神器』を使える少女達の事だ。

 そして巫女とは、神樹様の声を聞くことの出来る少女。

 

 刀の神器、『生太刀』を使う若葉は、真面目で誠実な少女。幼い頃から居合を習っており、適任と言えるだろう。

 

 籠手の神器、『天の逆手』を使う友奈は、明るく元気な少女。幼い頃から武道を習っている為、使いこなせるだろう。

 

 鎌の神器、『大葉刈』を使う千景は、無口で大人しい少女。高地にある小さな街に住んでいたが、特には何も習っていないが鎌は攻撃の幅が広く、攻撃力も高いだろう。

 

 楯の神器、『神屋楯比売』を使う球子は、元気でやんちゃな性格とは反対に何故か楯に選ばれた。

 

 ボウガンの神器、『金弓箭』を使う杏は、控えめな性格とは逆に攻撃的な連射可能の弓を持ち、唯一の遠距離を可能とする。

 

 そして神器を持っていない悠斗は本来なら戦えないが、あの日に戦う術を身につけた。

 しかし、常人ではそんな事は出来ない。

 何故か悠斗が何の副作用も無くバーテックスの力を取り込む事が出来たのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 午前六時前。

 まだみんなが寝ている時間帯。

 そんな中、丸亀城の周りを走る一つの影があった。

 

「はっはっはっ…」

 

 悠斗だ。

 悠斗は丸亀城に来てからも鍛錬を怠らずに努力をしてきた。そのおかげで勇者の中では一番のスタミナを持っている。

 走っている理由としては、体力的な問題だけでなく、肉体的にも強化しないと戦闘の時にあの力によって肉体がズタズタになるからだ。

 過去、一度だけ悠斗は病院送りになった。

 練習中に、あの力を使ったら全身が内側から焼かれる様な感覚に襲われるからだ。

 そして、走り続けていると……

 

「ん?」

 

 悠斗の目に入ったのは椅子に置かれているタオルとスポドリ。

 前までは何も置かずに走っていたが、ここ最近は誰かがタオルとスポドリを置いて行くが、悠斗はそれが誰かは知らない。

 そもそもこんな時間に起きれる人なんてあの中にはいるとは思えなかった。

 

「みんなの誰かなんだろうけど……うーん分からん!」

 

 あっさりと考えるのをやめる悠斗。

 そして休憩を終わり、部屋に戻ってシャワーを浴びに行く。

 そんな彼を見守る姿があった。

 

 

 

「気づいてくれるかなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 丸亀城での授業は午前中は他の学校と同じような事を学んでいる。しかし、午後になるとバーテックスについての事が教えられる。

 

 バーテックスは三年前に侵攻して人類の大半を食い尽くした。しかし、日本の神々が一つとなり、神樹様となってこの四国を覆う結界を張った。

 この四国以外にも一部の地域でバーテックスの侵攻に耐えているところが三つあった。

 

 長野県の諏訪、北海道、沖縄。

 

 この三ヶ所にも勇者がいるらしいが、四国とは違い神樹様の加護すら無いため生き残る確率は低いそうだ。

 

 そして座学を終えると、今度は実践練習が行われる。

 各自が木製で出来た自分の武器を持ち、きちんと扱えるように練習していた。

 その中でも若葉と友奈、悠斗はズバ抜けて目立っていた。

 

「セイッ!」

「はぁっ!」

「えいっ!」

 

 若葉達は元々練習して基礎からしっかりとやっていた為、動きは体に染み付いていた。

 特に悠斗は身体能力が上がっている為、速さも威力も段違いだった。

 そしてそれを側から見ている千景達は呆然としていた。

 

「いつ見ても凄いわね…」

「だよな〜タマはもう見慣れてきたぞ」

 

 そう言っている球子だが、足はプルプルと笑っていた。

 

「タマっち先輩絶対に怖がってるでしょ〜」

「んな!?なんだとー!あんずぅ!」

「え〜!」

「何してんだ?あいつら…」

 

 本当は怖がっている事を見抜かれて、杏に襲いかかる球子。その光景を動きながら見ていた悠斗は訳が分からなかった。

 

「さてと…」

 

 悠斗は気持ちを切り替え、みんなから距離を取る。

 目を閉じ、自分の中にある力を引き出す。

 若葉達も離れて、悠斗を見守る。

 すると悠斗の姿が変わり、腕と脚に白い鎧が纏われ、口にはマスクの様なものに覆われ、悠斗の体は白い何かで出来たスーツに包まれた。

 そしてそこから技の練習もやってみる。

 

「『モードチェンジ:白虎』」

 

 腕に付いていた鎧の形が変わり、虎の手の様になった。

 さらには…

 

「『モードチェンジ:薙刀』」

 

 片方の鎧の形を変え、薙刀の形に変化させる。

 

「ふぅ」

「流石に手馴れてきたな」

 

 変身を解くと、若葉達が駆け寄ってくる。

 

「まあ、三年も苦労してようやくだけどね」

 

 そう、三年。

 この力を制御する為に三年間、毎日体を鍛え、耐えれる体を作り、制御出来る様に頑張っていた。

「それでも凄いよ!ゆう君!」

「そうね、バーテックスの力を扱える様になるなんて…」

「そうですね。この力が使えるって事はそれだけでも強力ですからね」

 

 それぞれが感想を言ってくれて嬉しくなるが、いつもなら聞こえてくるはずの声が聞こえないから、球子が気になり、周りを見渡す。

 すると……

 

「うゔー」

「た、球子?」

 

 少し離れた所で球子が地面に倒れていた。

 

「平気?」

「うがーー!!」

「は?え?ちょっ!」

 

 突然倒れていた球子が悠斗に突進してきた。

 

「ぷはっ!何だよ球子!?」

「助けてくれ〜悠斗ぉ〜ひなたが〜!」

「ひなた?」

 

 普段は巫女としての訓練をしている筈だが、今目の前に何やら怖いオーラを出しているひなたが笑顔でこちらを見ていた。

 

「た、ま、こ、さ、ん?」

「ひぃぃ!」

「ひぃ…」

「ダメじゃ無いですか〜訓練中にはしゃいで走っちゃあ…」

「〜〜〜〜!!!」

 

 我慢の限界が訪れ、球子は急いで若葉の方に逃げる。

 

「お、落ち着けひなた…何が合ったんだ?」

「うふふふ、悠斗さんには関係ないですよ〜。ちょこーと球子にお話があるだけなので〜」

「いや目が笑ってないぞ…」

 

 明らかに怒っているひなた。

 そしてイマイチ状況が読めない若葉と友奈。

 

「タマちゃん?何をしたの?」

「タマは別に悪い事はしてないぞー!ただちょっと杏を追いかけてただけだー!」

 

 あっさりと自分のした事を認めしまう球子。

 そして…

 

「若葉ちゃん、球子さんをこちらに。大丈夫ですよ?ただ小一時間ほど貰えればいいので」

「む、そうか…なら頼んだぞ」

「んな!?」

「はい。分かりましたよ」

「若葉の裏切り者ーーー!!!」

 

 球子の残響が響き、小さくなっていく。

 それから球子は、ひなたに連行されて小一時間ほどある説教の時間が開始にされた。

 

 

 

 

 

 

 訓練が終わり、ひなたによる説教も済んだので、若葉とひなた、そして悠斗はある部屋に向かう。

 

「あー、あー。聞こえるか?白鳥さん」

『ええ、聞こえますよ。乃木さん』

 

 通信室。

 そこでは毎日この時間に若葉と長野県、諏訪周辺にいるたった一人の勇者、『白鳥歌野』が連絡を取り合い、その日のことを報告していた。

 

「こちらは特に変わった事は無かった。いつもと同じ様な日常だった」

『そうですか…こちらとしては本日の襲来は中々手強く、少々手こずりましたが、死者は出してません。ただ…重傷者が出てしまいました…』

 

 歌野の声は重く、悲しみが感じ取れた。

 

「そうか…では聞きます。あとどれだけ持ちこたえれそうですか?」

『……持ちこたえれて後…三日です』

「っ……」

『なので乃木さん。お願いがあります』

「なんだ?」

『あとは任せましたよ』

「っ!…ああ、任せてくれ…」

 

 次の瞬間、通信の奥で悲鳴と何かが崩れる音が聞こえた。

 

「白鳥さん!」

『もう来ましたか…乃木さん』

「ああ」

『白鳥歌野!行って参ります!!』

 

 その言葉を最後に通信は途絶えた。

 横で聞いていたひなたや悠斗も顔を伏せているしかなかった。

 

「ひなた、みんなに伝えてくれ」

「なんでしょう」

「もうすぐ敵が来ると」

 

 今まで四国に敵が来なかったのは諏訪があったからだ。それが無くなったとなれば、敵もこちらに攻めてくるだろう。

 

「若葉…」

「大丈夫だ…白鳥さんの意思は無駄にはしない」

 

 若葉は前を向く。

 命を賭して人々を守ろうとした勇者の為にもこれから始まる戦いは負けられない。

 

 

「これからは私達で守るんだ。この街を、この世界を!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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