小道具王~KODOUGUOU~   作:翠晶 秋

1 / 2
閉店

 

『なんでもかんでも仕事料金+1000円で請け負います!』

 

店先の張り紙をひっぺがす。

もう俺は仕事はしないと決めた。

こんな稼業もうこりごりだ。

ある時は秘密組織の資料を盗み?

ある時はマフィアのボスを暗殺し?

 

「危険すぎるだろ、こんなの……」

 

お金に困って始めたことだけど、これが中々どうして、意外と上手くいく。

そのまま流されて、今は贅沢に(みやこ)で独り暮らし、金が尽きて借金を……か。

もう金輪際こんな仕事はしない。

俺、まっとうに生きていく。

 

「あの、なんでも屋さんってここですか……?」

 

そんな俺に、新たな依頼が舞い込んだチクショウ。

 

 

 

 

とりあえず中に通したが、どうしたもんかなこれ。

金髪。金髪幼女だ。珍しい、外人の子……だよな?

 

「そいで、用件は?」

「えと、えと、これを」

「ん?なんだ、いっちょまえに依頼書なんて持ってきて」

 

肩掛けバッグから取り出された紙の内容を読む。

どれどれ……『おとうさんのたいせつなおてがみをとりかえしてほしい』、か。

犬か猫か、なるほど、これは子供一人にはできんな。

 

「ちなみに、父親の職業は?」

「しょくぎょう?」

「んー、あー……。仕事だ、お仕事」

「あぁ!えっとねー、『だいとーりょー』?とか言ってた!」

 

俺は膝をついた。

 

「チクショウまた国家絡みかよぉぉおおおお!」

「おとうさんがね、ここにきておねがいしなさいって」

「何で国家公認なんだよぉぉおおおおお!」

「だ、だいじょうぶ?」

「だいじょばない。だいじょばないから少し黙っててくれ」

 

落ち着け、落ち着け俺!

そうだ、怒鳴ってもしかたがない。

子供と金と酒と女と田中に罪はない!

 

「田中って誰だよぉぉおおおおお!」

 

いかん、俺も相当まいってるようだ。

こんなときは素数を数えて……

 

「1と3と7と田中しか知らねえよぉおおお!田中誰だよぉぉおおおおお!」

 

くそっ……。

さっきから頭にちらつく学生時代のクラスメイトの顔がうざい!

何で地味にぼやけてるんだよちゃんと覚えてやれよ可哀想だから。

 

「だ、だいじょうぶ?」

「進まない。話が進まないぞ。くそう、わかった。わかったから、んで、その『たいせつなおてがみ』はどこにあるんだ?」

「あれ」

「ん?」

「あれ」

 

大統領の娘さんが窓の外を指差す。

そこにあったのは……

 

「向かいのマンションじゃねえか」

「うん。あそこにあるって」

「国家権力でごり押ししろよ」

「ふとうなけんりょくのこーし?はダメなんだって!」

「………………」

 

思わず目頭を押さえる。

まあ、どっちにせよこれが最後の仕事だ。

 

「わかった、わかりましたよ。やらせていただきます」

「ほんと!?」

「嘘ついてどーする。と、その前に……」

「?」

 

 

 

「1000円札をいただきます」

 

 

 

 

 

やってきました向かいのマンション。

 

「なんでお前も付いてくるんだ?」

「わたしもつれてってよ」

「なんでじゃ」

「わたしもおとうさんのおてがみ見たーい!」

 

な、ん、だ、と!?

要するに、マンションに侵入して『おてがみ』を盗んで、さらに護衛もしろ、と?

 

「それなんて無理ゲー?」

「むりげー?」

「めっちゃ難しいって事だよ」

 

とりあえず、入らなければ意味がない。

すたすたとマンションに近づき、その自動ドアの前に立つ。

 

「あかないね」

「高いマンションは暗証番号が必要だからな。……そこで、これだ」

「?レシート?」

 

俺が取り出したのはホームセンターのレシート。

ふっと魔法をかけるかのように息を吹き掛け、自動ドアの隙間に勢いよく放り込む。

向かい側でレシートが宙を舞う。

そして……

 

「!?あいた!?」

「簡単な話さ。向かい側からのセンサーじゃないと開けられないのなら、向かい側のセンサーを起動させればいい」

 

レシートやお(さつ)とかの紙なら、入れやすいしいつでも持っている。

 

「さて、ここはまだ序の口。行くぞ」

「あっ、うん!」

 

そうして俺たちは、マンションの中へと入っていった。




なんか長くなりそうだから次へ持ち越し。
一話で終わらせるつもりだったのに……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。