くすぶる硝煙の匂い。その中で、キラたちは大破状態の小型陸上艦ベイリーを手分けして調べていた。サイがカズイに問いかける。
「どうだい?カズイ。」
「どうもこうも……。レールガンに貫かれて、積んでた弾薬の類に火が回ったんだね。もう少し調べてみないと分からないけど、まあ駄目だと思うよ。」
「そうか……。」
彼らは黙々と、残骸あさりを続ける。彼らはそれ以外に、何もやりたく無かった。いや、この地から脱出するために装備が必要だから残骸をあさっているだけであり、本当なら何もしたくない気分であったのだが。
トールがため息混じりに、言葉を吐き出す。
「……全滅、か。皆殺しかよ。」
「女子供まで、容赦なし……。わかってたつもりだけど、これが戦争なのよね。」
それにミリアリアが応える。トールが言った通り、彼らが帰還して来た時には既に、レジスタンスのゲリラ組織「明けの砂漠」の根拠地は、MSの火力をもってして完膚なきまでに破壊され、人員は皆殺しになっていた。軍事用語の「全滅」ではなく、一般的な概念で言う完膚なきまでの「全滅」である。
遠くから、叫び声が聞こえた。
「動けよおおおぉぉぉ!!なんでだ!なんでだよ!さっきは動いたのに!!」
「まーたやってるよ、あのお嬢さん。」
「放っておきなよ。さすがに今度はキサカさんが動くさ。……今度こそ、動いてもらわないと。」
呆れたようなトールの言葉に、キラがぶっきらぼうに返した。彼ら全員、気持ちがささくれ立っている。彼らは黙々と、作業を続けた。
カガリは目の前の物が、信じられなかった。いや、信じたく無かったと言うのが正解だろうか。破壊され尽した拠点……レジスタンス組織「明けの砂漠」の皆が住み、そこで生き、笑い合い、語り合った家々の「焼け跡」が、彼女の眼の前に広がっていた。
人型の炭があちこちに転がっている。彼女は奇跡的に原型を留めている幼児の屍を抱き上げた。動かない。死んでいる。重い。その重さが、ひたすらに悲しい。
彼女はその死体を、両親と思しき人型の炭の側に、そっと横たえた。いつの間にジープから降りて来たのか、キサカが彼女の脇に立ち、屍に向かい祈りの姿勢を取った。
「くそっ!」
「……。」
カガリは駆けだす。向かう先は、キラたち傭兵団の擁するMS「モルフォ」の1機だ。彼女は急ぎ開けっぱなしのコクピットに飛び込んだ。これで、レジスタンスの仲間たちの、仇を討つのだ。彼女は操縦訓練用の初期導入プログラムを走らせて、MSの起動シーケンスを開始する。
否、しようとした。
「え?」
機材の電源が、入らない。
「あ、あれ?」
彼女は何度も、MSの起動シーケンスをやり直した。
「う、動かない?……くそっ!」
別の機体に、彼女は飛び込む。そして起動シーケンスを行う。動かない。また別の機体に乗り込み、動かそうとする。動かない。
「何故だ……。なんでだっ!動け、動け動け動け動け動け!今動いてくれなきゃダメなんだ!皆の、皆の仇を討てないんだ!だから動け!」
「……。」
彼女の乗る機体の、開きっぱなしのコクピット出入り口に、キサカがやって来た。それにも気づかず、彼女は絶叫する。
「動けよおおおぉぉぉ!!なんでだ!なんでだよ!さっきは動いたのに!!」
「お気が済みましたか?」
「キサカ!動かない、動かないんだ……。MSが……。」
「当然でしょう。サイ君たちが、キラ君に言ってOSにロックを掛けましたからな。……緊急時に早急に動かせなくなるのを承知の上で。」
「!!」
それを聞いたとたん、カガリはコクピットを飛び出す。その手をキサカが掴んだ。
「は、放せ!」
「どちらへ行かれます。どちらへ行って、何をなされるのですかな?」
「決まっているだろう!OSのロックを外させるんだ!」
カガリは叫ぶ。キサカはため息を我慢して、更に問う。
「そしてOSのロックを外して、どうなされます?」
「何を……。おまえは、この様子を見て、何も思わないのか!?バルトフェルドを、仇を討つんだ!皆の!」
「無理でしょう。」
「!!」
キサカの言葉は、冷たかった。カガリは思わず彼の眼を凝視する。そこには悲しみが湛えられていた。
「サイ君に……しっかりとした戦術教育を受けた小隊指揮官に率いられたMS小隊でも、罠を使ってなんとか倒せる相手。あなた1人では、モルフォ1機では、返り討ちどころか、その部下にも遊ばれて墜とされるだけです。
バルトフェルドは名将です。それを倒す千載一遇の機会を、貴女は浅慮で潰してしまったわけですが。」
「き、キサカ……?」
キサカの言葉は冷たい。ただひたすらに冷たい。
「それを貴女が単機で討つ?うぬぼれも、いいかげんにしなさい。戦場は、貴女のわがままで貴女のいいように動いてくれる物じゃない。そして自分がしくじれば仲間が死ぬ、仲間が死ねば次に自分が死ぬ、そう言う場所です。増してや……。
増してや貴女は、またMSを勝手に借りて……いえ、盗んでいこうとしました。今度こそ、キラ君は引き金を引きます。そして、わたしはそれを止める事ができない。止めては、いけないのです。」
「じゃあ、じゃあどうす……。」
「他人の言葉を遮らないでいただきたい!!まだわたしの話は終わっていない!!わたしが、ここの皆とは本来何も関係ない貴女に言われるまでもない、ここの出身であるわたしが!なにも!なにも思っていないと、何も感じていないとでも言うのですか!!」
「!!」
表面を覆っていた薄氷を突き破り、キサカの中に圧し込められていた溶岩が噴出する。
「サイ君やキラ君は言った!貴女には戦う資格が無いと!言いたくは無かった!だがわたしも言おう!貴女には、皆の仇を討つ資格もまた、無い!!」
「そ……。」
「まだ理解しないのですか!皆を「殺した」のは、バルトフェルドの部下、別動隊だ!だが皆を「死なせた」のは、貴女だ!サイ君たちは細心の注意を払って、発見されない様に拠点を出たのに!その心遣いを無駄にして、騒々しくMSの機械音を鳴らし、地響きを響かせて、あげくにIR偽装網すら被らないで、堂々と隠れもせずに出撃したのは!
ここが見つかったのは、貴女のせいです!そんな貴女は、もし生存者がいたなら仇として討たれる側の人間だ!けっして仇討つ側の人間ではない!貴女に、仇を討つ資格は無いっ!!」
キサカの強い台詞に、カガリは立ち尽くす。そしてキサカは、ぽつりと呟く様に言った。
「そしてそれは、わたしも同罪です。貴女を、主家のご息女だからと言って、甘やかしてしまった。うかつにも、こんな最前線に連れて来て、あげくにレジスタンスに加入などさせてしまった。……貴女を、止める事ができずに、皆を死なせてしまった。」
先程までとは真逆に、キサカは今にも消え入りそうな様子で、訥々と言葉を絞り出す。カガリは、強い自責の念に襲われた。今更、ではあるが。
「キサカ……。わたしはどうすればいいんだろう……。」
「何もしなくていいさ。」
「!?」
「……キラ君か。」
「機体を見に来ました。」
唐突に現れたキラは、カガリを押しのけてコクピットに入る。この機体は、キラが駆る1番機であったのだ。キラは早急にOSを立ち上げて、メンテナンスモードにして機体チェックプログラムを走らせる。
カガリはそんなキラに、小さな声で問いかけた。
「な、何もしなくて……いいって?」
「聞いた通り。……君が何かしら、したいって言うのはさ。もしかして、赦されたいとでも思ってるんじゃないの?……おこがましいよ。」
「!!」
言葉も無く立ち尽くすカガリに、キラはコクピットの中で作業しながら毒づいた。彼とて、苛立っているのだ。ナーバスになっているのだ。大量の無惨な死者に、打ちのめされているのだ。誰かに当たり散らしたい気持ちを、必死で抑えていたのだ。……彼とて、いまだ若輩の、いわば子供であったのだ。言いたい事は、山ほどある。
彼はどろどろとした気持ちを抑え、冷静に見える口調で語る。
「僕らは君に大変な迷惑を被った。勝手に予備MSを使われて、各部の部品を損耗させられた。乾坤一擲の作戦を、台無しにされた。そして後金をまだ貰ってない雇い主を全滅させられた上に、母艦であるベイリーは大破させられた。赦せるはず、ないだろう?
そして雇い主の「明けの砂漠」の人たちからすれば、君の不注意という、たったそれだけのせいで彼らが死ぬ羽目になったんだ。赦せるはずがない。命を落としてしまったんだから、物理的に赦せるはずも無いんだけどさ。
……君が今更何しようが、僕らも、彼らも、君を赦さない。そして死んでしまった彼らはともかく、僕らは君をもう信用しない。お願いだからさ、何もしないでくれないかな。単にお荷物になってくれてるだけでいい。それが一番「害」が少ない。」
「くっ!!」
自分のした事を思い知らされ、いたたまれなさに駆けだして行くカガリ。それを尻目に、キラはモルフォ1番機のチェック作業を続ける。キサカはそんなキラに言う。
「優しいのだな。」
「どこがです?」
「あの方に、君からすれば何か言う必要など無かった。それを嫌われてでも、しっかり言ってくれた。優しいと言わずして、なんと言うのかね?」
笑みをこぼして、キラはキサカに言った。
「追ってください。貴方の仕事でしょう?キサカ一等陸佐。」
「そうだな。」
小走りでカガリの後を追うキサカに、キラは心の中でエールを送る。
「今度こそ、きちんと仕事してよね。」
いや、思わず口に出してしまっていた様だ。キラは仲間たちから頼まれていた、モルフォ2、3、4番機のチェックをすべく、1番機のコクピットを降りた。
今、アズラエルは精力的に働いていた。その仕事量は、以前の3倍以上にも及ぶ。しかし超獣化兵へと調整された彼の肉体は、獣化前の生身でさえも圧倒的なポテンシャルを秘めている。その程度の仕事量は、まさしくお茶の子さいさいであった。
「ゴールドスミス君、国防産業理事会の次の会合は、何時だったかな?」
「はいアズラエル様、3日後の14時からですね。」
「ありがとう、エリノラA-001。くくく。」
「その名前は、下手なところで言わないでくださいね。ゼクトール改A-001部隊長。」
アズラエルは苦笑する。そう、アズラエルは生体熱戦砲タイプの極地、ゼクトール型の更に改良タイプに調整されていた。ちなみにゼクトール改は、旧ゼクトールがドクター・ベサントに強化改造されて、ゼクトール、ザンクルス、エレゲン、ダーゼルブ、ガスターと言う最高位の超獣化兵5体の特質を全て備えた状態と、ほぼ等しい性能を持つ。
画期的なのは、旧ゼクトール改が損種実験体に身を落としていたのに対し、ゼクトール改は正式採用タイプであると言う事だ。ドクター・ベサント直々の、芸術的なまでの調整技術の賜物である。流石に獣神将にこそ敵わないが、並の獣化兵、いや並の超獣化兵とは一線を画す存在である。
「一本取られましたね。とは言っても、どうせこの部屋は防諜的にクリーンですがね。」
「そろそろお茶にいたしましょう。カロリーを摂取しなければ、保ちませんわ。」
「圧倒的な能力と引き替えの、唯一と言っていい欠点ですねえ……。カロリー消費が大きいと言うのは……。」
「ダイエットは楽ですわよ。」
彼らは、甘いジャムをたっぷり使ったロシアンティーと、こちらも特別製のカロリー300%増しのケーキで、お茶の時間を楽しむ。しかし因果な事に、お茶の時間の話題も結局は、ある意味仕事の事であった。
「ふむ……。とりあえず一段落つきましたか……。」
「はい、ブルーコスモス正式会員の中で、「コーディネーターへの嫉妬」からブルーコスモスに加入していた面々のほとんど、ことに上位の者たちには隠密裏に接触し、既に調整完了しております。まあ、ですがほとんどは調整が簡単なラモチスかグレゴール、運が良い者がヴァモアですけれどね。」
「超獣化兵になれた者は、3名だけですか……。まあ、ラモチス型やグレゴール型でも、生身の段階ですらコーディネーターを超える身体能力を得られるんです。悪くは無いでしょう。」
そしてアズラエルは、手元の書類を捲る。そこにはGATシリーズではない、新たなMSの設計仕様が記載されていた。
「……獣化兵が搭乗する事を前提にした、新たなMSの量産計画。獣化した獣化兵ならば、その反応速度や知覚力からして、同じジンに搭乗しようとも、コーディネーターなど物ともしない戦力になる。ましてや、獣化兵専用機ならば……。
まさしく圧倒的になりますね。我らがクロノスのMS戦力は。はぁ~……。GATシリーズを開発して悦に入っていたのが、恥ずかしくなりますね。これを見ると。これ、要求仕様書じゃなく、完成した実機の仕様でしょう?」
「試作機の段階で、ジンはおろかGAT-X105ストライクをはるかに凌駕していますわね。増してや量産機では、更なる改良が加わっていますから……。」
「……ほう、この書類によるとラウ・ル・クルーゼ、もとい。クルーゼ閣下は獣神将に……。え゛、閣下はナチュラルだったんですか!?そ、それはともかく……。
クルーゼ閣下の専用機と、閣下直属部隊の専用機……。閣下の機体だけはシラー島の本部基地で建造されますが、直属部隊の機体生産は、我々にお任せいただけると……。ふむ、僕の会社の利益としても大きいですねえ。プロウライト閣下には、足を向けて寝られませんですね。」
まあそれでなくとも獣神将は、獣化兵に対し絶対的な支配力があるので、結局は足を向けて寝られないのだが。
「ふう、む。そして表向きのGAT-01ストライクダガーにも、クロノスの技術をわずかばかり導入する事をお許しいただける、と。ただしOSにバックドアを噛ませて、クロノスの機体に対してはロックオンできない様にする、と。
ふむ、ふむ……。まあ、ナチュラルだとFCS切って攻撃なんて真似は、そうそうできませんけどねえ。ですが、絶対にできないとも言い切れません。」
「であれば……。クロノスの機体からなら、OSに干渉してシステム自体を落とせる様にしてみたらいかがでしょうか?」
「それがいいですかね。GAT-01Gストライクダガー改、と言ったところでしょうかね?01A~01Fは既になんらかの実験機や量産機で埋まってますし。」
ゴールドスミス秘書はお茶の後片付けをすると、極秘書類を金庫に仕舞った。アズラエルは、次の予定を尋ねる。
「ゴールドスミス君。次の予定は何になっていますか?」
「え……と。ビルの地下に急ぎ造らせた秘匿ジムで、獣化形態における格闘術の訓練時間を取っておりますわ。時間はそれほど取れませんでしたけれど、アズラエル様の御身をお護りするのに必要な技能ですからね。訓練密度を濃くして乗り切りましょう。」
「は、は、は……。お手柔らかにね……。」
この女秘書、超獣化兵エリノラA-001は、アズラエルの部下であり、クロノスが関わる事柄を唯一任せられる秘書であると共に、アズラエルの訓練教官でもある。獣化時のスペック及び特殊能力ではアズラエルの方が上回る、と言うよりも圧倒していた。
しかしながら、訓練においてはアズラエルは、一度もエリノラに勝利した事が無かった。と言うか、徹底的に痛めつけられて降参するのが毎度の事である。理由を尋ねると、「それは弛まぬ訓練の成果ですわ。」と返って来た。アズラエルは思う。
(僕と彼女の間の能力格差は、あの時のコーディネーターと僕の能力格差よりも、著しく激しいはずだ。しかし僕は現に、一度も彼女に勝てていない。
……もしかしてあの時、もっと効率的に、ぎりぎりまで頑張って、ぎりぎりまで踏ん張って鍛錬していたら。いや、僕は自己鍛錬や勉強をサボった事は無いけど、それでももっと自分を追い詰めて学び、鍛えていたら。
そうしたら、勝ち目はあったのかもな?あのコーディネーターってだけで強く賢さを誇っていやがった、あいつに。)
「行きますわよ、アズラエル様。」
「あ、ああ。すみませんね。今行きますよ。」
アズラエルは、慌てて秘書の後を追って行った。
カズイがサイに報告を行う。
「幸いなことに、ベイリーは動かせるだけは動かせるよ?積んでる弾薬が爆発して上半分が吹っ飛んだのは痛いけど、ほんと~~~に、ほんっとに幸いな事に、主動力のダメージはそこまで深刻じゃない。
いや、そこまではってだけで、深刻な事には変わりないけどさ。でも、かろうじて艦を動かせるし、僕らのモルフォのバッテリーをチャージするのも、なんとか可能。ああ、でもキャタピラをはじめ、駆動系とかにもダメージあるんで、全速力は出せないよ?」
「モルフォの運用は可能なんだね?実体弾兵器は、全部弾薬吹っ飛んだから使えないけど、バッテリーチャージができればビームライフルは使えるか……。」
「ああ、ちょっとまった。誤解があるよ。バッテリーチャージャーも4基のうち3基やられてるから、一度にチャージできるのは1機。交代で順番にチャージしたとしても、主動力の出力が落ちてる……と言うより全力回転させたら吹き飛ぶから。
だから、整備方からの意見として言わせてもらえば、モルフォは同時運用は2機、平常時は1機出すだけにして、3機出すのはほんとのほんとに最後の手段にして欲しいよ。」
サイは考え込む。モルフォは……中身M1アストレイだが、最大戦力であるソレは一度に1機しか使えないと考えておいた方がよさそうだ。そこへキラがやってくる。
「サイ、モルフォの1機は……。1番機の膝は、ちょっとまずそうだよ。予備部品も全部吹き飛んだのが痛いね。4番機をバラして、その膝関節を使って修理したいんだけど。」
「重機はあるのかい?」
「電源コード直結で、2番機を重機代わりに使いたい。カズイ、可能?」
「一度に1機動かすレベルまでなら、なんとでも。それ以上になると、たちまち困るけどさ。」
「……わかった。トールやミリアリアにも諮って、その件は処理してくれ。」
キラはサイの了承が得られたと見るや、作業に戻ろうとする。だが当のサイが、キラを呼び止めた。
「待ってくれ、キラ。ちょっと君と相談しておきたい事がある。」
「何だい?」
「脱出路の選定さ。今、僕らは地図のここにいる。」
サイはそう言って、広げてあった地図の上に小石を置いた。そして彼は海岸線沿いのある地点に、もう1つ小石を置く。
「そして安全圏まで脱出するには、この港町で船を有り金使って買い叩いて、それにモルフォを載せて海路を行かないと。……せっかく生き残った機材だけど、その時点でベイリーは爆破する。
場合によっては、バラしたモルフォ4番機のメイン部分も爆破処理。機密を知られるわけにはいかないからね。残りモルフォ3機は、MS指揮車にある戦闘記録や機体から抽出したデータと共に、なんとしてもオーブ本国へ持って帰る。」
「うん……。あれ?」
キラは脱出路と言うか、逃走路の半ばにある谷のところに小石を置いた。
「ここ……。危険じゃ無いかな?」
「ああ、危険だ。だけど、僕らには時間が無い。あえてこの道を征く。……カズイ、母艦の燃料は、それほど無いんだろう?」
「ああ、うん。だけど途中で買える場所、無いのかい?」
サイは深刻な表情で言う。キラ、カズイは息を飲んだ。
「金が無い。引き替えにできるものも、無い。持っている金は、なんとしても船を買い叩くのに必要なんだ。」
「「……。」」
非常に世知辛かった。しかし、命に関わって来るとなると、そうも言っていられない。キラはサイに頷く。サイは無言で、頷きを返した。カズイはおろおろしている。
そしてキラは、モルフォ1番機の修理のため、トールとミリアリアを呼びに言ったのである。
キラたちとアズラエルたちの、貧富の差が激しい……。
これが格差社会か。
カガリ、ほんの少しずつ、自覚して自省する様になってきています。
でも、まだまだ先は長いです。