なんか頼れる系になり始めたけど大丈夫かな?
休暇から二日。
悠斗達は城で勉強していた。
「あ〜暇だな〜」
「タマっち先輩! ダメだよ自習だからって何もしないのは」
「だってよ〜あんず〜タマはもう頑張ったんだぞ〜?」
時間としては昼食後の一番眠くなる時間帯。球子は机にだらけていた。
そこへけたたましい警報音が教室に鳴り響いた。
「うおっ! 敵か!?」
「球子気合入れろよ」
「おうよ! タマに任せタマえ!!」
各自端末を持ち、光に飲み込まれる。
「さて、この景色にも慣れて来たな」
目を開くといつもの樹海の景色が見えた。
そしてその先には星屑達もいつも以上に見える。
全員が丸亀城の天守閣からその光景を見ていた。
「神託通り、多いな」
「みんなでがんばろー! ね? ぐんちゃん!」
「ええ。頑張りましょう」
全員が気合を入れてる中、若葉は張り詰めた顔をしていた。
「どうした? 若葉」
「いや、なんでもない」
「? そうか」
その時は気にしていなかったが、それが命取りになる事を悠斗はまだ知らなかった。
「よし、敵さんもこっちに来てる事だし、こっちも行くぞ!」
「「「「おおー!!」」」」
気合を入れて声を出すと、若葉がものすごい勢いで飛び出してった。
「ちょ!? 若葉!?」
「くそ! またか!!」
前回もこうして若葉は飛び出していたが、前はまだ声が聞こえていた。しかし、今回は全く声が聞こえていない。
「くっそ! 俺が若葉のとこに向かう! みんなで他のを頼む!」
「待ってください!! 向こうは若葉さんを隔離しようとしてます! 一人では……!」
「ならわたしが行くよ!」
悠斗の横に友奈が立つ。
「友奈……」
「時間が無いよゆう君!! 急ご!!」
「っ! あ、ああ! 杏!」
「はい!」
「こっちの指揮は任せるぞ!」
「っ、はい!」
悠斗はそう言って友奈と若葉の方へと走り出す。
「あんず、どうするんだ?」
「とりあえず千景さんを前にします。ですが私が精霊を使って敵を減らします」
「でもそれでは伊予島さんに負担が……」
「大丈夫です。すぐに解除しますから。なのでそこからは千景さんにお願いしたいです」
杏は千景と球子に作戦の内容を伝える。
「それでいけるのね?」
「こちらの敵ならこれで行けるはずです」
「ならタマもそれでいいぞ! あんずを信じてるからな!」
球子は楯を持ち上げ、やる気を見せる。
「ならそれで行きましょう」
千景は前に出て敵を見据える。
そして杏は準備する。
「頼むぞー! あんずー!!」
「うん! 任せてタマっち先輩!」
杏は城の屋根の上で待つ。敵の数は多く、三人でもキツイだろう。そこで杏は深呼吸する。
そして……
「お願い!! 『雪女郎』!!」
杏の姿は変わり、紫羅欄花の装束から白い装束へと変わった。
そして辺りの温度が下がって行く。
「お願い凍えて!!」
その一言で、辺りが吹雪に襲われる。
そして星屑達を凍らせる。
「これが……伊予島さんの精霊……」
「あんずぅー!! 前が見えないぞー!」
「我慢してタマっち先輩! 千景さん! もうすぐ出番です!!」
「ええ!」
吹雪が止み始めると同時に千景は突撃する。
吹雪が止んだお陰で敵は減った。しかしそれでも敵は星の数ほどいる。
「まさか私が伊予島さんの指示を聞くなんてね」
苦笑しつつも、敵を斬り倒して行く。
そして、千景も精霊を使う。
「出番よ。『七人御先』」
彼岸花の装束の上に白いフードを被り、鎌を構える。
「さあ、来なさい。鏖殺してあげるわ」
「友奈!」
「任せて!」
友奈は迫るバーテックスを殴り、吹き飛ばす。
「『モードチェンジ:槍』!!」
槍へと武器を変え、力を込める。
「捕まれ友奈!」
その声にすぐさま反応して悠斗の槍を掴む友奈。
「行くぞぉぉおおおおおお!!!」
勢いをつけて駆け抜ける。
その一走で何十ものバーテックスを蹴散らして行く。
そして目の前まで若葉が見えてきた。
「若葉ぁ!!」
「っ! 悠斗!? なぜ来た!?」
「うるせえ!」
「痛っ!」
会って早々に若葉に強烈なチョップをかます悠斗。
「バカか!? 一人で突っ込むな!! みんながどれだけ心配したと思ってる!!」
「っ! ……すまない」
「謝るならまずは生きて帰るぞ。説教はひなたと二人掛かりでやってやる」
悠斗はそう言って槍を構える。友奈は先に攻撃を仕掛けていた。
若葉も少し遅れるが、刀を持ち、戦闘態勢に入る。
「死ぬなよ」
「若葉ちゃん達もね」
「絶対生きて帰るぞ」
三人は囲んでいた星屑達を蹴散らしていく。
友奈は鍛え上げた武道で殴り、突き進む。しかしそれでも敵は多く、少しずつダメージと疲労が増えていく。
「やぁぁああああ!!」
それでも持ち前の運動神経の良さで致命傷は避けていく。
「若葉ちゃん! そっちに少し向かったよ!!」
「了解だ! 任せろ!」
最前線で戦っていた友奈をスルーし、奥に進む星屑を若葉が流れるように斬り刻む。さらに囲んできた奴らにはその場で回り、その顔を斬る。
しかし、その隙に背後から星屑が体当たりを若葉に与えてくる。
「ぐっ! 舐めるなぁ!!」
態勢が崩れたが、すぐに持ち直してそいつを瞬殺する。しかし、その背後と若葉の背後から星屑がほぼ同時に押し寄せてくる。
「しまっ……!」
「っ! 若葉ちゃん!!」
鮮血が飛び散る。
よく見ると、星屑の口周りには血が付いていた。
「っ!! てめぇぇええらあああああ!!!」
それに気づいた悠斗も若葉の下に急いだ。しかし、それを邪魔するように星屑が壁になる。
「どけっ!!」
槍を回し、細切れに斬る。その後に数体目掛けて槍で突く。
そんな時に……
「ッ、ぐあっ!」
「ゆう君!?」
突如悠斗が苦しみ出す。
しかもそれは尋常ではなく、相当ヤバイ感じがしていた。
目の前では悠斗が苦しみ、少し前では若葉が二体の星屑に挟まれてダメージを受けている。
友奈はどっちを助けるかですぐには動けなかった。
「……ごめん若葉ちゃん! すぐ行くから!」
友奈はまず悠斗を助けに周りの星屑達を倒しにかかる。
そして悠斗の下へ駆け寄り、安全な場所へと運ぼうとする。
「ゆう君! しっかり!!」
「ゆう、な? わるい……」
「平気だよ! それよりも……」
「ああ、もう平気だ。友奈は若葉の所に行ってくれ」
悠斗はそう言うとそこで降りて、武器を作り出す。
「俺は多分平気だ。それより若葉のが心配だ」
「大丈夫なんだよね?」
「ああ」
「……」
しばしの静寂。
そして友奈は踵を返して前を向く。
「行ってくるね!」
「ああ」
友奈を見送った後、悠斗は城でも若葉のいる方でもない所を向く。
その先には人影が見えていた。
「あれがひなたの言ってた人……でもこの感じは……」
その感じは懐かしく感じるが、それが何なのかは悠斗には分からなかった。
とにかく人なら話が出来ると思い、話しかけてみる。
「あんたは誰だ? 人か?」
「……」
無言。
しかし、少しづつ近づいて来ており、徐々にその姿と顔が見えた。
見えたのは少女だった。身長は球子と同じかそれより少し小さい。髪の毛は真っ赤に燃える様な赤色のロング。
何よりも異質なのは服。
真っ黒な服かと思えば所々に黄色に光る何かがついており、異様な存在感を出していた。
「子供?」
「妾を子供と申すか小僧」
たった一言。
それだけで悠斗は身体中から大量の汗を出し、後ずさりしていた。
「まあ良かろう。妾とて今は本気で殲滅しに来たわけではないしの」
殲滅?
全く意味が分からない事を言うが、こいつならやりかねないと悠斗は本気で思えるほどに、その存在は圧倒的だった。
「ぁ、アンタの目的は何だ? アンタは誰なんだ?」
「そうだのう。お主は面白い体質をしておるからそれに免じて妾の正体、そして目的を教えてやろう」
そう言うと少女は悠斗にまた一歩と近づいてくる。
「良いか? 妾の正体は──」
「悠斗ー!!」
すると聞こえて来たのは球子の声。
そこには杏や千景もいた。
「球子……」
「ん? この子がひなたの言ってた人か?」
「何じゃ? お主ら。今はそこのヤツと話しておる。邪魔するでない」
「んだとー!? ガキの癖にー!」
「っ、バカ! 球子!」
次の瞬間、球子の横を何かが通り過ぎてった。
球子の頬からは先程のが当たったのか、血が垂れていた。
「タマっち先輩!」
「っ!」
球子は黙って崩れ落ち、杏が急いで支える。千景は手に持っていた鎌を持ち直し、構える。
後ろを見ると、樹海の根に前に戦った敵が放って来た矢が深く突き刺さっていた。
「次は無いと思え。妾に二言はない」
「「「ッッ!!」」」
その目は明らかな殺意に満ちており、杏は球子と一緒に崩れ落ち、千景は今にも鎌を落としそうになり、足も震えていた。悠斗も同様に、動けなかった。
そこへ、二つの影が舞い降りて来た。
「ゆう君! みんな!! 平気!?」
「すまない! 遅くなった!」
若葉と友奈だ。
周りを見渡すと星屑達は消えており、あとは目の前の少女のみとなった。
そして若葉達も状況を見る限りでどの様な状況かが分かった。
「ふむ……これが勇者か。しかしこやつ以外は正直どうでも良いな」
「何をブツブツと言っている」
「ああ、すまんな。こっちの事情でな。だから主らもちと寝とってくれ」
刹那、悠斗を除いた勇者達に先程と同じ攻撃が飛ばされる。
「ぐあっ!」
「きゃ!!」
「っ! きゃ!」
「若葉! 友奈! 千景!」
しかしどれも傷は酷いが、致命傷ではなくまだ治せる範囲内だった。それに治せる範囲とは言え、脚を中心的に攻撃されてとても戦えないだろう。
「くそ!」
悠斗はその身の鎧を変え、壁を目の前に作り、若葉達を守ろうとする。
しかし、その行動も一瞬にして無駄になった。
「ほれ、眠っとけ」
いつの間にか若葉達の後ろに現れた少女は首を叩き、気絶させる。
「なっ!?」
「さて、小僧には話があるが、先程小僧は妾の正体を聞きたがってたな」
「それで?」
「正体を教えてやろう」
それが嘘か本当かは分からなかったが、今はバーテックスには謎が多い。
もし敵なら有力な情報が出てくる可能性もあった。
「妾は天の神。この世界を、人類を根絶やしにしようとする者だ」
「……は?」
「だから妾は天の神だ。そこで小僧に提案だが、妾側へ来んか?」
悠斗の頭は一度に多くの情報が来た為、思考が停止していた。それでも容赦なく悠斗に近づいて来る天の神を名乗る少女。
「そ、それで何のメリットがある」
「メリットと言われてもな、貴様は妾の作り出したこいつらがいなきゃ死んでたのだぞ? そして妾が作ったということは妾の一部のようなもの」
そう言って天の神は指を鳴らす。真横に星屑が現れる。
「だからほれ、こんな事も出来る」
その体を触り、何かを唱えると、突然星屑の形が変わって行く。
「なっ!?」
「だから貴様には拒否権なぞない。まあ、それだと面白くないからしないがな」
「……」
目の前で変異した星屑。目の前で倒れている勇者達。
絶望的な状況だが、それでも悠斗はどうしても我慢出来なかった。
「おい、天の神様よ」
「お?」
「俺はお前の方へは行かない。それに人類も失わせない」
そう言うと悠斗は半身を前に出して戦闘態勢へと入る。
「そうか。それならば仕方ないな」
しかし、そう言うと天の神の表情が一変する。
「ならば貴様にも用はない」
刹那、天の神が消え、悠斗の背後に回る。
「っ!」
「ならば精々、妾を楽しませれるように努力するんだな」
「ぐふっ!」
一刺し。
どこからか出てきた針によって、悠斗の腹は貫通されていた。
「ではな。しばらくしたらまた様子を見に来てやろう」
「ぐ、ま……て……!」
その言葉を最後に悠斗の意識は途切れ、樹海も解けていく。