霧島悠斗は勇者?である   作:sーk

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ひとときの安らぎ

「ああああ〜〜〜〜!!」

 

 悠斗は一人で温泉に浸かっていた。

 それもそのはず、ここは大社に用意された温泉旅館。そして悠斗は男湯にいる。

 

「やっぱ露天風呂は一人だと広いな〜」

 

 そう。今はこの旅館には勇者たち六人と従業員しかいない。そんな中で男湯は悠斗のみ。それはもうかなり広い。

 すると……

 

「さあ! 今から恒例の身体計測するぞ!!」

 

 隣の女湯から球子の大声がこちらにまで聞こえてくる。

 

「いやいや、それは若葉たちが止めるだろ……」

「ひゃぁ!?」

 

 完全に不意打ちの声。

 しかもそれはおそらく杏の声だと思われるが、何せ男湯と女湯。多少は距離がある為、誰の声かは分からなかった。

 

「こら球子! 風呂くらい大人しくしろ!」

「へっ! タマにはタマだって羽目を外したいんだー!!」

 

 バシャバシャと泳いでるのか、水の音が聞こえてくる。

 

「流石に止めた方がいいか? ……球子ー! 大人しくしないと桶投げるぞー!」

「悠斗!? 当てれるもんなら当ててみやがれってんだ!」

「言質は取った」

 

 近くにあった桶を持ち、女湯の方を見据える。

 

「さ、行くぞ……せいっ!」

 

 ゴンッ! ポチャンッ

 何かに当たり、湯に落ちた音が聞こえた。おそらく当てれたであろう。

 

「杏ー! どうだー?」

「命中! 大当たりですっ!」

 

 声のトーンが少し上がり、嬉しそうだ。

 

「なら俺は先に部屋に向かっとくぞー」

「わかった」

 

 返ってきたのは若葉の声。

 小さいが、千景や友奈の声も聞こえる。

 

「ぐんちゃんスタイルいいね〜! どうしてそんなに肌も綺麗なの?」

「え、あ、そ、そんな事言われても……私は普通にしてるだけだし……でも少しくらいならやってはいるわ……」

「なら今度教えてよ! ぐんちゃん!」

「っ、ええ。もちろんよ」

 

 ともかく楽しそうでなによりだと思いながら、旅館の部屋まで案内してもらった。

 

「こちらです」

「広いな……ってまさか全員ですか?」

「そう伺っておりますが?」

「大社め……」

 

 案内してもらい、大社に後でお灸を据えようと考えていると、若葉達も露天風呂から出てきた。

 

「ん? どうした悠斗。部屋の前に立ったまんま」

「若葉か……どうにも部屋はこの一部屋らしいぞ」

「んな!? それじゃあタマ達は悠斗と一緒の部屋ってことか!?」

「まあそうなるな」

「と、とにかく中に入りませんか?」

 

 ひなたに言われたままに部屋に入って行く。

 

「問題は誰がどこで寝るかですね」

「私はぐんちゃんの横にいくねー!」

「た、高嶋さん!?」

「なら俺は隅でゆっくりしとくよ」

 

 そう言うと悠斗は、敷布団を部屋の角に敷き始める。

 結果として場所は……

 

 悠斗、杏、球子

 若葉、ひなた、友奈、千景

 

 この様な配置になった。

 それからご飯も済ませて、残った時間は自由時間となった。

 

「さて、寝るにはまだ早いな」

「なら悠斗! タマと勝負しろ! あ、ついでに若葉も」

「私はついでか!?」

「まあまあ、若葉ちゃん。いいではないですか。わたしは将棋を持ってきましたよ?」

「ひなちゃん準備いいね! ぐんちゃんは何か持ってきてる?」

「ゲームならあそこに……」

 

 千景が指を指すと、荷物置き場には大量のゲーム機が置いてあった。

 

「まさかあれ全部か?」

「ええ、何か好きなのある?」

「そうだな……RPG系あるか?」

 

 そう言うと千景はいくつかのカセットを出してきた。

 

「知らん奴も出てきたな」

「あ! これは!?」

「伊予島さん?」

「私の好きな作家さんがシナリオを書いている奴です! しかも即日完売して幻とまで言われた伝説のゲームです!! 本物は初めて見ました!!」

「あんずが壊れた……」

「初めて見たな」

 

 杏の豹変に全員が驚いていたが、本好きの杏が好きな作家だ。その人が書いたシナリオとなれば、テンションが上がってもおかしくはないだろう。

 

「じゃあ……これやる?」

「いいんですか!?」

「ソロ用だけど推理とかがあってみんなでも楽しめると思うわ……」

 

 おそらく千景なりの優しさだろう。

 今までの千景は、ツンツンして誰とも関わろうとはしなかった。ここまで良くなったのも友奈のおかげだろう。

 

「やります!」

「推理なら俺もやってみたいな」

「なら二つのグループになってみてはどうでしょう? 杏さんと共に推理ゲームをするか、若葉ちゃんと一緒にトランプするか」

 

 ひなたの提案に賛同し、それぞれが二手に分かれる。

 その結果、杏と悠斗と千景と友奈。

 そして若葉、ひなた、球子に分かれた。

 

「流石に1日では終わらないから切りどころは私が言うわよ?」

「それでも大丈夫です!!」

 

 杏の目には星が見え、キラキラと輝いていた。

 

「アンちゃん嬉しそうだね」

「ま、それ程好きなんだろうな。その作家さんが」

「ほら、高嶋さん達もやりましょ?」

 

 千景はそう言うと友奈と悠斗の手を取り、杏の元へと連れてくと、杏が楽しそうにプレイしてるのがよく分かった。

 その一方で、球子達は将棋をしていた。

 

「むむむ、将棋は中々難しいな」

「そう言ってるけど若葉はタマに全勝してるだろ? そろそろ勝たせてくれよ」

「いや、何事にも手は抜かない。相手に失礼だしな」

「凛々しい若葉ちゃん! 絵になります!!」

「ってひなた! やめてくれ!」

 

 悩み続ける球子の側で、ひなたは若葉の写真を撮り、それを消そうと若葉がひなたを追いかける。

 

「ああ! もう! 負けだ負けー! タマには将棋は合わん!」

「ならトランプはどうだ?」

「よーし! 大富豪なら負けないぞ!」

 

 数分後……

 

「アガリだ。球子」

「なぬ!? ぐぬぬ……」

「なんだ球子。また負けたのか?」

 

 杏たちのやっていたゲームも一区切り着いたので若葉達のを観戦してた悠斗が球子に話しかける。

 

「まさか若葉がここまで強いなんて……」

「おい球子。それは私をバカにしてたな?」

「まあまあ若葉ちゃん。ルールだってあやふやだったじゃないですか」

「ひ、ひなた!」

 

 ひなたの暴露によって焦る若葉。

 その光景は、とてもいい雰囲気だった。

 

「さて、そろそろ時間的にも寝るか」

「ですね」

「おーい、電気消すぞー」

 

 電気が消え、部屋が暗くなる。

 楽しい休みも終わりが近かった。

 

 

 

 

 

 とある夢を見た。

 血だらけの五人。

 ただ一人で抗う少年。

 しかし、たった一人にその少年もやられる夢。

 

 

 

 

 

「はっ! はぁ、はぁ」

 

 目が覚めたのはひなただった。

 汗をかき、眠気も消えていた。

 

「まさか……神託? でもなんでこんなにはっきりと……」

 

 とにかくひとまず部屋を出て、自販機で飲み物を買って座り込んだ。

 

「血だらけの五人は若葉ちゃんたち? なら少年は悠斗さんということに。それに少し見えて消えたあの少女は?」

 

 頭が痛くなるような内容だった。

 確かに今までも多少は傷を受けて帰ってきたが、今回の襲撃は今までよりも傷ついていた。

 

「これは知らせるべきですね」

「ひなた」

 

 名前を呼ぶ声が聞こえた。

 いつの間にか悠斗がひなたの後ろまで来ていた。

 

「悠斗さん? 寝付けないんですか?」

「いや、ひなたが出ていくのが見えてな。それに様子も少し変だったからな」

 

 あの暗い部屋でそこまで見抜かれているなんて思わなかったが、ある意味悠斗らしいとも思える。

 

「神託か?」

「鋭いですね。……明日詳しくは言いますが、次の襲撃は危険が高いと思ってください」

「それは気合を入れなきゃな」

「でも皆さんならきっと……」

 

 そうは言っても、ひなたの顔は暗いまま。かけれる言葉も無く悠斗は不安を取り除くことが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 それから部屋に戻ったらすぐに寝ることが出来た二人。

 帰りのバスで、ひなたが神託の事を伝える。

 

「昨日の夜に神託が来ました。内容は注意を促すようなものでした」

「なんでも、相当危険が高いらしい」

「ん? 何故悠斗は知っているんだ?」

 

 普通に会話に入ってきた悠斗に若葉は疑問を持った。

 

「昨日聞いたんだよ。夜中に目が覚めてな、ひなたが起きたからな」

 

 悠斗が話し終わると、ひなたは神託の詳細を伝える。

 

「まず、バーテックスの量は今までより多いです。それに人が出てきます」

「人? それはバーテックスから生まれたってことか?」

「そこまでは……でもその人は悠斗さんを圧倒してました」

『っ!』

 

 悠斗を圧倒する程の実力。

 それは今の勇者達よりも強い事を表している。

 

「ですから、次の襲撃は今まで以上に注意をしてください」

「分かった。だがその敵はどうする?」

 

 若葉の疑問も最もだ。

 しかし……

 

「悩んでも仕方ない。今更出来ることなんて無いんだぞ」

「悠斗は呑気過ぎる。それで死者が出たらどうする」

「若葉は堅すぎるぞ。友奈を見習ってみたらどうだ?」

 

 悠斗が指を指すと、そこにはなんとも和ましい空間が広まっていた。

 

「ぐんちゃん! このお菓子おいしーよ! はい、あげる!」

「え、あ、ありがと。高嶋さん……」

 

 手に持ってるお菓子を千景の口まで運び、食べさせる友奈。とても和ましい空間がそこにあった。

 

「相変わらずですね」

「友奈ー! タマにもくれー!」

「いいよー!」

 

 球子は遠慮せずにお菓子をもらっていた。

 

「あれはあれで気を抜きすぎではないか?」

「まあ、あれくらいでいいでしょ」

 

 若干呆れつつも、若葉は気を抜く。

 

「まあ、そうだな。私は少し気を張りすぎていたかもな」

「ま、気楽に行こうぜ」

「ああ」

 

 そうして一行は城に戻り、その日は自由に過ごした。

 その二日後。最悪がやって来た。

 

 

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