マルチバース スパイダーマン from 国立魔法大学付属第一高校 作:葱山嵐
いつもと変わり映えしない朝を迎えた僕は、毎日欠かさずする事がある。
朝にシリアルを食べながら、今日のやる事リストを作成する。
なんてことないいつも通りの日常に、一つだけアクセントを入れた。
それがいけなかったのかもしれない。
午後15時40分。
僕はある映画を見るために映画館に行った。
今話題の「スパイダーマン:スパイダーバース」
これは本当に考えさせられる映画だった。
割と涙もろい僕は3回は泣いた。
そして、スパイディ特有のあの迫力のシーン!
あれは本当に格好良かった!
こんな格好いいシーンを見せられたら僕だって思う。
スパイダーマンになりたい!ってね。
これもいけなかったのかもしれない。
映画館からの帰り道、少し喉が渇いたのでコンビニに寄った。
これが本当にいけなかったのだろう。
飲み物を買い終えて、喫煙所で右手で飲み物の缶を持ち、左手でプルタブを起こす。
そのまま一口飲んだ直後、急に左手に痛みが走った。
何だと思い、驚きながら左手をブンブンと振り、それを見ると何かに噛まれた様な跡があり、僕の足元には見た事のない色をした蜘蛛がいた。
何故か、ゲームの様な或いは近代アートのようなモザイクに光っていた。
僕はこれが何かを知っている。
今日映画で見た状態だった。
「嘘だろ、おい・・・」
僕は目の前が真っ暗になった。
次に目が覚めた時、僕は。
「お前の名前は日比田 葉茅(ひびた はかや)だ」
見知らぬ男性に、笑顔で抱っこされながら名付けられていた。
~13年後~
魔法というおとぎ話の産物は、1999年に起きたとある事件により、超能力は実在するものと判明し、世界各国は超能力の研究に着手した。
超能力は形を変え、「魔法」という、力になり、20年間に及ぶ食糧事情から発生した第三次世界大戦が始まる。
これが熱核戦争にならなかったのは、世界中の「魔法技能師――通称「魔法師」の活躍によるもののようだ。
戦争自体は一応止まり、世界はそれなりの平和を取り戻したが、色んな国が自国の強化に勤しむ為、拉致やら侵略やらがまだ続く。
――とここまでが歴史の教科書に書かれている事の要約だ。
僕の名前は日比田葉茅。
どこにでもいる中学1年生。
好きな物はコーヒーとピザ。
身長170のそれなりのイケメン・・・いや、それほど顔がいいわけじゃない・・・
こんなどこにでもいる中学生の僕は、皆と二つ違うところがある。
一つは前世の記憶を持っている事。
確かに僕は13年前、この国に生まれて日比田葉茅の名を授かった。
でも、その数分前は大好きなヒーローの映画を見ていただけの21歳。
それが気が付けば生まれたばかりの赤ん坊だったなんて、信じられるかい?
僕は信じられないね、故にこの事は誰にも話していない。
信じてもらったところでこんな話、何の役にたつというのか。
そして、もう一つの僕の秘密は・・・
side北山雫
ここはどこだろうか・・・
私は中学校からの帰り道、何者かに攫われた。
今日は親友のほのかは用事があり、私一人で帰路を歩いていると、後ろから口元に布のような物を当てられて、気を失った。
気が付くと、どこか分からない暗く冷たい場所で縛られていた。
周りを見ると私と同じような女性が何人もいた。
私はどうにか脱出しようとしたが、私のCADは奪われているようでどうにもできない。
いや、正確にはCADがなくても魔法は発動はできる。
CADはそもそも術式補助演算機という、魔法を発動しやすくする為の物だから、それがなくてもどうにか出来ない事はない。
けれど、CAD無しの魔法発動には慣れていないから、発動できるかわからない。
けど、やるしかない。
そう思った時、扉が開いたのか眩しい光と共に、数人の男が入ってきた。
周りの人もそっちを見るが、どうやら助けに来た人間には見えないという事が周りの人もわかっているようだ。
男たちは私達を見ると、一人の男が拙い日本語で話し始めた。
「これから君たちにハ、シードが埋め込まれます。
大丈夫、安心してヨ、優しくするからネ」
一人の男が舌なめずりをすると共に、一歩歩みだす。
は? シード? 種って事?
冷静に考えてしまった私は彼らが何を言いたいのか理解してしまった。
私たちは強姦されるんだ・・・
男たちが早足で近づき、周りの女性の服を破り、体を殴り始めた。
無理矢理、私達を犯す気だ。
私は呼吸が荒くなるのが分かった。
周りの女性が今にも乱暴されそうになりながら、私にも男が近づいてきて、手に持っていたナイフで私の服を引き裂く。
「イヤ! ヤメテ!」
私は動けないながらに、蹴りを入れるが、男は私の足を手で掴み逆さに吊るす。
男は下卑た笑みで私の足を舐めながらベルトを緩め始めた。
「アンシンしろ、すぐにキモチヨクなるぜ」
イヤ、イヤ、こんな所で初めてを奪われるなんてイヤ!
誰か・・・誰でもいいから・・・
「助けてーーーーーーー!!!!」
私の叫び声が響く。
そして・・・
「ちょっとちょっと!?
合意の上でなら離れるけれど、そーゆー事は感心しないな!」
聞き覚えの無い声が聞こえると同時に、私を掴んでいた男の手から私は解放されて、私は床に落下すると思ったら、何かに引っ張られて誰かに支えられた感覚を覚えた。
「ナニモノだ・・・」
誘拐犯たちがこちらを向くと同時にこちらを向くが、その目は驚きと変な物を見たという感じの目だった。
私は、助けてくれた人に目を向ける。
逆光でよく見えないが、赤と青と黒が混じったスーツで胸元にクモの様なマークがついた、全身タイツの男の人だった。
「バットマンだ」
いや、蜘蛛じゃないの?
sideバットマン?
さて、女性が今にも襲われそうな状況でバットマンと偽って、僕がこれから何をするのかというと単純明快。
「ここ何のパーティー会場?
あぁ、言わなくても分かるよ、悪党退治パーティーだよね。」
僕はそういうと、支えていた女の子から手を放し、手をI LOVE YOUのサインにして手首から蜘蛛糸を悪党に向けて出して、男二人に頭突きさせあう様に引っ張りまず二人倒す。
「さて、主役は誰かな?
パンチとキックでお祝いしてあげるよ!」
お仕事開始!
side北山雫
タイツの人のバットマンと名乗る人は、蜘蛛の糸の様な物を手首から出して戦い始める。
いや、戦いとは言えないかもしれない。
彼は身軽に動き、誘拐犯の男達を一方的に倒していく。
手首から蜘蛛糸を出して戦う姿はバットマン(蝙蝠男)とは言えず、そんな事を考えている間にも誘拐犯は倒されていく。
男達は抵抗しようと、銃を取り出そうとするが、彼の蜘蛛糸が銃を取り上げ、そのまま前に飛び蹴りをしてそのまま攻撃へと転じていく。
すごい。
どうみても体格的に劣っている彼は、荒事に慣れていそうな誘拐犯達を次々と倒していき、気が付けば意識があるのは誘拐された私達と、バットマンだけだった。
「さて、お仕事完了!
お嬢さん達、警察は呼んであるから安心していいよ」
そういいながら彼は、蜘蛛糸を器用に操り誘拐犯達をグルグルに縛っていく。
私は彼に見惚れていると、私は後ろから忍び寄っていた男に捕まってしまった。
「ウ、ウごくナ!!」
「・・・っ」
男が私の頭に銃を当て、私は人質にされてしまった。
しまった、油断した!
「オ、オイ、蜘蛛糸野郎!
そのまま両手を・・・ガッ!?」
私を人質に取った男が急に呻いたと思いきや、男は急に倒れた。
何が起きたのかと考える前に、私は男から離れる。
バットマンのとこに行き、男の方を見るとどうやら雷にでも当たったかの様に痺れている。
バットマンの彼は指を変な形にして男に向けていた。
恐らくさっきの蜘蛛糸の様に何かを射出したようだ。
私は倒れた男を見ると、腹が立ってきてつい無意識に男のアレを蹴ってしまった。
それを見た彼は「うわぁお・・・」と自分のを抑えていた。
あぁ、まずい恥ずかしい所を見られてしまった・・・
「お嬢さん勇気あるね・・・」
「い、いや・・・」
少し気まずい雰囲気になってしまった・・・
「と、とにかく、タオルとか持ってきたから、これで体を隠して。
他の人にもそう伝えてくれる?」
「え、あ、はい」
彼はどこからかタオルを数枚取り出し、私に手渡す。
私は他の人達にタオルを渡していると、彼はさっきの男を蜘蛛糸で簀巻きにしていた。
「あ、あの・・・」
「おっと、ごめんね。
僕これから次のパーティーに行かなきゃいけないから!」
そう言って彼は蜘蛛糸を飛ばし、それで戻ってこない振り子の様に移動していった。
少しして、警察の人達がやってきて私達は無事に保護された。
あの蜘蛛の様な人は一体誰だったのだろう・・・
「すみません、北山家のお嬢さんですか?」
「あ、はい、そうです」
警察の人の質問に返答すると、その人は無線で連絡を取り、少ししてほのかとお父さん達が走ってきた。
私はついに気が緩んでしまい、泣きながら走ってほのかに抱き着く。
お父さんが「あれ!? パパには!?」と叫んでいたが今は、ほのかに癒されたい。
ほのかは自分と一緒に帰らなかったせいだと言い、謝ってきたが、私はほのかのせいじゃないと言うけれど、ほのかはずっと謝り続けている。
私もずっと泣き続けている。
しばらくして落ち着いた私に警察の人が何かのメモを見せてきた。
「すいません、これが簀巻きにされていた男に貼られていたのですが、お知合いですか?」
私はメモを受け取り見てみる。
それは彼からの置手紙だった。
「悪い奴らは縛っておいたから監獄にでも容れてください。
それと背の小さい勇気あるお嬢さんと今回の被害者の皆様に幸せがありますように。
親愛なる隣人 スパイダーマン」
side日比田葉茅
悪党退治を終えて、僕は夜の街をスイングしていく。
これが僕のもう一つの秘密。
生まれ変わって、10歳の頃この力が発現した。
手や足の指からは小さな棘が生えて、強大な怪力能力を持ち、手首からは蜘蛛糸を出せる。
極めつけは体から電気を発生させる事が出来るし、透明にもなれる。
蜘蛛の力と超能力を手に入れたんだ。
僕は正直この力を手に入れた時は舞い上がっていた。
この力があれば何だって出来る。
そう思っていた。
1年前のあの日までは。
あの日、ただのデパート強盗に僕と僕の今の家族が出くわした。
僕はこの力でどうにかしようと思ったが、怖くて足が竦んだんだ。
大きな力も使う事が出来なければ、ゴミと同じだ。
強盗が放った銃の弾丸が僕の親を殺した。
運が悪かったと言えばいいのか、運命だったと言えばいいのか。
この事件で死んだのは僕の両親だけ。
僕は天涯孤独の身となった。
少しして養護施設の人が僕を引き取ってくれたけど、僕は何も手が付かなかった。
それまでは勉強も、運動も意欲的にやっていたというのに。
最早、生きるだけの抜け殻だった。
でも、そんなある日、僕は両親からの遺産を受け取り、その中の家族写真を見た。
もう戻ってこない僕の日常。
あの日ほど泣いた日はない。
そして思い出した。
僕が今ここにいる理由と、僕が憧れたヒーロー達の背中を。
僕はスパイダーマンが好きだ。
この世界にはいないスパイダーマンが大好きだ。
彼らの様にはなれなくても、志だけは彼らの様に誰かの役に立つヒーローでありたいと思った。
そんな時に、この力を手に入れたんだ。
これは運命なんだ。
僕は運命を受け入れる。
僕はヒーローになる。
僕は日比田葉茅。
この世にたった一人の、スパイダーマンだ。
本日、スパイダーマン:スパイダーバースを見まして、以前から構想はあったこの作品を投稿したいと思い執筆しました。
誰だって、かっこいいヒーローにはなれないかもしれない。
けれど、志だけはヒーローでありたい。
誰だってヒーローになれる、そう、小さな事でもね。