機動戦士ガイバーSEED   作:雑草弁士

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拙作「強化人間物語 -Boosted Man Story-」の感想返しで、馬鹿な事を書いてしまい、それが原因で思いついた作品です。更新は「強化人間物語 -Boosted Man Story-」や「鋼鉄の魂」を優先するので遅くなりますが、少しづつでも書いて行きますので、よろしくお願いいたします。


第001話:ヘリオポリスとGATシリーズ

 その白金の髪を持つ青年は、ぽつりとつぶやいた。

 

「……腹立たしいな。」

 

 傍らに控えるもう1人の黒髪の青年も、それに追随して言葉を発する。

 

「はっ。『血のバレンタイン』も愚かな行為でしたが、それに対する報復として行われた『オペレーション・ウロボロス』、そしてその結果としての『エイプリル・フール・クライシス』……。

 被害者は地球全人口の10%、10億人にのぼると思われます……。」

「……優秀な素体が、数多く失われた。それだけではない。「神将」メンバーとして目をつけていた者までもが、4名も喪われた。

 本拠地であるシラー島では、原子力発電……核分裂炉による発電に頼っていなかった。それ故に我々自身はさほど大きな影響を受けなかったが……。民草に紛れ込んで活動していた同志たちの窮状は、目も当てられん。」

「現状、「表」の世界の官僚、政治家、軍などに潜り込んだ者達、および「表」で経営している財閥組織などを通じ、同志たちやそれに準ずる者たち、および資金、物資、技術を取引している先などには急ぎ支援を行っておりますが……。なにぶん事態が事態ですので……。」

 

 最初の青年は、黒髪の青年に振り返って言った。

 

「多少「計画」が遅れてもいい。デッドラインさえ越えなければ……後から取り返せるならば、かまわんから、最大限の支援をしてやれ。」

「ははっ!」

「頼むぞ……。」

 

 白金の髪を持つ青年の傍らに控えていた黒髪の青年は、頭を下げると次の瞬間、その場から消えた。そして1人残された最初の青年は、はっきりとした苛立ちをその表情に出し、天空を……宇宙を見上げた。

 

「……ブルーコスモスの馬鹿者どもに賛同するわけでは無いが。だが、それこそ『青き清浄なる』母なる地球そのものに牙を向けた愚か者どもめ……。」

 

 その目には、宇宙に浮かぶP.L.A.N.T.……プラント、地球連合と事を構えるザフト軍、その本拠地であるスペースコロニー群が映っていた。青年は宇宙に浮かぶ砂時計を、母なる大地の上から、憎悪の目で見つめ続ける。どこまでも深く広がる、宇宙は広大であった。

 

 

 

 C.E.71年1月、あの青年はオーブ連合首長国の資源衛星コロニー、ヘリオポリスへとやって来ていた。白色に近い金の短髪、涼やかな紅の瞳、白人系の肌の色、すらりとした長身、ほんの少し尖った耳、キリリと引き締まった顔。

 いかにもな美形であるが、何故か彼に声をかける者はいない。と言うか、彼の気配は薄く、彼に気付けるものはほとんどいないのだ。そして彼に気付ける者は……気付いたとたん、ひれ伏しそうな威厳を感じ、声をかけられなくなってしまうのである。

 そしてそう言った者たちは、彼の威厳に動きが取れなくなり立ち尽くしている間に、いつの間にか姿を消してしまう。それは、彼に影の様に付き従っている、もう1人の黒髪の青年のしわざであった。

 

「……ご苦労、タカシ。」

「失礼ながら、ここはどこに耳があるか……。」

「そうか、つい、な。ご苦労、アルーミック・ミラービリス。」

「はっ。」

 

 地球にいた彼らが、いかにして宇宙にあるコロニーへやって来たのか……。それはわからない。普通に旅客船のチケットを買ってきたわけでは無い事は確かだ。彼らは身分証明のための偽造パスポートこそ持っているものの、旅客船の乗員名簿には彼らの名は無かった。どの時間帯の、どの旅客船であろうと、である。

 

「……で?」

「は。既に見つけて、データは極秘裏に奪取しております。」

「だが……。使い物になるか?」

「なりませんな。われわれの試作機よりも、数段劣ります。ましてや正式採用の量産機には。ただし、一部技術には見るべき物もありますが……。」

「やれやれ、ホレイシオが喜ぶかと思ったのだがな。」

「ドクター・ベサントが見れば、鼻で笑うか……。もしくは旧人類たちの努力は認め、上から目線で称賛するかでしょうな。」

 

 白金の髪の青年は、苦笑を漏らす。と、そこへ真っ赤なボールが転がって来た。そのボールは、青年たちの足元で止まる。そしてボールを追って、バタバタと幼い少女が駆けて来た。

 

「はぁ、はぁ……。あった!……?」

 

 ボールを追って来た少女は、立ち止まる。そして、立ちすくんだ。

 

「!!」

「……おもしろいな。この少女、わたしたちを認識できる様だ。」

「では直ちに……。」

「いや、母親と思しき者が探している。親子を引き剥がす真似は、望むところでは無い。素直に返してやれ。」

「は。」

 

 そして青年は、しゃがみ込んで赤いボールを拾うと、少女と目を合わせて話しかけた。

 

「……これを探していたのだろう?持って行きなさい。」

「あ、は、はいっ!あ、ありがとう、おじちゃん!」

「おじっ!……そ、そうか。気を付けてな。」

「はいっ!あ、わたしエルです!ボールひろってくれてありがとう、おじちゃん!」

 

 青年は、渾身の努力で笑いを堪えている自らの腹心、アルーミックを横目で睨みつけると、エルと名乗った少女に言った。

 

「エル、か。良い名だ。わたしはサマ…サミュエル・サザランドだ。おじちゃんではなく、できればそちらで呼んでくれ。」

「はいっ!サミュエルのおじちゃん!」

「……お母さんが君を探しているみたいだぞ?そろそろ行きなさい。気を付けてな。」

「さよーなら!」

 

 バタバタと走り去っていく少女を見送って、青年……サミュエルは立ち上がった。そして溜息を吐いて言う。

 

「笑ってもいいのだぞ?」

「さすがにそれは……。」

「どうせ、おじちゃんどころか実年齢は爺さんだ。ふ、お前のように実年齢まで若いやつが羨ましいな、くくく。」

「……むっ?」

「!?」

 

 サミュエルとアルーミックは、急に顔を引き締めると明後日の方角を向いた。その先にあったのは、グレーの巨大な人型機械だ。トサカ状の構造物を後頭部に持つソレが2機、コロニー内を飛翔し、手に持つ火器で工場区画を攻撃していた。これこそがザフト軍の主力兵器、MSである。

 

「ザフトのジン!ぬかった!こんな近くまで気づかないとは!気を抜きすぎたか!」

「申し訳ありません、サマエル。」

「良い、それよりもコロニーの人々を守らねばならん。」

「は。しかしそれは……。」

「シェルターに逃げ切るまでの時間を稼げれば良い。民草を……一般人を守らずして、何が新人類の指導者かよ。

 何よりここは、「本来なら」中立コロニーだ。それを最低限の建前も守らずして攻撃を加えるとは、嘆かわしい。」

「……了解しました。ヴァモアに調整された者が、ちょうど数名ばかり近くに。」

 

 サミュエル……サマエルとアルーミックは、精神を集中させる。十数秒の時間が経過した。そしてコロニーの工場区画より、閃光が奔る。その閃光は2機のMS……ジンのコクピット部に命中し、各々その装甲を融解せしめた。パイロットが蒸し焼きになったのだろう、ジンは動きを止めた。

 だが……。

 

「く、外の艦から増援が来ているな。」

「……コロニー内に入った物は、引き続きヴァモア隊に。外の敵は自分が。」

「……頼めるか?」

「御意。ゼルブブス!パナダイン!ゼンクルブ!」

 

 その呼びかけに応え、何処からともなく黒いスーツ姿の男3人が現れた。

 

「お前たちは、わたしが帰還して任を解くまで、サマエルをお守りしろ。その身に替えても、だ。」

「「「はっ。サマエル閣下の護衛、この上ない名誉にございます。」」」

「ではサマエル閣下、行ってまいります。」

「頼むぞ、アルーミック。」

 

 アルーミックは姿を消す。だが……。

 

「……!?」

「サマエル閣下!」

「こちらへ!」

「良い!く、あれは連合のGATシリーズ……。GAT-X102デュエル、GAT-X103バスター、GAT-X207ブリッツ、GAT-X303イージス……。ザフトのジンと合流しただと?ザフトに鹵獲されたか。」

 

 サマエルの視線の先では、4機のMSがのろのろと動いていた。時折ジンが手を貸している。白とブルーグレーの機体GAT-X102デュエル、緑とカーキ色の機体GAT-X103バスター、黒い機体GAT-X207ブリッツ、赤紫の機体GAT-X303イージスの4機は、のそのそ逃走をはかっていた。

 サマエルは目を閉じて集中した。ヴァモア隊と呼ばれた者たちに、念を送って通話しているのだ。

 

(……ヴァモア隊、優先目標変更。あの黒い細身の機体、GAT-X207ブリッツを撃墜せよ。他のGATシリーズに使われている技術は、いずれザフトでも開発し得るが、ブリッツに搭載されているステルス系の技術は、今ザフトに流出させるのはまずい。)

((((((御意!))))))

 

 そして工場区画から、再度閃光が迸る。それは、動きが明らかに鈍い黒いMSを連打した。急所にあたったのか、爆散するブリッツ。パイロットは脱出できなかった模様だ。

 

(ヴァモア隊、急ぎ撤退だ。ジンがそちらへ向かったぞ。)

((((((了解!))))))

 

 それきり閃光は止んだ。サマエルは、溜息を吐く。

 

「……む、あれは?GAT-X105ストライク?動きが他のGATシリーズと違うな……。」

 

 いかにサマエルと言えど、今の乗り手である少年が、ストライクのOSを適当にちょちょいのちょいで書き換えた事など、知る由もない。ちなみに適当とは、適切に当たる、の意味である。けっしてデタラメに、と言う意味ではない。ストライクは工場区画に向かったジンと対峙、圧倒的な力でそれをねじ伏せる。そしてジンは爆散した。

 

「……戦い方はデタラメ、か。正規の兵ではないか、あるいはパイロット教育を受けていないだけかも知れんが。む、灰色になった。フェイズシフトが落ちた、か。

 アルーミックの方はどうなったかな。アルーミックが倒される心配はしていないが……。やり過ぎていないかが心配だな。」

 

 失笑しつつ、彼は脱出していく3機のGATシリーズを見送った。赤紫の機体、イージスが何度も何度も名残惜しそうに、ブリッツが爆散した辺りを振り返っているのが、印象に残る。だがサマエルは同情しない。ザフトは民間人まで巻き込んで攻撃をしかけてきたのだ。それは彼にとって許せない事であり、赦せない事であった。

 

 

 

 ちなみにアルーミックは、やり過ぎていた。

 

 

 

 アルーミックは宇宙空間を、宇宙服も着用せずに飛翔していた。そして彼は、ナスカ級高速戦闘艦ヴェサリウスを発見する。ヴェサリウスは僚艦のローラシア級MS搭載艦ガモフと共に、暢気にヘリオポリス近傍の宇宙空間へ浮かんでいた。自分たちが攻撃する側であり、攻撃される側であるなどとは思いもしない様だ。

 

(……サマエル閣下のため、沈んでもらうぞ。)

 

 ヴェサリウスのエンジン部付近に向かい翔んだ彼は、そこで叫んだ。いや、真空の宇宙空間だから声など出ないのだが。

 

(獣・神・変!!)

 

 アルーミックの額に埋め込まれたゾア・クリスタルが光り輝き、彼の姿が変わる。一言で言って、化け物だ。だが、ある意味では美しいとすら言えるだろう。均整の取れたマッシヴなスタイル。白を基調にして、黒でアクセントが付けられた美しいとも言える造形。更には肩と前腕部には金属製のプロテクターが装備され、醸し出される機能美を増幅していた。

 彼は右手刀を高々と掲げる。その手刀に光が収束していき、そして手刀が振り下される。必殺の切断波が放たれ、ヴェサリウスのエンジン部どころか、艦の尾部がさっくりと斬り落とされた。ヴェサリウスは、あっさりと爆沈する。

 

(次は僚艦の……む!?)

 

 どうやら間一髪でヴェサリウスの爆散から逃れ、発艦していたMSがいたようだ。白いMSである。ジンを更にシャープにした様な外観を持つ指揮官用MS、シグーだ。

 

(シグー乗りで白色の機体……。あれがラウ・ル・クルーゼか。)

 

 シグーは手に持った火器を発砲する。MMI-M7S、76mm重突撃銃……普通なら人間サイズの相手に使う武器では決してない。だがシグーの乗り手であるクルーゼは、敵……獣神将アルーミックの恐ろしさを、ひしひしと感じているのであろう。アルーミックの超感覚には、クルーゼの驚愕、恐怖、そして絶叫が手に取るように感じられていた。

 

(ふむ、何がしかの超感覚を備えているのかも知れんな。遺伝子コーディネートでは発現は難しいはずだが?元々の血筋が、そう言った因子を備えていたのかもしれん。)

 

 アルーミックはそう思いながら、重力バリアでシグーの放つ砲弾を軽々と受け止める。MSで人間大の存在に射撃しているのに、恐るべきことに外れ弾は1発も無かった。しかしそれ以上に恐ろしい事に、人間サイズでしかないアルーミックの纏うバリアは、MSが放つ砲弾の威力を、完全に殺していた。

 そうしながら彼はクルーゼ隊に残された最後の艦である、ガモフを葬り去ろうと右手を高々と掲げた。ふとその彼の目に、強奪されたGATシリーズのうち3機が、ガモフによたよたと着艦するのが映る。

 

(なぜ地球連合軍の機体が、ザフト艦に?……まあ、今はあの艦を沈めるのが先だ。わたしはサマエル閣下とは違って、優しくはないぞ。)

 

 そしてシグーの武器であるMA-M4が……重斬刀が、アルーミックに叩きつけられる。何度も言うが人間サイズに用いる武器ではない。何度も言うが、人間サイズに狙ってあてられる武器ではない。しかしクルーゼのシグーは、その奇跡を成し遂げた。

 そして、これ以上奇跡は起こらない。

 

(やれやれ。)

 

 重斬刀は根本からポッキリ折れた。否、バリアこそ破られはしなかったが、苛立ったアルーミックが切断波で斬ったのだ。

 

(それほど先に死にたいのなら、死なせてやろう。)

 

 アルーミックは、手を差し伸べる。その掌の上に、重力波が渦を巻く。そしてその渦が消え、突如クルーゼのシグーの周囲に再出現した。サイズ、威力、すべてをおそるべきまでに増幅して。

 

(ぎゃあああぁぁぁ!!)

(……五月蠅いな。)

 

 アルーミックの脳裏に、クルーゼの絶叫が響く。やはりクルーゼは、なんらかの形の精神感応力を持っていたのだ。それであそこまで正確に、アルーミックの位置を捉える事ができたのである。だが悲しいかな、クルーゼのシグーにはアルーミックの防御を貫く武器が無く、防御面でもアルーミック相手では……獣神将最強クラスの重力使い相手では、ちり紙に等しかった。

 爆散するシグーに背を向け、アルーミックはガモフを沈めんと向き直る。が、その時ガモフは既に回頭して、全速力で逃げているところであった。クルーゼの無様な死に様は、それほどの衝撃を与えたのだ。

 

(ふむ?こちらの姿は万一見えていたとしても、宇宙服か何か……。つまり機動歩兵ぐらいにしか思われていないはずだがな?まあ、気持ちの良い逃げっぷりだな。しかし……。

 しかし、逃がしてやる意味も無いな。)

 

 そしてアルーミックは、右手をかざし掛けて、そこで手を止める。消えかけている、しかし強固な、そして狂気に侵された、そんな思念を感じ取ったからだ。

 

(死ねない……。死ねん……。目的を果たさずして……。復讐を果たさずして……。まだ、まだ死ねん!!ま……だ……ま……。)

 

 先ほど撃破したシグーから、どうやって脱出したのか、ラウ・ル・クルーゼは宇宙空間にパイロット用ノーマル・スーツ姿で浮遊していた。アルーミックは慣性により明後日の方角へ飛び去ろうとしていたクルーゼを捕まえる。

 

(ふむ、これは……。すぐ死ぬ、か。だが、生きたままドクター・ベサントのところへ連れて行く事ができるならば……。

 む?)

 

 ガモフは既に遠く離れていた。アルーミックの力ならば、その気を抱けばガモフを撃沈、消し去る事も可能だが……。

 

(可能だが……。やめておこう。あの程度は構わぬだろうさ。それよりも今はこちらだ。ドクターが興味を持つかも知れぬ素体を、生かして連れ帰……!?こやつは……。)

 

 獣神将アルーミックが、本気で驚く事はそうは無い。今回はその稀な例外であった。

 

(こやつ、わたしの感覚が確かだとするならば……。ナチュラル……だと?)

 

 そして彼は、希少なサンプルを生かして連れ帰るため、クルーゼのために瞬間移動能力までも発揮してコロニー内に転移し、早急に応急手当を行ったのであった。




「血のバレンタイン」を引き起こした地球連合軍も地球連合軍ですが、ニュートロンジャマー使って10億人殺しといて、「血のバレンタインの被害者の怨みを~」って叫んでるザフト兵士やなんかも薄っぺらく感じますね。もう報復は充分すぎるほどやったろうに、と思うのですよ。
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